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死んだ姉の代わりに花嫁になりました
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婚姻日和とは言えない雨の日に神の前で夫婦になることを誓わされた。
「リオナード・ソワールとエステル・ベルナードの婚姻を認める。
此度の婚姻は王命ということを忘れずに、同意し署名した契約を履行するように。
それでは血の交換を」
厚いヴェールをあげて、指に針を指す。
新郎新婦が向き合い、相手の額に己の血を付ける。
王命の婚姻のときに用いられる儀式だ。
互いの家門をかけた契約を結ぶことを意味する。
向き合い、彼を見上げると驚いた顔をしていた。
「っ!!」
「……」
私は手を伸ばして彼の額に血を付けた。
彼も我に返り 私の額に血を付けた。
「ソワール夫妻に祝福を」
「「……」」
「確かに、両家の婚姻を見届けました。
私はこれで失礼いたします」
王命が果たされているか見届けに来た国王陛下の遣いが帰っていく。
「エステル、ごめんなさいね」
「お姉様が急に召されてしまっては仕方ありませんわ」
「辛かったらいつでも逃げておいで」
「お父様、王命ですよ?」
「かまうものか」
「お兄様。大丈夫ですわ。この国で一番白い結婚ですもの」
「そうだな。契約違反があれば直ぐに訴えるんだぞ」
「ふふっ」
「クリス、ビビ。頼んだぞ」
「「かしこまりました」」
家族に見送られて専用馬車でソワール邸に向かう。
ここはソワール領。
クリスは専属の護衛。ビビは専属の侍女。
ベルナード家から連れて行く。
志願してくれた2人には感謝だ。
ソワール家は宝石が採れる領地を持つ侯爵家。
ベルナードは希少な薬草が採れる領地を持つ伯爵家。
ソワールとベルナードは隣接していた。
何がきっかけかは分からないが犬猿の仲だ。
昔からなので今では理由を知らない。
国にとってどちらも重要で、仲良くしてもらいたかった。
ずっと年齢がズレていたり、互いの子が同性だったりして婚姻という方法は視野になかったが、今回、
ソワールの一人息子とベルナードの長女が同い歳だったことに目を付けて、国王陛下は二人の婚姻を命じた。
婚約させられた2人は更に相性が悪かった。
だから婚姻の前に互いの要望を 契約書に纏めた。
婚姻生活に関する細かな決め事だ。
そしてやっと婚姻の儀を迎える前夜、新婦になる予定の長女ヴァネッサが階段から落ちて頭を打って天に召された。
婚儀の為に現地入りしていた陛下の見届け人を連れてきて、姉の亡骸に会わせた。
“なんてことだ!”
だけど見届け人は 兄に抱きしめられていた私に目を止めた。
『ご令嬢はデビューは?』
『まさかエステルを!?』
『冗談じゃありませんわ!』
『ヴァネッサは死んだんだ!王命は消えたでしょう!』
『王命書に個人名はございません。
今回避しても王命違反を問われるか、改めてエステル嬢の名で命じるだけです。
参列客のことを考えれば、今済ませた方がよろしいのでは?』
『エステルは16歳になったばかりなのよ!』
『早過ぎる!』
『妹には無理だ!』
『デビュータントは成人を認める行事で婚姻も認められています。
言い換えれば成人としての貴族の義務が発生するということです』
『ですが、先方は私を受け入れるでしょうか』
『確認して参ります。その間にウエディングドレスの調整をできる限りなさってください』
結局、ソワール家は受け入れ、ドレスは裾を切って、ウエストはリボンで締め上げ、胸元にはレースを足した。
そして荷物を急いで纏めて、気が付けば夜が明けていた。
婚姻の儀はあっという間に終わった。
「リオナード・ソワールとエステル・ベルナードの婚姻を認める。
此度の婚姻は王命ということを忘れずに、同意し署名した契約を履行するように。
それでは血の交換を」
厚いヴェールをあげて、指に針を指す。
新郎新婦が向き合い、相手の額に己の血を付ける。
王命の婚姻のときに用いられる儀式だ。
互いの家門をかけた契約を結ぶことを意味する。
向き合い、彼を見上げると驚いた顔をしていた。
「っ!!」
「……」
私は手を伸ばして彼の額に血を付けた。
彼も我に返り 私の額に血を付けた。
「ソワール夫妻に祝福を」
「「……」」
「確かに、両家の婚姻を見届けました。
私はこれで失礼いたします」
王命が果たされているか見届けに来た国王陛下の遣いが帰っていく。
「エステル、ごめんなさいね」
「お姉様が急に召されてしまっては仕方ありませんわ」
「辛かったらいつでも逃げておいで」
「お父様、王命ですよ?」
「かまうものか」
「お兄様。大丈夫ですわ。この国で一番白い結婚ですもの」
「そうだな。契約違反があれば直ぐに訴えるんだぞ」
「ふふっ」
「クリス、ビビ。頼んだぞ」
「「かしこまりました」」
家族に見送られて専用馬車でソワール邸に向かう。
ここはソワール領。
クリスは専属の護衛。ビビは専属の侍女。
ベルナード家から連れて行く。
志願してくれた2人には感謝だ。
ソワール家は宝石が採れる領地を持つ侯爵家。
ベルナードは希少な薬草が採れる領地を持つ伯爵家。
ソワールとベルナードは隣接していた。
何がきっかけかは分からないが犬猿の仲だ。
昔からなので今では理由を知らない。
国にとってどちらも重要で、仲良くしてもらいたかった。
ずっと年齢がズレていたり、互いの子が同性だったりして婚姻という方法は視野になかったが、今回、
ソワールの一人息子とベルナードの長女が同い歳だったことに目を付けて、国王陛下は二人の婚姻を命じた。
婚約させられた2人は更に相性が悪かった。
だから婚姻の前に互いの要望を 契約書に纏めた。
婚姻生活に関する細かな決め事だ。
そしてやっと婚姻の儀を迎える前夜、新婦になる予定の長女ヴァネッサが階段から落ちて頭を打って天に召された。
婚儀の為に現地入りしていた陛下の見届け人を連れてきて、姉の亡骸に会わせた。
“なんてことだ!”
だけど見届け人は 兄に抱きしめられていた私に目を止めた。
『ご令嬢はデビューは?』
『まさかエステルを!?』
『冗談じゃありませんわ!』
『ヴァネッサは死んだんだ!王命は消えたでしょう!』
『王命書に個人名はございません。
今回避しても王命違反を問われるか、改めてエステル嬢の名で命じるだけです。
参列客のことを考えれば、今済ませた方がよろしいのでは?』
『エステルは16歳になったばかりなのよ!』
『早過ぎる!』
『妹には無理だ!』
『デビュータントは成人を認める行事で婚姻も認められています。
言い換えれば成人としての貴族の義務が発生するということです』
『ですが、先方は私を受け入れるでしょうか』
『確認して参ります。その間にウエディングドレスの調整をできる限りなさってください』
結局、ソワール家は受け入れ、ドレスは裾を切って、ウエストはリボンで締め上げ、胸元にはレースを足した。
そして荷物を急いで纏めて、気が付けば夜が明けていた。
婚姻の儀はあっという間に終わった。
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