笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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続編:ヒューゴの結婚

実験棟

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“マリエッタ・ハンブレン夫人”

新聞の貴族の知らせを載せる欄を読むとある女の名に目が止まった。

ハンブレン男爵家の次男と結婚したオヴェル子爵家の令嬢だ。
以前クリスティーナが学園に通っていた頃、彼女の元婚約者シャルル・ヘインズの取り巻きをしていた女だった。
当時は裕福な伯爵家の三男と婚約していたが、卒業後、素行不良で婚約破棄された。それでも縁繋ぎのために伯爵家の広大な領地の外れの一部を管理する分家のハンブレン男爵家に嫁がされた。
ハンブレン家としては王都に屋敷を持たないため田舎の屋敷で暮らすことになった。
ハンブレン男爵家は貴族とはいえ管理人にすぎず収入は極めて少ない。その上、夫は跡継ぎでもないため夫婦に割り当てられる予算は貴族の生活を維持させることが難しく、オヴェル家からの最低限の援助を受けていた。だがそれでも王都で開かれるようなパーティに出席できるようなドレスを作る余裕がなかったし、領地内でも夫人宛の招待状は届かず、稀に届く夫宛の招待に同伴する程度だった。
実質社交界からの追放に等しかった。

オヴェル子爵家は王宮の予算などを管理する仕事をしていたが、エルザ王子妃が婚姻後に部署の内務調査を願い出た。夫となった第二王子はそれを快諾し、定期的な監査は必要だと進言し陛下が調査を命じた。
結果、子爵がオヴェル家の利になる業者を王宮御用達にしたり、縁者を裏採用させていたことが分かって懲戒解雇となった。罰はそれだけで、業者も裏採用者達も解雇となっただけだったが名前が新聞に大きく載ったことにより信用がなくなった。貴族が信用を失くすということは大変な影響をもたらす。娘に続き父親もとなれば個人ではなく子爵家全体に難ありと捉えられても仕方ない。しかも王家からの信用を失ったとなれば関わりたい者など皆無だ。
王都にかまえていた小さな屋敷は売りに出され息を潜めていたのだが……。

“死去”

死んだか。
クリスティーナを虐めていた1人だったから、いつか婚姻して公爵夫人の座につかせたとき、彼女の足元に跪かせようと思っていたが。

“ジャスミン・ハンブレン 0歳 死去”

こういう書き方をするときは、出産で命を落としたときだ。なんとか産んだが母子共に助からなかったらしい。

「例の場所へ出かけるから支度をさせてくれ」

「かしこまりました」

俺のすべきことが見つかった。



ジオ領内にあるサブマ草栽培施設には人体実験を行っている実験棟がある。

「ヒューゴ様」

「ポルター先生、アマンダの様子は?」

「若く体力もあるのでいい被験体ですよ」

「あの女で別の実験をしてもらいたい」

「どのような?」

「出産の助けとなるような。特に難産だった場合とか」

「彼女で?時間がかかりますよ?」

「かまわない。貴族籍の者は使うな」

貴族の種を使うと面倒なことになる。

「ではそのように」

アマンダはこれから妊娠させられることになる。そして難産だったことを想定した実験を行う。
今の医療レベルでは胎を裂いて胎児を取り出すと高確率で母胎はもたない。それをサブマ草でなんとかできないか確かめたい。

「進展がなくとも月に1度報告をあげてくれ」

マリエッタ・ハンブレンの訃報記事を読んで怖くなった。無事に子が産まれる保証もなければ、母親が無事でいられる保証もない。愛するクリスティーナとの子は欲しいが彼女の命を引き換えにしてまでは欲しくない。


カチャ

「もういいぞ」

施設から戻り彼女の部屋を訪れた。

「よくないわ、ラヴィア卿も残って」

アレ以来、クリスティーナが日中に2人きりになることを警戒している。

「ティナ」

「何か問題でも?」

やり過ぎたらしい。

「すまなかった」

「ニヤニヤしながらいう言葉ではないわね」

サッと姿を映す物に顔を向けると確かにニヤけていた。

「俺は嬉しかった」

「ふうん?」

「愛するティナの全てが知りたかったんだ」

「じゃあ、私も隅々までヒューを観察しようかな」

クリスティーナが?俺の体を?隅々まで?

「興奮するな」

「なっ!!ヒューの変態っ!!」

彼女は真っ赤になって顔を逸らした。
ああ、可愛い。愛おしい。誰の目にも触れさせたくない。

「何か欲しい物はないか?」

「何よ突然」

「して欲しいことでもいいぞ」

「私を閉じ込めないで」

「ティナ?」

「じっとしてる公爵夫人が必要なら他の令嬢を当たってと言ったはずよ」

「型にはめた公爵夫人になって欲しいわけじゃない。愛するクリスティーナ・セルヴィーに危険な目に遭って欲しくないし誘惑されて欲しくないし、毎日会いたいし見つめていたいんだ」

「本当に?」

「何故それがいまだに理解してもらえていないのか不思議で仕方がない」

「……結婚式はお父様達と予定を擦り合わせて決めて」

クリスティーナ!!

「な、泣くことないじゃない」

「え?」

ハンカチを差し出されて気が付いた。自分の目から涙が出て頬を伝っていた。

「なんかごめんね?」

俺がどれだけ不安だったか。

「もっと謝ってくれ」

「ごめんなさい、ヒュー」

今夜は優しくしてもらえそうだ。

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