笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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続編:ヒューゴの結婚

嬉しい決断

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クリスティーナが結婚を決めたことは巡りに巡ってあの2人の耳に届いた。

「ズル賢いわね。涙でティナを縛るなんて。ね、ジネット」

「エルザの言う通りよ。私達のティナは絆されちゃったわ」

涙を流したことが母上の耳に入り、王妃(伯母)の耳に入り、ついにはエルザ王子妃とジネット夫人の耳に届いていた。

「よくよく考えてみたら気が気じゃなかったと思うわ」

偉いぞ、クリスティーナ。

「そんなに優しくしたらダメよ。あの顔見た?」

「見たわ。俺は愛されてるって顔をしていたわね」

殿下とゼインに視線を送ったが、微笑みの仮面を外さない。
おまえ達の妻だろう、何とかしたらどうだ!

「そんなこと言ったって、2人だって旦那様に愛されてるじゃない」

「「えっ?」」

「エルザは目眩を起こしたときに殿下に抱っこされてパーティを退席して、そのまま殿下は会場に戻らなかったって聞いたし、ジネットはモルゾン公爵領の新種の花の名前になったらしいじゃない」

「「なっ!」」

「あっついわぁ」

彼女はわざとらしく扇子で仰ぎ始めた。
学園での3人の様子が目に浮かぶ。本当にこの2人が彼女の親友になってくれて良かった。



4ヶ月後、結婚式は王都で行った。
ウエディングドレスはセルヴィー伯爵家が既に準備を進めていて、式に合わせて仕上げる段階で止めていたので、追加で俺の衣装を作り両家の予定をすり合わせるだけだった。

夕方に教会で式を挙げた。特級シルクのドレスと絹糸で編んだレースは圧巻だった。ヴェールは陽の光にさらされると真珠のような美しさを放つが夕方だったので普通のヴェールに見えた。もったいないと思ったが神の前では目立つ必要はないと彼女は笑った。

夜のパーティを開いた。大広間がメインだが、庭園に特別なガラス細工を施したランタンを置いた。まるで眩しく光る宝石のようなランタンの灯りに招待客は息を呑んだ。幻想的な庭園を作り出したのはクリスティーナだ。彼女がまた閃き呟いて伯爵と伯爵令息が実現した。今夜がお披露目となったこのランタンは爆発的に売れるだろう。

「このランタン、香りますわ」

「本当、良い香りですわね」

場所によってランタンを香らせた。花が近くになくても楽しめるように考案した。これもクリスティーナによるものだ。

母上が招待客から質問攻めに遭っている。公爵家主催だからな。
本当はクリスティーナに聞きたいのだろうが鉄壁が彼女をガードしているから近寄れない。

「ティナ、次のモルゾン家のパーティでこのランタンを使いたいわ」

「まだ非売品なの」

「ジネット、抜け駆けはズルいわ。このランタンは王宮こちらで買い取るから諦めて」

エルザ王子妃とジネット夫人はよくクリスティーナを奪い合っているが不思議と仲が良い。
 
「ヒューゴ、ランタンはモルゾン家うちに頼む」

「抜け駆けかい?当然エルザが優先だと思うけど」

「残念ながら既に予約待ちになるはずだ」

昔、発売前の超高級羽毛布団を購入したいと連絡をしてきた、とある国の宰相閣下がいた。また教えてもいないのにランタンの購入希望の手紙を送ってきた。さらに伯爵がアルゼラ王太子殿下とラヴィアの結婚祝いにバノア王国に贈ると言っていた。
ランタンは1つ仕上げるのにかなりの日数がかかるらしい。それを1つや2つではなく双方に数十個渡すとなると順番が回ってくるのがいつになることか。それに他にも既に引き受けているかもしれないし。

「真似をされそうだな」

「類似品として出回るかもしれませんが、本物と比べればわかるらしいです」

ガラスを作るときに何かを加えていると伯爵は言っていた。材料や分量などがあのセルヴィーから漏れるはずがない。

「今夜は3人でゆっくりお喋りしましょう」

「ルクスと遊びたいわ、連れてきたのでしょう?」

は?新婚初夜だぞ!?

殿下とゼインに視線を送るが2人は片方の口角の端を上げていた。

こいつら……

「そうだ、いっそのこと1ヶ月ほどジオ領にお招きしてはどうだ、ティナ」

「「は!?」」

殿下とゼインは声を揃えた。

「行きたいです」

「私も」

「エ、エルザ……さすがに難しいかな」

「ゼイン様、私はいいですわよね?」

「は、母親が1ヶ月も不在になったらあの子は、」

「連れて行きますわ」

「ジネットが行くなら私も行かなくちゃいけません!」

「エルザ、落ち着こう」

「さぁティナ、向こうに挨拶に行こう」

揉める4人を残して挨拶回りを続けた。


パーティがお開きになった深夜、やっと俺だけの妻となったクリスティーナと濃密に過ごそうと思ったのに。

「ジュエルはヒューが好きなのね、ウフフ」

「ミャオン!ミャオン!」

「……」

伯爵が結婚祝いにとティアラやルクスと同じ種の雌の子猫を連れてきた。ジュエルは俺から離れようとせず甘える。ルクスはチラリと見て鼻で笑ったような気がした。

「ニャッ」

「よしよし、ルクスは私と寝ようか」

何でそうなるんだ!

「ミャオン!」

アンナ……何で寝室に連れて来たんだよ。もう1人雇わないとな。


翌朝、俺の上ではジュエルが寝ている。横を見ると俺の妻が恋人のようなルクスと寝ている。

泣けてきた。






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