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婚約者とのお茶会
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何度見ても幻覚ではない。
鏡台に立てかけた招待状を見つめながらメイド達に身を任せて身支度をしている。
「青は使われないのですか?」
「青と黄色は止めてちょうだい」
「かしこまりました」
昔はシャルル様の色のドレスや宝石を選んだけど、彼が嫌がっているのを知った日から避けていた。
今でもあのときのことは鮮明に思い出せる。
『察することが出来ないみたいだからはっきり言うけど、僕の色を使うのは止めてくれないかな』
『え?』
『恋愛の末に婚約したわけじゃないんだよ?
会うたびに僕の色を身に付けられると怖いし不快なんだ。君だって好きでもない男が会うたびに君の髪の色や瞳の色で服を仕立てて着て来たら怖いし不快だろう?
自分の色を見たくなくなったり嫌いになったら鏡を見ることさえ出来なくなるじゃないか』
『…ごめんなさい』
『派手なものや露出のあるものも止めてもらいたいな』
『はい』
あの日は帰って泣きながら衣装部屋の整理をしたわね。
お父様とお母様は、私がそんなことを言われていると知らないから時々気を利かせたつもりでシャルル様の色の物を買い与えてくださる。
申し訳ない気持ちでいっぱいになるけど、そんなことを言われたなんて言えない。
あまり交流がないことだって、彼の跡継ぎ教育が大変なのだとお父様達は思っている。
本当は愛されたい。愛されていたら式前だろうがこの身を捧げ癒しになりたい。
カツン
音の先は鏡台に当たったバンクレットだ。
結婚するまでには外してもらわないと。
いくらシャルル様でも気分を悪く…しないわね。
恋人や愛人を作ろうが純潔でなかろうが他の男性の子供を産もうが構わないと言っていたものね。
「……」
何故かヒューゴ様が飲み過ぎた私の面倒を見てくれたときのことを思い出した。
そして彼の笑顔も。彼の香りも。
「お嬢様?」
「え? あ、ありがとう。これでいいわ」
馬車に乗り、久しぶりにヘインズ邸の門をくぐり到着した。馬車を降りると初めての光景を目にした。
お父様かお母様が同伴していない限り、出迎えに出て来たことのなかったシャルル様が出迎えに外に出ていたからだ。
「よく来てくれたね」
「お招きありがとうございます」
「外に席を用意させたけど、もう肌寒いから中の方がいいかい?」
「お外で大丈夫です」
「良かったよ。見頃の花が見えるからどうかと母が言うものだから」
「お気遣いいただきありがとうございます」
信じられない。シャルル様が会話を振ってくださるなんて。
テラスに用意された席に座るとお茶が出てきた。
「君が好きだと言っていた茶葉だよ。どうぞ」
「いただきます」
本当に私が好きな茶葉の一つだった。
一度も私が好きな茶葉を使ってくれたことが無かったのに。
「美味しいです」
「良かった」
シャルル様は美しく微笑んだ。
その後は授業の話や家族の話をして、花を見に散歩に誘われた。
シャルル様はただゆっくり歩くだけ。
花を見ながらヒューゴ様が花について説明をしながらニコッと微笑んだときの顔を思い出していた。
今頃何しているんだろう。
そういえばヒューゴ様が普段どのような生活をしているのか知らない。仕事でもしてる?どんな?誰かと会ってる?誰と?
彼は5つも歳上だもの。
あのときは交際経験などは無いと言っていたけど、あって当然よね。
次期公爵で端正な顔立ちで意外とかなり逞しい身体をしていて…間違いなくモテるはずだもの。実際彼のファンにワインを掛けられたわけだし。
「クリスティーナ、何を考えているの?」
えっ?
鏡台に立てかけた招待状を見つめながらメイド達に身を任せて身支度をしている。
「青は使われないのですか?」
「青と黄色は止めてちょうだい」
「かしこまりました」
昔はシャルル様の色のドレスや宝石を選んだけど、彼が嫌がっているのを知った日から避けていた。
今でもあのときのことは鮮明に思い出せる。
『察することが出来ないみたいだからはっきり言うけど、僕の色を使うのは止めてくれないかな』
『え?』
『恋愛の末に婚約したわけじゃないんだよ?
会うたびに僕の色を身に付けられると怖いし不快なんだ。君だって好きでもない男が会うたびに君の髪の色や瞳の色で服を仕立てて着て来たら怖いし不快だろう?
自分の色を見たくなくなったり嫌いになったら鏡を見ることさえ出来なくなるじゃないか』
『…ごめんなさい』
『派手なものや露出のあるものも止めてもらいたいな』
『はい』
あの日は帰って泣きながら衣装部屋の整理をしたわね。
お父様とお母様は、私がそんなことを言われていると知らないから時々気を利かせたつもりでシャルル様の色の物を買い与えてくださる。
申し訳ない気持ちでいっぱいになるけど、そんなことを言われたなんて言えない。
あまり交流がないことだって、彼の跡継ぎ教育が大変なのだとお父様達は思っている。
本当は愛されたい。愛されていたら式前だろうがこの身を捧げ癒しになりたい。
カツン
音の先は鏡台に当たったバンクレットだ。
結婚するまでには外してもらわないと。
いくらシャルル様でも気分を悪く…しないわね。
恋人や愛人を作ろうが純潔でなかろうが他の男性の子供を産もうが構わないと言っていたものね。
「……」
何故かヒューゴ様が飲み過ぎた私の面倒を見てくれたときのことを思い出した。
そして彼の笑顔も。彼の香りも。
「お嬢様?」
「え? あ、ありがとう。これでいいわ」
馬車に乗り、久しぶりにヘインズ邸の門をくぐり到着した。馬車を降りると初めての光景を目にした。
お父様かお母様が同伴していない限り、出迎えに出て来たことのなかったシャルル様が出迎えに外に出ていたからだ。
「よく来てくれたね」
「お招きありがとうございます」
「外に席を用意させたけど、もう肌寒いから中の方がいいかい?」
「お外で大丈夫です」
「良かったよ。見頃の花が見えるからどうかと母が言うものだから」
「お気遣いいただきありがとうございます」
信じられない。シャルル様が会話を振ってくださるなんて。
テラスに用意された席に座るとお茶が出てきた。
「君が好きだと言っていた茶葉だよ。どうぞ」
「いただきます」
本当に私が好きな茶葉の一つだった。
一度も私が好きな茶葉を使ってくれたことが無かったのに。
「美味しいです」
「良かった」
シャルル様は美しく微笑んだ。
その後は授業の話や家族の話をして、花を見に散歩に誘われた。
シャルル様はただゆっくり歩くだけ。
花を見ながらヒューゴ様が花について説明をしながらニコッと微笑んだときの顔を思い出していた。
今頃何しているんだろう。
そういえばヒューゴ様が普段どのような生活をしているのか知らない。仕事でもしてる?どんな?誰かと会ってる?誰と?
彼は5つも歳上だもの。
あのときは交際経験などは無いと言っていたけど、あって当然よね。
次期公爵で端正な顔立ちで意外とかなり逞しい身体をしていて…間違いなくモテるはずだもの。実際彼のファンにワインを掛けられたわけだし。
「クリスティーナ、何を考えているの?」
えっ?
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