笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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領内視察

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翌日は絹糸を作るための蚕を育てる養蚕場、さらに製糸工場へ行った。

ありがたい蚕なのだけど正直苦手だ。
養蚕場の人達は本当にすごい。だってほとんど女性だから。

「あらあら、お嬢様。克服なさったのですか」

「まだなの。アイダ達はすごいわね」

「慣れたらなんてことはありませんよ。
この子達の世話をするだけで安定した生活を送れますし、無理な労働はしなくていいですから。
病気になっても無料で医者に診ていただけるだなんて、夢のようです」

「無料!?」

ヒューゴ様は驚いていた。

「ヒューゴ様。セルヴィーは特別な産業をしているのです。何故あのような素晴らしい絹糸が生産できるのか秘密を守ってもらわなくてはなりませんし、この幼虫達を持ち出されてもいけません。
厳しい管理下に置かれる従業員に対し、それなりの待遇を与えるのは当然です。

労働時間の短縮と休憩時間の確保、昼食の提供、休日の確保をしています。
改革をしてからは従業員は辞める者は出ていませんし、新規採用は厳しい審査があります。健康診断もあり、家族も受けさせます」

「家族も?」

「はい。治療目的の労働者を防ぐためです。何故なら家族も医者にかかることは無料だからです。もちろん人数制限もあります。十人 二十人と連れてこられても困りますから。
採用後に妊娠して出産した場合は追加ということで認められます。

そして勤続2年を超えると家を貸し与えられます。
家は買い取りも可能です。
退職金もありますし、給金も増やしました。
まあ、皆さんベテランですが、カウントは新契約からですので5年前に退職金を払って一度リセットしています。
20年以上勤めてくれているベテランさんも、新しい契約条件の方がいいからと、快く署名してくれました。

今日はヒューゴ様も騎士の皆様も一緒に賄い昼食を食べましょうね」


そして昼食の時間には、テーブルの上に賄い食が並べられた。

「お、お嬢様、これはヒューゴ様がいるからこんなに豪勢なのですか?」

ロック卿が目を輝かせた。

「いつもの通りよ」

パンも余るほどあるし、野菜料理2種、鶏肉と野菜のミルクスープ、肉料理。

「う、美味い」

「良かったわ」

「転職したい」

「自由はほぼありませんよ?」

「え?」

「どういうことだ?」

ヒューゴ様が前のめりになって聞いてきた。

「労働時間が終わると手荷物検査と全身検査を受けます。
町から出るためには申請をして許可が必要です。
結婚相手は調査を入れますし、餌を育てる係と幼虫を育てる係は原則接触禁止です。
まだ起きてはいませんが、セルヴィー家の求めに応じて家屋の捜査が入ることも了承しなくてはなりません。情報漏洩を少しでも防ぐためです。

体に付けるものも制限されます。そのせいで幼虫が死んでしまったり製品に影響を及ぼしてはならないからです。人間には害ではなくても虫には害の場合もありますし、糸に香りが付いたり変色したりさせては意味がありませんから。
実際に規格外商品は、以前にそのような意図しない事故から生まれました。糸が変色してしまったのです。しかも綺麗に染まりませんでした。
その糸を使って大きなクッションを作りました」

「捨てなかったのか?」

「手触りはそれほど悪くなかったので、私が布にしてと頼みました。今では羽毛の方でも、規格外を廃棄しません。
ちなみに、その大きなクッションはティアラのベッドになっています」

「あれか!」

「はい」


昼食を食べた後は実際に布を作っている様子を見てもらいながら、私自身も観察した。お兄様から改善点があったら教えてと言われたからだ。

見学が終わると屋敷に戻った。
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