笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

文字の大きさ
60 / 215

久々の待ち伏せ

しおりを挟む
昼食後、女子トイレに行くと声を掛けられた。3年生でシャルル様の側にいつもいるアレクシア・サリモア公爵令嬢だった。

「セルヴィーさん」

「はい」

「あなた、シャルル様の卒業式はパートナーとして出るわけ?」

「そのような話は出ておりません。多分サリモア様かオヴェル様をお誘いするのではありませんか?特に会話もありませんので私には分かりかねますが」

「じゃあ、私が誘ってもいいということね?」

「私にはその手のことにお答えする権利はございません。いつも通り シャルル様が誰をお誘いしようと私は口出ししませんわ」

「あっそ。
ねえ。あなたジオ公子と随分と親しくなったのね。あなたの我儘でシャルル様を婚約者にしたくせに、今度は伯爵家より公爵家が良くなったの?
どうせ遊ばれて終わりよ。調子に乗らないことね」

「……」

「何よ。何か文句があるのかしら?」

「私は確かにシャルル様をお慕いしていて、父が察してヘインズ伯爵と話し合って婚約が決まりました。ですが私は一度も“シャルル様と婚約させて”などと言ったことはありません。胸の内に秘めていても我儘と仰るのですか?」

「とぼけないで。あなたがシャルル様と結婚したいと言い張ったのでしょう!」

「どこでそんな嘘を聞いたのか分かりませんか事実と異なります。
サリモア様がシャルル様の愛人になろうが私には特に意見はありません。どうか私を憂さ晴らしの対象にしないでいただけますか」

「私が理不尽に当たり散らしていると言いたいわけ?」

「そうでないと仰るなら一緒にシャルル様のところへ行きましょう。最初からサリモア様のお話をシャルル様を交えて話し合いましょう」

バチン!

「生意気なのよ!」

「憂さ晴らしの対象にするのは止めてください」

バチン!バチン!

「これが理不尽に当たり散らしているのではないとしたら何なのですか!?」

バチン!!

ガシャン!!

「うっ…」

サリモア公女が何度も私の頬に平手打ちをし、ついには力一杯叩かれたその反動で、トイレの備え付けの鏡に頭を打ち付けてしまった。
鏡は割れ、頭というか額というか…今はどちらなのか分からない。ポタポタと赤い液体が頬を伝い床に落ちていく。

「わ、私は」

「キャアアアアッ!誰か!誰か来て!!」

たまたまトイレに入ろうとしたのか、鏡が割れる音で覗きに来たのか、とにかく女生徒が私を見て叫んだ。

近くにいた警備や教職員が駆け付け、私の怪我の具合を見ている。

「あなた、叩かれたのね」

何度も叩かれた私の頬が赤いからだろう。

「……」

側にいて狼狽える公女の手を教職員が掴んだ。

「あなたが犯人ね」

「わ、私は別に、」

「叩いた手のひらが赤くなってるじゃない。警備の方、この生徒を懲罰室へ連れて行ってください」

「失礼ですが、私が怪我人を運んだ方がいいと思います」

「そうですね、この子を医務室までお願いします。
あなたサリモア公爵令嬢ね。来なさい」

「お嬢様、失礼します」

警備兵は私を抱き上げ廊下に出た。

「ティナ?…ティナ!!」

ジネットが動揺している。今日はエルザが休みだから、もっと心配かけちゃうわね。

「大丈夫よ、ジネットは教室に戻って授業を受けて」

「でも!」

「医務室でお医者様に治療してもらうだけだから。ね? それより授業を聞いて今度教えて。お願い」

「分かったわ」


医務室に運んでもらい 傷口を洗い流していると、副学園長が駆け付けた。

「セルヴィー嬢」

「副校長先生」

「セルヴィー家に連絡を入れます」

「あの、父も母も領地で、私だけなのです」

「親戚は?」

「……ジオ公爵家に連絡を入れていただけますか」

「ジ、ジオ公爵家ですか!?」

「はい。お願いします」

「分かりました。傷の手当てに時間が掛かりますね。その間に手配します。また戻ってきますので、経緯を聞かせてください」

「はい」

副学園長は足早に医務室を出て行った。

「セルヴィー嬢、痛くてもじっとしていてくださいね。小さな破片が刺さっていますから今から抜きますので」

「はい」

チクッとしたけど無事に取ってもらえた。
また洗浄し、他にも破片がないか確認して縫合した。十数針縫っただろうか。その後消毒をして包帯を巻いてもらった。

担任が私の鞄を持って医務室へ来た。

「大変だったわね…こんなに出血して…」

「ご迷惑をお掛けします」

「あなたは被害者じゃないの。頬も腫れて…酷いわ」

そこに副校長先生が戻ってきたので担任と一緒に事情を説明した。

「つまり、別に婚約者がいるサリモア嬢があなたの婚約者と交際をしているということなのですね?」

「どの程度かは分かりません。彼の周りにはいつも女性がいますから。
ただ、今回も私に言われても仕方のないことですし、トイレに追いかけてそんな話をされるのも嫌なのでヘインズ様を交えて話し合いましょうと言ったのです。私は一度も文句を言ったこともありませんし、彼の女性関係や交友関係に口出しをしたことはありません。何を言われてもどうしようもないのです。公女はそれが分かっているはずなのに…だから私は憂さ晴らしに使われていると感じてそう言いました」

「叩かれた回数を覚えていますか?」

「4回だったはずです。全て左頬を打たれました」

「よく分かりました。ジオ公爵家には連絡を入れに行かせました。しばらくここで休んでいてください」

「はい。ありがとうございます」








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一年だけの夫婦でも私は幸せでした。

クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。 フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。 フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。 更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。

「君は地味な裏方だ」と愛人を優遇するサイコパス気質の夫。〜私が去った後、商会の技術が全て私の手によるものだと気づいても、もう手遅れです〜

水上
恋愛
「君は地味だから裏方に徹しろ」 効率主義のサイコパス気質な夫は、妻であるクララの磨いた硝子を愛人の手柄にし、クララを工房に幽閉した。 彼女は感情を捨て、機械のように振る舞う。 だが、クララの成果を奪い取り、夫が愛人を壇上に上げた夜、クララの心は完全に凍りついた。 彼に残した書き置きは一通のみ。 クララが去った後、商会の製品はただの石ころに戻り、夫の計算は音を立てて狂い始める。 これは、深い絶望と、遅すぎた後悔の物語。

「最高の縁談なのでしょう?なら、かわってあげたら喜んでくれますよね!」

みっちぇる。
恋愛
侯爵令嬢のリコリスは20歳。立派な嫁きおくれである。 というのも、義母がなかなかデビューさせてくれないのだ。 なにか意図を感じつつも、周りは義母の味方ばかり。 そん中、急にデビュタントの許可と婚約を告げられる。 何か裏がある―― 相手の家がどういうものかを知り、何とかしようとするリコリス。 でも、非力なリコリスには何も手段がない。 しかし、そんな彼女にも救いの手が……?

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

処理中です...