笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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新しい友人

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うっ……まさかこうなるとは……

「ごめんなさい、メルト子爵」

「大丈夫ですよ。気持ちは分かりますから。
まあ、シャルルが来るかもしれないとは思っていましたが」

「まさかでごめんなさい」

メルト子爵をセルヴィー邸に招待したのだけど、当日、メルト子爵のすぐ後にヒューゴ様が乱入ほうもんしたのだ。そして勝手に子爵と挨拶をして同席を了承させてしまった。
私は怒ったけど、子爵が苦笑いしながら仲裁に入ってくださった。

「ジオ公子は可愛い恋人が心配なだけですから。
普通なら私はこんな風にジオ公子に個人的にお会いすることはありませんので貴重な経験になります」

なんて良い人なのかしら。

「確か子爵は俺の1歳下でしたよね」

「はい。学園でお見かけしておりました」

「ヒューゴ様が制服を着ていたんですか!?」

「当たり前だろう」

「まだ制服持ってます?」

「さあ。どうして?」

「着て欲しいなぁ なんて」

「あってもサイズが合わないよ」

「残念です」

「噂は聞いていましたが、本当に仲がよろしいのですね」

「ええ。俺はクリスティーナを愛していますから」

「っ!」

何も子爵にそんな風に言わなくたって…

気を取り直して子爵の前に置いた。

「この瓶の中の液体をこちらの容器に移してください。そして移した液体をこの道具で泡立てます。マシュマロのようになったら剃りたい場所に塗ってください。
こちらはデリケートな部分にも使用できますが、念のため腕などで試用してみて問題がなければ翌日からお使いください」

「木のブラシですか?」

「はい。空気を含ませながら泡立てください。髭剃りに役立つといいのですが」

「ありがとうございます、これは売っているのですか?」

「明日から発売します」

「宣伝は…」

「していません」

「つまり、明日早く行けば確実に買えそうですね?」

「そうなります」

「買いに行きます。丁度姉の夫が誕生日を迎えるので、贈り物にします」

「髭剃りの泡を贈っても…」

「何を仰るのですか。新商品は間違いなく当日もしくは翌日に売り切れます。数日で補充されませんよね?
そんな貴重な品を私が持っていったら、姉は瞳を輝かせて私を見直すでしょう。姉の夫は自分の妻の表情を見て“そんなにすごい店の物なのか”と思うはずです」

「お、大袈裟です。髭剃り泡にそんな」

「セルヴィー嬢、自己評価が低すぎます」


そして昼食を用意する頃には呼び方は変わっていた。

「では、ユーグ様所有の土地ではサブマ草が採れるのですか!?」

「さ、さあ。この絵に似ているというだけで、同じかは分かりません。私は詳しくないので」

ユーグ様が食堂の壁に掛けてあった、ある薬草の絵の前で “あ、トゲトゲ草だ”と呟いたことが発端だ。

サブマ草は押し草にしたものしか見たことがない。
奇跡の草という別名がある。
サブマ草は他の薬草などと合わせることで効果が増す。

薬に混ぜると効果が上がってしまうので、サブマ草を使うなら 元々の薬を少なくしてサブマ草を混ぜる。でもそれではサブマ草の無駄遣いだ。
塗り薬に混ぜることが好ましく、異国の生息地では常識だ。 
そして禁じた用途がある。毒に混ぜること。効果覿面で量が少なくともしっかり効く。
あまりの危険性に 知らない人に敢えて教えることはしない。もし教えた相手が毒に混ぜて悪用したら共犯として処罰されるからだ。
この国でサブマ草の自生は聞いたことがない。異国から持ち帰って植えて育てようとしても、鉢に移したとたんに元気がなくなり傷んでしまう。

では種はどうか。
花が咲いた後に種が残り、殻から自然に落ちるまで待つ。
異国内で点在しているということは運ばれているということ。鳥が種を飲み込んで運び、フンと一緒に落として発芽していると考えられた。ほぼ原産国内で生えているということから渡り鳥のような遠くに行く鳥ではない。
何百年と実験や自然観察の結果、ある鳥が有力となった。雄が生殖器を持っている鳥だ。交尾が失敗することもあるため繁殖は楽ではない。その雌が妊娠している間に種を食べ フンと一緒に排泄したものは発芽した。

種を国外に持ち出すには、妊娠したその雌鳥を捕まえて種を食べさせるかして 雌鳥ごと種を輸送するという方法だ。
だけどその鳥は警戒心が非常に高く、つがいの雄が側にいて、雌に近寄ろうとすると鋭い爪と嘴で攻撃してくるらしい。

つまり、簡単なのは原産国で塗り薬などにサブマ草を加えた後で持ち出すことだ。だけど効果は徐々に薄まる。1ヶ月程度でほぼサブマ草の効果は消えてしまう。奇跡の草というより幻の草の方が似合いそうだ。

異国の商人がセルヴィー領地まで来たときに押し草を見せながら教えてくれた。
その話を聞いたときはサブマ草を美容クリームに使えたらと思っていた。

「ユーグ様、行きたいです!」

「え?いいですけと…」

ユーグ様は私から目線を外してヒューゴ様を見た。

「た、たいしたおもてなしはできませんが、公子も来ていただけると嬉しいです」

「招待に応じましょう」

「ちょっと、何で偉そうなんですか。別に頼んでいませんから」

「クリスティーナ様、そんなことを仰らずに」

「ユーグ殿、招待感謝します」

私は満足気に頷いた。
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