笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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複雑な婚約者

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メルト子爵もニッコリ微笑んだ。

「化粧水、使ってます」

「え?」

「私も姉も愛用しています。私は髭剃りの後に荒れがちだった肌のために使っています。姉は化粧品も全部セルヴィー産の物に変えたら肌荒れが落ち着いたようです」

「まあ、そうでしたか」

「健康な肌の方は分からないんですよね。“肌荒れなんか気にするな”って。くだらないことみたいに言うんです。
肌に問題を抱えている人にとっては朝起きて鏡を見たり顔を洗ったりしてからずっと憂鬱で、肌に触れる度に溜息が出て、人に触れさせたくなくて見られたくなくて、夢にまで出てくるのですから。化粧をする女性は尚更、四六時中悪夢にうなされている様なものです」

「仰る通りです。
男女も年齢も身分も関係なく、辛い悩みです。
どうにかしたくてセルヴィーでは長い間取り組んで参りました。初期の頃は試作で肌を傷めてしまうこともありました。良かれと思った薬草が敏感肌には合わなかったり、組み合わせが合わなかったり。
完成したときはホッとしました」

「お願いがあるのですが」

「何でしょう」

「新製品が出るとき、教えていただけたらと思いまして。
姉は嫁ぎ先の領地におりますし、私が気付く頃には売り切れていて当分買えませんから。
早い段階で知っていたら買いに行きますので。
そういうの狡いですか?」

「何かしらのかたちでお知らせしますが内緒にしてください」

「ありがとうございます」

「……ダンスに誘ってもかまいませんか?」

「私と踊るのは迷惑ではありませんか?」

「そんなことはありません」

「では、美しい肌荒れの救世主にダンスを申し込ませてください」

差し伸べられた手の上に手を重ねた。

ユーグ・メルト子爵はダンスがとても上手だった。いろいろな話もできた。それに…

「子爵は女性慣れしていそうですね」

「そう思いますか?」

「触れ方がなんとなく」

「私には姉が2人と妹が1人いますので、散々…本当に散々練習相手をさせられたのです」

「それは…お疲れ様でした」

「3人とも無事に嫁に行ってくれたのでホッとしています。
セルヴィー嬢はどなたと練習を?」

「父と兄です」

「兄君はお会いしたことがありませんね」

「兄はいつも領地にいて、仕事に埋もれています」

「そうですか。
セルヴィー家は人任せにはしないのですね」

「はい。気になって仕方ない血でも流れているようです」

「そのおかげで救われました。
…そろそろ夢の時間は終わりの様です。
素敵な時間をありがとうございました」

「こちらこそ、ありがとうございました」

曲が終わって挨拶をした。


「クリスティーナ」

シャルル様が近寄った。

「ユーグ なぜクリスティーナと」

「変なことを聞くな。普通の男なら彼女と踊りたいと思うのは当たり前だよ。
シャルルは好き勝手に女達を相手にしているじゃないか。
…安心してくれ。シャルルと違って私と彼女は健全だ」

「シャルル様、私の方からメルト子爵にダンスをお願いしたのです」

「君から?」

「はい。お友達になって欲しいと思っています」

「え!?」

「セルヴィー嬢、本当ですか?嬉しいです」

「約束は守りますね」

「お待ちしてます。あ、知り合いが呼んでいるので失礼します」

メルト子爵が去ると、シャルル様の尋問が始まった。

「1人でいらしたご夫人をお誘いしなくていいんですか」

手を引いてテラスに出たシャルル様に促した。

「ユーグとは何で」

「何でとは?」

「友人になろうだなんて」
 
「感じの良い方ですし、変な下心を感じませんし」

「だからって」

「悪い人なんですか?」

「そうじゃないけど」

「シャルル様が仰ったのではありませんか。シャルル様の縁のある方と友人になれたらいいって」

「“令嬢”と言ったはずだ」

「まさか異性だから駄目とか仰るのですか?」

「……」

「異性のをたくさんお持ちのシャルル様が仰るのですか?」

「だが、」

「シャルル様はご自身の自由が欲しくて私にも自由を約束したのではありませんか?」

「っ!」

「最近のシャルル様はおかしいです。
いろいろあって混乱なさっているのですか?
私はヘインズ夫人の側に行ってみますから、シャルル様はお過ごしください」

「クリスティーナっ」

よく分からないシャルル様より、今日はヘインズ夫人の方が大事。このパーティは夫人の誕生日を祝うものだから。
ヘインズ夫人のところへ行って、一緒にご夫人方とお話をして、終わりの時間に帰った。
終わる頃に迎えにくるよう使用人に言っておいたのでセルヴィー家の馬車は到着していた。
問題なくサッと帰ることができた。
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