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変わりゆく婚約者
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おかしい。
「フレイル…近い」
「す、すみません」
サッとシャルル様が私とフレイル様の間に入ったことでフレイル様の手が離れた。
「クリスティーナは忙しい。学園もあるからパーティの出席は難しいだろう。
クリスティーナが行くと言うのなら僕が連れて行く」
「すみません。ではご都合がよろしければということで招待状を送ります」
「分かりましたわ」
姉弟が私達から離れるとシャルル様は私の左手を握った。
「クリスティーナ、何でも招待を受けては駄目だ。君の友人絡みの招待でも、僕の縁の招待でも。
今は学園に通い心身を休める日を確保して、余った時間を人と会う時間やパーティなどに回すべきだ。
女性は支度から男とは手間暇が違うし疲労度も違うだろう?
僕の縁からの誘いには、僕が決めているからと答えを濁せばいい。どうしても君が出席したいものだけ受けてくれ。濁したものは僕から断りを入れるから」
「はい」
「僕の誘いも同じと言いたいところだが、ちょっとだけ優先してくれると嬉しい」
「…分かりました」
「僕の友人か親戚で君と純粋に仲良くなれる令嬢がいればいいのだが。僕に妹でもいたら仲良くなっただろうか」
「シャルル様の妹ですか?
シャルル様に似た妹だとしたら、こんな会話どころではないでしょうね。令息に限らず男性達からの恋慕に女性達からは羨望と嫉妬。ヘインズ家総出で守らねばならない多忙な日々になったはずです」
「そうか?…ハハッ、そうかもな」
「ふふっ」
「あ、母上達のダンスが始まるな。近くに行こう」
握った手をそのまま引かれた。
側でヘインズ夫妻のダンスを見ていた。その間も手は離れない。どうしていいのか分からない。繋いだ手を自然に離す方法を知らないし、初めてのことに手から緊張がどんどん生まれていく。手袋をしていなかったら汗で大変なことになっていただろう。
彼の友人達に向ける自然な笑顔を私に向けられたのも初めてで…
「僕達の番だ、行こう」
中央に立ち 向き合うと私をしっかりと見た。
シャルル様の右手が私の腰に触れ、自分の方へ引き寄せた。とても近い…近過ぎて間違いなく足を踏みそう。いつもなら、肩胛骨に触れ これでもかと距離を取るのに。
そしていつもなら目も合わさないのに、しっかりと私を見つめている。その眼差しは柔らかくあたたかい。
私はいつも通り、視界に入る周囲と彼のタイブローチに目線を落とした。
演奏が始まると腰にあった彼の手は肩胛骨へ移動した。
その隙に もう少し距離を取りたくて離れると引き戻される。
「クリスティーナ」
シャルル様の顔を見上げると 見たこともない様な表情をしていた。
え?何??
寂しそうな…悲しそうな…そんなわけないのに。
「何で離れようとするんだ?」
え?
「足を踏んでしまいます」
「踏んでもいいから」
「そんなわけには」
「ちゃんとパートナーの僕を見て。
ダンスが不安なら 休みの日にでもダンスの練習に付き合うよ」
「さすがに近過ぎるだけですので」
「…次の長期休暇はうちの領地に来ないか?」
「次の長期休暇はセルヴィー領に行く予定です。仕事関係の視察もありますし、新商品の話も詰めていかないといけませんので」
「え?」
「今のセルヴィーの新商品は私の発想や意見を元にして父と兄が現実にしているのです。
そのうちの1つが美容化粧品部門です。
王都に出しているお店は2種類あって、1つは肌に悩みを抱えた人に寄り添った商品を展開しています。領地で長い間開発してもらったのです。
今回は…ちょっと言えませんけど、試作品が出来たので、試用しながら改良をしていきます」
「頑張っていたんだね」
「シャルル様も学園を卒業したのですからヘインズ伯爵のお仕事をお手伝いしたり、少しずつ引き継いでいらっしゃるのですよね?」
「そ、そうだね」
「シャルル様、あまり無理をなさらなくて大丈夫です」
「え?」
「サリモア公女のことがあったから、叱責を受けたのですよね?
私は大丈夫ですから無理はなさらないでください」
「無理なんかじゃ、」
「次は夫人ですね。主役を待たせてはいけませんから どうぞ行ってください」
曲の終わりとともにシャルル様から離れた。
グラスを取って喉を潤していると一度会ったことのある方が話しかけてきた。
「お久しぶりです、セルヴィー嬢」
「お久しぶりです、メルト子爵」
彼は父親が急逝して、若き子爵となった方だ。
理由までは知らないけど最近婚約を解消している。
ヘインズ伯爵家と長く交流のある家門だ。
「少し雰囲気が変わリましたね」
「そうですか?」
「今の方が素敵です」
「ありがとうございます」
「まさかシャルルしか見ていなかった貴女がジオ公子と交際するとは思いませんでした」
「……」
「不快な話でしたら謝罪します」
「いいえ。
仰る通りですから」
ヒューゴ様のこと、みんな知っているのね。
私はニッコリ微笑んだ。
「フレイル…近い」
「す、すみません」
サッとシャルル様が私とフレイル様の間に入ったことでフレイル様の手が離れた。
「クリスティーナは忙しい。学園もあるからパーティの出席は難しいだろう。
クリスティーナが行くと言うのなら僕が連れて行く」
「すみません。ではご都合がよろしければということで招待状を送ります」
「分かりましたわ」
姉弟が私達から離れるとシャルル様は私の左手を握った。
「クリスティーナ、何でも招待を受けては駄目だ。君の友人絡みの招待でも、僕の縁の招待でも。
今は学園に通い心身を休める日を確保して、余った時間を人と会う時間やパーティなどに回すべきだ。
女性は支度から男とは手間暇が違うし疲労度も違うだろう?
僕の縁からの誘いには、僕が決めているからと答えを濁せばいい。どうしても君が出席したいものだけ受けてくれ。濁したものは僕から断りを入れるから」
「はい」
「僕の誘いも同じと言いたいところだが、ちょっとだけ優先してくれると嬉しい」
「…分かりました」
「僕の友人か親戚で君と純粋に仲良くなれる令嬢がいればいいのだが。僕に妹でもいたら仲良くなっただろうか」
「シャルル様の妹ですか?
シャルル様に似た妹だとしたら、こんな会話どころではないでしょうね。令息に限らず男性達からの恋慕に女性達からは羨望と嫉妬。ヘインズ家総出で守らねばならない多忙な日々になったはずです」
「そうか?…ハハッ、そうかもな」
「ふふっ」
「あ、母上達のダンスが始まるな。近くに行こう」
握った手をそのまま引かれた。
側でヘインズ夫妻のダンスを見ていた。その間も手は離れない。どうしていいのか分からない。繋いだ手を自然に離す方法を知らないし、初めてのことに手から緊張がどんどん生まれていく。手袋をしていなかったら汗で大変なことになっていただろう。
彼の友人達に向ける自然な笑顔を私に向けられたのも初めてで…
「僕達の番だ、行こう」
中央に立ち 向き合うと私をしっかりと見た。
シャルル様の右手が私の腰に触れ、自分の方へ引き寄せた。とても近い…近過ぎて間違いなく足を踏みそう。いつもなら、肩胛骨に触れ これでもかと距離を取るのに。
そしていつもなら目も合わさないのに、しっかりと私を見つめている。その眼差しは柔らかくあたたかい。
私はいつも通り、視界に入る周囲と彼のタイブローチに目線を落とした。
演奏が始まると腰にあった彼の手は肩胛骨へ移動した。
その隙に もう少し距離を取りたくて離れると引き戻される。
「クリスティーナ」
シャルル様の顔を見上げると 見たこともない様な表情をしていた。
え?何??
寂しそうな…悲しそうな…そんなわけないのに。
「何で離れようとするんだ?」
え?
「足を踏んでしまいます」
「踏んでもいいから」
「そんなわけには」
「ちゃんとパートナーの僕を見て。
ダンスが不安なら 休みの日にでもダンスの練習に付き合うよ」
「さすがに近過ぎるだけですので」
「…次の長期休暇はうちの領地に来ないか?」
「次の長期休暇はセルヴィー領に行く予定です。仕事関係の視察もありますし、新商品の話も詰めていかないといけませんので」
「え?」
「今のセルヴィーの新商品は私の発想や意見を元にして父と兄が現実にしているのです。
そのうちの1つが美容化粧品部門です。
王都に出しているお店は2種類あって、1つは肌に悩みを抱えた人に寄り添った商品を展開しています。領地で長い間開発してもらったのです。
今回は…ちょっと言えませんけど、試作品が出来たので、試用しながら改良をしていきます」
「頑張っていたんだね」
「シャルル様も学園を卒業したのですからヘインズ伯爵のお仕事をお手伝いしたり、少しずつ引き継いでいらっしゃるのですよね?」
「そ、そうだね」
「シャルル様、あまり無理をなさらなくて大丈夫です」
「え?」
「サリモア公女のことがあったから、叱責を受けたのですよね?
私は大丈夫ですから無理はなさらないでください」
「無理なんかじゃ、」
「次は夫人ですね。主役を待たせてはいけませんから どうぞ行ってください」
曲の終わりとともにシャルル様から離れた。
グラスを取って喉を潤していると一度会ったことのある方が話しかけてきた。
「お久しぶりです、セルヴィー嬢」
「お久しぶりです、メルト子爵」
彼は父親が急逝して、若き子爵となった方だ。
理由までは知らないけど最近婚約を解消している。
ヘインズ伯爵家と長く交流のある家門だ。
「少し雰囲気が変わリましたね」
「そうですか?」
「今の方が素敵です」
「ありがとうございます」
「まさかシャルルしか見ていなかった貴女がジオ公子と交際するとは思いませんでした」
「……」
「不快な話でしたら謝罪します」
「いいえ。
仰る通りですから」
ヒューゴ様のこと、みんな知っているのね。
私はニッコリ微笑んだ。
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