笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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信用

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【 ヒューゴの視点 】

セルヴィー領に到着し、クリスティーナは忙しそうにしながら俺の相手もしてくれていた。
こうして側にいると クリスティーナが事業をしていることを実感する。

セルヴィー伯爵夫人は膝の上にティアラを乗せて暇そうにしているが、実際はクリスティーナが席を外すとクリスティーナを補っている。
クリスティーナの発想を彼女の兄が実現させ、夫人がサラッと助けていた。

クリスティーナから建国記念の限定品のデザインを描かせると報告を受けた夫人は、クリスティーナが席を外すと侍従に指示を出した。

「今回は特別よ。繊細な細工と頑丈さを共存させて。
そして持ち主の名前を入れるときに、いずれ別の文字を足せるようにスペースを確保して欲しいの。いつかその持ち主は娘か嫁に渡すわ。そのときに贈る相手の名を追加できるようにして。
そして画家に製品を描かせて店に飾って。建国記念の限定品だという記録を残すのよ」

「かしこまりました」

セルヴィー家では侍女は2人しかいない。夫人や令嬢のサポートをする者より、事業について指示を出せる侍従を側に置く。
“うちはスケジュール管理も自分でやるし、優秀なメイドで事足りるし、仕事のことを話してパッと理解する男の侍従の方が助かるのよ。補佐達だけじゃなくて侍従もある程度事業の勉強をさせるの。1人侍従から補佐に昇格した子もいるのよ”と夫人が話していた。

その体制はクリスティーナが事業のヒントを口にするようになってからだと言っていた。
セルヴィー家にとって、事業は生き甲斐でもあるのかもしれない。


まだメルト子爵の別荘地で、セルヴィー家お抱えの研究者達と一緒にサブマ草を調べているセルヴィー伯爵から手紙が届いた。

それをきっかけにセルヴィー家の長男に提案をした。

「もし、他の土地で栽培が可能でしたら、ジオ家の領地で栽培をさせてくれませんか」

「何故ですか?」

「セルヴィー領はただでさえ、希少鳥の繁殖に成功させ羽毛を集め、世界一といっていい蚕を育てて絹を作っています。
これ以上狙われるものを集めるとセルヴィー家が危険だからです。ジオ家うちを狙う馬鹿は今のところいませんから」

彼はじっと俺を見据えた。

「クリスティーナが心変わりをしたときに枷になるようなことはしたくないですね。
確かにを味方に付けることは心強いですが、進む方向が異なった場合には その爪と嘴はセルヴィーわれらの方へ向くのではありませんか?」

「そのようなことにはなりません」

「クリスティーナがあのシャルルバカと結婚しても?」

「…その時が来たとしても」

「公子が心変わりをして、他の女を愛しても?」

「あり得ません」

「あり得ると思っています。私はセルヴィー以外信用していません。クリスティーナは無価値な男に惚れて苦労していますが、クリスティーナの好きにさせます。それはいずれ私の手元に帰ってくるまでの人生経験だと思っているからです。
それに婚約させたのは父ですからね。父は娘可愛さにシャルルの本性を探らずに事を急いでしまった。
これは父と私の落ち度です。父がコソコソ縁談を進めていると気付けなかった私も同罪です。

どう考えてもシャルルより公子がいいですけど、セルヴィーとしてはジオ家よりヘインズ家の方が何かあったときに制裁しやすいのです。
正直、公子はその内飽きると思っていました。
クリスティーナが側に置くことを許すのなら 私は黙認して、クリスティーナの味方でいようと思っただけです」

「どうしたら俺は信用を得られるのでしょう」

「大公女は頑張ったみたいですね。
最期は骨と皮という表現が相応しい状態だったみたいですね。
多分大公女本人は殺して欲しいと懇願したでしょうが、言葉が話せないことをいいことに周りの人間が必死に生かしたのでしょう。1日でも長く苦痛を与えたいとは、どれほど憎まれていたのでしょうね。
今月の初めに送られてきた絵です」

侍従が絵を広げて俺の前に置いた。
死ぬ間際に絵師に描かせたのだろう。餓死した女を見たことは初めてではないが ここまでではなかった。
しかも全裸にして描かせていた。

「傑作品ですね」

クリスティーナの前には出せない絵だな。

「おかげさまで傑作品をいただきました。これも公子のおかげです。クリスティーナを守ってくださり感謝しています。今の公子に好感を持っていますが、人の気持ちなど保証はありません。そこに事業を混ぜるのは不安です。
公子がクリスティーナを好きなうちはいいのです。私の心配は公子の気持ちが冷めたとき、もしくはクリスティーナ以上の女が現れたときのことを心配しているのです」

「では、これでどうでしょう」

紙をもらい、約束事を書いた。

「…守ることができるのですか?」

「父と陛下から署名をもらってきます」

「では、父がサブマ草の対策を見つけるまでに提出してください」

「分かりました」

「もう一つ。婚姻前にクリスティーナを妊娠させないでくださいね」

「もちろんです」

「もしも結婚するときはティアラも一緒ですよ」

「もちろんです」

「ご主人様、お嬢様がこちらへいらっしゃいます」

窓の外を見ていたセルヴィー家の侍従が、夫人と庭に出ていたクリスティーナが屋敷に入るのを見たようだ。

「では、クリスティーナの元へ行ってください」

「分かりました」


廊下に出てクリスティーナ達の元へ向かった。

前回セルヴィー領ここに来たときは本性を見せなかったが、今回セルヴィーの事業に関わりたいと言ったら豹変した。
セルヴィー伯爵とタイプが違ったとは…。

「ヒューゴ様、お茶でもいかがですか」

「はい、義母はは上」

さっきの約束事を清書して父上と陛下を説得して署名してもらわねば。

いわゆる貞操と忠誠の誓いだ。
クリスティーナ以外の女に好意を寄せたり身体的接触を持ったり、クリスティーナを冷遇したり、サブマ草を含む知り得たことを漏らしたり不利益をもたらすことをした場合、ジオ家の資産の3分の1を慰謝料として支払い、サブマ草を没収して植えていた土地を焼き払い、俺は貴族社会から姿を消すという内容だ。

守る自信があるが、誤解という言葉が存在する限り、今まで以上に気をつけなければならない。

だがこれは見方を変えれば、守りさえすれば公認ということだ。後はクリスティーナに愛を伝えながら彼女がシャルル・ヘインズを見限ってくれるのを待つだけ。

だが、さっき忠告された。

“卒業したら結婚式の話が出てくるでしょう。多少は時間を稼げますがクリスティーナが望めばあまり時間はなくなります”

つまり、口説くなら早くしろということだ。
確かに卒業と結婚に向けて時は流れていく。それもあってクリスティーナとのスキンシップも進めた。幸いにも恥ずかしさの抵抗はあっても嫌悪の抵抗はない。クリスティーナには申し訳ないが あいつが何か粗相をしてくれたらいいのにと願ってしまう。




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