笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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ヒューゴ先生

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「あの先生は満点を取らせたくないから姑息な手を使うんだ」

「姑息な手?」

「わずかに名前を変えるんだ。例えばヒューゴ・ジオを虜にしたセルヴィーの光はクリスティー・セルヴィーである」

「うわぁ」

「366年を368年にしたり」

「酷い」

「小難しい長い文の中に潜ませて、間違いを探させたりするんだ。最後の最後にそれが出てくると時間がなかったりして焦ってわずかな間違いが見つけられない。6と8と3は似ているから パッと見で勝手に見たい数字に脳が認識してしまう。結局間違いが見つからずテスト時間終了になる。パッと見て何の文だか把握したら、隠れていそうなところが分かれば先に見ればいい。名前や数字だ。それが合っていたら文章を区切りながら読み直すんだ。
俺の時は隣国の王の名が微妙に違っていたり、地名が微妙に違っていたり、戦争のあった年の3が8になっていた。
ゼインはそれに引っかかっていたよ」

最終学年では歴史の先生が変わって、長期休み明けのテストの傾向が分からずにいたけど、ヒューゴ様が勉強を教えに来てくれた。
その先生は書籍を出すほど歴史に精通していて、授業を聞くだけなら興味深い話が聞けて好きだった。
だけどテストとなるとそれが逆に出題予想を困難にしていた。

「ふふっ」

「なんだ」

「初めてヒューが歳上に見えました」

「酷いな」

コトッ

私からペンを取り上げ 机の上に置いたヒューゴ様は私の髪に手を差し込んで頭に添えると唇を合わせた。

優しくて、でも私を逃す気のないキス。その瞳には熱が籠っていて、彼の体温と吐息と鼓動も欲情を示している。5つも歳上の男性だもの、健康であればはず。強い理性で最後の一線は越えてこない。いつまで我慢してくれるのか。我慢できなくなったら一線を越えるの?それとも他の令嬢と…。

ヒューゴ様の膝の上に座り、腕を首に回して抱き付いた。

「ティナ?」

抱きしめ返すというよりは心配そうに私の背中をさすった。

「何かあったのか?誰かに虐められたのなら教えてくれ」

「ヒューゴ・ジオに虐められているの」

「は?」

「私の理性を虐めてくるの」

「……」

ヒューゴ様に火をつけたらしい私は、そのまま翻弄された。一線を超えない擬似の交わりのようなことをしながら彼は懇願する。

“ティナが欲しい”

今では“いや”という代わりに無言を貫く。
嫌とは思い切れないから無言でヒューゴ様に押し付けている。超えたら彼のせいにできるから。
きっと熱にうなされて正常な判断ができていないのだと自分に言い聞かせて。



長期休暇が明け、登校した。

エルザは自信に満ちているように見え、ジネットは大人の雰囲気を出すようになった。

「どうしたの?公子とケンカでもした?」

「ううん」

「浮かない顔をしてどうしたの?」

「2人に置いていかれそうで」

エルザとジネットは顔を見合わせた。

「まったく…長期休暇で寂しかったのね」

「一昨日夜会で会ったのに、寂しがり屋だったのね」

2人は私を挟み込むように抱きしめてくれた。

「よしよし、私の可愛いティナ」

「大丈夫よ、安心してね、私の可愛いティナ」

「そこのご令嬢方、早く教室に向かいなさい」

「「は~い」」

馬車昇降場でイチャイチャしていた私達を当番の先生が、邪魔だから早く行けと促した。

教室に行くと、視線が突き刺さる。
確かにいつもこの人は私を監視するように見ていたけど、いつもと視線の種類が違うように感じた。

今日の授業は午前中のみ。終わると帰り支度をした。

「また明日ね」

「うん。エルザもジネットも気を付けて」

2人が教室から出ると私の席の前に誰かが立った。
見上げるとアマリア・ビクセン伯爵令嬢だった。視線の主だ。彼女は特待生で学園に通っていると聞いたことがある。
財政状況が悪く学費の捻出がままならない貴族で、学力がある者を学費免除で入学させる制度だ。ただし、問題を起こしたりテストで上位10位以内に入れないと即退学処分になる気の抜けない立場の人だ。
焦茶色のクセのある髪にそばかす肌、少し赤みがかかった茶色の瞳で体は細い。

「あの、何か?」

「私、シャルル様と結ばれましたの」

「…そうですか」

「とても情熱的に求めてくださって。シャルル様のお気持ちをしっかりと受け止めましたわ」

優越感といった笑みを浮かべて彼女は下腹部に手を当てた。





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