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おまえじゃない
【 シャルルの視点 】
メルト子爵邸に父上と訪問をした。
疲れた様子のユーグが応接間で応対した。
父「一体セルヴィー家と何をしているんだ」
ユ「特には。土地の売買をしただけですよ」
父「ユーグ、長い付き合いじゃないか。正直に話してくれ」
ユ「借金の担保として受け取った土地と建物をセルヴィー伯爵が引き取ってくれただけです」
父「何もなくして引き取るわけがない。何があるんだ」
ユ「確かにメルト家とヘインズ家は長い付きあいではありますが何でもペラペラと話せるわけが無いではありませんか。特に所有権の移った土地のことを軽々しく話せませんよ」
父「見に行けば分かるか?」
ユ「ジオ公爵家を敵に回したいのなら調べて行ってみればどうですか。
ジオ家を敵に回すということは王妃殿下も漏れなく敵に回しますけど、大丈夫ですか?」
父「っ!」
僕「ユーグ、本当にクリスティーナとは何もないんだな?」
ユ「彼女とは友人になっただけだ。それに公子がいるのにどうこうなれるわけがない」
僕「……」
父「ジオ公子とクリスティーナはそんなに仲が良いのか」
ユ「ええ。クリスティーナ様は公子に心を開いていますし、公子は彼女を溺愛していますよ。クリスティーナ様はとても魅力的な女性ですから当然でしょう」
父「はぁ…」
メルト邸から戻った後は、クリスティーナとの関係を修復しろと叱責を受けた。
クリスティーナはまだいくつかパーティや夜会に誘われていたはず。僕を誘えばエスコートするし話もできる。だが彼女からは一切誘うことはしない。僕がそうするように最初に言ったから。
僕を見つめるクリスティーナの眼差しに鬱陶しさを覚えて見るなと言った。今では彼女の瞳にはあの頃のような熱を感じないし見もしない。
代わりにジオ公子を見つめているとでも言うのだろうか。
彼女は思ったより仕事を重視する人だと知った。最近まで貴族令嬢の暇つぶしか好奇心を満たすために、セルヴィー家が彼女を少し関わらせているのだと思っていた。だけどあの気迫はそうではない。
王都に出ている店2件はかなりの人気店で、今では新商品の発売は店頭に並んだその日中に完売して入荷待ちとなると令嬢達が話していた。母上も“クリスティーナに気を利かせて持って来させるように言いなさい”などと僕に言っていた。だがそんな物乞いみたいな真似を彼女にするのは嫌だったので、婚約したての頃は彼女が“夫人にどうですか”と言っていたのを断った。煩わしい関係になるきっかけを与えたくなかったから。
もし、受け入れていたらそれをきっかけにして 屋敷に訪ねてきていたはずだ。だがやはり屋敷に来られたら鬱陶しかったはずだ。
今はもう彼女を鬱陶しいなどと感じない。
その瞳に映り込みたいと思うし、笑顔を見せて欲しと思っている。以前は僕の瞳の色のドレスを着ることに苛立ちが募った。今ではせめて青い宝石でもリボンでもいいから身に付けて欲しいと思っている。
ダンスのとき、彼女はギリギリまで距離を置いた。
それは今まで僕がとっていた距離だ。なのに今はその距離に不満だし胸を針で刺されたような痛みを感じた。だから引き寄せた。
クリスティーナを抱きしめたらどんな感じだろうか。他の令嬢達のように何も感じないのだろうか。令嬢達を抱きしめるのは寝るための通過儀礼に過ぎない。キスでさえも。
クリスティーナとキスをしたらはっきりと分かるだろうか。
長期休暇は残りわずか。クリスティーナに一緒に過ごさないかと手紙を出した。
だけど招待も残っているし勉強もしなくてはならないと返事が返ってきた。
僕が真面目に勉強をしていたらクリスティーナの隣に座って教えただろうけど、クリスティーナは学年の優秀な生徒が集まるクラスにいるし、僕は成績が良くなかったから、教えると言って隣に座ってもいざ問題を見たら解けない可能性もある。そんな恥ずかしい事態は避けたい。
「こちらの箱と一緒にお手紙が届きました」
執事が持ってきた手紙を先に受け取り 封筒の裏を見た。
“アマリア・ビクセン”
「箱を開けてくれ」
開けると、一番上にハンカチが3枚乗っていてあまり上手くない刺繍がなされていた。
ハンカチの下には紙が敷いてあり、取り除かせるとクッキーが敷き詰められていた。
封筒を開けて手紙を読んだ。
“愛するシャルル様
いかがお過ごしでしょうか。
一昨日のお手紙のお返事をいただけず
寂しい思いをしております。
あの夜、激しく私を抱いてくださったこと
とても嬉しく思っております。
シャルル様に純潔を捧げることができて
本当に幸せです。
次はもっとシャルル様の熱い思いを
受け止めることができると思います。
早くお会いしたいです。
シャルル様を思いハンカチに刺繍をしました。
クッキーも私の手作りです。
私のことを思い浮かべながら
お召し上がりください。
愛を込めて
あなたのアマリアより”
グシャ
どうしたらこのような勘違いができるんだ!?
血の気が引くような寒気と鳥肌に襲われた。
“僕は君を愛していない。
一夜の過ちだ。
二度と関わらないでくれ”
そう返事を出したのに また数日後、愛の言葉とともに手作りのクッキーが送られてきた。
捨てずに送り返して、以降は受取拒否をすることにした。
メルト子爵邸に父上と訪問をした。
疲れた様子のユーグが応接間で応対した。
父「一体セルヴィー家と何をしているんだ」
ユ「特には。土地の売買をしただけですよ」
父「ユーグ、長い付き合いじゃないか。正直に話してくれ」
ユ「借金の担保として受け取った土地と建物をセルヴィー伯爵が引き取ってくれただけです」
父「何もなくして引き取るわけがない。何があるんだ」
ユ「確かにメルト家とヘインズ家は長い付きあいではありますが何でもペラペラと話せるわけが無いではありませんか。特に所有権の移った土地のことを軽々しく話せませんよ」
父「見に行けば分かるか?」
ユ「ジオ公爵家を敵に回したいのなら調べて行ってみればどうですか。
ジオ家を敵に回すということは王妃殿下も漏れなく敵に回しますけど、大丈夫ですか?」
父「っ!」
僕「ユーグ、本当にクリスティーナとは何もないんだな?」
ユ「彼女とは友人になっただけだ。それに公子がいるのにどうこうなれるわけがない」
僕「……」
父「ジオ公子とクリスティーナはそんなに仲が良いのか」
ユ「ええ。クリスティーナ様は公子に心を開いていますし、公子は彼女を溺愛していますよ。クリスティーナ様はとても魅力的な女性ですから当然でしょう」
父「はぁ…」
メルト邸から戻った後は、クリスティーナとの関係を修復しろと叱責を受けた。
クリスティーナはまだいくつかパーティや夜会に誘われていたはず。僕を誘えばエスコートするし話もできる。だが彼女からは一切誘うことはしない。僕がそうするように最初に言ったから。
僕を見つめるクリスティーナの眼差しに鬱陶しさを覚えて見るなと言った。今では彼女の瞳にはあの頃のような熱を感じないし見もしない。
代わりにジオ公子を見つめているとでも言うのだろうか。
彼女は思ったより仕事を重視する人だと知った。最近まで貴族令嬢の暇つぶしか好奇心を満たすために、セルヴィー家が彼女を少し関わらせているのだと思っていた。だけどあの気迫はそうではない。
王都に出ている店2件はかなりの人気店で、今では新商品の発売は店頭に並んだその日中に完売して入荷待ちとなると令嬢達が話していた。母上も“クリスティーナに気を利かせて持って来させるように言いなさい”などと僕に言っていた。だがそんな物乞いみたいな真似を彼女にするのは嫌だったので、婚約したての頃は彼女が“夫人にどうですか”と言っていたのを断った。煩わしい関係になるきっかけを与えたくなかったから。
もし、受け入れていたらそれをきっかけにして 屋敷に訪ねてきていたはずだ。だがやはり屋敷に来られたら鬱陶しかったはずだ。
今はもう彼女を鬱陶しいなどと感じない。
その瞳に映り込みたいと思うし、笑顔を見せて欲しと思っている。以前は僕の瞳の色のドレスを着ることに苛立ちが募った。今ではせめて青い宝石でもリボンでもいいから身に付けて欲しいと思っている。
ダンスのとき、彼女はギリギリまで距離を置いた。
それは今まで僕がとっていた距離だ。なのに今はその距離に不満だし胸を針で刺されたような痛みを感じた。だから引き寄せた。
クリスティーナを抱きしめたらどんな感じだろうか。他の令嬢達のように何も感じないのだろうか。令嬢達を抱きしめるのは寝るための通過儀礼に過ぎない。キスでさえも。
クリスティーナとキスをしたらはっきりと分かるだろうか。
長期休暇は残りわずか。クリスティーナに一緒に過ごさないかと手紙を出した。
だけど招待も残っているし勉強もしなくてはならないと返事が返ってきた。
僕が真面目に勉強をしていたらクリスティーナの隣に座って教えただろうけど、クリスティーナは学年の優秀な生徒が集まるクラスにいるし、僕は成績が良くなかったから、教えると言って隣に座ってもいざ問題を見たら解けない可能性もある。そんな恥ずかしい事態は避けたい。
「こちらの箱と一緒にお手紙が届きました」
執事が持ってきた手紙を先に受け取り 封筒の裏を見た。
“アマリア・ビクセン”
「箱を開けてくれ」
開けると、一番上にハンカチが3枚乗っていてあまり上手くない刺繍がなされていた。
ハンカチの下には紙が敷いてあり、取り除かせるとクッキーが敷き詰められていた。
封筒を開けて手紙を読んだ。
“愛するシャルル様
いかがお過ごしでしょうか。
一昨日のお手紙のお返事をいただけず
寂しい思いをしております。
あの夜、激しく私を抱いてくださったこと
とても嬉しく思っております。
シャルル様に純潔を捧げることができて
本当に幸せです。
次はもっとシャルル様の熱い思いを
受け止めることができると思います。
早くお会いしたいです。
シャルル様を思いハンカチに刺繍をしました。
クッキーも私の手作りです。
私のことを思い浮かべながら
お召し上がりください。
愛を込めて
あなたのアマリアより”
グシャ
どうしたらこのような勘違いができるんだ!?
血の気が引くような寒気と鳥肌に襲われた。
“僕は君を愛していない。
一夜の過ちだ。
二度と関わらないでくれ”
そう返事を出したのに また数日後、愛の言葉とともに手作りのクッキーが送られてきた。
捨てずに送り返して、以降は受取拒否をすることにした。
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