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天にお任せします
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姿見にうつる自分を見つめた。質素過ぎず飾りも控えめだけど品も良く。髪結いもすっきりとハーフアップにして髪留めは質素に見せた高級品だ。
「ジオ公爵家の馬車が到着しました」
「今行くわ」
セルヴィー産の絹糸で編んだレースの手袋をはめて外に出た。馬車から降りたヒューゴ様はハンドキスをして私を馬車に乗せた。
「緊張しなくていいよ」
「ヒューにとっては親戚でも私は違いますし国王陛下ですからね?」
「俺がいるから大丈夫だ」
何故か国王陛下から呼び出し状が届いてしまい、ヒューゴ様に何か知っているか問い合わせた。
その結果、ヒューゴ様が付き添ってくれることになった。
何か言いたそうに見えるけど気のせいだろうか。
到着すると手を繋いで王宮内を進む。
案内に導かれ行きついた先は応接間だった。
既にお茶の準備が進んでいて、国王陛下が茶葉をどれにするか悩んでいるところだった。
「こっちの茶葉にしてくれ」
「かしこまりました」
「よく来たな。ヒューゴ、クリスティーナ嬢、座ってくれ。身内の茶の席だ、挨拶はいらないよ。ほら、早く座りなさい」
「分かりました」
「し、失礼いたします」
「まったく…ちょっと呼び出したくらいで慌てすぎだろう」
え?
「な、なんでバラすのですかっ」
「やれ、“王子の妻にする気じゃないのか”とか“他所の王族の縁談を受けたのか”とか」
「止めてくださいっ」
ヒューゴ様を見ると真っ赤になっていた。
「ぷっ…ふふっ」
「ティナ?」
「ふふふっ」
「そう睨むな。クリスティーナ嬢が笑顔になって良かったじゃないか」
「まぁそうですけど」
「セルヴィー家は、また特別な存在になろうとしているのだな」
「何のことでしょうか」
「奇跡の草だよ」
「…奇跡ですか」
「そんなに怖い顔をしないでくれ。クリスティーナ嬢にも意外な一面があるのだな。
あれは祖父の代で栽培を試みようと持ち帰ったことがある。だが現地で忠告された通り持ち帰る途中で枯れたり腐ってしまって断念した。まだ子供だったが祖父ががっかりしたのを鮮明に覚えているよ。まさか国内で生えていたとは」
「……」
「セルヴィー家はあれをどう使うつもりなのだ?」
「ほんの少し効果のある美容品にする予定ですが、繁殖できなければ禍根を残さないよう焼き払うかもしれません」
「万能薬にして城でも建てられそうな値段をつけて売らないのか?」
「あの草は奇跡の草などという別名が付いていますが、それは人間の勝手な希望です。本当は奇跡など起こせません。失くなった腕を生やせるわけでもありません。どんな病気も治せるわけでもありません。きっと陛下はご存知のはずです」
「ハハッ 試すようなことを言ったな。だがそれでも大金を払って欲しがる者も多いだろう」
「仰る通り、話が漏れたら大変なことになります。ですから内密に動いていますし場合によっては焼き払うつもりです。
何を使っているかは明かさず ほんのちょっと効き目のある美容品として売り出すつもりです。
セルヴィーは十分稼いでいますので、混乱を招いたり領民や家族を危険に晒してまであの草を売り出さなくてもいいのです」
「もし、繁殖に成功して大量に採れることになったら教えてくれないだろうか」
「陛下。今回のように見張っているのでしたら連絡は不要ではありませんか?」
「そう言うな。セルヴィー家が何かするとは思っていない。だが影響力が広い分、知っておかねばならないのだ。狙われたり騙されたりしては困るからな」
他国との繋がりのことを仰っているのね。
「かしこまりました」
「本題だが、ヘインズ家の息子が令嬢を妊娠させたというのは本当なのか?」
「それはまだ分かる段階ではありません」
「もしクリスティーナ嬢が望むなら処置をしてもいいのだぞ?」
「………?」
陛下が何を仰っているのかわからない。
「ティナ」
ヒューゴ様が耳打ちをして意味を教えてくれた。
「っ!! 過分なるご芳志はいただけません」
「そうか。気が変わったら言ってくれ。早いほうがいい」
「はい、感謝いたします」
「聞きたいことは聞いたから、後はヒューゴとのことを聞かせてくれ」
「はい」
びっくりした。
陛下の“処置”とは堕胎のことだった。
この国では堕胎の処置は自由ではない。当主が望んだときだけだ。私でいえばセルヴィー伯爵。もし私が嫁いでいたらヘインズ伯爵。アマリア・ビクセン嬢ならビクセン伯爵だ。
望まぬ妊娠が判明した場合、当主に泣き付くしかない。
もちろん対抗する手段はある。事故や病などによる流産。だけどこれは身体に負担がかかり過ぎる。加減なんか分かるはずもなく、死んだり後遺症が残ったりする例もある。失敗することもある。
犯罪者として捕まるリスクを承知で堕胎薬を入手する者もいる。これは伝手がないと駄目で、間に入る者が通報すれば終わりだ。
そして最後は国王陛下の命による堕胎。陛下はこの事を提案してくださったのだ。
だから望まぬ妊娠を避けるために避妊薬を使ったり、女性の中で果てることを避けるのだ。
だけどシャルル様は彼女に種を残した。それは明確な意思表示だと思う。
「ジオ公爵家の馬車が到着しました」
「今行くわ」
セルヴィー産の絹糸で編んだレースの手袋をはめて外に出た。馬車から降りたヒューゴ様はハンドキスをして私を馬車に乗せた。
「緊張しなくていいよ」
「ヒューにとっては親戚でも私は違いますし国王陛下ですからね?」
「俺がいるから大丈夫だ」
何故か国王陛下から呼び出し状が届いてしまい、ヒューゴ様に何か知っているか問い合わせた。
その結果、ヒューゴ様が付き添ってくれることになった。
何か言いたそうに見えるけど気のせいだろうか。
到着すると手を繋いで王宮内を進む。
案内に導かれ行きついた先は応接間だった。
既にお茶の準備が進んでいて、国王陛下が茶葉をどれにするか悩んでいるところだった。
「こっちの茶葉にしてくれ」
「かしこまりました」
「よく来たな。ヒューゴ、クリスティーナ嬢、座ってくれ。身内の茶の席だ、挨拶はいらないよ。ほら、早く座りなさい」
「分かりました」
「し、失礼いたします」
「まったく…ちょっと呼び出したくらいで慌てすぎだろう」
え?
「な、なんでバラすのですかっ」
「やれ、“王子の妻にする気じゃないのか”とか“他所の王族の縁談を受けたのか”とか」
「止めてくださいっ」
ヒューゴ様を見ると真っ赤になっていた。
「ぷっ…ふふっ」
「ティナ?」
「ふふふっ」
「そう睨むな。クリスティーナ嬢が笑顔になって良かったじゃないか」
「まぁそうですけど」
「セルヴィー家は、また特別な存在になろうとしているのだな」
「何のことでしょうか」
「奇跡の草だよ」
「…奇跡ですか」
「そんなに怖い顔をしないでくれ。クリスティーナ嬢にも意外な一面があるのだな。
あれは祖父の代で栽培を試みようと持ち帰ったことがある。だが現地で忠告された通り持ち帰る途中で枯れたり腐ってしまって断念した。まだ子供だったが祖父ががっかりしたのを鮮明に覚えているよ。まさか国内で生えていたとは」
「……」
「セルヴィー家はあれをどう使うつもりなのだ?」
「ほんの少し効果のある美容品にする予定ですが、繁殖できなければ禍根を残さないよう焼き払うかもしれません」
「万能薬にして城でも建てられそうな値段をつけて売らないのか?」
「あの草は奇跡の草などという別名が付いていますが、それは人間の勝手な希望です。本当は奇跡など起こせません。失くなった腕を生やせるわけでもありません。どんな病気も治せるわけでもありません。きっと陛下はご存知のはずです」
「ハハッ 試すようなことを言ったな。だがそれでも大金を払って欲しがる者も多いだろう」
「仰る通り、話が漏れたら大変なことになります。ですから内密に動いていますし場合によっては焼き払うつもりです。
何を使っているかは明かさず ほんのちょっと効き目のある美容品として売り出すつもりです。
セルヴィーは十分稼いでいますので、混乱を招いたり領民や家族を危険に晒してまであの草を売り出さなくてもいいのです」
「もし、繁殖に成功して大量に採れることになったら教えてくれないだろうか」
「陛下。今回のように見張っているのでしたら連絡は不要ではありませんか?」
「そう言うな。セルヴィー家が何かするとは思っていない。だが影響力が広い分、知っておかねばならないのだ。狙われたり騙されたりしては困るからな」
他国との繋がりのことを仰っているのね。
「かしこまりました」
「本題だが、ヘインズ家の息子が令嬢を妊娠させたというのは本当なのか?」
「それはまだ分かる段階ではありません」
「もしクリスティーナ嬢が望むなら処置をしてもいいのだぞ?」
「………?」
陛下が何を仰っているのかわからない。
「ティナ」
ヒューゴ様が耳打ちをして意味を教えてくれた。
「っ!! 過分なるご芳志はいただけません」
「そうか。気が変わったら言ってくれ。早いほうがいい」
「はい、感謝いたします」
「聞きたいことは聞いたから、後はヒューゴとのことを聞かせてくれ」
「はい」
びっくりした。
陛下の“処置”とは堕胎のことだった。
この国では堕胎の処置は自由ではない。当主が望んだときだけだ。私でいえばセルヴィー伯爵。もし私が嫁いでいたらヘインズ伯爵。アマリア・ビクセン嬢ならビクセン伯爵だ。
望まぬ妊娠が判明した場合、当主に泣き付くしかない。
もちろん対抗する手段はある。事故や病などによる流産。だけどこれは身体に負担がかかり過ぎる。加減なんか分かるはずもなく、死んだり後遺症が残ったりする例もある。失敗することもある。
犯罪者として捕まるリスクを承知で堕胎薬を入手する者もいる。これは伝手がないと駄目で、間に入る者が通報すれば終わりだ。
そして最後は国王陛下の命による堕胎。陛下はこの事を提案してくださったのだ。
だから望まぬ妊娠を避けるために避妊薬を使ったり、女性の中で果てることを避けるのだ。
だけどシャルル様は彼女に種を残した。それは明確な意思表示だと思う。
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