笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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アマリアの困惑

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【 アマリア・ビクセンの視点 】

どうして現実が受け入れられないのかしら。

“妊娠なんて嘘よ、詰め物でもしてるんでしょ”
“本当は別の男を相手にしたのにシャルル様だったと思いたいのよ”
“そうよね。あの容姿じゃ、令息は相手にしないだろうし、価値がないから政略結婚も申し込まれないだろうし、跡継ぎでもないから平民でも近寄らないわ”
“子爵家の下男が相手じゃないの?”

学校中の令嬢達から心ない言葉を投げつけられる日々に我慢をして、着実に育っていくお腹の中のシャルル様のお子を愛でた。シャルル様と一夜を共にした令嬢は少なくない。だけどをいただいたのは私だけ。羨ましくて仕方ないのね。

“他人の婚約者相手に恥知らずね”
“クリスティーナに対して無礼だわ”
“いいのよ、私は大丈夫よ”

何が無礼よ。同じ伯爵令嬢という立場じゃない。ちょっとお金があるからってそれで差別しようだなんて下品だわ。いつまでもシャルル様に付き纏って困らせる寄生虫のような女のくせに余裕ぶっちゃって。

ヘインズ邸での診察室では妊娠かどうか分からないと言われた。何て無能な男を主治医にしているの!?私がこの屋敷に移り住んだら真っ先に主治医を変えてやるわ!

月のものが止まり悪阻が始まって辛かった。勉強は疎かにできないのに目眩や吐き気が四六時中付き纏った。吐き戻してしまうとしてもお腹の子のために頑張って食べた。シャルル様との交流のためにお手紙を出し続けた。私の作ったお菓子は受け取ってくれなくなって悲しかった。

胎動を感じる度に喜びにつつまれている。寝返りをうったのかしら、お腹を蹴ったのかしら。きっとシャルル様は幼少期は活発な方だったのねとますます愛おしく感じた。
私に冷たくするのも酷い言葉を口にするのもきっとあの女のせい。婚約は契約だもの、きっとあの女は圧力をかけているのだわ。

卒業パーティのドレスは貸衣装で借りるしかなかった。だけどそのおかげで素晴らしいドレスに出会えた。

“卒業パーティでお召しになるのですよね?それでは目立ってしまいますが”
“いいのよ、隠していることではないし、むしろめでたいことなのよ”
そう言って借りて帰った。卒業パーティ当日、私のドレスを見て子爵夫人は大きな溜息をついた。
“確認をしておくべきだったわね。もう他のドレスを用意するには遅いから行きなさい”
外に出るとビクセン家の馬車が待っていた。古くて今にも壊れそうな馬車にはお父様が乗っていて、早く乗れと合図を送る。もう挨拶は終わって子爵夫人は屋敷の中に戻ったらしい。

乗り心地の悪い馬車が出発した。お父様からは問題を起こさないよう念を押された。

会場ではみんながシャルル様との愛の結晶に注目していた。今後のこの子のために卒業生の家族やパートナーに挨拶をして回った。
あの女は父親と出席していた。ほらね、いくら婚約者でもシャルル様と同伴できていないじゃない。



卒業パーティが終わって子爵家に戻るのだと思っていた。

『もう卒業したのだから滞在は許されない。あれだけ迷惑をかけたのに居させてもらえると思ったのか?』

『どこへ?』

『王都の外れの安宿だ。お前の荷物は運ばせると夫人が仰っていた』

『え?ではこれからどちらのお屋敷で過ごせばいいのですか』

『帰るんだよ』

『嫌です!お腹に子がいるのですよ!?絶対に嫌です!』

『じゃあどこに泊まるというんだ?泊めてくださる友人でもいるのか?』

『…いいえ』

『おまえは宿代を出せるのか?』

『…いいえ。でも、ヘインズ邸なら!』

『なら明日聞いてみるといい』


夜のうちに先触れを出した。
宿は共同の洗い場しかなく浴槽は無かった。シャルル様のお子を宿しているのにこんな不衛生な場所にはいられない!明日ヘインズ邸に移り住まないと!

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