【完結】笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

文字の大きさ
145 / 215

私はビクセン伯爵令嬢なのよ!

しおりを挟む
【 アマリア・ビクセンの視点 】

翌日、お父様と一緒にヘインズ邸を訪ねた。
午前中はシャルル様が居ないということで午後に来てみると、メイド達は怪訝そうな顔をしている。

妊娠していてトイレが近い。着いて早々に花を摘みに行った。戻るときに話し声が聞こえた。

「私、嫌だわ。あの令嬢に仕えるの」

「大丈夫よ。クリスティーナ様がいらっしゃるのにあの令嬢をヘインズ家にお迎えすることはないわ。シャルル様は心底嫌がっていらしたもの」

これは躾けないといけないと思った。

「メイドの分際でシャルル様のお子を授かっている私を侮辱するのね」

「申し訳ございませんでした。失礼します」

「待ちなさい。跪いて謝りなさい」

「……」

「早く!」

「どうなさいましたか?」

振り向くと以前会ったメイド長が立っていた。

「このメイド達が無礼なことを言っていたのです」

「何を言ったの?」

「ビクセン伯爵令嬢にお仕えしたくないと言いました」

「クリスティーナ様がいらっしゃるからビクセン伯爵令嬢がこのお屋敷に迎え入れられることはないと2人で話していたところにビクセン伯爵令嬢が…」

「大変失礼をいたしました。代わりにお詫びいたします。
あなた達は行きなさい」

メイド長は2人を逃がそうとした。

「待ちなさい!謝罪が済んでいないわ!」

「「申し訳ございませんでした」」

「跪きなさい!」

「ビクセン伯爵令嬢、それ以上は旦那様に判断していただきます」

「は?」

「この屋敷の使用人を雇っているのはヘインズ伯爵だんな様で、普通の謝罪では気が済まないと仰るのであれば当主が対応いたします」

「そ、その子達が謝れば済むことじゃない!」

「謝りましたが?」

「だから膝をついてちゃんと謝りなさい!」

「ではそういたしましょう。いらしてください。あなた達もついてきて」

「「はい」」

その場で謝ればいいのに!

到着したのは応接間で開いているドアの先にはヘインズ伯爵夫妻とお父様がソファに座っていた。

「早く来なさい」

お父様が急かすけど、メイド長は場の空気を読むことはなかった。

「旦那様、問題が」

「来客中だぞ」

「はい。ですがあちらのご令嬢がこの子達に跪いて謝るよう強要なさいまして。私が間に入らせていただきましたがご令嬢の意思は変わることはありませんでした」

「何が原因なんだ」

「実は…」

メイド長が経緯を話すとヘインズ伯爵は溜息をついた。
ほら、普通はそうよ。メイドが伯爵令嬢わたくしを侮辱するなんて呆れているじゃない。

「3人とも持ち場に戻りなさい」

え!?

「失礼いたします」

メイド長達が退室してしまった。

「さて、ご用件は?」

は!?それだけ!?

「娘は昨日卒業しまして」

「それはおめでとうございます」

「娘は昨夜から王都の外れの宿に泊まっているのですが、母体に悪いかと。また診察もありますしこちらで預かっていただけないかとお願いに上がりました」

「無理ですわ、ビクセン伯爵。たった今ご令嬢が証明してみせたではありませんか。他所の屋敷に来て早々に問題を起こしたじゃない」

「私は侮辱を受けて、」

「あれしきのことで騒ぐなんてみっともないわ」

「私は伯爵家の娘であの者達はメイドではありませんか!」

「困ったわね、シャルルもこんな娘に引っ掛かるなんて」

「夫人!」

「ビクセン伯爵、ビクセン嬢。あなた方のお屋敷では貴族出身のメイドや侍女はおりませんの?あの2人は男爵家の出身ですし、メイド長は伯爵家の出身ですのよ?事情があってヘインズ邸で採用をしましたの。本来なら彼女は侍女にするはずでしたけど、侍女だと王都と領地を往復するときに連れて回ることになりますし、当時彼女は婚約者が王都にいて離れたくなかったようなのです。それに結婚を機に辞めたいと願ったときに辞めやすいメイドの方がいいかもしれないという配慮から王都の屋敷のメイドにしました。ですが婚約者と馬で遠乗りに出た際に婚約者は亡くなり彼女も大怪我を負いました。怪我が治ったときに希望を聞いたらこのまま働くと申し出たのです。彼女は亡くなった婚約者を愛していて彼以外には嫁がないと決めていました。だからヘインズ家と彼女のご実家と話し合って、雇用し続けることになったのです。メイド長となり月命日には事故現場に花を手向けに行っているのです。今でも伯爵籍のままですのよ。また伯爵位の家門を敵に回すおつもりですか?」

「失礼しました」

「ビクセン嬢。あなたの狡賢くふしだらな行動とヘインズ家にもたらした損害のことを考えれば、あの程度の陰口で済んで良かったと思わないといけないのではなくて?セルヴィー嬢だったら絶対にあなたのようなことは言い出さないわね。
跪かせて憂さ晴らししようだなんて…どうしてもやりたいのなら実家でおやりなさい。ヘインズ邸では一切許しません」

「っ!」

「その胎の中身がなんなのか分からないけど、ヘインズ家とは関係ありません」

「間違いなくシャルル様のお子です!お義母様
っ」

「馴々しくお義母かあ様などと呼ばないでちょうだい。コレがずっとあの子と同じクラスで過ごしていただなんて…セルヴィー伯爵がお怒りになるわけだわ」

セルヴィー伯爵?やっぱり圧力があったのね!






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。 それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。 アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。 婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?

愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。 子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。 ――彼女が現れるまでは。 二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。 それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……

【完結】恋は、終わったのです

楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。 今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。 『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』 身長を追い越してしまった時からだろうか。  それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。 あるいは――あの子に出会った時からだろうか。 ――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか契約聖女になってしまいました

As-me.com
恋愛
完結しました。 番外編(編集済み)と、外伝(新作)アップしました。  とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。  例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。  なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。  ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!  あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。 ※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

処理中です...