笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

文字の大きさ
147 / 215

酔っ払った親友

しおりを挟む
3ヶ月近くモルゾン公爵領に滞在することになった。その間にエルザの結婚式に向けての準備を進めた。ドレスは私とジネットとエステル様の3人でお揃いにした。デザインは少し変えている。髪飾りも特注。

「後は仕上がるのを待つだけね」

結婚祝いだけはそれぞれもう注文していた。
私は例の羽毛外套。フード付きで縁にリボンを通してあるので強風のときは少し絞ってリボンを結べはいい。外側は一番柔らかい革を使用、内側を薄い羽毛の層を縫い付けた。膨らみがある分シルエットはいまいちだけど実用性は抜群。第二王子は各地に出向き公務を行う。北部や冬にコレがあるとだいぶ違う。2人は馬車移動なので動きやすさまでは考慮しなくてもいいができるだけ試行錯誤した。

「エルザが羨ましいわ」

「私も欲しいな」

「私も」

エルザの他に話を聞いていたゼイン様とエステル様も欲しいと言い出した。

「残念ながら非売品です」

「じゃあ、私達の結婚祝いに用意してもらえるかな?」

ゼイン様の言葉にエステル様は不満を口にした。

「酷い!お兄様、私はどうなるのたですか!」

「エステルは…そのうち?」

「残念ながらその予定はございません」

「頼むよ」

「エルザ達の特別感が薄れてしまいます」

この一言で納得してもらえた。


モルゾン家の花嫁修行を何故か私も受けた。シークレットな部分は嫁いだ後にするから大丈夫と言われた。一番ハードだったのはダンスのレッスンだった。モルゾン家の執務補佐の方や騎士様まで駆り出して相手をしてもらい練習をさせられた。
最初のレッスンの後は足が震えて翌日は全身が筋肉痛になってしまった。ゼイン様からは呆れたように笑われた。

「どれだけ動いていないのさ」

「あまりダンスの機会は無いので。家では報告書を読んだり帳簿を見たり、次の商品のことを考えたりしていますし、移動は馬車ですから」

「なるほどな。よし、領内観光も積極的に取り入れよう」

「ダンスのレッスンを免除してくださるなら是非」

「駄目よ」

公爵夫人からダンスレッスンは必須だと言われてしまった。モルゾン領ではなくセルヴィー領へ帰ればよかったなんて思ってしまった。
察したジネットは夜に私の客室に来て宥めながら一緒に寝た。翌朝、それを知ったエステル様が“ずるい!”と騒いでいた。
危うく毎夜突撃されるかと心配したけど、ダンスでぐったりした私を休ませてあげなさいと夫人が止めてくださった。


モルゾン家の豊かさに驚きつつも贅沢に過ごさせてもらえた。ジネットは本来、私なんかが気やすく友人になってもらえる令嬢ではないのだと改めて感じた。次期モルゾン公爵夫人になるゼイン様の妻は厳選された令嬢とも言える。それがジネットなのだ。


そろそろという頃に王都に戻った。
第二王子殿下とエルザの結婚式は盛大に行われた。
ただし参列客は制限されていた。セルヴィー家は全員。お兄様とお嫁さんも出席した。伯爵家で参列できたのはうちくらいだった。

王都をパレードした後、パーティが開かれた。そのときにやっとヒューゴ様と会話ができた。

「元気だったか?」

「少し体力が付きました」

「ん?」

「ダンスのレッスンが厳しくて」

「ティナが?」

「ジネットと一緒に花嫁修行をすることになりまして」

「それは心配だな。ティナのダンスに魅了されて男達がダンスを申し込みに来てしまう」

少し日焼けしたヒューゴ様が笑みを絶やさず見つめてくれている。

「ヒューこそ浮気していませんか?」

「するわけがない。そんなことをしたら義父上に草の棘を目にいれられてしまうよ」

「そっちが怖いからしないだけですか?」

「クリスティーナを愛しているからしないし、したくないんだ」

「お仕事は順調ですか?」

「これが終わればまた戻らなくてはならない。ティナは?」

「一度ジネットがゼオロエン領に帰るのでついて行くことになりました。10日ほど滞在します」

「きっとエルザ王子妃は拗ねるだろうな」

「既に頬を膨らませていましたわ」

「…ダンスを君と踊りたい。誘ってもいいか?」

前の事を気にしているのね。

「誘ったら心臓が止まったとしても私と踊らなくてはいけませんよ?」

「幽霊になっても必ず」

「では喜んでお受けしますわ」

そう言ったのに私とヒューゴ様はバルコニーに出て……

「ティナ」

「んっ」

イチャイチャしていた。パーティが終わるまで。
だからパーティが終わった後、エルザに絡まれた。

「酷いわ。私よりジオ公子を取るなんて」

「エ…王子妃様」

「ジネットと散々一緒に過ごして!やっと帰ってきたと思ったのに消えちゃって!しかもまだジネットとゼオロエン領に行くなんて!私は独りぼっちじゃない!」

驚いた。あのエルザがこんなに心を乱すなんて。隣の新郎王子様は笑顔の裏に困惑が滲んでいらっしゃるわ。

「申し訳ございません、王子妃様」

「私はエルザなの!何でそんなによそよそしくするのよ!」

そっと王宮侍女が私に耳打ちをした。

“王子妃様は少し酔っていらっしゃるようです”

え!?

「ちょっと!私のティナとコソコソしないで!」

「申し訳ございません、王子妃様。セルヴィー伯爵令嬢がお泊まりになるかと思い、確認を取らせていただこうと」

「泊まるに決まってるわ!当然でしょ!」

「……」

ああ…王子殿下が“私との初夜はおあずけかい?”と悲しい目をなさっているわ。

「私は今夜はちょっと…」

「ううっ…私に飽きたのね…そうなのね」

「……」

誰ですか!エルザにこんなにお酒を飲ませたのは!!殿下の微笑みが引き攣っていらっしゃるじゃない!!

「今夜は…あの…まだ大事な事か残っていらっしゃるかと」

「うわぁ~ん!」

「是非泊まりたいです」

「じゃあ、私の部屋でいいわよね?」

良くない!…でも初夜なら夫婦の寝室に行くわよね。

「喜んで」


その後ジネットを道連れにして私達は王子妃様の部屋に泊まり、侍女は上手くエルザを夫婦の寝室へ誘導し、その後戻って来なかった。 
翌日の昼、エルザは顔を赤くして俯いたまま謝罪をし、王子殿下は満面の笑みだった。

「どうなることかと思ったけど正気に戻ってくれて良かったよ。あれ?どちらかというと昨夕が正気だったのかもな?我が妻エルザは私のことだけを見ていてくれていると思っていたけど、それは油断でしかなかったのだな。ライバルが誰なのかはっきりとわかったよ」

満面の笑みのはずなのに目が怖い。私は必死に首を横に振った。

「ふっ、冗談だ」

冗談なら私を凝視しないでください!!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一年だけの夫婦でも私は幸せでした。

クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。 フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。 フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。 更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。

「君は地味な裏方だ」と愛人を優遇するサイコパス気質の夫。〜私が去った後、商会の技術が全て私の手によるものだと気づいても、もう手遅れです〜

水上
恋愛
「君は地味だから裏方に徹しろ」 効率主義のサイコパス気質な夫は、妻であるクララの磨いた硝子を愛人の手柄にし、クララを工房に幽閉した。 彼女は感情を捨て、機械のように振る舞う。 だが、クララの成果を奪い取り、夫が愛人を壇上に上げた夜、クララの心は完全に凍りついた。 彼に残した書き置きは一通のみ。 クララが去った後、商会の製品はただの石ころに戻り、夫の計算は音を立てて狂い始める。 これは、深い絶望と、遅すぎた後悔の物語。

「最高の縁談なのでしょう?なら、かわってあげたら喜んでくれますよね!」

みっちぇる。
恋愛
侯爵令嬢のリコリスは20歳。立派な嫁きおくれである。 というのも、義母がなかなかデビューさせてくれないのだ。 なにか意図を感じつつも、周りは義母の味方ばかり。 そん中、急にデビュタントの許可と婚約を告げられる。 何か裏がある―― 相手の家がどういうものかを知り、何とかしようとするリコリス。 でも、非力なリコリスには何も手段がない。 しかし、そんな彼女にも救いの手が……?

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

処理中です...