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胎
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【 シャルルの視点 】
また今日もメイドが聞きに来る。
「アマリア様がティータイムをご一緒にと」
「はぁ」
アマリアは毎日、散歩や食事やティータイムを一緒にと誘ってくる。メイドに断るよう言ってあるのだが妊婦をあまりぞんざいに扱えないのだろう。5、6回に一度は聞きに来る。
マリアを閉じ込めている部屋へ向かった。あそこは北側の端の部屋で、冬の風をもろに受けて冷えやすく景色も悪い。冬じゃなければ問題ないが客人や貴族が使うには適さない。階段からも遠いし風呂もない。広さだけはある部屋を何のために作ったのか。備品庫か何かにすれば良かったのではと思うが今となってはこういう使い方があったのだと納得した。外鍵が2つもついたドアを開けると中にいたアマリアが僕を見るなり駆け寄ろうとしたので外に出てドアを閉めた。
メイドに座らせろと指示を出して入室しなおした。
「シャルル様っ、会いに」
「煩い。話しかけるな。聞かれたことにだけ答えてくれ。そして近寄ったりするな。僕に触れたら罰を受けさせるぞ」
「そんな!」
「ビクセン邸に送り届けようか?」
「っ!!」
「最初に行ったはずだが、君は客人でも恋人でも婚約者でもない。迷惑な居候に僕が時間を割くことはない。だから一々メイドを煩わせるな。食事も散歩もお茶も君とは一緒にすることはない。町に出掛けたい?観劇?馬鹿な妄想を押し付けないでくれ。
大人しくできないのならメイドを外して世話を止めさせるぞ」
「シャルル様のお子がいるのに」
泣き出したのでそのまま部屋を後にした。その後も何か要求を口にしているようだったがメイドが僕に伝えることはなくなった。
クリスティーナがモルゾン公爵領に行ってもうすぐ2ヶ月が経とうとしていた。第二王子殿下の成婚式までに戻ってくるだろう。うちは式には招待されていない。他の伯爵家も招待は受けていない。だがセルヴィー家は式に参列するらしい。パーティだけは爵位持ちが招待された。
帰ってきたら連絡をくれるだろうと思っていたが連絡のないまま成婚式の当日になった。
パレードが盛大に行われている。ゼオロエン嬢は第二王子妃になった。
夜には帰っているかと思ったが王宮に泊まったらしい。
「これでクリスティーナは王子妃の親友ね」
父上はセルヴィーの絹が欲しくて、母上はセルヴィーの人脈が欲しかった。クリスティーナがゼオロエン嬢やウィロウ嬢と友人になったことを知った母上は狙いをクリスティーナに絞った。クリスティーナは次々と高位貴族と親しくなっていった。
母上は顔を合わせる度に、“紹介してもらいなさい”と僕に命じていた。
「そうですね」
「クリスティーナをうちに招待しなさい」
「あの女がいるのにですか?」
「外鍵をかけたらいいじゃない」
「聞いてみます」
だけど、クリスティーナは今度はゼオロエン領へ行ってしまった後だった。
僕に何も言わずに行くなんて。婚約者なのだからそのくらい手紙で連絡を入れてもいいはずだと思って腹立たしかった。
「もしかして、ジオ公子と破局したのかもね」
母上の言葉に気分が少し良くなった。
「本当ですか」
「ジオ公子もずっと王都を離れているらしいし、クリスティーナはモルゾン領の次はゼオロエン領でしょう?」
「モルゾン領で会っていたかもしれないがな。そんなことより明日診察をさせるぞ。もうそろそろじゃないのか?」
父上が言うそろそろとは出産時期のことだ。本当に妊娠しているなら出産予定の時期に入っているから。まあ早かったり少し遅かったり個人差はあるらしい。
翌日、主治医が来て腹に聴診器を当てた。
「やはり心音などは確認できません。この時期になって聞こえないのは発育が止まり死んでいる可能性が高いです」
「嘘よ!動いているもの!」
「腸だって胃だって同じですよ」
「母親の私には分かるの!」
「そうは言っても腹が2ヶ月前から膨らまないのが証拠です」
「少し成長が遅いだけ!だって部屋に閉じ込められて囚人みたいな生活を送っていたら赤ちゃんも悲しくなって成長できないわ!」
「囚人ねぇ。屋根も窓もあってベッドも整っている立派な部屋に住めて、風呂にも入れて洗濯をしてもらえて3食の食事にお茶と菓子まで出してもらえてメイド付きなのが囚人?それが囚人というのなら国民の多数が囚人になりたがるでしょうね」
「医者を変えてください!」
「先生、確かめる方法はありませんか」
「薬を使って陣痛を起こさせれば分かりますが。もしくは子宮口を広げて直接触診する方法もあります。いずれにしても立会いの医師を呼んだ方がいいでしょう。こちらの令嬢の場合は後々問題を悪化させかねません」
「分かった」
「王宮認定医に頼む方がいいでしょう」
「王宮認定医とは何ですか?」
「王宮は多くの者が働いています。流行病が始まれば感染が一気に広がります。王宮の専属医だけでは対処しきれません。それに王族の病傷やお産がかぶることも珍しくありません。そのときに急な呼び出しに応じる王宮外で活動している医者のことです。彼らには予め技量があることを確かめた後に認定証を出します。王家からの信頼の証ですから、金持ちや貴族相手に診療費を高めに設定していても不満が出ることはありません。
私の方で依頼をしましょう。出来るだけ親しくない認定医をあたります。日時が決まりましたらお産や治療の準備をさせてください。破水や出血などに備えてください」
「準備をさせます」
主治医が帰ると母上はメイドに治療や出産の準備をするよう指示を出した。
また今日もメイドが聞きに来る。
「アマリア様がティータイムをご一緒にと」
「はぁ」
アマリアは毎日、散歩や食事やティータイムを一緒にと誘ってくる。メイドに断るよう言ってあるのだが妊婦をあまりぞんざいに扱えないのだろう。5、6回に一度は聞きに来る。
マリアを閉じ込めている部屋へ向かった。あそこは北側の端の部屋で、冬の風をもろに受けて冷えやすく景色も悪い。冬じゃなければ問題ないが客人や貴族が使うには適さない。階段からも遠いし風呂もない。広さだけはある部屋を何のために作ったのか。備品庫か何かにすれば良かったのではと思うが今となってはこういう使い方があったのだと納得した。外鍵が2つもついたドアを開けると中にいたアマリアが僕を見るなり駆け寄ろうとしたので外に出てドアを閉めた。
メイドに座らせろと指示を出して入室しなおした。
「シャルル様っ、会いに」
「煩い。話しかけるな。聞かれたことにだけ答えてくれ。そして近寄ったりするな。僕に触れたら罰を受けさせるぞ」
「そんな!」
「ビクセン邸に送り届けようか?」
「っ!!」
「最初に行ったはずだが、君は客人でも恋人でも婚約者でもない。迷惑な居候に僕が時間を割くことはない。だから一々メイドを煩わせるな。食事も散歩もお茶も君とは一緒にすることはない。町に出掛けたい?観劇?馬鹿な妄想を押し付けないでくれ。
大人しくできないのならメイドを外して世話を止めさせるぞ」
「シャルル様のお子がいるのに」
泣き出したのでそのまま部屋を後にした。その後も何か要求を口にしているようだったがメイドが僕に伝えることはなくなった。
クリスティーナがモルゾン公爵領に行ってもうすぐ2ヶ月が経とうとしていた。第二王子殿下の成婚式までに戻ってくるだろう。うちは式には招待されていない。他の伯爵家も招待は受けていない。だがセルヴィー家は式に参列するらしい。パーティだけは爵位持ちが招待された。
帰ってきたら連絡をくれるだろうと思っていたが連絡のないまま成婚式の当日になった。
パレードが盛大に行われている。ゼオロエン嬢は第二王子妃になった。
夜には帰っているかと思ったが王宮に泊まったらしい。
「これでクリスティーナは王子妃の親友ね」
父上はセルヴィーの絹が欲しくて、母上はセルヴィーの人脈が欲しかった。クリスティーナがゼオロエン嬢やウィロウ嬢と友人になったことを知った母上は狙いをクリスティーナに絞った。クリスティーナは次々と高位貴族と親しくなっていった。
母上は顔を合わせる度に、“紹介してもらいなさい”と僕に命じていた。
「そうですね」
「クリスティーナをうちに招待しなさい」
「あの女がいるのにですか?」
「外鍵をかけたらいいじゃない」
「聞いてみます」
だけど、クリスティーナは今度はゼオロエン領へ行ってしまった後だった。
僕に何も言わずに行くなんて。婚約者なのだからそのくらい手紙で連絡を入れてもいいはずだと思って腹立たしかった。
「もしかして、ジオ公子と破局したのかもね」
母上の言葉に気分が少し良くなった。
「本当ですか」
「ジオ公子もずっと王都を離れているらしいし、クリスティーナはモルゾン領の次はゼオロエン領でしょう?」
「モルゾン領で会っていたかもしれないがな。そんなことより明日診察をさせるぞ。もうそろそろじゃないのか?」
父上が言うそろそろとは出産時期のことだ。本当に妊娠しているなら出産予定の時期に入っているから。まあ早かったり少し遅かったり個人差はあるらしい。
翌日、主治医が来て腹に聴診器を当てた。
「やはり心音などは確認できません。この時期になって聞こえないのは発育が止まり死んでいる可能性が高いです」
「嘘よ!動いているもの!」
「腸だって胃だって同じですよ」
「母親の私には分かるの!」
「そうは言っても腹が2ヶ月前から膨らまないのが証拠です」
「少し成長が遅いだけ!だって部屋に閉じ込められて囚人みたいな生活を送っていたら赤ちゃんも悲しくなって成長できないわ!」
「囚人ねぇ。屋根も窓もあってベッドも整っている立派な部屋に住めて、風呂にも入れて洗濯をしてもらえて3食の食事にお茶と菓子まで出してもらえてメイド付きなのが囚人?それが囚人というのなら国民の多数が囚人になりたがるでしょうね」
「医者を変えてください!」
「先生、確かめる方法はありませんか」
「薬を使って陣痛を起こさせれば分かりますが。もしくは子宮口を広げて直接触診する方法もあります。いずれにしても立会いの医師を呼んだ方がいいでしょう。こちらの令嬢の場合は後々問題を悪化させかねません」
「分かった」
「王宮認定医に頼む方がいいでしょう」
「王宮認定医とは何ですか?」
「王宮は多くの者が働いています。流行病が始まれば感染が一気に広がります。王宮の専属医だけでは対処しきれません。それに王族の病傷やお産がかぶることも珍しくありません。そのときに急な呼び出しに応じる王宮外で活動している医者のことです。彼らには予め技量があることを確かめた後に認定証を出します。王家からの信頼の証ですから、金持ちや貴族相手に診療費を高めに設定していても不満が出ることはありません。
私の方で依頼をしましょう。出来るだけ親しくない認定医をあたります。日時が決まりましたらお産や治療の準備をさせてください。破水や出血などに備えてください」
「準備をさせます」
主治医が帰ると母上はメイドに治療や出産の準備をするよう指示を出した。
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