笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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酔っ払った親友

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3ヶ月近くモルゾン公爵領に滞在することになった。その間にエルザの結婚式に向けての準備を進めた。ドレスは私とジネットとエステル様の3人でお揃いにした。デザインは少し変えている。髪飾りも特注。

「後は仕上がるのを待つだけね」

結婚祝いだけはそれぞれもう注文していた。
私は例の羽毛外套。フード付きで縁にリボンを通してあるので強風のときは少し絞ってリボンを結べはいい。外側は一番柔らかい革を使用、内側を薄い羽毛の層を縫い付けた。膨らみがある分シルエットはいまいちだけど実用性は抜群。第二王子は各地に出向き公務を行う。北部や冬にコレがあるとだいぶ違う。2人は馬車移動なので動きやすさまでは考慮しなくてもいいができるだけ試行錯誤した。

「エルザが羨ましいわ」

「私も欲しいな」

「私も」

エルザの他に話を聞いていたゼイン様とエステル様も欲しいと言い出した。

「残念ながら非売品です」

「じゃあ、私達の結婚祝いに用意してもらえるかな?」

ゼイン様の言葉にエステル様は不満を口にした。

「酷い!お兄様、私はどうなるのたですか!」

「エステルは…そのうち?」

「残念ながらその予定はございません」

「頼むよ」

「エルザ達の特別感が薄れてしまいます」

この一言で納得してもらえた。


モルゾン家の花嫁修行を何故か私も受けた。シークレットな部分は嫁いだ後にするから大丈夫と言われた。一番ハードだったのはダンスのレッスンだった。モルゾン家の執務補佐の方や騎士様まで駆り出して相手をしてもらい練習をさせられた。
最初のレッスンの後は足が震えて翌日は全身が筋肉痛になってしまった。ゼイン様からは呆れたように笑われた。

「どれだけ動いていないのさ」

「あまりダンスの機会は無いので。家では報告書を読んだり帳簿を見たり、次の商品のことを考えたりしていますし、移動は馬車ですから」

「なるほどな。よし、領内観光も積極的に取り入れよう」

「ダンスのレッスンを免除してくださるなら是非」

「駄目よ」

公爵夫人からダンスレッスンは必須だと言われてしまった。モルゾン領ではなくセルヴィー領へ帰ればよかったなんて思ってしまった。
察したジネットは夜に私の客室に来て宥めながら一緒に寝た。翌朝、それを知ったエステル様が“ずるい!”と騒いでいた。
危うく毎夜突撃されるかと心配したけど、ダンスでぐったりした私を休ませてあげなさいと夫人が止めてくださった。


モルゾン家の豊かさに驚きつつも贅沢に過ごさせてもらえた。ジネットは本来、私なんかが気やすく友人になってもらえる令嬢ではないのだと改めて感じた。次期モルゾン公爵夫人になるゼイン様の妻は厳選された令嬢とも言える。それがジネットなのだ。


そろそろという頃に王都に戻った。
第二王子殿下とエルザの結婚式は盛大に行われた。
ただし参列客は制限されていた。セルヴィー家は全員。お兄様とお嫁さんも出席した。伯爵家で参列できたのはうちくらいだった。

王都をパレードした後、パーティが開かれた。そのときにやっとヒューゴ様と会話ができた。

「元気だったか?」

「少し体力が付きました」

「ん?」

「ダンスのレッスンが厳しくて」

「ティナが?」

「ジネットと一緒に花嫁修行をすることになりまして」

「それは心配だな。ティナのダンスに魅了されて男達がダンスを申し込みに来てしまう」

少し日焼けしたヒューゴ様が笑みを絶やさず見つめてくれている。

「ヒューこそ浮気していませんか?」

「するわけがない。そんなことをしたら義父上に草の棘を目にいれられてしまうよ」

「そっちが怖いからしないだけですか?」

「クリスティーナを愛しているからしないし、したくないんだ」

「お仕事は順調ですか?」

「これが終わればまた戻らなくてはならない。ティナは?」

「一度ジネットがゼオロエン領に帰るのでついて行くことになりました。10日ほど滞在します」

「きっとエルザ王子妃は拗ねるだろうな」

「既に頬を膨らませていましたわ」

「…ダンスを君と踊りたい。誘ってもいいか?」

前の事を気にしているのね。

「誘ったら心臓が止まったとしても私と踊らなくてはいけませんよ?」

「幽霊になっても必ず」

「では喜んでお受けしますわ」

そう言ったのに私とヒューゴ様はバルコニーに出て……

「ティナ」

「んっ」

イチャイチャしていた。パーティが終わるまで。
だからパーティが終わった後、エルザに絡まれた。

「酷いわ。私よりジオ公子を取るなんて」

「エ…王子妃様」

「ジネットと散々一緒に過ごして!やっと帰ってきたと思ったのに消えちゃって!しかもまだジネットとゼオロエン領に行くなんて!私は独りぼっちじゃない!」

驚いた。あのエルザがこんなに心を乱すなんて。隣の新郎王子様は笑顔の裏に困惑が滲んでいらっしゃるわ。

「申し訳ございません、王子妃様」

「私はエルザなの!何でそんなによそよそしくするのよ!」

そっと王宮侍女が私に耳打ちをした。

“王子妃様は少し酔っていらっしゃるようです”

え!?

「ちょっと!私のティナとコソコソしないで!」

「申し訳ございません、王子妃様。セルヴィー伯爵令嬢がお泊まりになるかと思い、確認を取らせていただこうと」

「泊まるに決まってるわ!当然でしょ!」

「……」

ああ…王子殿下が“私との初夜はおあずけかい?”と悲しい目をなさっているわ。

「私は今夜はちょっと…」

「ううっ…私に飽きたのね…そうなのね」

「……」

誰ですか!エルザにこんなにお酒を飲ませたのは!!殿下の微笑みが引き攣っていらっしゃるじゃない!!

「今夜は…あの…まだ大事な事か残っていらっしゃるかと」

「うわぁ~ん!」

「是非泊まりたいです」

「じゃあ、私の部屋でいいわよね?」

良くない!…でも初夜なら夫婦の寝室に行くわよね。

「喜んで」


その後ジネットを道連れにして私達は王子妃様の部屋に泊まり、侍女は上手くエルザを夫婦の寝室へ誘導し、その後戻って来なかった。 
翌日の昼、エルザは顔を赤くして俯いたまま謝罪をし、王子殿下は満面の笑みだった。

「どうなることかと思ったけど正気に戻ってくれて良かったよ。あれ?どちらかというと昨夕が正気だったのかもな?我が妻エルザは私のことだけを見ていてくれていると思っていたけど、それは油断でしかなかったのだな。ライバルが誰なのかはっきりとわかったよ」

満面の笑みのはずなのに目が怖い。私は必死に首を横に振った。

「ふっ、冗談だ」

冗談なら私を凝視しないでください!!


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