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曇る心
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王都に戻って店の様子を見たけど問題なく営業していてホッとした。
「ヘインズ邸からお手紙が届きました」
「ありがとう」
手紙を受け取り読むと“大事な話がある”と書いてあって夕食の招待だった。
お父様もお母様もいないのに大事な話があると呼び出されるのは不安だ。
「承諾の返事を出しておいてもらえるかしら」
「かしこまりました」
でも行かないと駄目よね。
数日後、時間通りにヘインズ邸に訪問できるよう支度をしていると、
「お嬢様、ヘインズ伯爵家のご令息が到着なさいました」
「え?」
支度中だったので少し待たせてしまった。
「お待たせしました」
「いや、いいんだ。勝手に迎えに来たのは僕だから」
差し伸べられた手の上に手を乗せた。何故か馬車の中で隣に座るシャルル様は私の手を握ったまま。正直居心地が悪かった。
到着すると機嫌良いヘインズ伯爵夫妻が迎えてくださった。居間に行くとお茶を出してくださった。
「辛い思いをさせたのは分かっている。申し訳なかった」
伯爵が頭を下げ、夫人も続いて頭を下げた。
「あの?」
「ビクセン嬢の腹に子はいなかった」
「はい?」
「彼女は強い思い込みで妊娠のような症状を引き起こしていたんだ。医者2人に確かめさせたが胎の中は空だった。ビクセン嬢は実家に帰って現実を受け入れている頃だろう」
「嫌な思いをさせたわね。本当にごめんなさいね。シャルルも反省しているから許してね」
「そうですか、分かりました」
「さて、食事にしよう」
食堂へ移動して食事を始めた。
「そろそろ結婚式の日取りを決めよう」
「2人とも卒業したのだもの。それにシャルルには早く妻を持たせるべきだわ。そうすれば余計なことは、」
「母上!」
「どうだろう、クリスティーナ」
つまり、妻が閨事の相手をすることによって性欲を解消させて、他の女性と遊ぶことが減ると言いたいのね。伯爵も夫人もシャルル様のことがこうも分からないものなのかしら。
シャルル様は恋人・愛人・婚外子を作ることを宣言した方。いずれ迎え入れて同居をするかもしれないし、そのときは正妻として快く彼女達を迎え入れるように求めた方。私と跡継ぎを作るけど、他の女性と楽しむことは止めないと宣言をした方。
私が閨に上がっても夫人の考えているような効果は無い。
「もしこれが恋愛結婚なら私が決めても構わないでしょう。ですがこの婚約は政略結婚です。つまりセルヴィー家で話し合って時期の候補を上げてヘインズ家の希望と擦り合わせるということをしなくてはなりません」
「それは、伯爵は君を尊重するはずだよ」
「そうよ。政略結婚だなんて」
「そうですね。ですがヘインズ家は婚姻と同時にセルヴィー産の絹の特価販売という優遇を得ます。それはセルヴィー家との取り引きです。それにシャルル様が政略結婚だとはっきり仰いました。そうですよね?シャルル様」
「…確かに言ったが、」
「私はずっとシャルル様の条件を守って参りました。
この先はセルヴィーからの条件も守っていただきます。
今、セルヴィーでは新しい事業を進行中ですので当分父は話し合いの席にはつけません。王都もセルヴィー領にもおりませんので」
「では何処に」
「父から誰にも教えるなとキツく言われていますので。父が戻り次第、日取りについて相談します」
「でも、それではいつになるのか分からないじゃない。何処にいるのか分かっているのなら連絡を取ってちょうだい。嫁ぐ身なら婚家に合わせるものでしょう?」
「お返事は1年もかかりませわ。それに本来ならとっくに教会をおさえていたはずです。妊娠騒動があったから決められずに今日まできたのではありませんか?私は…セルヴィーは婚約時からずっと婚家になるヘインズ伯爵家に合わせてきたと思いますが?あ、この野菜の包み焼き、美味しいですわ」
「……」
ひたすら食事を進めて早く帰ろうと思った。やっとデザートというときに、シャルル様が待ったをかけた。
「すまないが僕とクリスティーナの分はテラスに用意してくれ」
「かしこまりました」
「さあ、クリスティーナ。外の空気を吸おう」
シャルル様に手を繋がれテラスに出た。準備が整うまで少し花を見るらしい。
「クリスティーナ、僕たちはいろいろ誤解があったんだ」
「誤解ですか?」
「君が父親に僕との結婚をねだったのだと思っていた。僕はそれが…」
「我儘令嬢の玩具になったみたいで気に入らなかった?」
「その通りだ。だけど違った。違うと分かったのはだいぶ後で…」
「それで学園の令嬢達が私に嫌がらせをするのを黙って見ていたのですか?パーティで私を置き去りにして令嬢と何度も消えたのですか?」
「すまなかった」
「婚約が気に入らなかったら何でもしていいと?どうしてヘインズ伯爵と話し合わなかったのですか。
シャルル様がすべきことはご自身の口から告げた契約を守ることです。私は既に守ってきたのにシャルル様は守らなくていいなんて、そんなのおかしいですものね」
「酷いことをしたのは分かってる、だけど」
「いいえ、1割も分かっていらっしゃいません。一生ご理解はいただけないかと思います。お慕いする方からの仕打ちがどれだけ心を傷付けるのか。分かっていると思っていらっしゃるのでしたらそれこそ誤解というものです。
ごちそうさまでした。デザートは結構です」
「クリスティーナ!」
「疲れましたわ。放していただけますか」
「っ!」
腕を掴まれたけど、放してもらい屋敷に帰った。
「ヘインズ邸からお手紙が届きました」
「ありがとう」
手紙を受け取り読むと“大事な話がある”と書いてあって夕食の招待だった。
お父様もお母様もいないのに大事な話があると呼び出されるのは不安だ。
「承諾の返事を出しておいてもらえるかしら」
「かしこまりました」
でも行かないと駄目よね。
数日後、時間通りにヘインズ邸に訪問できるよう支度をしていると、
「お嬢様、ヘインズ伯爵家のご令息が到着なさいました」
「え?」
支度中だったので少し待たせてしまった。
「お待たせしました」
「いや、いいんだ。勝手に迎えに来たのは僕だから」
差し伸べられた手の上に手を乗せた。何故か馬車の中で隣に座るシャルル様は私の手を握ったまま。正直居心地が悪かった。
到着すると機嫌良いヘインズ伯爵夫妻が迎えてくださった。居間に行くとお茶を出してくださった。
「辛い思いをさせたのは分かっている。申し訳なかった」
伯爵が頭を下げ、夫人も続いて頭を下げた。
「あの?」
「ビクセン嬢の腹に子はいなかった」
「はい?」
「彼女は強い思い込みで妊娠のような症状を引き起こしていたんだ。医者2人に確かめさせたが胎の中は空だった。ビクセン嬢は実家に帰って現実を受け入れている頃だろう」
「嫌な思いをさせたわね。本当にごめんなさいね。シャルルも反省しているから許してね」
「そうですか、分かりました」
「さて、食事にしよう」
食堂へ移動して食事を始めた。
「そろそろ結婚式の日取りを決めよう」
「2人とも卒業したのだもの。それにシャルルには早く妻を持たせるべきだわ。そうすれば余計なことは、」
「母上!」
「どうだろう、クリスティーナ」
つまり、妻が閨事の相手をすることによって性欲を解消させて、他の女性と遊ぶことが減ると言いたいのね。伯爵も夫人もシャルル様のことがこうも分からないものなのかしら。
シャルル様は恋人・愛人・婚外子を作ることを宣言した方。いずれ迎え入れて同居をするかもしれないし、そのときは正妻として快く彼女達を迎え入れるように求めた方。私と跡継ぎを作るけど、他の女性と楽しむことは止めないと宣言をした方。
私が閨に上がっても夫人の考えているような効果は無い。
「もしこれが恋愛結婚なら私が決めても構わないでしょう。ですがこの婚約は政略結婚です。つまりセルヴィー家で話し合って時期の候補を上げてヘインズ家の希望と擦り合わせるということをしなくてはなりません」
「それは、伯爵は君を尊重するはずだよ」
「そうよ。政略結婚だなんて」
「そうですね。ですがヘインズ家は婚姻と同時にセルヴィー産の絹の特価販売という優遇を得ます。それはセルヴィー家との取り引きです。それにシャルル様が政略結婚だとはっきり仰いました。そうですよね?シャルル様」
「…確かに言ったが、」
「私はずっとシャルル様の条件を守って参りました。
この先はセルヴィーからの条件も守っていただきます。
今、セルヴィーでは新しい事業を進行中ですので当分父は話し合いの席にはつけません。王都もセルヴィー領にもおりませんので」
「では何処に」
「父から誰にも教えるなとキツく言われていますので。父が戻り次第、日取りについて相談します」
「でも、それではいつになるのか分からないじゃない。何処にいるのか分かっているのなら連絡を取ってちょうだい。嫁ぐ身なら婚家に合わせるものでしょう?」
「お返事は1年もかかりませわ。それに本来ならとっくに教会をおさえていたはずです。妊娠騒動があったから決められずに今日まできたのではありませんか?私は…セルヴィーは婚約時からずっと婚家になるヘインズ伯爵家に合わせてきたと思いますが?あ、この野菜の包み焼き、美味しいですわ」
「……」
ひたすら食事を進めて早く帰ろうと思った。やっとデザートというときに、シャルル様が待ったをかけた。
「すまないが僕とクリスティーナの分はテラスに用意してくれ」
「かしこまりました」
「さあ、クリスティーナ。外の空気を吸おう」
シャルル様に手を繋がれテラスに出た。準備が整うまで少し花を見るらしい。
「クリスティーナ、僕たちはいろいろ誤解があったんだ」
「誤解ですか?」
「君が父親に僕との結婚をねだったのだと思っていた。僕はそれが…」
「我儘令嬢の玩具になったみたいで気に入らなかった?」
「その通りだ。だけど違った。違うと分かったのはだいぶ後で…」
「それで学園の令嬢達が私に嫌がらせをするのを黙って見ていたのですか?パーティで私を置き去りにして令嬢と何度も消えたのですか?」
「すまなかった」
「婚約が気に入らなかったら何でもしていいと?どうしてヘインズ伯爵と話し合わなかったのですか。
シャルル様がすべきことはご自身の口から告げた契約を守ることです。私は既に守ってきたのにシャルル様は守らなくていいなんて、そんなのおかしいですものね」
「酷いことをしたのは分かってる、だけど」
「いいえ、1割も分かっていらっしゃいません。一生ご理解はいただけないかと思います。お慕いする方からの仕打ちがどれだけ心を傷付けるのか。分かっていると思っていらっしゃるのでしたらそれこそ誤解というものです。
ごちそうさまでした。デザートは結構です」
「クリスティーナ!」
「疲れましたわ。放していただけますか」
「っ!」
腕を掴まれたけど、放してもらい屋敷に帰った。
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