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ジネットの願い
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【 ジネットの視点 】
クリスティーナは問診内容のメモを見ながらアドバイスを始めた。
『公女様。果汁だからといってジュースばかり飲んでいてはいけません。口にして甘いものは摂り過ぎると体に負荷がかかると思ってください。野菜の好き嫌いもいけません。食事は偏らないこと。魚や貝や海藻も食べましょう。あと化粧品は全て使うのを止めてください。本来エステル様の歳ならば日常的に使う必要はありません。肌に負担がかかっているのです。そしてそれ、頻繁に肌を触るのを止めて髪も顔にかからないようにしてください。触る必要があるのなら手を洗ってからにしてください。洗顔も余計なものが入っている商品は止めてください。後で説明書と洗顔料と保湿液を届けさせますのでお試しください。先程の話をよく思い出してください』
『分かったわ』
エステル様は不満そうだった。
『公女様、これは強制ではありません。どうなさるかは自由です。届けさせる洗顔料と保湿液はあくまで対処法で、根本を正す気が無ければ意味がありません。ですのでその気がなければ捨てるなりメイドにあげるなりしてくださって結構です。では失礼します』
クリスティーナが去るとエステル様は不満を口にした。
『自分の店の商品を売りたいだけじゃないの?偉そうに』
『エステル様、私はクリスティーナを信じています。彼女は自分の店の商品を私やエルザに薦めたことは一度もありません。エステル様がお気に召さないようでしたら指導を無視して使用しなくても結構です。ただ悩んでいらっしゃるようでしたので友人を頼っただけですわ』
『あ、』
『では私も失礼します』
エステル様は少し我儘なところがあった。だけど親身になってくれるクリスティーナを酷く言われて腹が立った。クリスティーナ本人に言わなかっただけマシだけど、態度に出ていてクリスティーナは敏感に察知していた。
週明け、クリスティーナに聞いたら、商品を用意して戻りモルゾン家のメイドに渡して帰ったらしい。
『不快な思いをさせてごめんなさい』
『仕方ないわ。でももう紹介は遠慮させてね。お店に来てくださるお客様で十分だし、治す気がない方に時間を割いても良いことないもの』
『そうね、分かったわ』
後日、ゼイン様から手紙をもらった。エステル様の元気がないと書いてあった。
経緯を書いて“余計なお世話をしてしまいました。申し訳ございません”と締めくくり返事を送った。
正直言って私はモルゾン家や婚約者よりクリスティーナの方が大事だし好きだから、クリスティーナを悪く言う方と仲良くするつもりはない。ゼイン様が問題視するようなら婚約を解消して欲しいと言うつもりだった。
2週間ほど経ってゼイン様から先触れが届き、お菓子を用意して待った。
出迎えると馬車からエステル様も降りてきた。
ちょっと気不味いなぁと思いながら応接間に通した。
『……ごめんなさい』
第一声はエステル様の謝罪だった。
『ジネット、悪かったね。せっかく友人を紹介してくれたのに。エステルに失礼な言動があったとか』
『余計なお節介だっただけですわ。もう紹介はしませんのでご安心ください』
『……』
『その、セルヴィー伯爵令嬢にも謝罪をする機会をくれないだろうか』
『私からお伝えしますわ』
『呼び出してもらうことは出来ない?』
『クリスティーナは店を2店舗出していて、管理や教育と商品の発案もしていますし勉強もあって忙しくしている子なのです。しかも私が友人として呼んでもモルゾン家の名を出せば、彼女は格上が呼んだと思って予定を変えて駆け付けてしまいますわ。そんなことはしたくありません。それにモルゾン家に直接関わって欲しくありませんので私から伝えますわ』
『君にとってセルヴィー伯爵令嬢がどういう存在なのか分かったよ。
エステルをよく見てくれないか』
エステル様をよく見ると、化粧をほぼしていないことが分かった。それに吹き出物も落ち着いてる。
『効果があったのですね?』
『はい、ジネット様』
『では効果がありましたと伝えておきますね』
『私…』
エステル様の瞳には溢れそうなほど涙が溜まっていた。
『クリスティーナはお客様に親切ですよ。店の場所を教えますから足をお運びになってはいかがでしょう。土曜か日曜のオープン時ならいる可能性があります』
紙とペンを持って来させて地図を書いて店名とオープン時間を書いた。
『どうぞ。
ツケ払いはしていませんので複数種類の硬貨を持って行ってください。店では平民も貴族もなく順番待ちをしますし売り切れて買えないなんてこともありますが、ご承知おきください』
『ありがとうございます』
『ありがとう、ジネット』
『ジネット様、申し訳ありませんでした』
『分かりましたわ。お茶を淹れ直しましょう』
エステル様は休みの日の朝に店に行きクリスティーナに謝ったらしい。そこからはエステル様はクリスティーナに懐いた。モルゾン公爵夫人もクリスティーナを気に入り、公爵やゼイン様も気に入ってパーティなどに招くようになった。
クリスティーナは緊張で倒れそうだから誘わないで欲しいのになんて言っていた。モルゾン公爵家からの招待状なんて喉から手が出るほど欲しがる貴族が山のようにいるのに。
エステル様は美肌になり嬉しそうだった。
いろいろあった。ゼイン様がヒューゴ様を紹介しようとしてクリスティーナを激怒させてしまったこと、その後から付き纏われるようになって、クリスティーナはあのジオ公子を陥落させたこと。大公女やサリモア公女の件、妊娠騒動。
だけどジオ公子に振り回されている部分はあってもクリスティーナはぶれずに輝いている。
エルザの成婚式の後のパーティで初夜おあずけの危機があるとは思わなかった。王子殿下は微笑んではいらしたけど、動揺が目に現れていて…面白かった。待ちに待ったこの日にライバルがいたんだもの。私達がクリスティーナを好きなのは知っていらしたでしょうけど、すっかり殿下の存在を忘れてクリスティーナが私とモルゾン領で過ごしたことに嫉妬して絡むなんて、そこまでだったとは予想外でしたよね?
なんとか私とクリスティーナと王宮メイドが結託して酔ったエルザを夫婦の寝室へ向かわせた。“おやすみの挨拶をしていらっしゃい”と言っただけなのだけど。後はどう引き止めるかは殿下次第。帰って来なかったから殿下は宥めて成功させたのだと安心した。
“私、反逆罪に問われるかと思ったわ”と冗談のようなことを真顔で言うクリスティーナを独り占めできた。
そしてゼオロエン領にも来てもらえて幸せだった。後はクリスティーナがジオ公子と結婚すれば私はクリスティーナと会える機会を確保できるしモルゾン家とジオ家とゼオロエン家とセルヴィー家の繋がりが強固になる。
だけど王都に戻って来た私達が知ったのはアマリア・ビクセンは妊娠していなかったという知らせだった。
クリスティーナは問診内容のメモを見ながらアドバイスを始めた。
『公女様。果汁だからといってジュースばかり飲んでいてはいけません。口にして甘いものは摂り過ぎると体に負荷がかかると思ってください。野菜の好き嫌いもいけません。食事は偏らないこと。魚や貝や海藻も食べましょう。あと化粧品は全て使うのを止めてください。本来エステル様の歳ならば日常的に使う必要はありません。肌に負担がかかっているのです。そしてそれ、頻繁に肌を触るのを止めて髪も顔にかからないようにしてください。触る必要があるのなら手を洗ってからにしてください。洗顔も余計なものが入っている商品は止めてください。後で説明書と洗顔料と保湿液を届けさせますのでお試しください。先程の話をよく思い出してください』
『分かったわ』
エステル様は不満そうだった。
『公女様、これは強制ではありません。どうなさるかは自由です。届けさせる洗顔料と保湿液はあくまで対処法で、根本を正す気が無ければ意味がありません。ですのでその気がなければ捨てるなりメイドにあげるなりしてくださって結構です。では失礼します』
クリスティーナが去るとエステル様は不満を口にした。
『自分の店の商品を売りたいだけじゃないの?偉そうに』
『エステル様、私はクリスティーナを信じています。彼女は自分の店の商品を私やエルザに薦めたことは一度もありません。エステル様がお気に召さないようでしたら指導を無視して使用しなくても結構です。ただ悩んでいらっしゃるようでしたので友人を頼っただけですわ』
『あ、』
『では私も失礼します』
エステル様は少し我儘なところがあった。だけど親身になってくれるクリスティーナを酷く言われて腹が立った。クリスティーナ本人に言わなかっただけマシだけど、態度に出ていてクリスティーナは敏感に察知していた。
週明け、クリスティーナに聞いたら、商品を用意して戻りモルゾン家のメイドに渡して帰ったらしい。
『不快な思いをさせてごめんなさい』
『仕方ないわ。でももう紹介は遠慮させてね。お店に来てくださるお客様で十分だし、治す気がない方に時間を割いても良いことないもの』
『そうね、分かったわ』
後日、ゼイン様から手紙をもらった。エステル様の元気がないと書いてあった。
経緯を書いて“余計なお世話をしてしまいました。申し訳ございません”と締めくくり返事を送った。
正直言って私はモルゾン家や婚約者よりクリスティーナの方が大事だし好きだから、クリスティーナを悪く言う方と仲良くするつもりはない。ゼイン様が問題視するようなら婚約を解消して欲しいと言うつもりだった。
2週間ほど経ってゼイン様から先触れが届き、お菓子を用意して待った。
出迎えると馬車からエステル様も降りてきた。
ちょっと気不味いなぁと思いながら応接間に通した。
『……ごめんなさい』
第一声はエステル様の謝罪だった。
『ジネット、悪かったね。せっかく友人を紹介してくれたのに。エステルに失礼な言動があったとか』
『余計なお節介だっただけですわ。もう紹介はしませんのでご安心ください』
『……』
『その、セルヴィー伯爵令嬢にも謝罪をする機会をくれないだろうか』
『私からお伝えしますわ』
『呼び出してもらうことは出来ない?』
『クリスティーナは店を2店舗出していて、管理や教育と商品の発案もしていますし勉強もあって忙しくしている子なのです。しかも私が友人として呼んでもモルゾン家の名を出せば、彼女は格上が呼んだと思って予定を変えて駆け付けてしまいますわ。そんなことはしたくありません。それにモルゾン家に直接関わって欲しくありませんので私から伝えますわ』
『君にとってセルヴィー伯爵令嬢がどういう存在なのか分かったよ。
エステルをよく見てくれないか』
エステル様をよく見ると、化粧をほぼしていないことが分かった。それに吹き出物も落ち着いてる。
『効果があったのですね?』
『はい、ジネット様』
『では効果がありましたと伝えておきますね』
『私…』
エステル様の瞳には溢れそうなほど涙が溜まっていた。
『クリスティーナはお客様に親切ですよ。店の場所を教えますから足をお運びになってはいかがでしょう。土曜か日曜のオープン時ならいる可能性があります』
紙とペンを持って来させて地図を書いて店名とオープン時間を書いた。
『どうぞ。
ツケ払いはしていませんので複数種類の硬貨を持って行ってください。店では平民も貴族もなく順番待ちをしますし売り切れて買えないなんてこともありますが、ご承知おきください』
『ありがとうございます』
『ありがとう、ジネット』
『ジネット様、申し訳ありませんでした』
『分かりましたわ。お茶を淹れ直しましょう』
エステル様は休みの日の朝に店に行きクリスティーナに謝ったらしい。そこからはエステル様はクリスティーナに懐いた。モルゾン公爵夫人もクリスティーナを気に入り、公爵やゼイン様も気に入ってパーティなどに招くようになった。
クリスティーナは緊張で倒れそうだから誘わないで欲しいのになんて言っていた。モルゾン公爵家からの招待状なんて喉から手が出るほど欲しがる貴族が山のようにいるのに。
エステル様は美肌になり嬉しそうだった。
いろいろあった。ゼイン様がヒューゴ様を紹介しようとしてクリスティーナを激怒させてしまったこと、その後から付き纏われるようになって、クリスティーナはあのジオ公子を陥落させたこと。大公女やサリモア公女の件、妊娠騒動。
だけどジオ公子に振り回されている部分はあってもクリスティーナはぶれずに輝いている。
エルザの成婚式の後のパーティで初夜おあずけの危機があるとは思わなかった。王子殿下は微笑んではいらしたけど、動揺が目に現れていて…面白かった。待ちに待ったこの日にライバルがいたんだもの。私達がクリスティーナを好きなのは知っていらしたでしょうけど、すっかり殿下の存在を忘れてクリスティーナが私とモルゾン領で過ごしたことに嫉妬して絡むなんて、そこまでだったとは予想外でしたよね?
なんとか私とクリスティーナと王宮メイドが結託して酔ったエルザを夫婦の寝室へ向かわせた。“おやすみの挨拶をしていらっしゃい”と言っただけなのだけど。後はどう引き止めるかは殿下次第。帰って来なかったから殿下は宥めて成功させたのだと安心した。
“私、反逆罪に問われるかと思ったわ”と冗談のようなことを真顔で言うクリスティーナを独り占めできた。
そしてゼオロエン領にも来てもらえて幸せだった。後はクリスティーナがジオ公子と結婚すれば私はクリスティーナと会える機会を確保できるしモルゾン家とジオ家とゼオロエン家とセルヴィー家の繋がりが強固になる。
だけど王都に戻って来た私達が知ったのはアマリア・ビクセンは妊娠していなかったという知らせだった。
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