笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

文字の大きさ
155 / 215

つい商売っ気が

しおりを挟む
そして4枚目の絵画を見た。

「あ、ここ…テイラーさんに似てますね」

「へ?」

「ここの豚の顔です」

「何処ですか?」

「この奥の…」

「あの野郎…」

豚舎の絵の中にはたくさんの豚がいて、その1匹の顔がテイラーさんの顔を似ていた。テイラーさんは青筋を立てて不在の作者に殺気を向けていた。

「テイラーさん、レディの前ですよ」

「し、失礼しました」

「この作者と親しいのですか?」

「腐れ縁みたいなもので。何度と持ち込んでは来るのですがパッとしなくて。今回は展示する予定の作者が急に展示を取りやめたのでジョアンに声をかけたんです。なのにまさかこんな…」

「売れる前で良かったですね。ではそろそろ」

シャルル様は帰ろうとしたけど

「もしかして、彼の作品は全部こんな感じなのでしょうか」

私はつい思い付いてしまった。

「さあ、どうでしょう」

「ジョアンさんのこの手の絵がたくさんあるのなら、彼だけの絵画展もありかもしれませんよ」

「はい?こんな不吉な絵をですか?」

「どんな不吉が隠れているか入場者に探してもらうのです。見つけても口に出したり指でさし示したりしないルールで。絵に興味のない人が絵に興味を持つきっかけにもなるかもしれません。ですがお客様が来ないかもしれませんけど」

「この絵をですか?お嬢様は見たいと思いますか?」

「絵を見ながら怖さも感じるなんて楽しそうです。人によっては夢に出てきそうですけど、興味がありますね。もの好きもいて買いたいと申し出があるかもしれませんが、あまり購入は見込めないでしょう。入場料を取る方がいいですね。だとするとジョアンさんには絵の値段というより来場者の払うチケット代の何割かを渡す契約になりますよね」

「え、ええ」

「特に王都でイベントがあって人が集まっている時期か、もしくは全く何もない日を狙うのもいいですよね。ある程度の入場料を取るなら貴族が集まるときでないと。もしくは何も催しなどがなくて行く場所がない日を選べば仕方なくきてくれるかもしれません」

「それは私どもで実行してもかまいませんか?」

「ええ。なんの権利も主張しません」

「お嬢様、お名前を伺ってもよろしいでしょうか」

「クリスティーナ・セルヴィーと申します」

「セルヴィー伯爵家の!?…そうでしたか。王都で人気の店のオーナー様ですね。それも3店舗も。正直、お嬢様の名前だけお使いなのかと思っておりましたがそうではなかったのですね。誰も見つけなかった絵の中の異物を見つけ、このようなものにも活路を与えるとは。実に素晴らしいです。お連れの方は…」

「僕は彼女の婚約者のシャルル・ヘインズです」

「もし、やると決まったらチケットをお届けに上がります」

「楽しみにしていますわ」

合わせて5枚も隠し絵になっているのならジョアンさんはきっと隠し絵専門と言っていいくらい他にも描いていると思う。


予約をしていたレストランに少し遅れてしまったが問題なかった。食事をしているとやっぱり視線が集まる。

「しかし、クリスティーナはすごいな。あれを商売にしてしまうのだから」

「貴族令嬢らしくないですよね」

「以前はどちらかというと令嬢に商売なんてと思うところもあったけど、目の当たりにすると見方が変わったよ。すごく興味深い。結局5枚とも隠されたものを見つけたのはクリスティーナだし。あの絵は面白いよ。君がいなかったら何も気付けずに絵画展を出ていた。楽しかったよ、クリスティーナ。ありがとう」

「こちらこそありがとうございました」

「嫌いなものは食べなくていいからね」

「外ではアレルギーや気持ち悪いものでもない限り食べることにしています。新たな出会いがあるかもしれませんから」

「新たな出会い?」

「いろいろな調理の仕方があって口に合うかもしれません。例えばミルクスープの中の玉ねぎは大丈夫とか、酢漬けの胡瓜は大丈夫とか、カリッと焼いた鶏皮は大丈夫とか」

「それ、クリスティーナのこと?」

「残念ながら違います」

「そうか。じゃあ、違う楽しみができるんだね。クリスティーナを観察していたらのときの表情が見れるわけだ」

「み、見ないでください」

シャルル様の微笑みは少しまた違う雰囲気を纏っていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一年だけの夫婦でも私は幸せでした。

クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。 フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。 フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。 更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。

「君は地味な裏方だ」と愛人を優遇するサイコパス気質の夫。〜私が去った後、商会の技術が全て私の手によるものだと気づいても、もう手遅れです〜

水上
恋愛
「君は地味だから裏方に徹しろ」 効率主義のサイコパス気質な夫は、妻であるクララの磨いた硝子を愛人の手柄にし、クララを工房に幽閉した。 彼女は感情を捨て、機械のように振る舞う。 だが、クララの成果を奪い取り、夫が愛人を壇上に上げた夜、クララの心は完全に凍りついた。 彼に残した書き置きは一通のみ。 クララが去った後、商会の製品はただの石ころに戻り、夫の計算は音を立てて狂い始める。 これは、深い絶望と、遅すぎた後悔の物語。

「最高の縁談なのでしょう?なら、かわってあげたら喜んでくれますよね!」

みっちぇる。
恋愛
侯爵令嬢のリコリスは20歳。立派な嫁きおくれである。 というのも、義母がなかなかデビューさせてくれないのだ。 なにか意図を感じつつも、周りは義母の味方ばかり。 そん中、急にデビュタントの許可と婚約を告げられる。 何か裏がある―― 相手の家がどういうものかを知り、何とかしようとするリコリス。 でも、非力なリコリスには何も手段がない。 しかし、そんな彼女にも救いの手が……?

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

処理中です...