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愛しい存在との別れのあと
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翌日には小さな可愛い花束が贈られてきた。メッセージカードには“クリスティーナの小さな親友ティアラに”と書いてあった。
ティアラのヒゲをしまっているペンケースのそばに花を飾った。今更だけど、ティアラの肖像画をたくさん描かせれば良かったと後悔している。
これをきっかけに新商品を思い付いた。中身は変わらないけど入れ物の新しいデザインを描いていく。
唇に塗る2色の保湿剤を横長に並べた細長い入れ物。使い終われば猫や犬のヒゲを入れられる入れ物に早変わりする。宝石箱のような装飾にした。もう一つはチークとアイシャドウの入れ物。開けると肉球の形になっている。大きな丸にはチークを。少し小さめの4つの丸にはアイシャドウを4色。使い終われば肖像画を入れたり爪や歯を入れたりもできる。肖像画を入れられるとしか言わないつもり。ペットとの別れを想像させないように売りたい。
「これを領地に送ってもらえるかしら」
「かしこまりました」
昨日のことを思い出す。
シャルル様の真心を感じた時間。あの優しさは好きになったときの彼だと感じる。嬉しかったし心遣いに感謝している。だけど…
3日後、シャルル様と絵画展に来た。奥の方には知名度のある画家の絵があり、入り口付近は売り出したい画家の作品と、集客用に目を引く作品ひとつが展示してあった。
順路を辿り奥を見終わり退路の途中には無名画家の絵が展示されていた。
「絵の才能があるって羨ましいですね」
「絵を描きたいの?」
「こんなに立派な絵に仕上げるまでどのくらいかかるかわかりませんけど、その間中無心になれそうですから」
「そうだね。だけど長い時間夢中になると寂しいと思う者がいると思うけど。例えばティアラならキャンバスに爪を立てたかもしれないよ」
「あの子は大きな猫なので立ち上がって押し倒したかもしれませんね」
「描くとしたら何を描きたい?」
「動物がいいですけど動いてしまうので難しいですね。そもそも絵の才能なんてありませんし」
「商品のデザイン画を描いているんだよね?」
「仕様書のためのデザインとここに展示してある絵画とではまるで違いますわ」
「試してみた?」
「う~ん…止めておきます」
そう答えるとシャルル様は微笑んだ。
「これはまた独特な感性の持ち主のようだね。皮膚を青く塗っているよ」
「こちらの絵は内面の闇を感じますね」
「どうして?」
「この何気ない鬱蒼とした森をよく見ると…ここ」
「これは…」
鬱蒼とした緑と多くの茶色い木々に紛れてロープがぶら下がっていて、その先は輪になっていた。
「この絵画展の主催者は見落としてしまったのか、あえて展示したのか、どちらでしょうね」
「青い皮膚の隣だと後者かな。作者は違うけど。あ、ちょっといいですか」
シャルル様は運営側の従業員を呼び止めた。
「はい、なんでしょうか」
「この絵なんですが、ここ、このロープ。この絵はあえて展示しているのですか?」
「か、確認してまいります」
慌てて連れてこられた絵画展の主催者らしき人は、問題の箇所を見るとサッと絵を外した。
「大変失礼いたしました」
深々と頭を下げて絵を持っていってしまった。
「気付かなかったみたいだね」
「そのようですね」
全て見てまわり帰ろうとしたときに先程絵を外した責任者らしい人に呼び止められた。
「あの、お客様」
「なんでしょう」
「少しお時間をいただけますか?」
シャルル様が私を見たので頷いた。
「かまいません」
「こちらへどうぞ」
個室に案内された。多分商談ルームだと思う。
「私、絵画展の責任者のドミニク・テイラーと申します。この度は大変失礼をいたしました。このことはどうかご内密に」
「あの作者の他の絵を売りましたか?」
「まだ売れていません」
「でしたら他言しませんわ」
「僕も他言しません」
「あの、もし他の作品が売れていたら…」
テイラーさんは私の質問の意図を理解していなかった。
「他の作品も似たようなものが描いてある可能性がありますよね?」
「っ!少しお待ちください。トニー、あの作家の作品を全部持ってきてくれ」
数分後に4枚の絵がテーブルに置かれた。3人で間違い探しでもするかのように絵に穴が開きそうなほど見た。
1枚目
「あ、ここ。石垣の間に目があります」
テイラーさんは慌てて私が指差した箇所に顔を近付けた。
「なっ、なんで目なんか…」
2枚目
「あ、ここ。川の水が岩に当たって泡立っている所をよく見ると人が沈んでいます」
「なんで人なんか沈めてるんだ!」
3枚目
「あ、ここ。稲を植えている人達の中に手を植えている人がいます」
「え!?」
「ここ、これは手ですよね?」
「…手です」
そして4枚目は…
ティアラのヒゲをしまっているペンケースのそばに花を飾った。今更だけど、ティアラの肖像画をたくさん描かせれば良かったと後悔している。
これをきっかけに新商品を思い付いた。中身は変わらないけど入れ物の新しいデザインを描いていく。
唇に塗る2色の保湿剤を横長に並べた細長い入れ物。使い終われば猫や犬のヒゲを入れられる入れ物に早変わりする。宝石箱のような装飾にした。もう一つはチークとアイシャドウの入れ物。開けると肉球の形になっている。大きな丸にはチークを。少し小さめの4つの丸にはアイシャドウを4色。使い終われば肖像画を入れたり爪や歯を入れたりもできる。肖像画を入れられるとしか言わないつもり。ペットとの別れを想像させないように売りたい。
「これを領地に送ってもらえるかしら」
「かしこまりました」
昨日のことを思い出す。
シャルル様の真心を感じた時間。あの優しさは好きになったときの彼だと感じる。嬉しかったし心遣いに感謝している。だけど…
3日後、シャルル様と絵画展に来た。奥の方には知名度のある画家の絵があり、入り口付近は売り出したい画家の作品と、集客用に目を引く作品ひとつが展示してあった。
順路を辿り奥を見終わり退路の途中には無名画家の絵が展示されていた。
「絵の才能があるって羨ましいですね」
「絵を描きたいの?」
「こんなに立派な絵に仕上げるまでどのくらいかかるかわかりませんけど、その間中無心になれそうですから」
「そうだね。だけど長い時間夢中になると寂しいと思う者がいると思うけど。例えばティアラならキャンバスに爪を立てたかもしれないよ」
「あの子は大きな猫なので立ち上がって押し倒したかもしれませんね」
「描くとしたら何を描きたい?」
「動物がいいですけど動いてしまうので難しいですね。そもそも絵の才能なんてありませんし」
「商品のデザイン画を描いているんだよね?」
「仕様書のためのデザインとここに展示してある絵画とではまるで違いますわ」
「試してみた?」
「う~ん…止めておきます」
そう答えるとシャルル様は微笑んだ。
「これはまた独特な感性の持ち主のようだね。皮膚を青く塗っているよ」
「こちらの絵は内面の闇を感じますね」
「どうして?」
「この何気ない鬱蒼とした森をよく見ると…ここ」
「これは…」
鬱蒼とした緑と多くの茶色い木々に紛れてロープがぶら下がっていて、その先は輪になっていた。
「この絵画展の主催者は見落としてしまったのか、あえて展示したのか、どちらでしょうね」
「青い皮膚の隣だと後者かな。作者は違うけど。あ、ちょっといいですか」
シャルル様は運営側の従業員を呼び止めた。
「はい、なんでしょうか」
「この絵なんですが、ここ、このロープ。この絵はあえて展示しているのですか?」
「か、確認してまいります」
慌てて連れてこられた絵画展の主催者らしき人は、問題の箇所を見るとサッと絵を外した。
「大変失礼いたしました」
深々と頭を下げて絵を持っていってしまった。
「気付かなかったみたいだね」
「そのようですね」
全て見てまわり帰ろうとしたときに先程絵を外した責任者らしい人に呼び止められた。
「あの、お客様」
「なんでしょう」
「少しお時間をいただけますか?」
シャルル様が私を見たので頷いた。
「かまいません」
「こちらへどうぞ」
個室に案内された。多分商談ルームだと思う。
「私、絵画展の責任者のドミニク・テイラーと申します。この度は大変失礼をいたしました。このことはどうかご内密に」
「あの作者の他の絵を売りましたか?」
「まだ売れていません」
「でしたら他言しませんわ」
「僕も他言しません」
「あの、もし他の作品が売れていたら…」
テイラーさんは私の質問の意図を理解していなかった。
「他の作品も似たようなものが描いてある可能性がありますよね?」
「っ!少しお待ちください。トニー、あの作家の作品を全部持ってきてくれ」
数分後に4枚の絵がテーブルに置かれた。3人で間違い探しでもするかのように絵に穴が開きそうなほど見た。
1枚目
「あ、ここ。石垣の間に目があります」
テイラーさんは慌てて私が指差した箇所に顔を近付けた。
「なっ、なんで目なんか…」
2枚目
「あ、ここ。川の水が岩に当たって泡立っている所をよく見ると人が沈んでいます」
「なんで人なんか沈めてるんだ!」
3枚目
「あ、ここ。稲を植えている人達の中に手を植えている人がいます」
「え!?」
「ここ、これは手ですよね?」
「…手です」
そして4枚目は…
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