戦国タイムトンネル

サクラ近衛将監

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第一章 裏庭のトンネル

1ー2 穴の調査

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「コウちゃん、何してたん?」

「おう、京子か。
 庭の片隅にあったお地蔵さんかどうかよくわからないんやが、石像の建屋がこないだの嵐で壊れたから新しく作ったところやで。」

「へぇ、意外とコウちゃんって信心深い?」

「いやぁ、どっちかと言えば俺は無神論者のほうやで。
 ただ、爺ちゃん、婆ちゃんを含めて、先祖がまつってきたもんを拒否はしないし、おろそかにしたくないだけや。」

「へぇ、えらいじゃん。
 そのお地蔵さんとやら、見せてもらえる?
 私も何度かここにお邪魔しているけれど、お地蔵さんなんて気が付かなかったもの。」

「おお、いいぞ。
 但し、笑うなよ。
 素人の造った上屋うわやなんやからな。」

「コウちゃんが一生懸命作ったものを笑ったりしないわよ。」

 俺と京子は、連れ立って庭の片隅にある工事個所に行った。
 地蔵堂というかほこらというか、出来上がった上屋をみて京子が言った。

「へぇ、立派じゃん。
 コウちゃん、もしかすると大工になれるよ。」

「お世辞でもうれしいぜ。
 昨日から色々頑張ったからな。」

「そうなんだ。
 でも、これって、本当に、お地蔵さんかどうかわからないね。
 そもそも、どちらが前かもわからない。
 あと、右手の波板は何?」

「ああ、そこはもともと台座があったところ。
 台座も大分イカれていたから、新調するために掘り返したら穴が出て来たんや。
 放っておくと危ないから波板で蓋をしているところなんじゃ。」

「え?
 この波板、透けて見えるけど、穴なんかあるの?」

「オゥ、何だ?
 穴が見えないってのか?」

 穴の上に雨除けで蓋をしていたのは、薄い樹脂製の波板は透けて見える奴や。
 納屋にあったのがそれだったから使っているだけなんやが・・・。

 少なくとも俺の目でははっきりと穴の入り口が波板越しに見えている。
 何で京子にこれが見えないんや?
 
 おかしなこともあるもんやと思い、隅に置いてある重しのブロックを除けて、波板を外し、穴を表に出したんやが、それでも京子は穴なんか無いという。

「ヤダァ、コウちゃんたら、また私をからかってぇ。
 何にもないじゃん。」

 あれぇ?
 これが見えないということはもしかして俺だけに見える穴か?

 そこで言い合いをしても始まらないから一応俺の方が引き下がったが、どうやら不思議なことが起きている様や。
 京子は俺と同級生であり、彦根の会社に就職が決まっている。

 何でも親戚筋のコネで入った会社らしい。
 彦根も長浜も人口ではそんなに変わらんけど、彦根の方が人口減少率は少ないようなんや。

 そうは言っても同じ地方都市やからな、さほど変わらん。
 京子も大学受験はしてみたが、三流大学にしか合格しなかったので、就職することにしたようやな。

 大学で得ることもあるだろうが、周囲に流されると学業が疎かになって遊ぶだけに終わり、就職の際に困る者も多いらしいから、その意味では良い見切りなのかもしれない。
 特に京子はドライな考えの持ち主であり、就職先は結婚までの準備段階としか捉えていない。

 女は結婚して、子供を産んでナンボと考えている様や。
 まぁ、チョット男勝りのところがあるから、男の俺ともうまいこと付き合ってきたわけやろな。

 世間話を含めて色々と半時間ほども縁側に腰かけて駄弁っていたが、陽が斜めになるとすぐに寒くなってきたので、お互いに別れを告げて家に引き上げた。
 トンネルの調査は次の土・日やな。

◇◇◇◇

 幸いにして2月の第二週からは、登校しても午前中だけの授業になるし、大学受験のためにあちらこちらに出かけている奴も多いんだ。
 実質まともな授業にはなっていないんだが、俺の場合だと、2月15日までは一応の授業があることになっている。

 就職クラスの場合は、21日まで授業があるらしい。
 どちらにしろ、世の中は、22日(土)から24日(月)は三連休なんだぜ。

 特に予定もないから、トンネル調査は22日からにしよう。
2月22日、予定通り庭で見つけたトンネルの探検を行うことにした。
 色々と装備を整えるのに結構手間取ったぜ。

 酸欠で死にたくはないから、結局ライフゼムを購入したよ。
 こいつは流石にホームセンターでは置いてなかったので、通販で購入した。

 ネットを探すと中古もあったんだが、やっぱり中古で不具合が有ったりしたら危ないかもと思って、保証付きの新品を購入したよ。
 しめて35万ほどもかかったが、未だ無職の俺にとっては少し高い買い物だったかもしれんなぁ。

 でもまぁ、損害賠償やら、保険やら、相続やらで俺の口座には億を超える金がある。
 多少の無駄遣いでも今のところはまだ余裕があるんや。

 ライフゼムで活動できるのは、人にもよるらしいが15分から20分程度らしいので無理はしない。
 一応の目安としては、トンネルに侵入して10分を目途に引き上げることにしている。

 この制限時間内でただ歩くだけなら800mぐらいは行けそうや。
 つまりは片道五分(400m前後?)になったら無理をせずに引き上げるということで考えている。

 ライフゼムは、消防の救助隊員が使うような代物で、マスク、レギュレーター、空気タンクに背負子しょいこなどからなっている。
 ヘルメットも一応折り畳み式の簡易なものを用意しているぜ。

 あと、厚めのデニムの上下に、インナーでパッチやらセーターやらを着こんで、皮手袋をつけ、登山靴を履いている。
 少し重装備過ぎるかもしれんが、安全に越したことはないやろう。

 お地蔵さんかどうかは今でもわからないが、潜る前に手を合わせて拝んでおいた。
 御利益ごりやくがあると良いんじゃがな。

 ヘルメットにLEDランプをつけ、手にもマグライトを持って、トンネルの階段を慎重に降りて行った。
 念のため、庭に生えている太めの樹木に縛り付けたザイルを入り口から垂らして、進むに従って背後のリュックから伸ばして行き、万が一視界が失われてもロープを手繰れば外に戻れるようにしているというわけや。

 斜めの移動距離で10m前後、垂直方向なら精々地下5mくらいかな、階段の下に降りて通路に出た。
 まっすぐな通路で、高さが2m半、幅も同じく2m半ほどもありそうだ。

 壁、天井、床面は汚れとかほこりがついていたり、蜘蛛の巣が張っていたりしているけれど、きちんと方形に切り出した石材を積み上げているように見えるので強度的には問題が無いと思うんやが、・・・。
 その造りと言えば、石と石の隙間がカミソリも入らないほど、きっちりと組まれている。

 まるでインカの遺跡の様(俺は行ったことが無いから詳しくは知らんが、そういう風にネットでは表示されているよね?)なんやけど、一体誰がこんなものを造ったんやろ。
 日本の石垣ってこんなにきれいな方形には作っていないよね。

 まぁ、どっかの石工さんがきれいに造ったものなら、最近のものと言うことになるのかな?
 その場合やと、精々明治ぐらいだろう。

 江戸時代の農家にこんな石造りの洞穴を造るわけがないと思うんや。
 さらに20mほど先に通路よりも少し幅広の空間があって、正面に木製の扉が見える。

 ウン?
 こいつは、もしやお宝なのか?

 そんな浮ついた気持ちながら、何かあっても困るから慎重に行動するのは忘れない。
 周りが暗い上に閉鎖空間なんで、俺としては結構ビビり気味なんやで。

 木製の扉は、いわゆる回転開きのドアじゃなくって、スライド式の引き戸のようやな。
 扉自体はかなり古めかしく一部朽ちているけれど、全体としては壊れてはいないようやった。

 時間は、地下のトンネルに入り始めてから2分足らずを経過したが、まだまだ空気には十分余裕はあったので、おそるおそる、その引き戸を開いたところまでは記憶がある。
 次の瞬間、グワーンと頭を激しく揺すられたような感じがして、俺の意識は暗転した。

 ◇◇◇◇

 次に目覚めた時、俺は布団に・・・?
 じゃねぇな。

 薄っぺらの布を重ねたような夜具の上に寝ていて、上に同じく布(毛布じゃねえぞ)を布団代わりにかけている様だ。
 板張りの床だし、天井が無くって、梁やら屋根が直接見える粗末な小屋に寝かされていた。

 何だ?
 今時、随分と粗末な造りだが、どこかのロケの現場にでも迷い込んだのか?

 気でも失って救助されたんなら、病院の病室で気づくってのが普通やろが、・・・。
 これってどこかの納屋なのか?

 そう思っていると、薄暗い中で、木戸・・・、障子じゃねえぞ。
 木製の引き戸や。

 俺が開けた例のトンネルにあった引き戸とは明らかに違う代物で、まだ真新しいな。
 ガタピシと音を出しながら開けられて、外から若い女性が入ってきた。

 腰までありそうな長い髪を、紐でしばって髪を束ねている。
 そうして何よりも変わっているのは和服を着ていることや。

 近頃、浴衣ゆかたなんかは夏場に見ることがあっても、和装は中々見かけない。
 但し、どう贔屓目ひいきに見てもよそ行きのおしゃれ着の衣装には見えないんやがな。

 くすんだ色の前掛けをして、左程質の良くない重ね着の和服は普段着なのやろうと思うが・・・・。
 年の頃は、20代半ばに達しているかどうかやな。

 そこそこ整った顔ながら、美人かと問われると、チョットうなずけないレベルかも知れないな。
 まぁ、テレビ等で結構な美女俳優やアイドルを見慣れているから、目が肥えている(?)だけかもしれないな。

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