1 / 9
第一章 裏庭のトンネル
1ー1 プロローグ ~ 不思議な穴
しおりを挟む
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」というのは、川端康成の描いた小説 『雪国』の有名な出だしのはずやな。
でも俺は、裏庭で偶然見つけたトンネルに入ったら、いきなり魂だけ戦国時代に飛ばされたようなんや。
とある子供の身体に入り込んだみたいなんやが、一体どうすれば良いと思う?
始まりは、俺が飛ばされた戦国時代じゃなく、令和で俺が普通に生活していた頃に戻る。
そこで不思議な体験をしてしまったことから物語が始まる。
◇◇◇◇
俺は三厩浩一郎、滋賀県長浜市室町に住む、18歳や。
両親は、俺が中学二年生の時に交通事故で亡くなり、俺を引き取ってくれた祖父母も昨年末に相次いで亡くなった。
今は2031年の二月で、俺もこの三月には地元の高校を卒業なんや。
一応、大学も受験してはみたんだが、目指す大学には合格できなかったので、正直なところ一浪するかどうか迷ったぜ。
自分では大丈夫とは思っていたのやけど、やっぱり祖父母の急逝が心理的にかなり堪えていたのかもしれん。
何となく受験勉強の最後の追い込みに身が入らなかったのは事実なんや。
国立の二次試験は、共通一次が思いのほか成績が悪かったので、願書は出しているものの受験する気力がほぼ無いな。
一応、事前に先生に勧められていた滑り止めの私大には受かっていたんやけど、必ずしも評判の良い大学じゃないので、俺は二の足を踏んでいる。
第一志望か、第二志望の私立大学ならまだ良かったんやが、・・・。
この滑り止めの大学からは合格通知が来ていて、「入学する意思があるなら入学金の払い込みをせよ。」という趣旨の催促もあったんやが、そのまま放置していたので、もうその期限が過ぎてしまったよ。
進学せずに就職しようと思えば、地元近くに就職先は結構あるんやが、俺も結構な遺産を抱えていて、正直なところ、すぐに働かなくても良い状況ではある。
両親が交通事故で死んだんは、そもそも相手車両の欠陥が原因で、対向車線の大型トラックが操縦不能に陥って、中央分離帯を越えて俺の親父とおふくろが乗っている車に正面衝突したことによる。
この為、トラックの運送会社から相応の見舞金が入り、なおかつトラックを製造した大手自動車会社からの損害賠償と慰謝料それに見舞金が入って、これが相当な額に上った。
そうして親父とおふくろが独自にかけていた生命保険金もかなりの高額やったな。
子供は俺一人やったから、その大金が全部俺の口座に振り込まれているわけや。
両親の死後、俺の祖父母である三厩喜一、信子夫婦に引き取られ、親父が持っていた家屋は元々が中古やったけれど、これを売り払って金に換えたのが、事故から二ヶ月後のことやった。
親父とおふくろは、享年42歳と41歳やったな。
両親が亡くなった時、祖父が70歳、祖母は69歳やった。
でもあれだけ元気だったのに、2030年の年末に流行った新型のインフルエンザで祖父母二人ともにあっけなく肺炎で亡くなった。
祖父母の享年は、74歳と73歳やった。
祖父母の遺産相続に際しては、相続人として親父の弟妹である叔父と叔母も居たために、多少のドタバタはあったものの、最終的に俺が室町にある祖父母の家を相続することで落ち着いた。
叔父と叔母は、関東圏に住んでいるので室町の家には興味が無かったんや。
祖父母は農業をしていたので、俺も手伝いは何度かしたものの流石に農業を専業とする自信は無いから、叔父・叔母とも相談して田畑は売り払っており、その売却金額が叔父と叔母に分与され、相続税もそこから引かれることになった。
そんなわけで、俺は、室町の一角にある古い家に一人で住んでいる。
この家は、三厩家先祖伝来の土地に曾祖父が建てたもので、築65年以上の代物だが、造りがしっかりしているのと手入れを怠っていなかった所為で、まだまだ十分に住める家なんやで。
三厩家はこの地域では古い家柄で、系図では少なくとも江戸時代前期にまで遡れる一族らしい。
家屋自体は大事に使っていた所為でまだまだ使えるし、長浜駅までは徒歩で40分程度、新幹線の米原駅までは車で20分以内の距離にある。
北陸道のインターも近く、最近近隣に大手のケミカル工場や精機工場が進出してきた所為もあって地価がやや値上がり気味で、土地の評価額は田舎にしては高いようや。
長浜市の人口は10万人を少し切るあたり。
全国的に見ても市としては中小の小に近い中規模都市やだろし、長期予測では今後10年ほどでさらに三割ほど人口が減少すると見られている。
ここも田舎やから10年以上も前から過疎化は徐々に進んでいるのやけど、高速のインターがあったり、JR駅も比較的近かったりと交通に便利な場所もあるので一部の企業が進出してきていて何とかそれなりの人口は維持できていたようやな。
◇◇◇◇
話は変わるが、来月初めには学校(滋賀県立長浜北高)の卒業式がある。
俺も高校を卒業すれば、取り敢えずは節目が変わって一段落やな。
ここ最近は、家の中にある爺ちゃんと婆ちゃんの遺品をちょこちょこと確認して、整理する日が続いている。
屋敷の敷地は300坪ほどあるんやが、家の建て坪は60坪そこそこで、残りは祖母が手塩にかけた和風庭園と納屋兼車庫になっている。
その敷地の北西端にはお地蔵さんと思えるような石像があり、木造の小さな祠で覆われていたんやが、二月初めの時ならぬ突風で屋根が吹き飛び、壁も壊れてもうた。
お地蔵さん(?)は、コケシのような形をしているだけで、表面の彫刻模様が消えているために、元々が本当にお地蔵さんであるかどうかは不明や。
俺は別に信心深いわけじゃないけど、先祖代々大事に祀ってきたものを疎かにするつもりはない。
だから暇に飽かせて、この祠を建て替えることにしたよ。
自動車の運転免許は、昨年18歳になったばかりの時に車校(ドライビングスクール)に行って取得しており、祖父が使っていた中古の軽トラック(名義変更済み)を運転して、最寄りのホームセンターで色々と資材を購入してきた。
壊れた上屋を片付けると、基礎部分も結構壊れていてガタガタになっていることが分かったよ。
それで、納屋からミニバックホーを持ち出して、ロープで玉掛けし、石像を脇に一時移動して、先ずは基盤整備をすることにした。
ミニバックホーや耕運機の運転は、爺ちゃんが生前に運転を教えてくれたものや。
納屋にはセメントも袋入りであったのを確認している。
どうせならきれいにしてやりたいと思って、土日の俺の臨時作業にしたのや。
ひび割れして一部陥没していたコンクリートや玉石を取り除くと、なんだか洞穴が出てきたよ。
さほど大きくは無いんやで。
かなり歪やけど、直径は下水管のマンホールよりも少し大きめかな。
巻き尺で計ったら最大径が82センチもあった。
入り口付近に入り込んでいる土砂なんかを丁寧に片づけて行くと、なんだか階段が出て来たぜ。
ということは自然の洞穴じゃなくって人工的なトンネルか?
内部の通路幅は、入り口よりもやや広い感じに見える。
内部は照明が無いので暗いんだが、懐中電灯で照らすと概ね10m程も斜めに下がってその先にも通路が続いていそうや。
さて、どうするかだが・・・。
お地蔵さんをこのまま放置という訳にも行かないから、取り敢えず、元の位置から3mほどずらした位置にコンクリートの基礎を作り、そこに台座を造って石像を安置、祠風の簡易な上屋を造って雨風除けにした。
取り敢えず、穴の入り口は、少し周囲を土盛りした上で、樹脂波板を覆うことで雨が入らないようにだけはしておいた。
トンネルの内部については、また別の機会に調査すればよいやろ。
特に地下に潜る人工的な洞だから、何があるかわからないし、何となく石像で封印されていた風でもあるのがちょっと不気味なんよね。
それに、長年放置されていたのなら中は酸欠の恐れもある。
調査をするにはそれなりの準備も必要やろう。
取り敢えずの祠の修復作業をなんとか土・日の二日間で済ませ、母屋の縁側に腰かけて、ポットに入れて用意しておいた温かい麦茶で一服(たばこは吸わないぜ)していると、幼馴染の山内京子が顔を見せた。
今の俺の家から三軒向こうのお隣さんやから、気安く敷地の中にも入って来る。
俺の親父の家は、山内家よりもさらに五軒ほど向こうにあったが、今は人手に渡っている。
現在、俺が受け継いだ祖父の家は昔ながらの古民家やから、一応敷地の境界が分かるような低い垣根程度はあるものの、人の出入りを止められるようなフェンスではない。
田舎やからな。
武家屋敷なんかを除けば、昔ながらの田舎の家というのは防犯意識も割と薄いんや。
でも俺は、裏庭で偶然見つけたトンネルに入ったら、いきなり魂だけ戦国時代に飛ばされたようなんや。
とある子供の身体に入り込んだみたいなんやが、一体どうすれば良いと思う?
始まりは、俺が飛ばされた戦国時代じゃなく、令和で俺が普通に生活していた頃に戻る。
そこで不思議な体験をしてしまったことから物語が始まる。
◇◇◇◇
俺は三厩浩一郎、滋賀県長浜市室町に住む、18歳や。
両親は、俺が中学二年生の時に交通事故で亡くなり、俺を引き取ってくれた祖父母も昨年末に相次いで亡くなった。
今は2031年の二月で、俺もこの三月には地元の高校を卒業なんや。
一応、大学も受験してはみたんだが、目指す大学には合格できなかったので、正直なところ一浪するかどうか迷ったぜ。
自分では大丈夫とは思っていたのやけど、やっぱり祖父母の急逝が心理的にかなり堪えていたのかもしれん。
何となく受験勉強の最後の追い込みに身が入らなかったのは事実なんや。
国立の二次試験は、共通一次が思いのほか成績が悪かったので、願書は出しているものの受験する気力がほぼ無いな。
一応、事前に先生に勧められていた滑り止めの私大には受かっていたんやけど、必ずしも評判の良い大学じゃないので、俺は二の足を踏んでいる。
第一志望か、第二志望の私立大学ならまだ良かったんやが、・・・。
この滑り止めの大学からは合格通知が来ていて、「入学する意思があるなら入学金の払い込みをせよ。」という趣旨の催促もあったんやが、そのまま放置していたので、もうその期限が過ぎてしまったよ。
進学せずに就職しようと思えば、地元近くに就職先は結構あるんやが、俺も結構な遺産を抱えていて、正直なところ、すぐに働かなくても良い状況ではある。
両親が交通事故で死んだんは、そもそも相手車両の欠陥が原因で、対向車線の大型トラックが操縦不能に陥って、中央分離帯を越えて俺の親父とおふくろが乗っている車に正面衝突したことによる。
この為、トラックの運送会社から相応の見舞金が入り、なおかつトラックを製造した大手自動車会社からの損害賠償と慰謝料それに見舞金が入って、これが相当な額に上った。
そうして親父とおふくろが独自にかけていた生命保険金もかなりの高額やったな。
子供は俺一人やったから、その大金が全部俺の口座に振り込まれているわけや。
両親の死後、俺の祖父母である三厩喜一、信子夫婦に引き取られ、親父が持っていた家屋は元々が中古やったけれど、これを売り払って金に換えたのが、事故から二ヶ月後のことやった。
親父とおふくろは、享年42歳と41歳やったな。
両親が亡くなった時、祖父が70歳、祖母は69歳やった。
でもあれだけ元気だったのに、2030年の年末に流行った新型のインフルエンザで祖父母二人ともにあっけなく肺炎で亡くなった。
祖父母の享年は、74歳と73歳やった。
祖父母の遺産相続に際しては、相続人として親父の弟妹である叔父と叔母も居たために、多少のドタバタはあったものの、最終的に俺が室町にある祖父母の家を相続することで落ち着いた。
叔父と叔母は、関東圏に住んでいるので室町の家には興味が無かったんや。
祖父母は農業をしていたので、俺も手伝いは何度かしたものの流石に農業を専業とする自信は無いから、叔父・叔母とも相談して田畑は売り払っており、その売却金額が叔父と叔母に分与され、相続税もそこから引かれることになった。
そんなわけで、俺は、室町の一角にある古い家に一人で住んでいる。
この家は、三厩家先祖伝来の土地に曾祖父が建てたもので、築65年以上の代物だが、造りがしっかりしているのと手入れを怠っていなかった所為で、まだまだ十分に住める家なんやで。
三厩家はこの地域では古い家柄で、系図では少なくとも江戸時代前期にまで遡れる一族らしい。
家屋自体は大事に使っていた所為でまだまだ使えるし、長浜駅までは徒歩で40分程度、新幹線の米原駅までは車で20分以内の距離にある。
北陸道のインターも近く、最近近隣に大手のケミカル工場や精機工場が進出してきた所為もあって地価がやや値上がり気味で、土地の評価額は田舎にしては高いようや。
長浜市の人口は10万人を少し切るあたり。
全国的に見ても市としては中小の小に近い中規模都市やだろし、長期予測では今後10年ほどでさらに三割ほど人口が減少すると見られている。
ここも田舎やから10年以上も前から過疎化は徐々に進んでいるのやけど、高速のインターがあったり、JR駅も比較的近かったりと交通に便利な場所もあるので一部の企業が進出してきていて何とかそれなりの人口は維持できていたようやな。
◇◇◇◇
話は変わるが、来月初めには学校(滋賀県立長浜北高)の卒業式がある。
俺も高校を卒業すれば、取り敢えずは節目が変わって一段落やな。
ここ最近は、家の中にある爺ちゃんと婆ちゃんの遺品をちょこちょこと確認して、整理する日が続いている。
屋敷の敷地は300坪ほどあるんやが、家の建て坪は60坪そこそこで、残りは祖母が手塩にかけた和風庭園と納屋兼車庫になっている。
その敷地の北西端にはお地蔵さんと思えるような石像があり、木造の小さな祠で覆われていたんやが、二月初めの時ならぬ突風で屋根が吹き飛び、壁も壊れてもうた。
お地蔵さん(?)は、コケシのような形をしているだけで、表面の彫刻模様が消えているために、元々が本当にお地蔵さんであるかどうかは不明や。
俺は別に信心深いわけじゃないけど、先祖代々大事に祀ってきたものを疎かにするつもりはない。
だから暇に飽かせて、この祠を建て替えることにしたよ。
自動車の運転免許は、昨年18歳になったばかりの時に車校(ドライビングスクール)に行って取得しており、祖父が使っていた中古の軽トラック(名義変更済み)を運転して、最寄りのホームセンターで色々と資材を購入してきた。
壊れた上屋を片付けると、基礎部分も結構壊れていてガタガタになっていることが分かったよ。
それで、納屋からミニバックホーを持ち出して、ロープで玉掛けし、石像を脇に一時移動して、先ずは基盤整備をすることにした。
ミニバックホーや耕運機の運転は、爺ちゃんが生前に運転を教えてくれたものや。
納屋にはセメントも袋入りであったのを確認している。
どうせならきれいにしてやりたいと思って、土日の俺の臨時作業にしたのや。
ひび割れして一部陥没していたコンクリートや玉石を取り除くと、なんだか洞穴が出てきたよ。
さほど大きくは無いんやで。
かなり歪やけど、直径は下水管のマンホールよりも少し大きめかな。
巻き尺で計ったら最大径が82センチもあった。
入り口付近に入り込んでいる土砂なんかを丁寧に片づけて行くと、なんだか階段が出て来たぜ。
ということは自然の洞穴じゃなくって人工的なトンネルか?
内部の通路幅は、入り口よりもやや広い感じに見える。
内部は照明が無いので暗いんだが、懐中電灯で照らすと概ね10m程も斜めに下がってその先にも通路が続いていそうや。
さて、どうするかだが・・・。
お地蔵さんをこのまま放置という訳にも行かないから、取り敢えず、元の位置から3mほどずらした位置にコンクリートの基礎を作り、そこに台座を造って石像を安置、祠風の簡易な上屋を造って雨風除けにした。
取り敢えず、穴の入り口は、少し周囲を土盛りした上で、樹脂波板を覆うことで雨が入らないようにだけはしておいた。
トンネルの内部については、また別の機会に調査すればよいやろ。
特に地下に潜る人工的な洞だから、何があるかわからないし、何となく石像で封印されていた風でもあるのがちょっと不気味なんよね。
それに、長年放置されていたのなら中は酸欠の恐れもある。
調査をするにはそれなりの準備も必要やろう。
取り敢えずの祠の修復作業をなんとか土・日の二日間で済ませ、母屋の縁側に腰かけて、ポットに入れて用意しておいた温かい麦茶で一服(たばこは吸わないぜ)していると、幼馴染の山内京子が顔を見せた。
今の俺の家から三軒向こうのお隣さんやから、気安く敷地の中にも入って来る。
俺の親父の家は、山内家よりもさらに五軒ほど向こうにあったが、今は人手に渡っている。
現在、俺が受け継いだ祖父の家は昔ながらの古民家やから、一応敷地の境界が分かるような低い垣根程度はあるものの、人の出入りを止められるようなフェンスではない。
田舎やからな。
武家屋敷なんかを除けば、昔ながらの田舎の家というのは防犯意識も割と薄いんや。
21
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル
ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。
しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。
甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。
2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる