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第二章 与えられし能力
2-1 母、陰陽師、国津神
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その女性が、俺の顔を見るなりパッと笑みを浮かべ、俺の枕元へ正座して、俺の額に手を当てながら言ったもんだ。
「与一郎、良かった・・・。
薬師がもう手の施しようが無いとさじを投げていたのに、・・・・。
何処か痛いところは無い?」
よいちろう?
誰のことだ?
それにこの女、少し大きくないか?
俺は181センチほどもあって、同級生の中では二番手ぐらいに大柄な方なんだけれど、なんだか女の手のひらが俺の額をすっぽり覆い隠すほどデカいんだ。
大女なのか?
それに見ず知らずの若い男に気安く手を触れちゃって,一体全体、どういうことだ?
何の気なしに自分の手を目の前にかざしてみて気づいた。
俺の手が何となく小さい。
それに右手の甲に目立つ傷跡(最近自転車でコケた際にできた挫傷でひっつれがある。)があったはずなのに、それが無いんだ。
俺は、慌ててガバっと起きて、自分の身体を確かめる。
俺は浴衣のような合わせを着ているが、下着を穿いていない。
おいおい、上着はともかくとしても、ちゃんとパンツを穿いて、半そでシャツの下着を身に着けていたはずだが、どこに行った。
それに手足が異様に短いし、細いんや。
まるで幼少期に戻ったみたいやな。
俺が自分の手足をいじくりまわし、慌てふためいていると、女性が言った。
「与一郎、大丈夫?
昨夜までは生死の境をさ迷っていたのやから・・・。
そんなに急に動くのは良くないやろ。」
どうやら、この女性、俺のことを与一郎と呼んでいる。
俺は与一郎という名前なのか?
それにしても・・・・と思っているうちに、いきなり、これまでの記憶が一気に蘇ったぜ。
トンネルの中の木戸(滑り戸)を開けた途端、俺の頭に膨大な情報が流れ込んできたんやった。
トンネルの奥の木戸を開けると、エクトプラズムとでも言うべき幽体のような存在が待ち構えていて、それが俺に念話で話しかけ、情報をよこしたんや。
『貴方の中に、所定の資質を確認しました。
貴方を五百三十年ぶりの資質保有者と認めます。
定められた計画に基づいて、資質保有者に対しては、これまでの経過年数に応じて特典が与えられます。
月に一つの小技能が与えられるため、これまでの蓄積分総計で六千三百六十個の小技能が与えられます。
また、年に一つの中技能が与えられるため、同じくこれまでの蓄積分総計で五百三十個の中技能が与えられます。
更に十年に一つの大技能が与えられるため、これまでの蓄積分五十個が与えられます。
そうして最後に、百年ごとに一つの特殊技能が与えられるため、これまでの蓄積分五個の特殊技能が与えられます。
小、中、大の技能、それに特殊技能のそれぞれの詳細は次の通りです。
さあ、選んでください。
時間は半時の間です。
選択されない場合は、当方で自動的に選択して付与いたします。』
目の前ノエクトプラズムから、俺はそう宣告されたんだが、その『詳細』と言うのが補足説明付きのとてつもなく膨大な量だったんだ。
で、俺の脳のキャパシティを超えて一気に流入してきたおかげで、俺はブラックアウト。
どうやら俺の脳のキャパって、とっても小さかったみたいだな。
自分ではそれなりに優秀と思っていたのに、チョット凹みそうやで。
俺が気絶したので、自らの意思で選択ができないまま、他力本願というか、自動的に各種技能を選択されてしまったようやな。
ようやく脳内に収まった情報から判断するに、あの幽体のような存在は、陰陽術の使い魔の形態(式?若しくは式神?)の一つのようやな。
その式神らしき存在が与えてくれた一連の情報では、そもそもの原因は、平安時代に居たらしき陰陽師にあるようや。
姓名を、滋岳宅麻と言う人物や。
この人物、禁忌の陰陽術に手を出したことにより、朝廷から追討令を出されて都から逃亡した人物であるらしい。
朝廷の権威が高い時代に、朝廷に睨まれた以上、国内に安全な場所などない。
そこで彼は陰陽術の秘術を尽くして時空を渡ったのや。
逃亡した先が、彼の生きていた時代から数百年未来の今浜(長浜)やった。
時に西暦1456年、戦国時代の走りやで。
宅麻は、この今浜の地で妻を娶った。
平安時代に戻ろうと思えば「時渡り」の秘術で何とか戻れたのやろが、この地に骨を埋めることにしたようやな。
例のトンネルは、今浜に根付いてから宅麻が造ったものであって、これまで宅麻以外にその時渡りの秘術を使った者はいないようや。
宅麻は子孫の中で相応の資質を持つものが現れれば、陰陽術の技能を与えられるようにトンネルの最奥部に特殊な施術を組んだようやな。
それが使い魔の言っていた特典なんや。
1501年に宅麻が没して後、約500年余りの間、トンネルに入る者は結構居たようやが、誰も資質を有する者が現れなかったので、宅麻が施した特典は、月日の経過ごとに追加されたスキルの数は溜りに溜まったのや。
なおかつ、宅麻の没後に複数の国津神がこの宅麻の遺した洞と施術に興味を示し、色々と勝手に弄り倒した所為で、当初、琢磨が想定していたレベルをはるかに凌駕する能力を与えてしまう施術に変貌を遂げていたのや。
而して、宅麻が亡くなって530年後に俺がトンネルを発見したわけなんやが、・・・・。
どうも、国津神のいたずらが施術に紛れ込んでいたようで、俺は2031年の日本から、いつとも知れない昔の日本に跳ばされたんやが、このような異常事態は遺憾ながら陰陽師のそもそもの計画に無かったことであり、国津神が弄ったことで別の効果が生じたようやな。
国津神の改変した施術では、俺の身体を物理的に時空移動させることができなかったために、俺の魂だけが、時代を超えて今にも死にそうな子供の魂に送り込まれたみたいや。
俺が入り込んだ身体は「与一郎」と言い、数えで10歳になる。
俺の記憶が蘇ったと同時に、与一郎と呼ばれる子供の記憶が脳内にあることにも気付いたから間違いないやろうな。
フラッシュバックのように「浩一郎」の記憶とダブって、「与一郎」の記憶も間違いなく戻ったよ。
母は、与一郎の記憶によれば目の前にいるヨシである。
生憎とヨシの年齢はわからないが、この地が今浜(長浜)の地であることは間違いないようだ。
すぐ近くに淡海(琵琶湖)が見えるらしいからな。
母のヨシが言っていたように、与一郎は何かの病で死にかけていたようなんや。
つらつら思うに、浩一郎の魂が与一郎の身体に入り込んだおかげで危篤状態が持ち直した?
俺に与えられた技能の中に治癒能力と、再生・回復能力があるみたいやから、死ぬしかなかった与一郎の業病を癒し、その命を長らえさせることができたといことじゃないのか。
さもなければ与一郎は、この時点で夭逝していたところなのやろう。
いずれにしろ、今の俺はものすごく腹が減っているんや。
何しろ、ここ三日ほどは具合が悪くって、碌な食事をしていないらしい。
で、目の前の母であるらしき女性に言った。
「カカ様、おなかがすきました。」
ヨシはこぼれんばかりの笑みと、少し嬉し涙を流しながら言った。
「はいはい、では、ご飯にしましょうね。」
空腹は最大の調味料とはよう言ったものやと思う。
タダのかゆがとっても美味かった。
おかず?
そんなものは塩漬けの漬物ぐらいしか無かったな。
ウーン、やっぱり戦国時代かなぁ。
平和な江戸時代ならもう少し副食があるんじゃないかと思う。
それと、この与一郎。
かなり痩せているな。
まぁ、病弱の所為もあるやろうけれど、あまり栄養のあるものが取れていないんじゃないかな?
そっちの方が俺としては気懸りやで。
トト様は、仕事に出ているらしい。
少し後でわかったが、与一郎の父親は、小一郎と言うらしく足軽大将に近いような武士のようや。
姓は木下と言うらしいんやが・・・。
木下って、もしやアノ『藤吉郎』で有名な木下か?
いや、まぁ、木下の姓を持つ者はどこにでもいるやろうけれど、もしかして親戚とか子孫って可能性もあるよな。
但し、長浜の場合、時代によっては織田の所領じゃなくって、浅井の領地だった筈。
今は、そもそもいつの時代なんだ?
服装から見て何となく奈良時代まで古くはなさそうだし、少なくとも明治まで新しくもなさそうだ。
父の小一郎が武士というなら、平安末期から江戸時代の間じゃないかと思うんだが・・・。
なんだかカカ様の話では、トト様がこの今浜(長浜の旧名称)でお城の普請をしているようや。
となると、やっぱり木下藤吉郎の弟である小一郎(竹阿弥の子とされ「小竹」とも呼ばれたとの記録があるらしいが定かではない。)で、後の羽柴秀長ではあるまいか?
今浜(長浜)に城を造ったのは秀吉であり、今浜から長浜に呼び名を変えたのも秀吉なのや。
むろんそれまでにも砦に毛が生えたような出城は有ったりしたらしいのやが、石垣や掘割でしっかりと防御を固めた城を造ったのは秀吉なんや。
何でも信長の命により、交易のための城下町の街づくりも行ったと、中学時代に臨時講師としてやってきた長浜の郷土史家から聞いたことがある。
俺も必ずしも歴史には詳しいわけではないんやが、秀吉の弟である秀長には子供はいたものの男児は育たずに夭逝していると記憶している。
だから秀長は、甥っ子の秀保を養子にしているし、秀吉もまた晩年になるまで子に恵まれず、一時期、秀次を養子にして後継者としていたはずだ。
その夭逝した秀長の子が、俺の入り込んだ与一郎なのかもしれんのや。
本来は死ぬべき与一郎が死なないことで、あるいは歴史の歯車が掛け違うかもしれないということやな。
バタフライ効果ってのは、どんなことで表に出てくるかわからないからな。
ウーン、豊臣政権は跡取りが育たなかったので、秀吉の後が続かなかったんだよな。
特に弟の秀長は、かなり優秀で周囲の評判も良かったみたいだけれど早逝したし、子を残さなかったから、残ったのは陪臣ばかりで、豊臣の屋台骨を支える人物がいなかったんだ。
俺はひょっとしてその役割を担うことになるのかな?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
注)
天正6年3月29日(1578年5月5日)から天正8年1月17日(1580年2月2日)に行われた三木城攻めの秀吉軍の中に与一郎が居たという説があり、陣中で亡くなったとあるらしいのですけれど、この小説では当然のごとく無視しますので、ご了承を願います。
「与一郎、良かった・・・。
薬師がもう手の施しようが無いとさじを投げていたのに、・・・・。
何処か痛いところは無い?」
よいちろう?
誰のことだ?
それにこの女、少し大きくないか?
俺は181センチほどもあって、同級生の中では二番手ぐらいに大柄な方なんだけれど、なんだか女の手のひらが俺の額をすっぽり覆い隠すほどデカいんだ。
大女なのか?
それに見ず知らずの若い男に気安く手を触れちゃって,一体全体、どういうことだ?
何の気なしに自分の手を目の前にかざしてみて気づいた。
俺の手が何となく小さい。
それに右手の甲に目立つ傷跡(最近自転車でコケた際にできた挫傷でひっつれがある。)があったはずなのに、それが無いんだ。
俺は、慌ててガバっと起きて、自分の身体を確かめる。
俺は浴衣のような合わせを着ているが、下着を穿いていない。
おいおい、上着はともかくとしても、ちゃんとパンツを穿いて、半そでシャツの下着を身に着けていたはずだが、どこに行った。
それに手足が異様に短いし、細いんや。
まるで幼少期に戻ったみたいやな。
俺が自分の手足をいじくりまわし、慌てふためいていると、女性が言った。
「与一郎、大丈夫?
昨夜までは生死の境をさ迷っていたのやから・・・。
そんなに急に動くのは良くないやろ。」
どうやら、この女性、俺のことを与一郎と呼んでいる。
俺は与一郎という名前なのか?
それにしても・・・・と思っているうちに、いきなり、これまでの記憶が一気に蘇ったぜ。
トンネルの中の木戸(滑り戸)を開けた途端、俺の頭に膨大な情報が流れ込んできたんやった。
トンネルの奥の木戸を開けると、エクトプラズムとでも言うべき幽体のような存在が待ち構えていて、それが俺に念話で話しかけ、情報をよこしたんや。
『貴方の中に、所定の資質を確認しました。
貴方を五百三十年ぶりの資質保有者と認めます。
定められた計画に基づいて、資質保有者に対しては、これまでの経過年数に応じて特典が与えられます。
月に一つの小技能が与えられるため、これまでの蓄積分総計で六千三百六十個の小技能が与えられます。
また、年に一つの中技能が与えられるため、同じくこれまでの蓄積分総計で五百三十個の中技能が与えられます。
更に十年に一つの大技能が与えられるため、これまでの蓄積分五十個が与えられます。
そうして最後に、百年ごとに一つの特殊技能が与えられるため、これまでの蓄積分五個の特殊技能が与えられます。
小、中、大の技能、それに特殊技能のそれぞれの詳細は次の通りです。
さあ、選んでください。
時間は半時の間です。
選択されない場合は、当方で自動的に選択して付与いたします。』
目の前ノエクトプラズムから、俺はそう宣告されたんだが、その『詳細』と言うのが補足説明付きのとてつもなく膨大な量だったんだ。
で、俺の脳のキャパシティを超えて一気に流入してきたおかげで、俺はブラックアウト。
どうやら俺の脳のキャパって、とっても小さかったみたいだな。
自分ではそれなりに優秀と思っていたのに、チョット凹みそうやで。
俺が気絶したので、自らの意思で選択ができないまま、他力本願というか、自動的に各種技能を選択されてしまったようやな。
ようやく脳内に収まった情報から判断するに、あの幽体のような存在は、陰陽術の使い魔の形態(式?若しくは式神?)の一つのようやな。
その式神らしき存在が与えてくれた一連の情報では、そもそもの原因は、平安時代に居たらしき陰陽師にあるようや。
姓名を、滋岳宅麻と言う人物や。
この人物、禁忌の陰陽術に手を出したことにより、朝廷から追討令を出されて都から逃亡した人物であるらしい。
朝廷の権威が高い時代に、朝廷に睨まれた以上、国内に安全な場所などない。
そこで彼は陰陽術の秘術を尽くして時空を渡ったのや。
逃亡した先が、彼の生きていた時代から数百年未来の今浜(長浜)やった。
時に西暦1456年、戦国時代の走りやで。
宅麻は、この今浜の地で妻を娶った。
平安時代に戻ろうと思えば「時渡り」の秘術で何とか戻れたのやろが、この地に骨を埋めることにしたようやな。
例のトンネルは、今浜に根付いてから宅麻が造ったものであって、これまで宅麻以外にその時渡りの秘術を使った者はいないようや。
宅麻は子孫の中で相応の資質を持つものが現れれば、陰陽術の技能を与えられるようにトンネルの最奥部に特殊な施術を組んだようやな。
それが使い魔の言っていた特典なんや。
1501年に宅麻が没して後、約500年余りの間、トンネルに入る者は結構居たようやが、誰も資質を有する者が現れなかったので、宅麻が施した特典は、月日の経過ごとに追加されたスキルの数は溜りに溜まったのや。
なおかつ、宅麻の没後に複数の国津神がこの宅麻の遺した洞と施術に興味を示し、色々と勝手に弄り倒した所為で、当初、琢磨が想定していたレベルをはるかに凌駕する能力を与えてしまう施術に変貌を遂げていたのや。
而して、宅麻が亡くなって530年後に俺がトンネルを発見したわけなんやが、・・・・。
どうも、国津神のいたずらが施術に紛れ込んでいたようで、俺は2031年の日本から、いつとも知れない昔の日本に跳ばされたんやが、このような異常事態は遺憾ながら陰陽師のそもそもの計画に無かったことであり、国津神が弄ったことで別の効果が生じたようやな。
国津神の改変した施術では、俺の身体を物理的に時空移動させることができなかったために、俺の魂だけが、時代を超えて今にも死にそうな子供の魂に送り込まれたみたいや。
俺が入り込んだ身体は「与一郎」と言い、数えで10歳になる。
俺の記憶が蘇ったと同時に、与一郎と呼ばれる子供の記憶が脳内にあることにも気付いたから間違いないやろうな。
フラッシュバックのように「浩一郎」の記憶とダブって、「与一郎」の記憶も間違いなく戻ったよ。
母は、与一郎の記憶によれば目の前にいるヨシである。
生憎とヨシの年齢はわからないが、この地が今浜(長浜)の地であることは間違いないようだ。
すぐ近くに淡海(琵琶湖)が見えるらしいからな。
母のヨシが言っていたように、与一郎は何かの病で死にかけていたようなんや。
つらつら思うに、浩一郎の魂が与一郎の身体に入り込んだおかげで危篤状態が持ち直した?
俺に与えられた技能の中に治癒能力と、再生・回復能力があるみたいやから、死ぬしかなかった与一郎の業病を癒し、その命を長らえさせることができたといことじゃないのか。
さもなければ与一郎は、この時点で夭逝していたところなのやろう。
いずれにしろ、今の俺はものすごく腹が減っているんや。
何しろ、ここ三日ほどは具合が悪くって、碌な食事をしていないらしい。
で、目の前の母であるらしき女性に言った。
「カカ様、おなかがすきました。」
ヨシはこぼれんばかりの笑みと、少し嬉し涙を流しながら言った。
「はいはい、では、ご飯にしましょうね。」
空腹は最大の調味料とはよう言ったものやと思う。
タダのかゆがとっても美味かった。
おかず?
そんなものは塩漬けの漬物ぐらいしか無かったな。
ウーン、やっぱり戦国時代かなぁ。
平和な江戸時代ならもう少し副食があるんじゃないかと思う。
それと、この与一郎。
かなり痩せているな。
まぁ、病弱の所為もあるやろうけれど、あまり栄養のあるものが取れていないんじゃないかな?
そっちの方が俺としては気懸りやで。
トト様は、仕事に出ているらしい。
少し後でわかったが、与一郎の父親は、小一郎と言うらしく足軽大将に近いような武士のようや。
姓は木下と言うらしいんやが・・・。
木下って、もしやアノ『藤吉郎』で有名な木下か?
いや、まぁ、木下の姓を持つ者はどこにでもいるやろうけれど、もしかして親戚とか子孫って可能性もあるよな。
但し、長浜の場合、時代によっては織田の所領じゃなくって、浅井の領地だった筈。
今は、そもそもいつの時代なんだ?
服装から見て何となく奈良時代まで古くはなさそうだし、少なくとも明治まで新しくもなさそうだ。
父の小一郎が武士というなら、平安末期から江戸時代の間じゃないかと思うんだが・・・。
なんだかカカ様の話では、トト様がこの今浜(長浜の旧名称)でお城の普請をしているようや。
となると、やっぱり木下藤吉郎の弟である小一郎(竹阿弥の子とされ「小竹」とも呼ばれたとの記録があるらしいが定かではない。)で、後の羽柴秀長ではあるまいか?
今浜(長浜)に城を造ったのは秀吉であり、今浜から長浜に呼び名を変えたのも秀吉なのや。
むろんそれまでにも砦に毛が生えたような出城は有ったりしたらしいのやが、石垣や掘割でしっかりと防御を固めた城を造ったのは秀吉なんや。
何でも信長の命により、交易のための城下町の街づくりも行ったと、中学時代に臨時講師としてやってきた長浜の郷土史家から聞いたことがある。
俺も必ずしも歴史には詳しいわけではないんやが、秀吉の弟である秀長には子供はいたものの男児は育たずに夭逝していると記憶している。
だから秀長は、甥っ子の秀保を養子にしているし、秀吉もまた晩年になるまで子に恵まれず、一時期、秀次を養子にして後継者としていたはずだ。
その夭逝した秀長の子が、俺の入り込んだ与一郎なのかもしれんのや。
本来は死ぬべき与一郎が死なないことで、あるいは歴史の歯車が掛け違うかもしれないということやな。
バタフライ効果ってのは、どんなことで表に出てくるかわからないからな。
ウーン、豊臣政権は跡取りが育たなかったので、秀吉の後が続かなかったんだよな。
特に弟の秀長は、かなり優秀で周囲の評判も良かったみたいだけれど早逝したし、子を残さなかったから、残ったのは陪臣ばかりで、豊臣の屋台骨を支える人物がいなかったんだ。
俺はひょっとしてその役割を担うことになるのかな?
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注)
天正6年3月29日(1578年5月5日)から天正8年1月17日(1580年2月2日)に行われた三木城攻めの秀吉軍の中に与一郎が居たという説があり、陣中で亡くなったとあるらしいのですけれど、この小説では当然のごとく無視しますので、ご了承を願います。
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