転生したら幽閉王子でした~これどうすんの?

サクラ近衛将監

文字の大きさ
9 / 31
第二章 ハンターとして

2ー3 孤児院の10歳の子供たち

しおりを挟む
 この新年を迎えて、俺は数えで11歳になった。
 孤児院でも数えで10歳になった子が、マザー・アリシアに連れられてハンター・ギルド西支部でハンター登録を行った。

 今年は二人、男の子でラルフと女の子でビアンカだ。
 女の子がハンターにならなくても良いと思うのだが、孤児院出身の子は、まっとうな親が居ないという事情で中々普通の職には就けないし、そもそも正規の職工や見習いとして雇ってもらうには、成人にならなければ駄目なようで、商人や工房の徒弟にしても13歳からでないと受け入れてくれないんだ。

 従って、孤児院の子供たちが稼ぐためには、ハンターになって、何でも請け負う仕事から自分の適性を見つけて行くしかないようだ。
 当然に二人ともに駆け出しの見習いハンターから始まるので、受けられる仕事は簡単な雑用仕事しかない。

 俺がやっている一般の人が受けたがらないような高報酬の仕事も無いわけでは無いけれど、そういう仕事は受けたがらない理由がそもそも存在する。
 それに対応するためには、多分チート能力が絶対に必要だろうな。

 勿論のこと、ラルフとビアンカにはチート能力は無い。
 だから背伸びしないで無理なく仕事をしなければならないのだけれど、たまたま俺という悪い見本が居たために、ラルフは、よくわからないままに高額の報酬を手にしようとしているようだ。

 止むを得ず、先輩として高額報酬にはそれなりの理由があるからやめておかないと苦労するぞと忠告を与えたが、ラルフはその忠告を聞かなかった。
 忠告を聞かない者は、それなりの苦労を自分で経験してみるしかないだろうな。

 ただし、マザー・アリシアからは『面倒を見てやってね』と頼まれているので、取り敢えずは傍についてやって、様子見をしている。
 ビアンカの方は、無難なところで町屋の子守を受注したが、ラルフはよりによって俺と同じ下水道の清掃を選んだ。
 
 仕方がないので再度の警告を与え、俺がやる予定の隣のブロックで作業をさせることになり、取り敢えず俺はその仕事ぶりを監督することにしたよ。
 ラルフは、どうも下水道の掃除を単なるどぶ掃除ぐらいにしか考えていなかったようだ。

 何の道具も持たずに清掃なんかできるはずもないが、ラルフは元手が無いからそんな準備もできていない。
 仕方がないから一日銅貨二枚の約束で俺の持っている機材を貸してあげた。

 だが側溝には大量のヘドロが堆積しているわけであり、動物の死骸やたまにはスライムなどの魔物も出てくるんだ。
 無論、ハンターになったばかりのラルフにまともな戦闘力を期待するのは無理というものだ。

 幸いにして襲撃されてもラルフの足で逃げ切れる魔物だったからよかったが、例えばダークトーポ(中型のハリネズミ)のような魔物であれば死んでいてもおかしくはない。
 一日仕事をして、ワンブロックの1%も清掃できていないありさまだった。

 もちろんワンブロックごとの出来高払いの成功報酬だから、ラルフの今日の仕事では報酬は得られない。
 この調子ではおそらく一月かけてもワンブロックの清掃作業は終わらないだろう。

 この仕事は、ワンブロックの清掃が終わらないと報酬がもらえない仕組みなんだ。
 それでも頑張ってラルフは仕事を続けていたが、案の定、五日目で仕事を放り投げた。

 10歳児(実質九歳児)の身体にはきつい筋肉労働だし、労働環境が悪すぎる。
 明かりも満足に無いところで、臭気がすごく、足元はヘドロで中々移動もままならない。

 そのヘドロを全部川まで運んで流さなければならないというのは大人でもきつい仕事なんだ。
 俺はヘドロをダストシュートに放り込んで処理しているから左程の労力はかけていないし、作業のほとんどを魔法で処理しているから何の問題も生じない。

 ごめんな。
 先輩が楽にやっているからって、自分もそうできると思うのがそもそも間違いなんだ。

 これを教訓にして無理な仕事を請け負わないようにしてほしいな。
 当然にラルフが得られた報酬はない。

 仕方がないから五日分の器具の賃貸料はチャラにしてあげた。
 ラルフの五日分の仕事では、1ブロックの4%程度のヘドロさえ除去できていないありさまだった。

 幸いにしてこの仕事は、失敗しても罰金を払うようなシステムにはなっていないため、ラルフが罰金を取られるようなことが無いことだけは幸いだった。
 後を引き継ぐ俺にかかる労力は、何もしてない時とほとんど同じだったな。

 ラルフもこれにりたのか、以後は、報酬は安くても無理のない仕事を受注するようになった。
 結果からは良かったと言えるのかな?

 因みにビアンカの方は、妖精sに子守の様子を監視させたけれど、可もなく不可もなくの状況のようで、子守は無事にできていたようだった。

 但し、子守という仕事は責任が伴うからね。
 万が一にでも子守対象の幼児がケガをしたりすると、責任を問われてしまうし、場合によってはギルドから罰金を請求されることもあるんだ。

 だから場合によっては報酬が無いどころか、借金を背負うことになる場合もあるから注意が必要なんだ。
 ビアンカはどちらかと言うと用心深い方だから大丈夫だとは思うけどね。

 でも、予想に反して、十日後に事件に巻き込まれたのはビアンカの方だった。
 とある男が痴話喧嘩から、女を刺し、警備隊に追われて逃げ込んだ庭先に子守中のビアンカと幼子が居たんだ。

 男が破れかぶれでその幼子を人質に取ろうとしたのをビアンカが必死に守ろうとした。
 男が切れて、ビアンカを刺したんだ。

 監視していた妖精から緊急通報を受けた俺は、すぐさま認識疎外をかけながら現場に転移、男を一瞬で制圧して、幼児を助けて芝生の上に寝せ、すぐに、ビアンカのもとに行って、回復魔法をかけた。
 俺の回復魔法は、今のところLV2にしか過ぎないけれど、刺し傷ぐらいなら措置さえ早ければ何とかなる。
 
 刺し傷は九割ほど塞がり、出血も止め、半分にまで減っていたHPも八割にまで回復させた。
 庭にはビアンカの腹部から出血した血のりが残っているけれど、これは証拠だからそのまま残しておく。

 因みに腹部の刺し傷も完全には治してはいない。
 外傷が無ければビアンカが刺されたという証拠そのものが無くなるからだ。

 昏倒した男は、警備隊の手で捕縛された。
 俺も関係者として事情聴取を受けることになるだろうけれど、さて、どうしたものか・・・。

 結局は、半分だけ真実を告げることにした。
 魔法で男を制圧したこと、魔法でビアンカの刺し傷を癒したことの二点であり、どんな魔法を使ったかは俺個人のスキルなので言えませんと言って押し切った。

 後に、俺には警備隊長名で感謝状が出されたほか、ビアンカには子守対象の幼児を命がけで守ってくれようとしたとして、依頼主からいつもの四倍の報酬が貰えたようだ。
 まぁ、確かに、俺の手当てが遅ければビアンカは死んでいたし、ビアンカ本人も後日談として死ぬほど痛かったと言っていたけれど、本当に致命傷だったからね。

 俺以外の者だったら助けられなかったはずなんだ。
 ビアンカのおなかの傷は徐々に癒すことにして、事件から半年経った頃には痕跡もなくなっていた。

 女の子の肌に傷をつけたままじゃかわいそうだものね。
 他の人には知られないように密かに俺が治してやりました。

 その後もラルフとビアンカは無難な仕事を引き受けて、ハンターとしての経験を積んでいる。
 無理なく成長してくれればよいと思っているところだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生大賢者の現代生活

サクラ近衛将監
ファンタジー
 ベイリッド帝国の大賢者として173歳で大往生したはずのロイドベル・ダルク・ブラームントは、何の因果か異世界のとある若者に転生を遂げた。  ロイドベルの知識、経験、能力、更にはインベントリとその中身まで引き継いで、佐島幸次郎として生き返ったのである。  これは、21世紀の日本に蘇った大賢者の日常の生活と冒険を綴る物語である。  原則として、毎週土曜日の午後8時に投稿予定です。  感想は受け付けていますけれど、原則として返事は致しませんので悪しからずご了承ください。

事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?

サクラ近衛将監
ファンタジー
 会社員の俺が交通事故に遭いました。二か月後、病院で目覚めた時、ほぼ全身不随。瞼と瞳が動かせるものの、手足も首も動かない。でも、病院で寝ると異世界の別人の身体で憑依し、五体満足で生活している。また、異世界で寝ると現代世界に目が覚めるが体の自由は利かない。  睡眠の度に異世界と現代世界を行ったり来たり、果たして、現代社会の俺は、元の身体に戻れる方法があるのだろうか?  そんな男の二重生活の冒険譚です。  毎週水曜日午後8時に投稿予定です。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

母を訪ねて十万里

サクラ近衛将監
ファンタジー
 エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。  この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。  概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。

戦えない魔法で追放された俺、家電の知識で異世界の生存率を塗り替える

yukataka
ファンタジー
安全を無視したコスト削減に反対した結果、 家電メーカーの開発エンジニア・三浦恒一は「価値がない」と切り捨てられた。 降格先の倉庫で事故に巻き込まれ、彼が辿り着いたのは――魔法がすべてを決める異世界だった。 この世界では、魔法は一人一つが常識。 そんな中で恒一が与えられたのは、 元の世界の“家電”しか召喚できない外れ魔法〈異界家電召喚〉。 戦えない。派手じゃない。評価もされない。 だが、召喚した家電に応じて発現する魔法は、 戦闘ではなく「生き延びるための正しい使い方」に特化していた。 保存、浄化、環境制御―― 誰も見向きもしなかった力は、やがて人々の生活と命を静かに支え始める。 理解されず、切り捨てられてきた男が選ぶのは、 英雄になることではない。 事故を起こさず、仲間を死なせず、 “必要とされる仕事”を積み上げること。 これは、 才能ではなく使い方で世界を変える男の、 静かな成り上がりの物語。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

処理中です...