コンバット

サクラ近衛将監

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第四章 学院生活(中等部編)

4―34 アレバンド帝国の遺産 その二

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 ハイハーイ、ヴィオラですよぉ。
 アレバンド帝国が残した負の遺産とでもいうべき古代兵器に関しては、レインバルク帝国の西部域までは私(ヴィオラ)の監視網が行き渡っては居ませんでしたから、早速にインセクト型スパイ装置の再配分をしています。

 さらに西側の諸国への監視網を増やすかどうかについては要検討ですね。
 そうして例によって、式神の依り代を留守番にして、私(ヴィオラ)はレインバルク帝国まで飛翔しつつ転移を繰り返しています。

 ワオデュール大陸は二つのひし形の陸地がつながったつづみ状の形ですけれど、東西に長いんです。
 ライヒベルゼン王国からレインバルク帝国の西部域までですと、多分、前世の豪州大陸の東西の距離(約3900キロ)ぐらいはありそうですね。

 それでも飛翔しながら前方に転移を続けていると、概ね音速の三倍ほどの速度で移動が可能ですから、おそらく一時間ほどで問題の西部域に到達しました。
 周囲の地形を確認し、辺境の地で人が集まっていそうなところを探し出し、そこで隠密裏に情報収集を行いましたら、すぐに問題の遺跡まで辿り着けました。

 王都レリーダ近傍にある格納庫のような大規模施設を予期していたのですが、ここにある遺跡はちょっと違いました。
 設備自体が小規模なんですよね。

 これは、多分制作工場を含む研究所的な施設のように感じます。
 レインバルク帝国の研究者たちは、いにしえのアレバンド帝国の文字を知らないようですし、残された書類等では解析が困難のようで放置されています。

 まぁ、1200年前の紙片など、触れるとすぐに形が崩れてしまいますからおいそれとは触れられないようですし、そもそも重要な書類は強固な金庫のような部屋に保管されているようです。
 魔導砲とその弾薬は簡易なカギの付いた部屋に保管・安置されていたようですけれど、こちらのカギは腐食して用をなしていなかったようですね。

 そうして建造物自体が崩壊の危機にさらされているために、レインバルク帝国の研究員たちは、魔導砲や弾薬を施設の外に運び出しており、簡易な移動型研究施設の中で調査を行っているようです。
 ただし、そのうちの一か所にかなり大きな窪地のようなものがあり、その周辺の樹木や草が焼けているところを見ると、レインバルク帝国の建設した簡易な研究施設そのものが爆発の憂き目にあったようですね。

 おそらくは弾薬を調査研究している間に誤って信管でも作動させてしまったのではないかと思います。
 周辺にいた調査研究員の者の思考を覗くと、確かに調査研究中に、弾頭信管部分に謝って触れたために信管そのものが爆発して簡易研究施設が吹き飛んだようです。

 但し、どうやら外皮部分が腐食していて、弾頭内部にあった液状爆薬が外部に漏れて変質していたために信管部分の爆発だけで済んだようですが、それでも直径10m、深さ2mほどの窪地を生み出す破壊力はかなりのものですよね。
 これに液状火薬の爆発が伴うと数十倍の破壊力を生み出すことになるでしょうね。

 因みに弾薬については、十か所の工房で分散して調査研究が続けられており、魔導砲自体はかなり重いものですけれど古い施設から運び出し、弾薬の調査研究がなされている場所から二百尋ほど離れた場所に土塁を設け、その中に木造の上屋を作り、魔導砲が鎮座しておりました。
 周囲には騎士たちが二重三重の警戒をしていますが、私(ヴィオラ)は難なくその警戒をすり抜けて、天井付近から魔導砲を見下ろしています。

 私(ヴィオラ)のセンサー能力で内部構造まで詳細に見たところ、これは電磁砲のような原理で弾薬を飛ばす方式のようです。
 電磁砲と異なるのは電気や磁力を使っていないことでしょうか。

 電磁砲の砲身に十センチ単位でベルトが巻き付けられており、そのベルト内部に多数の魔石が埋め込まれて使われている様子です。
 この魔石から放出される斥力により誘導されて砲弾を打ち出す仕組みであり、およそ25段の加速が行われることにより音速の十倍近くの速度で打ち出されることになりそうですね。

 但し、レールガンや電磁砲の場合は細身の弾丸を使うのですけれど、使用予定の弾丸を見る限り決して細身の弾丸ではありません。
 砲身の内径は40センチ以上もありますし、弾丸もそれに応じた大きさで、直径約40センチ、長さが1m近くもある代物です。

 この魔導砲を実際に発射した場合、おそらくは発射直後のソニックブームで周辺に居る者は吹き飛ばされることになりそうですし、場合によっては魔導砲自体にも異常を生じさせるかもしれません。
 あと、どう見ても砲身内径と砲弾の外径にあまり余裕がありません。

 砲身に触れないように弾丸を発射できればエロージョンは発生しませんが、もし幾分でも触れるとなれば、弾丸か砲身のいずれか、もしくはその両方が摩擦により破壊されることになりそうです。
 単なる私見に過ぎませんが、これは失敗作かもしれませんね。

 仮にソニックブーム対策を怠っていれば、防護されていない砲手やその他の作業員も重傷を負い若しくは死亡するかもしれません。
 もう一つ弾丸の装甲の方が脆弱そうなので、あるいは砲身の中で爆発してしまう恐れすらあります。

 砲身内部の確認でもこの魔導砲は一度も使用された形跡はありません。
 あるいは試作されたものの、使えないことが分かって放置されたのかもしれませんね。

 問題は、厳重な金庫に収められている書面資料ですね。
 アポートで内部から転移させることもできるのですけれど、風化していて今にも崩れそうなので、単に外部からのぞき見するだけにしました。

 かなり細かい魔力操作を必要としますけれど、私(ヴィオラ)ならば密着している書面を一枚一枚覗き見ができるんです。
 結果として、そこには魔導砲の原理と試作品の研究成果について記載されていました。

 やはり発射時のソニックブームの発生と砲身や弾丸装甲のエロージョンの問題が予測され、その問題が解決できそうになかったことから、この研究は当面中止となったようです。
 特に砲身内部のエロージョン問題が深刻で、現状では五発から六発で砲身を交換しなければならない事態になることが分かっているようでした。

 砲身自体が希少な金属を使っていることから、砲弾一発当たりの単価が非常に高価なものとなることが分かっていたのです。
 安価な試作品の砲身での試射では、一回の試射で砲身が使い物にならなくなり、また発射時のソニックブーム発生により百尋以上離れた場所にあった堅牢な建物が半壊するほどの被害が生じ、死傷者も出たようです。

 まぁ、細身の弾丸形状にしてソニックブームを抑えつつ、砲身の内部摩耗の軽減と弾丸装甲の強化を図れば何とか使えるようになるかもしれませんが、この形状のままの弾丸では当面は無理じゃないでしょうか。
 残った砲弾を別の兵器に転用して使われても困りますから、この際、弾薬は全て破壊しておきましょう。

 魔導砲の方も、巻き付けた25本のベルト内部に収納されている魔石を取り出し、同時に魔石取り入れ口を溶接固着させておきましょう。
 そうすれば用途不明のベルトと単なる砲身が残るだけになります。

◇◇◇◇

 レインバルク帝国の魔導師団の副団長であるエステバン第二王子は、魔導師団の魔導具開発局長であるカルロスから驚くべき報告を受けていた。

「では、カルロスよ。
 今の其方の説明によれば、例の古代魔導具アーティファクトと一緒に発掘された弾薬が爆発し、その全てを失ったというのか?
 あれほど、人命には注意せよと言ったのに・・・・。
 此度の被害は?」

「はっ、今回の爆発は深夜に起きたものであって、負傷者は周囲を警戒していた将兵が数人重傷を負いましたが、死者は幸いにしてございませんでした。
 最も破壊が大きかったのは、弾体の中の液状物質が漏れていなかった正常と思える五発の炸裂弾であり、この炸裂弾のみは、特別に洞穴の中に保管しておりましたので周囲の被害を最小にできました。
 それでも洞穴の周囲を覆う高さが30m余りの岩山が粉々に吹き飛ぶほどの破壊力がございました。
 残り94発については調査中のものも含めてほぼ一斉に爆発しており、鋭意その原因を調査中ではありますが、今のところ原因はつかめておりません。
 砲身はかなり遠いところに隔離しておりましたので、今回の破壊によってもまったく影響はないと思われますが、生憎と内部に込めるべきと思われる炸裂弾が失われた今となっては、アーティファクトの機能を確認するすべがございません。
 今後も鋭意研究は致しますが、作動原理を含めて、アーティファクトの全容を知るには相当の時間を要するものと思われますし、新たな兵器の模倣製造はかなり難しくなったものと思料いたします。」

「なんと、撃ち出す方と思われる装置が残っていてもなお、再生は難しいか?」

「はい、作動原理を理解しているならばともかく、どのようにしてあのような炸裂弾を撃ち出すのかがわからなければ、模倣品も作れません。
 そもそも残った発射装置と思しき代物は、いかなる金属でできているのかもわからぬ現状であり、分解すらできない状況ではほとんどお手上げ状態でございます。
 残るは書面資料でございますが、あいにくとそよ風が吹いてもさらさらと粉末になってしまうほどの脆弱なもの。
 まして古代の言語で記された書類はそうたやすく解読ができません。
 アレバンド帝国そのものの消滅からして謎に包まれており、その使用言語も全く未知の言語であるために、どこの国においても解読ができないものとなっております。」

「なんと、せっかくのアーティファクト復活の機会が失われてしまったか。
 まぁ、止むを得ないところではあるが、今回発掘したアーティファクトの研究は鋭意続けるようにしろ。
 万が一にでもよその国で同じようなものが発掘され、そ奴らに先を越されては帝国の安寧に重大な危機を招きかねないからな。」

「は、その点の殿下のご指摘を踏まえ、調査・研究を一層督励いたします。」

 エステバン第二王子は、本当にがっかりしていた。
 アーティファクトの発掘が自らの栄光の足掛かりになると思っていたのが、その基盤から崩れたのである。

 何とか別のチャンスを掴むしか方法が無いなと、気持ちを切り替えるエステバン王子であった。

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