コンバット

サクラ近衛将監

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第四章 学院生活(中等部編)

4ー37 周辺国の問題

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 ヴィオラで~す。
 ロデアルで塩を生産し始めたことは、学院でも随分と話題になっています。

 そうして私(ヴィオラ)がその矢面に立たされました。
 ライヒベルゼン王国の危急の時に、どうして都合よくエルグンド伯爵領から塩が生産できるようになったのでしょうかと、知り合いの誰しもが私(ヴィオラ)に聞くのです。

 学院にはお兄様もお姉さまも居ませんから、ロデアルの事情を一番よく知っているであろう私(ヴィオラ)に尋ねることになるわけです。
 この辺は、お父様が王宮に報告へ行かれる時から、虚偽の報告内容を作ってあるのです。

 単純に考えて、10キロもの坑道が一月半ほどで掘れるはずがありませんからね。
 因みに斜度が6度ぐらいでも、1000m余り地下に潜ることになります。

 また、この6度という傾斜は車載重量にもよりますけれど、馬車で引いてもかなりきついはずなんです。
 人間が押したり引いたりして10キロの上り坂を運ぶのはかなり重労働なんですね。

 ですから鉱山で使う労働者は犯罪奴隷が多く、重労働のゆえに死亡率も高いのです。
 私とお父様が仕組んだ嘘は、鉱山の話でした。

 非常に薄い銀の鉱脈層がロデアルに見つかったので、三年ほど前からその地層を試掘していたところ、岩塩層に突き当たったというなのです。
 ですから銀鉱石も証拠の品として提出はしているんですけれど、含有率は非常に低いのでとても採算が取れず、投入した資産以下の収入しか得られなかった旨、王家には報告しています。

 当然のことながら有望な銀鉱山であることが分かれば、その時点で報告していたのですけれど、細々とした鉱脈層が続くだけで一向に採算が取れず、もう無駄な試掘はやめようかと思っていたところ、岩塩層が発見されてご注進に及んだということにしています。
 因みに、坑道もまっすぐじゃなくって、紆余曲折しながら徐々に地下深くへ潜っているんですよ。

 運搬路としては緩やかで余りカーブが無い方が良いわけですけれど、王家に対して誤魔化しも必要なので、全体としては大きな螺旋を描くような坑道になっています。
 ですからお父様が王家に報告した内容に沿って、私(ヴィオラ)もある程度詳細をぼかしながら説明をいたしましたよ。

 これまでライヒベルゼン王国で輸入していた塩はとても高かったのですけれど、ロデアル産出の塩は、販売価格をできるだけ抑えています。
 それでも間に商人が入るとどうしても割高になってしまいますよね。

 まして、需要に供給が追い付かない状況ですから、徐々に値上がりをしている状況のようです。
 現状では、私がロデアルに戻って増産措置をする等の直接介入をするわけにも参りませんから、今年の夏休みまでは何とかお父様達に頑張ってもらいましょう。

 夏休みで帰省したなら、何とか理屈をつけて垂直坑道を作ってみようと思っています。
 魔導具のエレベーターを造り、一定階層ごとにエレベーターで昇降できるようになれば、よりたくさんの塩が生産できるようになると思います。

 また、送風機も作って魔法師たちの労力を減らし、24時間体制での岩塩掘削を始めましょう。
 そうすれば少なくとも現状の二倍以上の生産が見込めるんじゃないかと思うのです。

 他国に輸出ができるほどの量は必ずしも必要ありませんが、少なくとも国内需要の最低限度の生産量は確保したいですよね。

 ◇◇◇◇

 一方で、ライヒベルゼン王国西方の隣国であるレーベンシュタイン公国、ソーベン王国、リットニア王国については、ライヒベルゼン王国と同様に内陸国であって、やはり海に面している国から塩を輸入していたわけですが、少なくとも北のゼラート王国からの輸入が極端に少なくされたことにより、非常に困った事態に陥っていました。
 尤も、南方の海岸国の一つであるクルーランド連邦共和国については、リットニア王国と国境を接しており、友好関係にあったこと、また、レインバルク帝国からの圧力もなく、塩の輸入が制限されてはいなかったことから、クルーランド連邦共和国産の塩が提供され、リットニア王国を経由してソーベン王国、そうしてレーベンシュタイン公国まで、一応ぎりぎりの量が流通している状況でした。

 それを狙ったものなのかどうかは不明ですけれど、レインバルク帝国が突如としてリットニア王国へ侵攻を始めたのでした。
 リットニア王国とレインバルク帝国が一旦戦闘を始めてしまうと、途端に南方からの塩が途絶えることになり、ソーベン王国とレーベンシュタイン公国の二つの国が非常に困ることになりました。

 北のゼラート王国から輸入できる制限された量だけでは、絶対量が不足しているのです。
 レインバルク帝国の北方海軍の影響力は間違いなく減っているはずなのですけれど、一度脅迫にに従わざるを得ない状況になってしまった時点で、その強迫観念は後々まで残るものなのですね。

 ロデアルの塩の生産量が乏しい現時点では、ライヒベルゼン王国から隣国へ塩を提供することはできません。
 でも、ライヒベルゼン王国からの援助ではなく、別の方法で個人的な援助の手は差し伸べられます。

 勿論、私(ヴィオラ)の正体は隠したままですが、レインバルク帝国とリットニア王国の戦争に介入することにしました。
 レインバルク帝国の東部方面軍約五万の軍勢がリットニア王国へ侵攻をしているわけですが、迎え撃つリットニア王国軍は全軍を向けても4万人ほどしかないため、いたるところで籠城戦を余儀なくされ、敗色が濃厚なんです。

 私(ヴィオラ)が直接最前線を叩くこともできますが、目立ちすぎますので、私(ヴィオラ)が介入するのは、レインバルク帝国東部方面軍のロジの破壊工作ですね。
 戦線に運搬される食糧等の補給を行う兵站部隊を正体不明の賊を装って、集中的に狙いました。

 私(ヴィオラ)が襲撃するレインバルク帝国軍の兵站部隊の将兵については、できるだけ死なないようには手加減はしたつもりですが、部隊の救急対応の練度によっては死者が出たかもしれません
 兵站部隊が怪我をして動けなくなると、ロジが破綻し、途端に戦線の部隊が困ることになります。

 籠城戦では間違いなく攻城側が多数の兵士を必要とし、野営のために物資も大量に必要なのです。
 その最前線まで兵糧が届かず、補充の武器までも届かなくなれば、途端に困ることになるのです。

 ◇◇◇◇

 我は、西部方面軍副司令官のサミュエル准将であり、西部方面軍司令部のあるセブロンドに駐在して予備軍とともに留守を預かっている。
 つい先日まで予想以上の戦果を挙げつつ進軍していた東部方面軍であるが、いきなり最前線に補給が届かなくなったという知らせが舞い込んだ。

 西部本面軍の指揮を執っているのは、ベアローズ将軍だが、将軍からの伝令がセブロンドに駆け込んできたのだった。
 兵站部隊は5万の部隊を支える重要な職務を担っており、師団規模の一万を超える人員で400以上の部隊から編成されている。

 その舞台が総力を挙げて毎日戦線まで食糧等の補給物資を届けているはずなのに何故届いていないのか?
 私はすぐにも兵站部隊の長に問い合わせたのだった。

 帰ってきた内容はとんでもない話だった。
 兵站部隊が四六時中リットニア王国への街道で襲撃を受けており、同部隊の将兵が軒並み重傷を負って動けなくなっていること、因みに補給物資の方は襲撃に際して焼却され、若しくは武器などは破壊されているとのことだった。

 そのために予備軍を出動させて、補給部隊の護衛をお願いしたいと要求されてしまった。
 確かに前線に食糧との兵站物資が届かなければ大変なことになる。

 私の判断ですぐにも予備軍の8割に当たる8千人を出して兵站部隊の警護の任に当たらせる一方で、王都に向けて伝令を走らせ、増援を申請することにしたのである。
 尤も、王都から部隊を派遣するとなれば、セブロンドまでどんなに急いでも十日はかかる。

 その間は万が一の事態に遭遇しても予備軍の残り二千の将兵で耐え忍ばねばならないことになる。
 そうして予備兵を警備に回して万全の体制を整えたはずなのに、兵站部隊と警護の将兵が更なる襲撃を受けて、重傷を負って任務に着けなくなったのを知ったのはその五日後であった。

 兵站部隊も予備軍も余力はほとんどない。
 兵站物資の集積所は山のような物資で溢れかえっているのだが、それを戦線まで運ぶ将兵が居ないのである。

 やけくそで民間人に輸送を頼んだが、これも途中で襲撃を受けて護衛の冒険者ともども重傷を負いながら戻ってきたようである。
 この民間人の利用も三つの輸送隊を最後に受ける者が居なくなった。

 いくら報酬が良くても襲撃されることが分かっていて受ける者は居ない。
 軍ができないことを民間人ができるわけもないのだ。

 止むを得ず王都からの増援部隊を待つことになったが、その間も戦線からは矢のような最速の伝令が毎日やってきていた。
 留守を預かる身としては身の置き場もないわけだが、どうにもできないのだ。

 襲撃は非常に巧妙である。
 報告によれば、隠れた位置から魔法による攻撃を受けているのだ。

 多彩な魔法攻撃であることから複数の魔法師が関与していると思われるうえに、ほぼ同時間帯に複数の個所で襲撃を受けていることから、襲撃部隊もかなり多数の人員からなるものとみなされているのだが、いくら防備を固めても、また、罠を仕掛けても、我が方の努力が一切無に帰しているのだ。
 兵站物資は届かず、兵站部隊はほぼ壊滅しかけている状態である。

 ◇◇◇◇

 兵站部隊に警護の部隊をつけてもなお、兵站部隊が襲撃されて、食料を焼かれ、武器を破壊されてしまっては、戦線の維持もできませんよね。
 私が介入して半月ほどで、レインバルク帝国西部方面軍は撤退を始めたのです。

 5万人もの侵攻軍が必要とする食料は生半可な量ではありません。
 例えば戦国時代の日本では、兵士一名につき一日米6合(900グラム?)が必要だったそうですよ。

 5万人となると米換算で30万合(約45トン)が必要なんです。
 それが現場に届かなくなれば、将兵の士気に関わりますよね。

 その結果が半月後に現れたというわけです。
 まぁ、精兵も飢えには勝てないのは世の常でしょう。

 この半月ほどの間に私(ヴィオラ)が襲撃した兵站部隊は延べにして396部隊に及び、傷病兵として兵站部隊から離脱を余儀なくされたものの数は一万人を超えていました。
 死者は、後程調べたところでは13名でしたが、これはいずれも部隊での応急措置等がまずかったためで、本来なら助かるはずの命でした。

 いずれにしろ、私としてはレインバルク帝国のやり口が気に入らないので、秘密裏に介入をしたわけですが、情報によれば、リットニア王国を占領したなら、次にはソーベン王国と、レーベンシュタイン公国へも矛先を向ける計画があったようです。
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