コンバット

サクラ近衛将監

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第五章 ブルボン家の嫁

5ー12 エピローグ

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 長男のチャールズがユニークスキルを持っていることがわかり、チャールズの休暇中に色々と手伝ってもらうことにしました。
 尤も、手伝いをしてもらってから五日ほどで、私(ヴィオラ)も瘴気からの成分の分離抽出ができるようになりましたけれどね。

 何せ、目の前にお手本が居てしっかりと見せてくれるのですから、その魔力の動きを追いかけていると自然と私(ヴィオラ)にもできるようになったのです。
 そうして、ダニエルやベアトリスさえも一月半ほどで同じようなことができるようになりました。

 但し、ダニエルとベアトリスは年齢相応に能力が不足していますので、長い時間この分離抽出を続けることはできません。
 今の段階では、タイラントロアから有用な鉱物を抽出させることを少しずつ始めさせています。

 この修練を行うことで魔力の操作方法も学べるのです。
 その意味では、三人の子供達はいずれも錬金術師の才能は有りそうですけれど、魔法師としての能力も徐々に開花していますよ。

 子供達の場合、何を差し置いても健康が大事ですから、健康維持のための運動も少なからずやらせています。
 あら、私(ヴィオラ)って教育ママになってしまったのかしら?

 いえいえ、ブルボン領における教育制度のけん引役でもありますから、領民全ての教育を担う文部大臣的な役割なのですね。
 その一部に子供達の育成が入っているだけなのです。

 話が少しずれてしまいましたけれど、チャールズのお陰で瘴気の調査研究が随分とはかどりました。
 まず瘴気に含まれているのは、上澄みの虹色部分に相当する魔素がありますね。

 そうして中間層に当たる灰色の部分は『インテルメディ・カタリス』と名付けましたけれど、魔素とその他の黒い部分を結びつける触媒のような存在なのです。
 そうして静置して沈殿する部分の層には、少なくとも6種類のガス状成分が含まれています。

 このガス状成分は、ある意味で生き物のような動きを見せるのです。
 まるでガス状の病原体のようにも思えるのです。

 単純な話、近くに動植物が存在するとその体内に吸収されて、細胞に突然変異を与えることになります。
 生体が突然変異を終了すると、当該成分はコアとなって体内に残りますが、その際に大気中に溢れている魔素を吸収して魔石となるようです。

 この辺は、私がモルモット代わりの小動物で実験を繰り返しました。
 前世ではハツカネズミと称されていた生物によく似た齧歯類げっしるいの動物がこの世界にも存在します。

 前世のハツカネズミの寿命は野生の場合数か月から1年ほどのはずですが、妊娠期間が二十日と短いのが特徴ですよね。
 この世界では、『ラヌア・ムルス』という、妊娠期間が一月ほどのピンク色のネズミが居るのです。

 体長は、平均で6センチ程度、体重は15グラム程度の小さなネズミです。
 この世界ではそもそも動物実験などに使うという発想がありませんから、このラヌア・ムルスは野生のものでしたけれど、私が飼育するようになって随分と増えましたけれど、寿命は最長で2年ほどですね。

 そうして生体に突然変異を起こさせるガス状物質には、『クリマディカ・プリモルディ』と名付けました。
 略してCPです。

 今のところこのCPは、CP―1からCP―6まで存在していることが分かっています。
 CP―1は、生体を巨大化させます。

 細胞そのものも多少大きくなりますが、細胞数が20倍から40倍ほどに増えることが特徴です。
 従って、CP-1を吸収したラヌア・ムルスは、体長が20センチから27センチ程度、体重が300グラムから600グラム程度になりますが、ピンク色の巨大なドブネズミを思い起こせばよいかもしれません。

 但し、このCP-1の吸収だけでは凶暴性が表面化しません。
 おとなしい巨大なハツカネズミと考えればよいかもしれませんね。

 凶暴性はCP-2が吸収されると発生するようです。
 ラヌア・ムルスの体表の色が暗赤色に変わり、大きさはさほど変わらないのに、攻撃性が増して、大型の動物にまで噛みつくようになります。

 因みに、魔物であるグレイウルフ(体長約2.4m、体重約250キロ)をCP-2を吸収したラヌア・ムルス百匹の群れの中に放り込んだら2分で骨だけになりました。
 この変異種は、小さくとも集団になるととても危険な種類になりそうですね。

 当然のことながら、CP-1とCP-2の双方を吸収すると、巨大化して、凶暴性を増すことになります。
 CP-3は、周囲にある魔素を吸収する能力を付与するみたいで、CP-3を吸収すると魔石(コア)が大きくなります。

 尤も、小さなラヌア・ムルスの場合だと、体重の1%程度の重量の魔石になるのが上限のようです。
 仮にこの比率を大型の魔物に適用すると、例えば体重500キロのレッドベアの場合、5キログラムの魔石を持っていてもおかしくは無いのですけれど、実際にはそれほど大きな魔石を持っているわけではありません。

 私が行う実験では、それぞれの成分を抽出して大量に投与するので自然界で吸収する場合とは異なる環境になるようです。
 但し、スポット的に、大量の瘴気が溜まる場所で、なおかつ、長期間にわたってそれを吸収する場合は別ですね。

 良い例ではズボラなドラゴンが瘴気を浴びておかしくなりかけた事例がありますよね。
 ブルボン領に置き換えると、峡谷等の比較的瘴気が溜まりやすい場所に長期にわたって棲息していた魔物は魔石が巨大化するかもしれませんが、彼らも捕食動物であるためにそれなりに移動しますから、その意味では最大値には達しない可能性があります。

 CP-4、CP-5、CP-6は、魔物に魔力を付与するようです。
 但し、いずれも多少闇属性がかかっており、凶暴性を増すようですので、あるいはさらに細分化できるかもしれません。

 CP-4は『火』、CP-5は『風』、CP-6は『土』属性の魔力を付与するようです。
 但し、これらを付与されたからと言って、直ちに魔物が魔法を発動するというわけでは無く、ラヌア・ムルスの場合では、少なくと魔法を発動できる種は発生しませんでした。

 ゴブリン、コボルト、オーク等にはメイジが発生することもあるようですから、何らかの別の因子或いは種として突然変異等が有るのかもしれません。
 特に同一種が群れを造った際に発生する、ソルジャー、ナイト、ジェネラル、キング等の出現は、群れの規模と関係がありそうですけれど、その原因については今のところ解明されていませんね。

 瘴気とは別のことわりが働いているのかもしれません。
 或いは、上位種誕生に対する信仰めいた希望や憧れなどの要因が、それらの群れの中で上位種をうみだすのかもしれませんね。

 その辺は、もう少し解明のための調査研究が必要ですので、10年やそこらでは終わらないかもしれません。
 何しろ、ここまで解明するのに、子供たちの遊び半分のお手伝いを得ながら、2年もかかってしまいましたから・・・。

 それでも、瘴気の成分を分離・抽出することができるようになって、浄化との関連性をようやく見出すことができるようになりました。
 CP-1からCP―3までは浄化により、新たなガス状成分に変化することが分かりました。

 この浄化した後に残る残差のようなガス状物を『ミアス・ド・プロテキス(略称MDP)』と名付けました。
 このCP-1、CP-2,それにCP-3から変化したMDPは、ほぼ同じものと判断していますが、現在のところどのような影響を環境に与えるかがよくわかっていません。

 少なくともMDPは均一であり、これ以上の分離抽出は現状ではできないのです。
 或いは、このMDPに何かを掛け合わせ、若しくは何かを触媒とすることで別の現象を引き起こすかもしれないので、目下そちらへと研究をシフトさせているところです。

 因みに、CP-1からCP-3までのガスを浄化することで生ずるMDPは僅かに2%ほどですけれど、これが何かの弊害を生むならば消去する方法を考えなければなりませんよね。
 出来れば固形物に吸収できるような手法が見つかればよいのですが・・・・。

 CP―4以降の残差については、浄化により空気中の魔素に置き換わるようです。
 この魔素が、大量に含まれる場所では、特に幼子等に魔力過多の症状が発生しやすいので注意が必要ですが、希釈された状態であれば、人体や生物に左程の影響を与えないことが分かっています。

 そうして、多くの魔物はこの魔素を吸収する性質がありますから、ある意味で大気中の魔素の調整役として役立っているようです。
 この結果として私(ヴィオラ)が行う浄化若しくは今後生み出すであろう正規の浄化装置によって、極端に大きな被害を生ずることは無い物と判断しておりますけれど、浄化そのものもできるだけ必要最小限にしなければいけないと思っています。

 いずれにしろ、今後とも解決すべき課題は色々とありそうですね。
 この分野での調査研究は、科学文明の発展と同様に終わりが無いように思えます。

 私(ヴィオラ)の戦い(コンバット)は、今後も続きそうですね。

 --- <完> ーーー


 最後までお読みいただきありがとうございました。
 この話は、これで完結とさせていただきます。

 来週以降の毎週土曜日午後8時からは、仮題「転生大賢者の現代生活」を投稿したいと考えています。

  By サクラ近衛将監
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