コンバット

サクラ近衛将監

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第三章 学院生活編

3ー4 入寮

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 翌々日が試験以外では初めての登校日で、クラス分けが発表される日です。
 今日からは寮に入ることになりますので、またまたローナと執事のブキャナンさんと共に馬車で学院に向かいます。
 
 学院の門の中に馬車が入れるのは特別な場合だけで、通常は門外の広場で降りることになります。
 私は実際に行ったことが無いのでわかりませんが、前世で安奈先生が地名から関連して教えてくれた江戸時代にあったというお城の「下馬」のようなものでしょうか?

 既に十台以上の馬車が止まっていて、二台ほどは荷下ろしを始めていました。
 ブキャナンさんが先に降りて、私のクラスを確認してくれました。

 私のクラスはAでした。
 二番手ならAになると思っていましたので取り敢えずは予定通りですね。

 寮は、水の精霊の名をとった「オンディーヌ」だそうです。
 クラスと寮は必ずしも連動しないのです。

 お兄様とお姉さまもAクラスでしたけれど、お兄様の寮は大地の精霊の名から「ノーム」でしたし、お姉さまの寮は風の精霊の名から「シルフ」です。
 お兄様は中等部でいらっしゃるから、既に寮も移られていますし、名も違うのですけれど、お姉さまは初等部なのでもしかすると寮は一緒になる可能性もあったのですが、生憎と一緒にはならなかったみたいですね。

 寮のお部屋はそれぞれ別ですけれど、初等部の一年から三年までが同じ寮に混在するのです。
 そうしてお兄様やお姉さまのお話では、寮の自治は生徒たちに委ねられており、寮対抗の色々なイベントがあるのだそうです。

 その結果は成績にも多少関わってきますけれど、寮生の名誉がかかっているとかで、皆さん一生懸命に頑張るんだそうですよ。
 私も今からそのイベントとやらが楽しみです。

 執事のブキャナンさんとローナに私の荷物を持っていただいて、取り敢えずは寮に向かわなければなりません。
 今日の午前中は入寮の手続きと引っ越しだけで、午後からは所謂入学式のようです。

 ヴィオラ(私)は、前世の小学校の入学式の経験しかありませんけれど、やはり雰囲気が違っていそうですね。
 私の前世の私立小学校では、みんな制服を着ていましたので同じ格好でしたけれど、ここは皆の服装が違います。

 私も自分の私服を着ていますので、皆さんも私服なのでしょうね。
 制服の良いところは貧富の差が出ないことなのですが、ここでは如実に見えてしまいます。

 上位貴族の子女は明らかに上質の着物を着ていますけれど、下級貴族の子女はどうしても見劣りする衣装になってしまうのです。
 私の持ち込んだ衣装の数は、取り敢えず四半期分として10着ほども有るのですけれど、季節に合わせたものを別途追加で送ってくると聞いています。

 何でも伯爵としてのメンツを保つためにも、上質な衣装は必要な「鎧兜」なのだそうですよ。
 貴族社会って面倒なのですね。

 着ている衣装だけで格が見透かされる世界なんですけれど、そうした虚飾も多少は必要なのかなとは思っています。
 だって、私の作った化粧品が大枚の金貨に化ける世界なのです。

 如何に上流社会の女性が見栄えに気を使っているかがわかるというものです。
 さてさて、両手に大きなトランクを持ったブキャナンさんの先導で、私たちは「オンディーヌ」の寮に到着しました。

 入り口に、テーブルが置かれ、柔和な表情の叔母様が椅子に座っていらっしゃいました。
 ブキャナンさんがその前に行き、叔母様に話しかけました。

「今年から学院生になりますエルグンド家のヴィオラ様です。
 入寮の手続きをお願いします。」

 叔母様は、柔和な表情を見せながらも、鋭い視線を私に向けました。
 あ、これって鑑定かな?

 でも、残念ながら私には鑑定は効かないんですよ。
 多分、叔母様の鑑定はねつけられてしまったはずです。

 ちょっと叔母様の目じりが上がりましたが、左程驚いても居ないようです。
 そうして目の前の一覧表に目を移し、名前を確認してから言いました。

「はい、確認いたしました。
 エルグンド家のヴィオラ嬢ですね。
 私は、「オンディーヌ」の寮の舎監しゃかんをしているサマンサ・ディケンズです。
 寮生の皆さんは、私のことをディケンズ夫人と呼んでいるようですね。
 寮生活に関して問題があれば、私に言うようにして下さい。
 この「オンディーヌ」寮の212号室が、これから三年間のあなたのお部屋ですよ。
 こちらがそのカギです。
 一つはヴィオラ嬢が、もう一つは従者の方が持っていてください。
 大事なものなので失くさないようにお願いします。」

 そう言ってディケンズ夫人はカギを二つ渡してくれました。
 一つはローナに持ってもらいます。

 そうしてディケンズ夫人が続けて注意事項を言いました。

「お供の方の居場所は、お部屋の中に従者の部屋がありますので、そこを使ってください。
 それと寮生活では、礼儀作法の励行とともに、生活する寮生に迷惑をかけないよう心掛けることが大事です。
 この寮は男女が混在していますが、生活空間は会議室や食堂などの共用スペースを除いて男女別に分かれています。
 入り口から入って、右側が女子の生活空間、左側が男子の生活空間です。
 絨毯がその為に色分けしてあります。
 薄いオレンジ色が女子、薄い青色が男子、そうしてやや濃いめの紫が共用部分です。
 女子が男子の、男子が女子の生活空間に、それぞれ立ち入ることは原則と禁止されており、立ち入る先の男子の寮長又は女子の寮長の許可を得なければなりませんので注意をしてくださいね。
 従者も女子の場合は女性に限り、男子の場合は男性に限られていますから、この縄張りはしっかりと守ってください。
 それと後ろにいるのが、男子の寮長であるバーレット家のクライン殿と女子の寮長であるロングアイランド家のステラ嬢です。
 ヴィオラ嬢のお部屋にはステラ嬢が案内してくれますので付いて行ってください。
 それではお願いしますね。」

「はい、畏まりました。ディケンズ夫人。
 えっと、ヴィオラ嬢と伴の者、それにご一緒に来られた男性の入寮を一時的に許可します。
 荷物を部屋に置かれたなら殿方は速やかに退去するように御願い申します。
 どうぞ私の後についてきてください。」

 きびきびとしたステラ寮長の言動とお姿は尊敬に値します。
 ヴィオラ(私)とは二歳しか違わないのに、これも教育の賜物なのでしょうか?

 ヴィオラ(私)達一行は、ステラ寮長の案内で淡いオレンジ色の絨毯を踏みながら、二階へ上がり、目的の部屋に到達しました。
 荷物を部屋に入れるとブキャナンさんは早速に引き上げねばなりません。

 ステラ嬢と共に出口へ向かって行きました。
 ステラ嬢は、別の寮生が来るのでディケンズ夫人のところへ戻るのでしょう。

 私も212号室の壁に張りだしてあった寮生名簿を観ましたけれど、オンディーヌに入る新入生は全部で4名です。
 二階は、211号室と212号室が女子の新入生で、201号室と202号室が別区画になりますが男子の新入生になるようです。

 211号室の新入生は、エミリア・ディ・ラ・シス・オルソー・ドラベルト様という方ですなのですが、・・・。
 あれぇ?

 ドラベルトは王家の称号のはずですけれど・・・。
 そうしてオルソーは、側室となったカタリーナ様の実家の名。

 であれば211号室の新入生は王家の姫様ということになりますよね。
 そんな話聞いていませんけれど・・・。

 いや、まぁね、王立学院には、いろいろな貴族の方の子女が入るとは聞いていましたから、王女や王子も入るんだろうなとは漠然と思ってはいましたけれど、まさかお隣にその王女様の一人が入るなんて夢にも思いませんでした。
 もしかして試験の時にあったのかしら?

 いいえ、多分、王女様は試験を受ける際は最後だったのでしょう。
 ですから、顔も全然覚えていません。

 最初の筆記試験は個室でしたし、次の試験は終わると次々に移動ばかりしていましたから新入生とはほとんど会っていません。
 徒競走では少なくとも私と一緒に走った方ではありません。

 剣術の試験や魔法の試験は私も最後の方ではありましたけれど、エミリアさんという名に覚えがありません。
 そういえば、身体強化の使い過ぎで倒れた人が5人ほどいて、その方たちは、剣術や魔法の試験では見かけていませんね。

 もしかすると、エミリア様もその口かも知れません。
 私は物覚えが良いはずなのに、エミリアさんという名を聞いた覚えがありませんもの。

 そういえば入学式は午後からなのですが、その前にお昼を食べるセレモニーがありました。
 ステラ嬢がそのようにおっしゃっていました。

 昼食の時はまた迎えに来てくれるそうなのです。

 その際にエミリア王女様ともお会いできるかもしれません。
 あ、そういえば、学院内には何やら派閥があるのだとかお兄様やお姉さまから聞いています。

 大きな派閥が二つ、国王派と大公派なのだそうです。
 大公の嫡子と次男は既に王立学院を卒業しているのですけれど、庶子である三男ヒューベルト様が中等部に、また側室の子で四女のベルディナ様が初等部二年生にいらっしゃるのだと聞いています。

 大公派の派閥は、このお二人を中心に造られているのだとか。
 元々は、大人の派閥が高じて子女にまで及んでいるのだそうです。

 エルグンド家は国王派に属していますので、必然的に私も国王派に属している者と見做みなされています。
 あとは・・・、そうそう、オンディーヌの213号室に入る新入生は、ブラッセルド家(子爵)のルミエ様という方なのですよ。

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