コンバット

サクラ近衛将監

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第三章 学院生活編

3ー5 自己紹介とお友達

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 入寮して初めてのお昼です。
 約束通りにステラ寮長が迎えに来てくれました。

 但し、私のところに迎えに来た際には、一人の同級生を連れていました。
 多分、お隣の213号室のブラッセルド子爵家のルミエ様です。

 徒競走の時に私より前の組で走っていらしたので覚えています。
 私が自己紹介のために一歩前に進み出ましたが、ステラ嬢に手で静止されました。

「自己紹介の機会は後でございます。
 今は食堂に参りましょう。
 私の後についてきてください。」

 ステラ嬢は、エミリア王女様の部屋にもノックをされ、多分侍女であろう人が顔を出すと用件を伝え、すぐにエミリア様らしき方がお出ましになられました。
 エミリア様は、やはり私の記憶には無い方のようです。

 3人の新入生がステラ嬢に引き連れられて階段を降り、一階の供用部分にある食堂に向かいました。
 ちょうど食堂の前で男子新入生3人を連れた男子寮長のクライン様と出会いましたが、クライン様は優雅に会釈して私たちを先に通してくださいました。

 レディファーストなのか、それとも王女殿下であるエミリア様に配慮されたのかはわかりません。
 食堂には既に上級生の方々が座って待っておられました。

 二年生が7人、三年生は男女の寮長を除いた4人です。
 従って、新入生6人を新たに迎えたオンディーヌ寮は、1年から3年までの19人の寮生で新学期を迎えることになりますね。

 テーブルは男女別に分かれた大きな長いテーブルです。
 御付きのメイドや侍従は、それぞれの主人が座る席の背後に座ることになりそうです。

 従って、ローナの席もありますね。
 ステラ嬢が案内してくれた場所には、端から四つの席が空いているほか、一番奥の座席も一つ空いてます。

 ステラ嬢の指示で、エミリア様が先に座られ、次に私、最後にルミエ様が座る形になりました。
 ステラ嬢はそのまま奥の席に行きました。

 私達の後についてきた男子新入生3人も私達と向かい合った席に順次座り、クライン殿は奥の席に向かいました。
 但し、男子は女子よりも多いようで、一番最後の方は向かいに人のいない末席になりました。

一年生と三年生は男女三名ずつなのですが、二年生は男子が4名、女子が三名で男子が一名多いのです。
 ルテナによれば、年によって男女の比率が異なり、女子が多い年も有るそうですよ。

 何しろ学院の寮は六つもありますからね。
 オンディーヌ(水の精霊)、ノーム(大地の精霊)、サラマンダー(炎の精霊)、シルフ(風の精霊)、ドリュアス(樹木の精霊)、エアリアル(大気の精霊)が寮の名前として付いています。

 初等部と中等部では寮が異なりますけれど、寮が六つあるのは同じなのです。
 そうしてすぐに会食の前の寮長挨拶がありました。

 ルテナによれば、これが学院の伝統なんですって。

「本日我がオンディーヌ寮にも六人の新入生を迎えることになりました。
 新入生の皆さんは初等科に居る間は、この寮で過ごすことになりますので、オンディーヌ寮生として恥じない行動と成果を成し遂げることを期待しています。
 そうして在寮生の諸君には良き先輩として新たな仲間を育み、導くことを期待します。
 皆、この一年、オンディーヌ寮のために頑張りましょう。
 では、新入生には一人一人自己紹介をしてもらいます。
 最初にエミリア・ディ・ラ・シス・オルソー・ドラベルト嬢、なんでも宜しいので自己紹介を簡潔にお願いします。」

 自己紹介の時間のようですね。
 さて、何をお話すればいいのでしょう?

 エミリア嬢が席から立ち上がって自己紹介を始めました。

「エミリア・ディ・ラ・シス・オルソー・ドラベルトでございます。
 王都には住んでおりますが、生憎と王都のほとんどを知らないまま過ごしております。
 どうぞ未熟な私に色々な知識を教えてくださるようお願い申します。」

 そう言って軽く会釈をされました。
 確かに王女様ですからねぇ。

 側室のお子とはいえ、王宮から出ることはほとんどないでしょうから、王都に居ても市井しせいのことは何も知らないのでしょう。
 そうは言いつつも、実は私も家の在るロデアル以外の場所は多少の知識は有ってもほとんど見たことがありません。

 学院へ入学する前の幼い貴族の子がそんなに簡単に街中へと自由に出掛かられる方がむしろ珍しいのです。
 それと寮長の紹介でも正式名を言っていましたし、エミリア様も正式名を名乗られました。

 自己紹介では、どうやら家の爵位を明らかにする必要があるのですね。
 あ、因みに私達貴族の子は、爵位がありませんので正式名の家名からそれとわかるだけなんですよ。

 因みに、貴族の家名から爵位を思い浮かべることができなければ貴族の子としては失格なのです。
 ですから私も百を超える家名と爵位を一生懸命に覚えました。

 そのため家名を聞けば爵位と領地がおおよそわかるんです。
 但し、准男爵と騎士爵については、貴族とは見做されない一代限りの爵位になるため、貴族名鑑には掲載されていませんのでわかりません。

 そうして、生憎と家名がわかっても爵位を有する人物の顔はわかりません。
 お会いしたこともありませんし、前世のように写真なんかありませんから、どこかでお会いした時に覚えるしかないのです。

 その意味では試験に立ち会った係の人なんて、せっかく出逢いが有っても自己紹介も無しに別れた人がほとんどです。
 向こうは名簿で私の名を知っていても、私の方は名無しの権兵衛さんと認識しているに過ぎません。

 美術の先生?音楽の先生、剣術の先生?皆さんさんですね。

「はい、ありがとうございました。
 次いで、ヴィオラ・ディ・ラ・フェルティス・エルグンド嬢、同様に自己紹介をお願いします。」

 クレイン様にそう言われて私が立ち上がります。

「ヴィオラ・ディ・ラ・フェルティス・エルグンドでございます。
 エルグランド家の次女にございます。
 王都には始めて出てまいりました田舎者にございます。
 未熟な者にございますので、どうか皆様のお力添えとご指導をよろしくお願い申します。」

 趣味なんかもお話した方が良いのかなとも思いましたけれど、1年生ですからね。
 趣味や能力をひけらかすようなことになってもいけませんからやめました。

 次いで私のお隣のルミエ様ですね。

「はい、ありがとうございます。
 次いで、ルミエ・ディ・ラ・シス・エステバン・ブラッセルド嬢、自己紹介をお願いします。」

「ルミエ・ディ・ラ・シス・エステバン・ブラッセルドです。
 ブラッセルド家の三女です。
 この学院では大いに学ぶことと、良き友を得ること、そうして将来良妻賢母になるべく自らを磨くことを目標といたしたいと思っています。」

 うん、私の記憶ではルミエさんは、徒競走で男の子に伍して一番で走っていた子ですね。
 きっと頑張り屋さんなんでしょう。

 子爵家の庶子は、そう多くは無いのです。
 お父様は側室を持たれていませんけれど、伯爵以上の爵位を持たれている方は、側室を抱えていらっしゃる方がほとんどなのです。

 でも一方で子爵以下の貴族では、側室を抱えている事例は少ないのが普通です。
 余程領地に恵まれないと家計が苦しくなるからで、その意味ではブラッセルド家は裕福なのでしょう。

 確か王国でも生産量で三指に入るミスリル鉱山を領内に持っていらっしゃったはずですね。
 次いで、男子の新入生に移りました

 一人目は、アルドレット・ド・ヴェレンド・トレバース様、ヴァルが付いていませんので世継ぎの嫡男ではなく、トレバース(伯爵)家の次男以降の男子ですね。
 自己紹介では三男と申されていましたね。

 二人目は、ライオネル・ド・シス・アルノル・ヴェンテス様、ヴェンテス(子爵)家の庶子の様ですね。
 自己紹介ではヴェンテス家の四男と申されていましたが、この方は嫡男になる可能性は極めて低い方ですので、女子からの評価は当然に下がります。

 三人目は、クレオ・ド・ヴァル・フェルミ・エベンテス様、エベンテス(男爵)家の長男で嫡子のようです。
 このような嫡子の方は、玉の輿を狙う女子にとっては格好の目標なのですけれど、生憎と男爵ですので順位は下がります。

 あ、予め申し上げておきますけれど、今まで述べたような男子への評価については、お母様に教えていただいた評価の仕方なのです。
 ヴィオラ(私)自身は、爵位などは人の評価に関わりないと思っていますので、爵位の上位下位、あるいは嫡男であるか無いかなどに興味はございません。

 知能の良し悪し、性格の良し悪し、素敵なスキルの有無などに興味がありますけれど、実のところ私と同じ年頃の子供と付き合ったことなんてありませんから、どう付き合ったら良いのかが五里霧中なんです。
 前世では平等な社会でのお友達でしたから、現世のような階級差が厳然として残るような学院でどのように対応すればよいのかが問題なんです。

 一応大人に近い知識は持っていますので、どうとでも対応はできるとは考えてはいますけれど、方向性によっては友達付き合いが難しくなるんだと思います。
 特に学院初等科でありながら大人の派閥争いに巻き込まれるなんて、問題ですよね。

 子供なんですから伸びと育つべきだと思うのですけれど、どうなんでしょう。
 個性を大事にすれば、「みんな違ってそれが良い。」でしょうし、協調性を大事にすれば、「みんな一緒でそれがよい。」になりますが、どちらも大事だと思うのですよね。

 そうしてその中に派閥とか爵位だのは無い筈なんです。
 ヴィオラ(私)って、前世の思想にかぶれすぎでしょうか。

 いずれにしろ、試行錯誤をしながら手探りで学院生活を送らねばならないなと思っているところです。
 次いで二年生以上の在寮生の方々が一人ずつ立ち上がって、学年と名前の自己紹介だけ始めました。

 寮生全員の自己紹介が終わってようやく昼の会食が始まりました。
 食事中はできるだけ会話は控え、必要な場合は小声で会話するのが礼儀なのです。

 ですから会食と言っても至って静かにお食事をしています。
 デザートとお茶の時間になって初めて会話が許されます。

 お隣のエミリア様から話しかけられました。

「ヴィオラ様はとても優秀な方なのですね。」

「はい?
 そんなことは無いと思いますけれど、エミリア様は、何故、そう思われるのでしょうか?」

「実は、学院の入学試験の結果を見せていただきました。
 多分、私が王家の血を引く者なので特別に見せて頂いたのかもしれません。
 ヴィオラ様は全ての試験でトップでしたわよ。」

 あれまぁ、そんなことになっているんだ。
 でもそんな入学の際の順位は余り関係ないのだろうと思うのです。

 ですから結果は出ていても、順位の発表は公式にはなされていないのでしょう。

「おや、そうなのですね?
 でも、試験の結果というものは水ものです。
 時と場所が変われば結果も変わっていたかもしれません。
私 は皆さんに負けないよう今後とも一生懸命頑張りたいと思います。」

「ウフフ、ヴィオラさんて頑張り屋さんなんですね。
 是非私とお友達になってくださいな。」

「はい、是非に。
 寮生としても、学院生としても親しくお付き合いをくださいませ。」

 私の初めてのお友達はエミリア様でした。
 そうして今度はお隣のルミエ様に私から声をかけました。

 学院生は、爵位には本来無関係の筈なんですけれど、どうしても上位の爵位の子女に対しては遠慮が生じます。
 エミリア様から私に声をかけていただいたように、私もルミエ様に声をかけてあげなければルミエ様は話しにくいのです。

「ルミエ様、同じ寮生の女同士です。
 エミリア様ともお友達になりますけれど、ルミエ様もお友達になってくださいな?」

 ルミエ様が嬉しそうに顔をほころばせて言いました。

「はい、ヴィオラ様、エミリア様、どうかご友人として末永きお付き合いをお願いします。」

「「はい、こちらこそ。」」

 ヴィオラ(私)とエミリア様の返事が綺麗にダブりました。

 会食は無事に済んで私たちは部屋に戻ります。
 お昼休みの休憩時間になりますが、御付きのローナ達は大変です。

 ローナ達メイドや執事たちは、会食の際は背後に控えているだけで、私達と一緒に食事はできないのです。
 ですから会食の後の僅かな時間に、食堂で若しくは自室で食事をとらねばなりません。

 そうして普通は自室で摂る場合が多いのです。
 今日も一旦部屋に戻ってから食堂に降りて、トレイで食事を運び、自室で食べています。

 これは自分たちの主人にいつでも奉仕できるようにです。
 ですから、ヴィオラ(私)は、この食事時間の際はできるだけローナの邪魔をしないようにしています。

 メイドや執事の人たちも大変なのですね。

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