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第三章 新たなる展開
3-12 留学中に起きた主要な出来事と対策
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この際ですから、1916年から1917年にかけて起きた主要な歴史的事件と関連する私の対策を列挙しておきましょう。
1916年1月:
第一次世界大戦でドイツの飛行船がパリを爆撃しました。
<帝国においては、軍用航空機の製造(非公開)開始により飛行船対策は十分にできています。>
1916年2月:
9日 - 英国政府が日本軍艦のインド洋シンガポール方面への派遣を要請。
1916年3月:
日本は、英国の要請を受け軍艦8隻をインド洋シンガポール方面へ派遣。
<特段、戦闘に参加するものではないので、政府にお任せです。>
1916年7月:
フィリピンの自治に関するジョーンズ法が米国で成立、将来的にフィリピンの独立を認める内容となっており、実際にフィリピンの上院下院議会もできあがったものの、米国人の総督が行政府を掌握しており、上下院を通過した法案でさえ拒否する権限を総督が保有していました。
<後のフィリピンの植民地化への動きにもつながるので本当は何らかの形で総督の権限を削いでおきたいのですが、取り敢えず静観です。>
1916年8月:
鄭家屯事件。日本軍、中国鄭家屯で奉天軍と衝突。日本軍戦死11名。中国軍に死傷者無し。
<張作霖関係者の謀略が介在したようですが、公表できる証拠も無いので対応は政府にお任せです。
但し、これらの事件の数々が陸軍幹部に対して、中国軍閥への不信感を植え付けたことは間違いないようです。>
1916年11月:
3日 - 皇太子裕人親王の立太子礼。
<留学中の出来事ですので式典参加はできませんでした。因みに皇太子は数えで17歳、満年齢で15歳でした。>
1916年11月:
米大統領選挙でウッドロウ・ウィルソン(第28代)が再選
ジャネット・ランキンが女性として初めて米国下院議員に選出。
<米国社会で少しだけ女性の地位が上がりましたが、実際の女性の地位向上はもっともっと先の話になります。>
1916年12月:
29日 - ロシアでグリゴリー・ラスプーチンが暗殺されました。
<ラスプーチンは、妖術を使う怪僧として後世に有名を馳せています。
皇太子の病気治療に貢献があったとして皇后から特別の待遇を受けた人物のようですが、実際のところはどう考えても多少のヒュプノ能力を有する詐欺師だったような気がします。>
1916年
このころアルベルト・アインシュタインが一般相対性理論を発表。
<この理論から派生する分野での理論展開もやろうと思えば留学中に可能なのですが、この分野の進展は強力な武器を産み出す危険性も高いので、むしろ触れないことにしました。
尤も、関係する教授連からは盛んに意見を求められたのですが、出来るだけ回答を避け、あるいは、はぐらかしました。>
その他:
第一次大戦の影響で海運市場は大好況だったので、翌年にかけて汽船会社が多数設立されました。
<この一方で、短期的な好景気に浮かれて投機をする輩が増えましたので、経済界と官界に圧力をかけて、大戦終了後の不景気に備えるように配慮させています。
新聞を活用し、同時に闇魔法を行使して、人心を少々操りました。
大戦後の不況は、後に起こるであろう関東大震災が更なる拍車をかけることになるので何としても歯止めを掛けねばならなかったのです。
この結果として鈴木商店の倒産はかろうじて防げたようでした。>
この時代大正ロマン、デモクラシーあるいはデカダンスといった風潮が流行し、列強諸国の仲間入りを果たしたという思いが驕りを産み出していました。
それが金融危機にも派生し、またインテリ層の徴兵忌避者増加にもつながりました。
一方で大正時代は帝国の中国進出や第二次大戦勃発のきっかけともなる事案が次々と起こった時代でもあります。
第一次大戦の勃発に伴い、日英同盟の約定に従って対独宣戦布告を為しました。
その上で日本は、中国大陸にあるドイツの租借地及び権益を奪取することを目論んだのです。
ある意味では中国に対する侵略の足掛かりでもあるのですが、当時の風潮として帝国は列強諸国の真似をしたにすぎません。
言い訳ではなく仮に帝国が動かなければ英国、仏国、露国、米国辺りが間違いなく動いた事でしょう。
私もこれを止めるべきか否か迷いましたが、結局は放置しました。
帝国だけを変えても世界の風潮は変えられないからです。
その結果が「対華21か条要求」と言う形で表面化しました。
帝国が参戦するためには何らかの見返りが必要であり、それが中国におけるドイツの権益であり租借地であったのです。
同時に、帝国としては1923年に期限を迎える旅順、大連の租借権の延長を図らねばならなかったのです。
一方で中華民国はドイツとの間で言えば中立国であり、日独の戦争に関しては戦時区域を設けて区域外に出ないよう要求していましたし、ドイツの権益や租借地は他国に譲られるべきではないという解釈を貫いていました。
日華の間で互いの目論見が異なり、同時に列強諸国と同じく中国に影響力を伸ばしたい帝国は中華民国政府に日本人顧問の押し込みを秘密条項として中華民国政府にある意味で恫喝しました。
この時期は砲艦外交が欧米列強の常套手段でしたから、帝国政府も軍部もそれが当たり前と考えていたのです。
まぁ、これでは揉めますよね。
最終的に顧問の押し売りは諦めて、19か条の条項を無理やり袁世凱に認めさせたのが日華事変の始まりであったかもしれません。
袁世凱は大日本帝国に無理やり認めさせられたという体を取り、反日感情を煽ることで自らへの国内非難を躱そうとしました。
これが日華事変を通じて最後まで中国人の意識にあった東洋鬼のイメージと反日抗争の先駆けとなりました。
仮に私がこの流れを止めた場合、日本は何ら利益を得られず、欧米に良いところ取りをされたと思います。
その方が良かったのかどうかは歴史のIFですのでやってみないとわかりません。
選択肢の一つとして、中国戦線と言う泥沼に踏み込まないという状況は作れたかもしれませんね。
でも、私は、一旦はその泥沼に僅かながらでも踏み込むことも必要と考え、放置しました。
全ては、第二次大戦で帝国が勝てずとも、負けないための布石を打つためにです。
但し、これから起きるであろう日華事変では多くの罪なき人々が命や財貨を失うのも事実です。
その被害をできるだけ抑えるための努力をするつもりではいます。
それが過去に転生した私の責務だと思うからなのです。
当面為すべきは2.26事件の未然防止と陸海軍の改革でしょうか。
軍人の横暴と独走が様々な悲劇を生みました。
軍人の一部には非常に優秀な頭脳を持った者もいますが、往々にしてそれを国のためと称して自らの信念を貫くために己の動かせる軍事力を利用する者が多く、同時にそれらの者は上昇志向が非常に強いのが特徴です。
ライバルは同級生であり、蹴落としのための策謀は流石にあまりしませんが、これが外国勢力となると自らの夢の実現のために平気で抹殺し、無慈悲なまでにそのために生ずる被害を必要悪として切り捨てます。
そこには、人の行為ではなく国家行為だから犯罪に非ずと言う極端な解釈があるように思います。
その代表例が、統帥権です。
統帥権とは天皇陛下の権能の一つであり、それを陸海軍が付託されているという憲法解釈から発します。
同時に、軍を含む政府は天皇を輔弼するためにあるとし、徐々に天皇による直接政治をさせないようにします。
江戸時代に将軍がトップであったにもかかわらず、老中或いは御側用人が暗躍できたのもその方式です。
実際、神でも無い限り、一人の人間が全ての政策を間違いなく為すことは不可能ですから、分化、専門化した組織がその権限を利用して代行するのは止むを得ないのですが、大正期以降の陸海軍は我欲を通すために天皇の意向を無視しても独断専行するようになり、軍部が武力を有するがゆえに誰もそれを止めることができなかったのです。
遺憾ながら2.26事件の発生で政府の主だったものが暗殺されるに及び、天皇陛下御自身にも軍部に対する恐れが芽生えたと思います。
そうして悪賢い陸軍軍人の一人が陸軍大臣への任官を拒否することで、気に食わない首相とその組閣を妨害するようになって、政治そのものが陸軍軍人の手に委ねられるようになりました。
この時点で誰も陸軍の行うことに反対もできす、非難もできないようになったのです。
そうした尻馬に乗った連中が右翼という脳筋連中です。
右翼の幹部はそこそこ悪賢い連中だったかもしれませんが、手足となった連中は、まぁ、ヤクザの鉄砲玉と思って間違いないですね。
彼らにはさほど深い考えなどありません。
幹部連中に養ってもらっていることから、その言を妄信し、命令に従っているだけです。
それなりに感化されて、自らの行為を正当化するような詭弁を弄する連中です。
こうした寄生虫のごとき連中も放置できないでしょうね。
震災もありますし、大正期に布石としてやっておくべきことは多々あるようですが、私自身は表面に出ることなく出来るだけ闇の中で動くこととします。
陸軍には偕行社、海軍には水交会という親睦団体がありますが、同時に若手将校らが造る秘密結社や政策研究会などが多々あります。
有名なのはクーデター計画で有名な陸軍の桜会でしょうか。
ある意味で有志の会なのではありますが、似た者同士が集まって謀議を重ねると、とみに過激になりやすいものです。
陸軍の参謀組織も組織としてそれに近いものがありました。
特に関東軍はいけません。
独断専行が多く、いつしか中央の言うことさえ聞かない無法者の集まりになってしまいました。
多分に明治維新の志士たちにかぶれたのかもしれませんが、現場に在って直に判断できる自分たちの判断と信念こそが正義であって、中央でぬくぬくとしている老害の言うことなどきけるかと息をまくのですね。
軍部を抑えるための究極の方法は天皇陛下を動かすことではありますが、残念ながら天皇陛下は奉られているだけで実際の統率力には欠けるのです。
で、私が考えた対策は元帥府の活用です。
制度としてはあるのですが一度たりとも元帥府は機能しておりません。
陸軍にしろ、海軍にしろ、自分たちよりも上に組織があると動きにくいですからね。
実際に機能しないよう仕向けて来たのが実態でしょう。
まぁ、簡単ではないのですが陸軍、海軍共に元帥候補をまず選出させることから始めさせるつもりです。
陸軍及び海軍で元帥が各一人、それを支える幕僚、側近、および事務系職員で取り敢えず数十名規模の組織を立ち上げるのは大正半ば頃になるでしょう。
統帥権はこの元帥府に付託され、陸海軍は元帥府の包括的指揮により動くことが前提となります。
無論、現地に不測の事態が起きた時の初動対応は現場指揮官に委ねられますが、中隊以上の兵を作戦で動かすには元帥府の承認が必要となるようにします。
宣戦布告がなされた後における包括的交戦承認がなされた後は、主として現地の参謀組織に局地的作戦を委ねます。
その場合でも大局的な中央の作戦遂行が優先されなければなりません。
実のところ陸海軍にはきっちりとした規則はなく、軍人勅諭と関連する組織規程と内規のみが行動規範になっていたのです。
その辺の細かい規定を作り上げるのも元帥府の仕事になります。
さもなければ私が準備する武器は使わせられません。
例え敵国人であろうと無差別に殺戮するような軍人は到底認められないのです。
その意味では、東京を含めて日本全土を焦土化しようとした作戦や、明らかに一般人を大量に殺すとわかった上で二度も原爆投下を決定した米軍は、ジェノサイド条約に触れる筈なのですが、勝者故の特権なのか何のお咎めも無かったのは明らかにおかしいと思います。
そうした強者の暴虐を防ぐために私は頑張らねばならないのです。
1916年1月:
第一次世界大戦でドイツの飛行船がパリを爆撃しました。
<帝国においては、軍用航空機の製造(非公開)開始により飛行船対策は十分にできています。>
1916年2月:
9日 - 英国政府が日本軍艦のインド洋シンガポール方面への派遣を要請。
1916年3月:
日本は、英国の要請を受け軍艦8隻をインド洋シンガポール方面へ派遣。
<特段、戦闘に参加するものではないので、政府にお任せです。>
1916年7月:
フィリピンの自治に関するジョーンズ法が米国で成立、将来的にフィリピンの独立を認める内容となっており、実際にフィリピンの上院下院議会もできあがったものの、米国人の総督が行政府を掌握しており、上下院を通過した法案でさえ拒否する権限を総督が保有していました。
<後のフィリピンの植民地化への動きにもつながるので本当は何らかの形で総督の権限を削いでおきたいのですが、取り敢えず静観です。>
1916年8月:
鄭家屯事件。日本軍、中国鄭家屯で奉天軍と衝突。日本軍戦死11名。中国軍に死傷者無し。
<張作霖関係者の謀略が介在したようですが、公表できる証拠も無いので対応は政府にお任せです。
但し、これらの事件の数々が陸軍幹部に対して、中国軍閥への不信感を植え付けたことは間違いないようです。>
1916年11月:
3日 - 皇太子裕人親王の立太子礼。
<留学中の出来事ですので式典参加はできませんでした。因みに皇太子は数えで17歳、満年齢で15歳でした。>
1916年11月:
米大統領選挙でウッドロウ・ウィルソン(第28代)が再選
ジャネット・ランキンが女性として初めて米国下院議員に選出。
<米国社会で少しだけ女性の地位が上がりましたが、実際の女性の地位向上はもっともっと先の話になります。>
1916年12月:
29日 - ロシアでグリゴリー・ラスプーチンが暗殺されました。
<ラスプーチンは、妖術を使う怪僧として後世に有名を馳せています。
皇太子の病気治療に貢献があったとして皇后から特別の待遇を受けた人物のようですが、実際のところはどう考えても多少のヒュプノ能力を有する詐欺師だったような気がします。>
1916年
このころアルベルト・アインシュタインが一般相対性理論を発表。
<この理論から派生する分野での理論展開もやろうと思えば留学中に可能なのですが、この分野の進展は強力な武器を産み出す危険性も高いので、むしろ触れないことにしました。
尤も、関係する教授連からは盛んに意見を求められたのですが、出来るだけ回答を避け、あるいは、はぐらかしました。>
その他:
第一次大戦の影響で海運市場は大好況だったので、翌年にかけて汽船会社が多数設立されました。
<この一方で、短期的な好景気に浮かれて投機をする輩が増えましたので、経済界と官界に圧力をかけて、大戦終了後の不景気に備えるように配慮させています。
新聞を活用し、同時に闇魔法を行使して、人心を少々操りました。
大戦後の不況は、後に起こるであろう関東大震災が更なる拍車をかけることになるので何としても歯止めを掛けねばならなかったのです。
この結果として鈴木商店の倒産はかろうじて防げたようでした。>
この時代大正ロマン、デモクラシーあるいはデカダンスといった風潮が流行し、列強諸国の仲間入りを果たしたという思いが驕りを産み出していました。
それが金融危機にも派生し、またインテリ層の徴兵忌避者増加にもつながりました。
一方で大正時代は帝国の中国進出や第二次大戦勃発のきっかけともなる事案が次々と起こった時代でもあります。
第一次大戦の勃発に伴い、日英同盟の約定に従って対独宣戦布告を為しました。
その上で日本は、中国大陸にあるドイツの租借地及び権益を奪取することを目論んだのです。
ある意味では中国に対する侵略の足掛かりでもあるのですが、当時の風潮として帝国は列強諸国の真似をしたにすぎません。
言い訳ではなく仮に帝国が動かなければ英国、仏国、露国、米国辺りが間違いなく動いた事でしょう。
私もこれを止めるべきか否か迷いましたが、結局は放置しました。
帝国だけを変えても世界の風潮は変えられないからです。
その結果が「対華21か条要求」と言う形で表面化しました。
帝国が参戦するためには何らかの見返りが必要であり、それが中国におけるドイツの権益であり租借地であったのです。
同時に、帝国としては1923年に期限を迎える旅順、大連の租借権の延長を図らねばならなかったのです。
一方で中華民国はドイツとの間で言えば中立国であり、日独の戦争に関しては戦時区域を設けて区域外に出ないよう要求していましたし、ドイツの権益や租借地は他国に譲られるべきではないという解釈を貫いていました。
日華の間で互いの目論見が異なり、同時に列強諸国と同じく中国に影響力を伸ばしたい帝国は中華民国政府に日本人顧問の押し込みを秘密条項として中華民国政府にある意味で恫喝しました。
この時期は砲艦外交が欧米列強の常套手段でしたから、帝国政府も軍部もそれが当たり前と考えていたのです。
まぁ、これでは揉めますよね。
最終的に顧問の押し売りは諦めて、19か条の条項を無理やり袁世凱に認めさせたのが日華事変の始まりであったかもしれません。
袁世凱は大日本帝国に無理やり認めさせられたという体を取り、反日感情を煽ることで自らへの国内非難を躱そうとしました。
これが日華事変を通じて最後まで中国人の意識にあった東洋鬼のイメージと反日抗争の先駆けとなりました。
仮に私がこの流れを止めた場合、日本は何ら利益を得られず、欧米に良いところ取りをされたと思います。
その方が良かったのかどうかは歴史のIFですのでやってみないとわかりません。
選択肢の一つとして、中国戦線と言う泥沼に踏み込まないという状況は作れたかもしれませんね。
でも、私は、一旦はその泥沼に僅かながらでも踏み込むことも必要と考え、放置しました。
全ては、第二次大戦で帝国が勝てずとも、負けないための布石を打つためにです。
但し、これから起きるであろう日華事変では多くの罪なき人々が命や財貨を失うのも事実です。
その被害をできるだけ抑えるための努力をするつもりではいます。
それが過去に転生した私の責務だと思うからなのです。
当面為すべきは2.26事件の未然防止と陸海軍の改革でしょうか。
軍人の横暴と独走が様々な悲劇を生みました。
軍人の一部には非常に優秀な頭脳を持った者もいますが、往々にしてそれを国のためと称して自らの信念を貫くために己の動かせる軍事力を利用する者が多く、同時にそれらの者は上昇志向が非常に強いのが特徴です。
ライバルは同級生であり、蹴落としのための策謀は流石にあまりしませんが、これが外国勢力となると自らの夢の実現のために平気で抹殺し、無慈悲なまでにそのために生ずる被害を必要悪として切り捨てます。
そこには、人の行為ではなく国家行為だから犯罪に非ずと言う極端な解釈があるように思います。
その代表例が、統帥権です。
統帥権とは天皇陛下の権能の一つであり、それを陸海軍が付託されているという憲法解釈から発します。
同時に、軍を含む政府は天皇を輔弼するためにあるとし、徐々に天皇による直接政治をさせないようにします。
江戸時代に将軍がトップであったにもかかわらず、老中或いは御側用人が暗躍できたのもその方式です。
実際、神でも無い限り、一人の人間が全ての政策を間違いなく為すことは不可能ですから、分化、専門化した組織がその権限を利用して代行するのは止むを得ないのですが、大正期以降の陸海軍は我欲を通すために天皇の意向を無視しても独断専行するようになり、軍部が武力を有するがゆえに誰もそれを止めることができなかったのです。
遺憾ながら2.26事件の発生で政府の主だったものが暗殺されるに及び、天皇陛下御自身にも軍部に対する恐れが芽生えたと思います。
そうして悪賢い陸軍軍人の一人が陸軍大臣への任官を拒否することで、気に食わない首相とその組閣を妨害するようになって、政治そのものが陸軍軍人の手に委ねられるようになりました。
この時点で誰も陸軍の行うことに反対もできす、非難もできないようになったのです。
そうした尻馬に乗った連中が右翼という脳筋連中です。
右翼の幹部はそこそこ悪賢い連中だったかもしれませんが、手足となった連中は、まぁ、ヤクザの鉄砲玉と思って間違いないですね。
彼らにはさほど深い考えなどありません。
幹部連中に養ってもらっていることから、その言を妄信し、命令に従っているだけです。
それなりに感化されて、自らの行為を正当化するような詭弁を弄する連中です。
こうした寄生虫のごとき連中も放置できないでしょうね。
震災もありますし、大正期に布石としてやっておくべきことは多々あるようですが、私自身は表面に出ることなく出来るだけ闇の中で動くこととします。
陸軍には偕行社、海軍には水交会という親睦団体がありますが、同時に若手将校らが造る秘密結社や政策研究会などが多々あります。
有名なのはクーデター計画で有名な陸軍の桜会でしょうか。
ある意味で有志の会なのではありますが、似た者同士が集まって謀議を重ねると、とみに過激になりやすいものです。
陸軍の参謀組織も組織としてそれに近いものがありました。
特に関東軍はいけません。
独断専行が多く、いつしか中央の言うことさえ聞かない無法者の集まりになってしまいました。
多分に明治維新の志士たちにかぶれたのかもしれませんが、現場に在って直に判断できる自分たちの判断と信念こそが正義であって、中央でぬくぬくとしている老害の言うことなどきけるかと息をまくのですね。
軍部を抑えるための究極の方法は天皇陛下を動かすことではありますが、残念ながら天皇陛下は奉られているだけで実際の統率力には欠けるのです。
で、私が考えた対策は元帥府の活用です。
制度としてはあるのですが一度たりとも元帥府は機能しておりません。
陸軍にしろ、海軍にしろ、自分たちよりも上に組織があると動きにくいですからね。
実際に機能しないよう仕向けて来たのが実態でしょう。
まぁ、簡単ではないのですが陸軍、海軍共に元帥候補をまず選出させることから始めさせるつもりです。
陸軍及び海軍で元帥が各一人、それを支える幕僚、側近、および事務系職員で取り敢えず数十名規模の組織を立ち上げるのは大正半ば頃になるでしょう。
統帥権はこの元帥府に付託され、陸海軍は元帥府の包括的指揮により動くことが前提となります。
無論、現地に不測の事態が起きた時の初動対応は現場指揮官に委ねられますが、中隊以上の兵を作戦で動かすには元帥府の承認が必要となるようにします。
宣戦布告がなされた後における包括的交戦承認がなされた後は、主として現地の参謀組織に局地的作戦を委ねます。
その場合でも大局的な中央の作戦遂行が優先されなければなりません。
実のところ陸海軍にはきっちりとした規則はなく、軍人勅諭と関連する組織規程と内規のみが行動規範になっていたのです。
その辺の細かい規定を作り上げるのも元帥府の仕事になります。
さもなければ私が準備する武器は使わせられません。
例え敵国人であろうと無差別に殺戮するような軍人は到底認められないのです。
その意味では、東京を含めて日本全土を焦土化しようとした作戦や、明らかに一般人を大量に殺すとわかった上で二度も原爆投下を決定した米軍は、ジェノサイド条約に触れる筈なのですが、勝者故の特権なのか何のお咎めも無かったのは明らかにおかしいと思います。
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木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
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おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
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