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第四章 戦に負けないために
4-3 雄冬基地
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翌朝、8時少し過ぎに船内放送がありました。
「入港30分前、各員下船準備と為せ。」
窓など一つも無い潜水艦の中です。
夜昼の区別など全くつかないのですが、とにかく寝ていた者全員が飛び起きました。
特に準備するものなど無いのですが、室内にある手洗い場に歯磨き、タオルなどが用意されているのを確認し、取り敢えずは手早く歯磨きをし、顔を洗ったのです。
ベッドに座り込んで手鏡で念入りに化粧をし始めた同室者もいました。
服装を改めた後で、ベッドのシーツその他を、通路の一角にあるランドリーボックスに投げ込みました。
後は、ひまわり2号の乗員がクリーニングをし、次の乗船者のために準備をしてくれることになっているはずなのです。
それが終わると、部屋に戻ってベッド脇に腰を下ろして待機です。
部屋のデジタル時計が8時35分を示した頃に、船内放送が掛かりました。
「基地へ入港した。
岸壁着桟まで5分ほどかかる。
動揺に注意。」
まもなく、かすかに振動が伝わってきました。
それからすぐに、放送が掛かりました。
「候補生は直ちに下船せよ。
下船順序は受検番号順、下船場所はセイル部甲板デッキ右舷側である。」
サキたちが、順番に並んで螺旋階段を上がると、踊り場の大きな隔壁が開放されて、タラップが陸上から伸びていた。
そのタラップに足を一歩踏み出して驚いた。
頭の中で知識として知ってはいても、実際に見てしまうと思わず驚きを隠せないものです。
目の前に広がるのは巨大な雄冬の地下秘密基地でした。
高さが200mほどもある天井には大きな照明が無数に装備されており、この桟橋周辺の照明装置だけが点灯している状況にも関わらず、岸壁上は昼間のような明るさを保っています。
此処は雄冬岬の東北東約5キロにある雄冬山の地下深くなのです。
雄冬山の南東方向には浜益御殿、浜益岳など、標高1000mを超える山が連なっており、全体として雄冬岬の後方に聳える屏風のような威容を携えているはずです。
外見上は、とてもこのような地下基地が隠されているとは全く見えない場所なのです。
港は、潜水輸送艦の専用埠頭であり、地下基地の一部でもあるのですが、港自体も巨大です。
幅がおよそ600m、奥行きが1200mほどもあります。
港内水深は平均して約30mであり、日本海とは地下の海中トンネルを介してつながっているようです。
港内の端には、幅300m、奥行き300mの垂直縦坑があり、海面下200mまで達しているのです。
そこから西方向へ水平に直径100mの水路が延びており、途中三つの関門を通って日本海へ出ることができるのです。
通常、関門は閉じられており、日本海の流れが港内まで侵入する事はありません。
このため、港内は漣一つ立たず油を流したように静かですね。
無論港自体が大きな格納庫になっているのだから本来風が吹くわけもありません。
但し、通風換気のため、奥行き方向に一定の弱い空気の流れが人工的に作られています。
とにもかくにも初めて見る地下施設の威容に圧倒されながらも、娘達は上陸しました。
岸壁には、10台の無人車両が待っていました。
釧路近郊でサキの知っていた車体の前(ボンネット)が突き出た形のバスと異なり、全体的に真四角な箱型バスであり、新しい上に見た目に格好が良いように思えます。
座席は20、バス入口の音声案内に従ってサキ達20名が乗り組んだ後、ドアを閉めると運転手も居ないのに勝手に動き出しました。
200mほどある埠頭の先端付近から出発して、埠頭基部付近の関門を通過すると其処は大きな道路になっていました。
それから10分程も走って、ようやく基地の正面ゲートに到着しました。
そこで一旦停車すると、ゲートの守衛が乗車人数を確認してから守衛が降車しました。
再度、ドアが閉まって、車両が走り出すと3つの無人ゲートを潜り抜け、広い空間を持つ場所に出ました。
但し、車両が走っている道路自体は透明なドーム状の隔壁で覆われ、内部と遮断されているのです。
透明なドームの天井は精々5mほどですが、外部空間の天井までの高さは港と同様にやはり200mほどあるのです。
この広い空間が紅兵団の訓練基地なのです。
知識ではこの空間が4キロ四方の広さを有していることがわかっています。
空間内部の建造物は、訓練棟、居住棟、教育棟、管理棟などに分かれており、天井まで届く大きなビル(高さ200m?)が聳え立っているのをみるとさすがに壮観なのです。
バスは、一番手前にある管理棟の中に入って停車しました。
其処にマスクをした一人の係員が待っていて、サキ達が降りるとすぐに指示を出しました。
「全員直ちに衛生ブロックに入り、順次、第一次緊急衛生措置を行うこと。
それが終了してから朝食になる。」
サキの頭の中で知識が弾けました。
外部から入所する者は誰でも受けなければならない防疫処置なのです。
基地外は極めて不衛生な環境ですから、それが済むまでは一種の隔離状態となるのです。
全員が衛生ブロックまで徒歩で歩きました。
道路の端に面したところに、長い通路があり、両脇にドアが無数についています。
実際には3mほどの間隔で片側200個のドアがついているのですが、通路の端は霞んで見えるほどなのです。
手前から通路の左右交互に、整理番号順にドアを開けて内部に入ってゆくことになります。
一つのドアに一人ずつであり、防疫措置が終了するまで、次の者が入る事はできません。
但し、釧路で採用された人員は200名に満たない人員ですからブロックの半分の部屋も使われません。
内部では音声アナウンスが、説明を行い始めました。
最初の部屋では、目には見えるが触れる事のできない電子シャワーを荷物ごと浴びました。
天井から無数の細かな金色の線が落ちてくるのです。
これが約1分間続きました。
次に音声アナウンスに従って、奥のドアを開けて内部に入り、バッグの中身全てを出して、衣類を傍らの青色プラスティック容器に入れました。
固形物で濡れては困るような物、熱を加えては困るものを赤い容器に入れます。
最後にその他のものを白い容器に入れるのです。
また此処では、身につけている一切のものを脱いで同じように選別して容器に入れなければなりません。
サキは丸裸の状態でそれぞれの容器をコンテナに押し込んで壁のスイッチを押すと、所定の場所にコンテナごと運ばれて自動的に清浄化されるようになっているのです。
ここまで5分ほどの時間を要しました。
サキ自身は、音声案内に従って奥のドアを開けて、シャワー室に入り込みました。
シャワー室は、全面金属光沢のある白い材質でできており、天井、床面、壁面それぞれに無数の細かい穴が開いています。
サキが入ると背後で自動的にドアが閉まり、すぐに天井から暖かいシャワーが降り注ぎます。
徐々にその水流が強くなる一方で、音声アナウンスが細かい指示をしてきます。
「髪を含め、体毛全てに指を入れて洗いなさい。
汚れを落とすというより、濡れさせるようにかき混ぜる事」
3分間ほど上からのシャワーを浴びた後、続いて壁からお湯が噴出し始めました。
横からのシャワーです。
アナウンスが言う。
「部屋の中央に立って、腕を水平に上げる事。
目は開けていても閉じていても構わないが、お湯は一応消毒液が入っているのでできるだけ飲まないようにしなさい。
万が一飲んでも身体の害にはならないが、非常に不味いので注意せよ。」
サキが指示通りにすると、中央の床がゆっくりと回転を始めました。
強い横からのシャワーはとても目を開けていられるようなものではありませんでした。
これが2分間ほど。
更に、アナウンスの指示で股を大きく広げたままで立たされ、今度は下からの強いシャワーが始まりました。
サキの微妙な部分に容赦なく入り込む水流はある種のムラムラを起こしかけました。
もう耐えられないと思っているとようやくシャワーが止まりました。
普通に立ちなさいという指示に従うと、次に温風が天井から吹き出しました。
これも強い風です。
暫くすると、天井の風が止んで、一方の壁から一斉に吹き出し始めました。
床は未だに回転しています。
再度股を一杯に広げた姿勢をとらされ、案の定、下からの温風に晒されました。
それが終わるとすっかり身体は乾いていました。
シャワー兼温風乾燥で15分ほどの時間を要したかもしれません。
次の部屋では風呂に入らされました。
大きな浴槽であり、潜って底にある手すりを掴み、底の出っ張りに両足のつま先を揃える体制をとり、さらにアナウンスが30数える間に瞬きを5回しなさいという。
無論、その間は息を止めなければ溺れてしまいます。
できるかなと若干不安に思いながらやってみると、思いのほか簡単にできました。
この間、全身が浴槽の中に浸かったことになるのです。
それが終了すると、10分間、浴槽の中で沐浴せよという指示がありました。
この場面では、特に水中に潜る必要は無いらしいのです。
ゆっくりと湯に浸かっていると徐々に緊張感が薄れて来ます。
やがて浴槽からあがりなさいという指示がありました。
それから次の部屋で再度、風のシャワーを浴び、終わってからようやく新たな衣類が用意してある部屋に到達しました。
音声アナウンスが更に指示をしてきました。
着替えの前に、テーブルの上の薬剤とジュースを全部飲みなさいというのです。
薬剤は、赤い錠剤1個と、大小の白いカプセル2個です。
知識では虫下しと天然痘などの対疫病混合ワクチンが二種類と知っています。
錠剤は口の中ですぐにさらさらと溶けるもので苦くは無いものでした。
カプセルは少々飲みにくいものですが噛んではいけないものだということを知っており、口に含んでジュースと一緒に流し込みました。
ジュースはりんごの味がしました。
それから、着替えをしました。
白のパンティ、白のブラジャー、それに第2種制服です。
淡い紫紺のパンタロン、同じく淡い紫紺の長袖上着です。
赤いネッカチーフを知識にある規定どおり首に結ぶ。
ベルトはバックルも含めて赤紫であり、見た目は皮製のようにも思えたけれど、サキの五感は皮ではない別物と感じていた。
最後に、赤紫の短靴を履き、紫紺のアポロキャップを被りました。
肩や胸につけるべき階級章はまだありません。
候補生であり、訓練研修の成績如何では、隊員から外される可能性もあるのです。
その場合、飛鳥総業が社員として雇ってくれる事になっていることを知識として知っています。
胸につける候補生の徽章と名札をつけて着替えは終了しました。
室内の姿見でチェックを行い、着替え終了ボタンを押すと、アナウンスがありました。
「右手棚の中にある時計を左手に嵌め、部屋を出て、管理棟5階にある第2集会室で待機しなさい。」
右手の壁と思われた一部がすっと開いて小さな隠し戸棚がありました。
戸棚には小さな腕飾りのような時計が入っています。
腕時計のベルト部分は黒い縁取りのある金色網目であり、とても優雅です。
でも不思議なことに文字盤は真っ黒なのです。
サキが時計を手に取るとスッと黒い文字盤が消えて鮮やかなワインレッドの文字盤が浮かび上がり、白く光る針が3本現れました。
時刻は9時32分。
そのほかにも漢字とアラビア数字が表示されています。
どうやら曜日と日付のようです。
それで4日水曜日9時32分ということがわかります。
時間経過からしておそらくは午前であろうと思いました。
ベルトは腕の太さに応じて調整ができるようになっていました。
サキが時計を左腕に嵌めている間にもドアが自動的に開いていました。
サキは部屋の外に出ました。
そこは管理棟一階の検疫衛生ブロックの外周通路のはずです。
サキにある知識では、この通路の中央及び両端にエレベーターと階段室があったはず。
サキは、最寄りのエレベーターに向かいました。
音声アナウンスで指示された5階第二集会室はかなりの広さがありました。
五人掛けの机と椅子が並び、横に4列、縦に20列ほどあり、周囲にも十分なスペースがあります。
400人ほどが一度にゆったりと座ることのできる広さの集会室なのです。
サキは、厚岸の尋常高等小学校の体育館よりも大分広いなと思っていました。
「入港30分前、各員下船準備と為せ。」
窓など一つも無い潜水艦の中です。
夜昼の区別など全くつかないのですが、とにかく寝ていた者全員が飛び起きました。
特に準備するものなど無いのですが、室内にある手洗い場に歯磨き、タオルなどが用意されているのを確認し、取り敢えずは手早く歯磨きをし、顔を洗ったのです。
ベッドに座り込んで手鏡で念入りに化粧をし始めた同室者もいました。
服装を改めた後で、ベッドのシーツその他を、通路の一角にあるランドリーボックスに投げ込みました。
後は、ひまわり2号の乗員がクリーニングをし、次の乗船者のために準備をしてくれることになっているはずなのです。
それが終わると、部屋に戻ってベッド脇に腰を下ろして待機です。
部屋のデジタル時計が8時35分を示した頃に、船内放送が掛かりました。
「基地へ入港した。
岸壁着桟まで5分ほどかかる。
動揺に注意。」
まもなく、かすかに振動が伝わってきました。
それからすぐに、放送が掛かりました。
「候補生は直ちに下船せよ。
下船順序は受検番号順、下船場所はセイル部甲板デッキ右舷側である。」
サキたちが、順番に並んで螺旋階段を上がると、踊り場の大きな隔壁が開放されて、タラップが陸上から伸びていた。
そのタラップに足を一歩踏み出して驚いた。
頭の中で知識として知ってはいても、実際に見てしまうと思わず驚きを隠せないものです。
目の前に広がるのは巨大な雄冬の地下秘密基地でした。
高さが200mほどもある天井には大きな照明が無数に装備されており、この桟橋周辺の照明装置だけが点灯している状況にも関わらず、岸壁上は昼間のような明るさを保っています。
此処は雄冬岬の東北東約5キロにある雄冬山の地下深くなのです。
雄冬山の南東方向には浜益御殿、浜益岳など、標高1000mを超える山が連なっており、全体として雄冬岬の後方に聳える屏風のような威容を携えているはずです。
外見上は、とてもこのような地下基地が隠されているとは全く見えない場所なのです。
港は、潜水輸送艦の専用埠頭であり、地下基地の一部でもあるのですが、港自体も巨大です。
幅がおよそ600m、奥行きが1200mほどもあります。
港内水深は平均して約30mであり、日本海とは地下の海中トンネルを介してつながっているようです。
港内の端には、幅300m、奥行き300mの垂直縦坑があり、海面下200mまで達しているのです。
そこから西方向へ水平に直径100mの水路が延びており、途中三つの関門を通って日本海へ出ることができるのです。
通常、関門は閉じられており、日本海の流れが港内まで侵入する事はありません。
このため、港内は漣一つ立たず油を流したように静かですね。
無論港自体が大きな格納庫になっているのだから本来風が吹くわけもありません。
但し、通風換気のため、奥行き方向に一定の弱い空気の流れが人工的に作られています。
とにもかくにも初めて見る地下施設の威容に圧倒されながらも、娘達は上陸しました。
岸壁には、10台の無人車両が待っていました。
釧路近郊でサキの知っていた車体の前(ボンネット)が突き出た形のバスと異なり、全体的に真四角な箱型バスであり、新しい上に見た目に格好が良いように思えます。
座席は20、バス入口の音声案内に従ってサキ達20名が乗り組んだ後、ドアを閉めると運転手も居ないのに勝手に動き出しました。
200mほどある埠頭の先端付近から出発して、埠頭基部付近の関門を通過すると其処は大きな道路になっていました。
それから10分程も走って、ようやく基地の正面ゲートに到着しました。
そこで一旦停車すると、ゲートの守衛が乗車人数を確認してから守衛が降車しました。
再度、ドアが閉まって、車両が走り出すと3つの無人ゲートを潜り抜け、広い空間を持つ場所に出ました。
但し、車両が走っている道路自体は透明なドーム状の隔壁で覆われ、内部と遮断されているのです。
透明なドームの天井は精々5mほどですが、外部空間の天井までの高さは港と同様にやはり200mほどあるのです。
この広い空間が紅兵団の訓練基地なのです。
知識ではこの空間が4キロ四方の広さを有していることがわかっています。
空間内部の建造物は、訓練棟、居住棟、教育棟、管理棟などに分かれており、天井まで届く大きなビル(高さ200m?)が聳え立っているのをみるとさすがに壮観なのです。
バスは、一番手前にある管理棟の中に入って停車しました。
其処にマスクをした一人の係員が待っていて、サキ達が降りるとすぐに指示を出しました。
「全員直ちに衛生ブロックに入り、順次、第一次緊急衛生措置を行うこと。
それが終了してから朝食になる。」
サキの頭の中で知識が弾けました。
外部から入所する者は誰でも受けなければならない防疫処置なのです。
基地外は極めて不衛生な環境ですから、それが済むまでは一種の隔離状態となるのです。
全員が衛生ブロックまで徒歩で歩きました。
道路の端に面したところに、長い通路があり、両脇にドアが無数についています。
実際には3mほどの間隔で片側200個のドアがついているのですが、通路の端は霞んで見えるほどなのです。
手前から通路の左右交互に、整理番号順にドアを開けて内部に入ってゆくことになります。
一つのドアに一人ずつであり、防疫措置が終了するまで、次の者が入る事はできません。
但し、釧路で採用された人員は200名に満たない人員ですからブロックの半分の部屋も使われません。
内部では音声アナウンスが、説明を行い始めました。
最初の部屋では、目には見えるが触れる事のできない電子シャワーを荷物ごと浴びました。
天井から無数の細かな金色の線が落ちてくるのです。
これが約1分間続きました。
次に音声アナウンスに従って、奥のドアを開けて内部に入り、バッグの中身全てを出して、衣類を傍らの青色プラスティック容器に入れました。
固形物で濡れては困るような物、熱を加えては困るものを赤い容器に入れます。
最後にその他のものを白い容器に入れるのです。
また此処では、身につけている一切のものを脱いで同じように選別して容器に入れなければなりません。
サキは丸裸の状態でそれぞれの容器をコンテナに押し込んで壁のスイッチを押すと、所定の場所にコンテナごと運ばれて自動的に清浄化されるようになっているのです。
ここまで5分ほどの時間を要しました。
サキ自身は、音声案内に従って奥のドアを開けて、シャワー室に入り込みました。
シャワー室は、全面金属光沢のある白い材質でできており、天井、床面、壁面それぞれに無数の細かい穴が開いています。
サキが入ると背後で自動的にドアが閉まり、すぐに天井から暖かいシャワーが降り注ぎます。
徐々にその水流が強くなる一方で、音声アナウンスが細かい指示をしてきます。
「髪を含め、体毛全てに指を入れて洗いなさい。
汚れを落とすというより、濡れさせるようにかき混ぜる事」
3分間ほど上からのシャワーを浴びた後、続いて壁からお湯が噴出し始めました。
横からのシャワーです。
アナウンスが言う。
「部屋の中央に立って、腕を水平に上げる事。
目は開けていても閉じていても構わないが、お湯は一応消毒液が入っているのでできるだけ飲まないようにしなさい。
万が一飲んでも身体の害にはならないが、非常に不味いので注意せよ。」
サキが指示通りにすると、中央の床がゆっくりと回転を始めました。
強い横からのシャワーはとても目を開けていられるようなものではありませんでした。
これが2分間ほど。
更に、アナウンスの指示で股を大きく広げたままで立たされ、今度は下からの強いシャワーが始まりました。
サキの微妙な部分に容赦なく入り込む水流はある種のムラムラを起こしかけました。
もう耐えられないと思っているとようやくシャワーが止まりました。
普通に立ちなさいという指示に従うと、次に温風が天井から吹き出しました。
これも強い風です。
暫くすると、天井の風が止んで、一方の壁から一斉に吹き出し始めました。
床は未だに回転しています。
再度股を一杯に広げた姿勢をとらされ、案の定、下からの温風に晒されました。
それが終わるとすっかり身体は乾いていました。
シャワー兼温風乾燥で15分ほどの時間を要したかもしれません。
次の部屋では風呂に入らされました。
大きな浴槽であり、潜って底にある手すりを掴み、底の出っ張りに両足のつま先を揃える体制をとり、さらにアナウンスが30数える間に瞬きを5回しなさいという。
無論、その間は息を止めなければ溺れてしまいます。
できるかなと若干不安に思いながらやってみると、思いのほか簡単にできました。
この間、全身が浴槽の中に浸かったことになるのです。
それが終了すると、10分間、浴槽の中で沐浴せよという指示がありました。
この場面では、特に水中に潜る必要は無いらしいのです。
ゆっくりと湯に浸かっていると徐々に緊張感が薄れて来ます。
やがて浴槽からあがりなさいという指示がありました。
それから次の部屋で再度、風のシャワーを浴び、終わってからようやく新たな衣類が用意してある部屋に到達しました。
音声アナウンスが更に指示をしてきました。
着替えの前に、テーブルの上の薬剤とジュースを全部飲みなさいというのです。
薬剤は、赤い錠剤1個と、大小の白いカプセル2個です。
知識では虫下しと天然痘などの対疫病混合ワクチンが二種類と知っています。
錠剤は口の中ですぐにさらさらと溶けるもので苦くは無いものでした。
カプセルは少々飲みにくいものですが噛んではいけないものだということを知っており、口に含んでジュースと一緒に流し込みました。
ジュースはりんごの味がしました。
それから、着替えをしました。
白のパンティ、白のブラジャー、それに第2種制服です。
淡い紫紺のパンタロン、同じく淡い紫紺の長袖上着です。
赤いネッカチーフを知識にある規定どおり首に結ぶ。
ベルトはバックルも含めて赤紫であり、見た目は皮製のようにも思えたけれど、サキの五感は皮ではない別物と感じていた。
最後に、赤紫の短靴を履き、紫紺のアポロキャップを被りました。
肩や胸につけるべき階級章はまだありません。
候補生であり、訓練研修の成績如何では、隊員から外される可能性もあるのです。
その場合、飛鳥総業が社員として雇ってくれる事になっていることを知識として知っています。
胸につける候補生の徽章と名札をつけて着替えは終了しました。
室内の姿見でチェックを行い、着替え終了ボタンを押すと、アナウンスがありました。
「右手棚の中にある時計を左手に嵌め、部屋を出て、管理棟5階にある第2集会室で待機しなさい。」
右手の壁と思われた一部がすっと開いて小さな隠し戸棚がありました。
戸棚には小さな腕飾りのような時計が入っています。
腕時計のベルト部分は黒い縁取りのある金色網目であり、とても優雅です。
でも不思議なことに文字盤は真っ黒なのです。
サキが時計を手に取るとスッと黒い文字盤が消えて鮮やかなワインレッドの文字盤が浮かび上がり、白く光る針が3本現れました。
時刻は9時32分。
そのほかにも漢字とアラビア数字が表示されています。
どうやら曜日と日付のようです。
それで4日水曜日9時32分ということがわかります。
時間経過からしておそらくは午前であろうと思いました。
ベルトは腕の太さに応じて調整ができるようになっていました。
サキが時計を左腕に嵌めている間にもドアが自動的に開いていました。
サキは部屋の外に出ました。
そこは管理棟一階の検疫衛生ブロックの外周通路のはずです。
サキにある知識では、この通路の中央及び両端にエレベーターと階段室があったはず。
サキは、最寄りのエレベーターに向かいました。
音声アナウンスで指示された5階第二集会室はかなりの広さがありました。
五人掛けの机と椅子が並び、横に4列、縦に20列ほどあり、周囲にも十分なスペースがあります。
400人ほどが一度にゆったりと座ることのできる広さの集会室なのです。
サキは、厚岸の尋常高等小学校の体育館よりも大分広いなと思っていました。
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