メルレールの英雄-クオン編-前編

朱璃 翼

文字の大きさ
4 / 276
1部 転生する月神編

最年少団長3

しおりを挟む
 バルスデ王国を貴族制度から騎士制度へ変え、その結果世界を支える国とした。本人にそのつもりはなかったのかもしれないが。

「さすが団長様だな。詳しい」

「学校に行ってれば習う範囲だ」

 常識だと言うように見れば、今度は軽く受け流された。学校には行ってないと開き直っているのだ。

「その英雄が、魔力装置を作らせたって話だ。最初の頃は、壁に当てて見せるものだったらしい」

 つまり、初期に作られた魔力装置だとクオンは言う。

 そんなものは、もうどこにも残されていない。貴重な代物だと言われれば、こんなのがと思わなくもなかった。

「それがあるってことは、ここで使ってた名残だろうな」

「へぇ。英雄が来てたのか…」

 実感が湧かないが、それなら店の雰囲気を維持していたことも納得する。

「客って、傭兵が多いんじゃね?」

 デザートまでしっかりと食べたクオンは、水を飲みながら問いかけた。

「よくわかったな。常連客もそれなりにいるが、ほとんど傭兵だ」

 大通りにあるわけでも宿屋が近いわけでもない。それでも傭兵は多くやって来る。

 オズは少し不思議に思っていた。格安飲み屋や美味しい店は他にもある。なのに、なぜここへ来るのかと思っていたのだ。

「この国じゃ英雄だが、退位したあとに東で傭兵組合を立ち上げた。傭兵王とも呼ばれてて、その昔は北では知らない奴がいないほどだったらしい」

「マジかよ…」

 だから傭兵が多いのだとオズも理解した。傭兵王が通った店、と東で伝わってるのかもしれないと。

 そこまでわかると堂々と宣伝したくなる。するつもりはないが、と内心突っ込むことを忘れない。

 騎士の噂が本当だったんだな、と呑気に呟けば、呆れたようにオズが小突く。

「痛いな。俺も最近聞いたんだよ」

 わかってるだろと視線を向ける。

 彼との付き合いはそれなりに長いが、店へ食べに来たのは数回ほど。すべて昼間に来ていたのだ。深く気にしたことなどなかった。

 その上、騎士になるまでの経緯などから、友人らしい友人はいなかったのだ。有名な噂だとしても彼の耳には入ってこない。

「少しは友人できたのか?」

「さぁ。友人なのかねー」

 よくわからないと言われれば、オズは苦笑いを浮かべる。そりゃそうだと言うように。

 まともな友人がいなかっただけに、こればかりは仕方ないことだ。救いがあるとすれば、兄的存在がいたことだろう。一人ではない。

 兄弟も友人もいないクオンにとって救いとなった人物。いい兄貴だと、話で聞いただけでも思う。

「そういえば、月光騎士団の副官に女騎士がいるって聞いたが」

「うっ…」

 酒を飲みに来た客が言っていたことを思いだせば、クオンが飲みかけの水を吹きそうになって堪える。

「休みにあいつの話なんてやめろよ! ったく、口うるさいんだから」

 ぶつぶつと言い出した姿に、珍しいと思う。他人に関心がないクオンがこんな風に言うことはほとんどない。

 もしかして知り合いなのかもと思う。女性関係は聞いたことがなかっただけに、本人も言わなかったのかもと。

「あー、思いだしただけで苛々する。帰るわ。ごちそうさん」

 無造作にお金を置いて出ていく姿に、逃げられたと舌打ちする。聞かれたくなくて彼が逃げたとわかったのだ。





.
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

プライベート・スペクタル

点一
ファンタジー
【星】(スターズ)。それは山河を変えるほどの膂力、千里を駆ける脚力、そして異形の術や能力を有する超人・怪人達。 この物語はそんな連中のひどく…ひどく個人的な物語群。 その中の一部、『龍王』と呼ばれた一人の男に焦点を当てたお話。 (※基本 隔週土曜日に更新予定)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

物理重視の魔法使い

東赤月
ファンタジー
 かつて『最強の魔法使い』に助けられたユートは、自分もそうなりたいと憧れを覚えた。  しかし彼の魔力放出量は少なく、魔法の規模に直結する魔術式の大きさは小さいままだった。  そんなユートと、師である『じいさん』の元に、国内最高峰の魔法学院からシルファと名乗る使者が訪れる。  シルファからの手紙を読んだ『じいさん』は、ユートに魔法学院に行くことを提案し……?  魔力が存在する世界で織り成す、弱くはない魔法使いの冒険譚、はじまりはじまり。 ※小説家になろう様の方にも掲載しております

処理中です...