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8話 糸が紡いだ絆
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「犬? ネコ? 鳥? いや、もしかしたら何かの植物っていう可能性も……。でも、そうみせかけて、何かの魔法陣!?」
そう思い、ハンカチに手をかざすが魔法を感知することは出来なかった。
「ギル様、これは何の刺繍だと思いますか?」
「ん? われの似顔絵ではないのか?」
「これがドラゴンに見えるんですか!?」
「いや、見えないが……われに会うために、てっきりそなたが刺繍してくれたのだと……」
とんでもない想像を繰り広げていたギル様に驚きながら伝える。
「私はそもそもここにドラゴンが住んでいるだなんて知りませんし、架空の存在だと思っていたドラゴンが実在していたことも、ここに来て初めて知ったんですよ!?」
「なんとっ……! そうだったのか……ではわれではないのか……」
少ししょんぼりとした様子のギル様に、私は畳みかけるように伝える。
「それに、私が刺繍したハンカチではありません! 私が刺繍したハンカチはこちらです!」
そう言い、ポケットの中から自身が刺繍したハンカチを出して、ギル様に見せた。
「全然違いますよね?」
「そうだな。そなたの縫ったハンカチは、綺麗に刺繍されている。それに、名は知らぬが可愛らしい花だな」
そう言うと、ギル様はキラキラした上目遣いでこちらを見て口を開いた。
「そなたの刺繍した、この可愛らしいハンカチをわれにくれないか?」
「え? このハンカチですか?」
「ああ! そうだ!」
キラキラと期待の眼差しを向けられ、刺繍を褒められ嬉しくなってしまう。そして、単純な私はギル様にハンカチをあげることにした。
「このようなものでよろしければ、差し上げます」
「本当か!? ありがとう……! そなたに深く感謝するぞ!」
「そんなに喜んでもらえると、何だか私も嬉しいです。ちなみに、その花はオフィーリアという名前なんですよ」
刺繍した花の名前を教えながら、ギル様にハンカチを渡そうとした。しかし、ギル様はグッと腕をこちらに伸ばしてきた。
――ん?
どうして腕を伸ばしているの?
行動の意図が分からず、どうしたら良いか分からない私に、ギル様ははしゃいだ様子で嬉しそうに話しかけてくる。
「手首に結んでくれ!」
「え? でも、獣化したときに……」
「ドラゴンはありとあらゆる特殊能力が使えるから気にしなくて良い! さあ!」
そう言うと、さらにグイッと腕を出してくる。私は言われるがまま、ギル様の手首にハンカチを結んだ。
すると、嬉しそうに笑いながら、今度は謎の刺繍のハンカチを手に取って、私の手首に再度結びつけた。
少し苦戦しながら、拙い手つきで結んでくれているギル様を見て、可愛いと思う気持ちがますます高まる。
「よし! またしても上手く結べたぞ!」
「ありがとうございます! とても上手に結べましたねっ」
そう言うと、ぱっと花が咲いたような笑顔でギル様が笑った。その可愛らしい笑顔につられて、私の顔からも笑みがこぼれる。
「これで、われらは本当の仲良しだな! そなたが元いた場所に戻ったら外しても良いが、この思い出はわれらだけの一生の思い出として覚えているんだぞ! 忘れるなよ!」
――そうよ……。
私は結婚を認めてもらうためにここに来たの。
ギル様と過ごすのは楽しいけれど、早く戻らないと。
「はい! 一生の思い出です。忘れたりもしません。仲良しの証として、指切りでもしますか?」
「ゆ、指切りだと……! そ、そなた、そっそこまでしなくともっ……!」
本当に指を切ると勘違いしたのだろう。私は急いで怯えてしまったギル様に、指切りの説明をした。
「本当に指を切るわけじゃないですよ! 確かに名前は怖いけど、約束のしるしとして小指と小指を絡めるだけなんです……!」
そう言うと、ホッとした顔になりギル様は小指を突き出した。
「ほ、本当に指を切るのかと勘違いしたではないか……。仲良しの証になるんだろう? ゆ、指切りとやらをしようではないか」
ギル様の反応が可愛く、つい笑顔になる。
「な、何を笑っておる! 早くするぞ! 仲良しの証だろう? 手を出すんだっ」
「はい!」
こうして、私たちは小指を絡め合った。ちなみに、例の唄はギル様を怖がらせると思い、心の中にとどめた。
「これで、われらは互いを一生の思い出として記憶する……絶対だぞ!?」
「はい、絶対です。これで忘れられない記憶になりましたね」
「ああ! その通りだ」
ギル様と会話していると楽くて、あっという間に時間が過ぎる。
――ギル様といるのは楽しいけど、早く戻ってレアード様に無事だって知らせないと!
帰ったら、とうとうレアード様と結婚できるんだもの……!
私は待っている人たちの元へ早く帰らなければない。
楽しい時間ももう終わりだ。
「ギル様、ありがとうございました。美味しい果実も食べられましたし、体力も回復しました。それに何よりギル様と仲良くなれて嬉しかったです。私は、そろそろ行きますね」
すると、ギル様は驚いたような表情になり告げた。
「そなた、帰り方を知っておるのか……?」
「分かりませんが、歩いていれば何とか見つかるかと……」
そう答えると、ギル様は呆れたような表情になった。
「突然どうした。急に一人で帰ろうとするから驚いたぞ。われらは仲良しなんだろう? そういうときは、遠慮せずに頼るのだ! それに、人の子の足ではかなり時間がかかるはずだ」
そう言うと、ギル様はドラゴンの姿になった。
「背中に乗ってくれ。われが出口まで送ってやろう」
「あっありがとうございます!」
私は急いでギル様に駆け寄り、その大きな背中によじ登った。
「安心して乗ると良い。では、行くぞ」
そう言うと、どんどん地面が遠くなり、ギル様は徒歩とは比べものにならない速さで飛び始めた。
こうして、崖から飛び降りたあの日から3日経ち、ようやく目的の地点にたどり着いた。そこは、崖の途中にあり、通常の人の力では辿り着けそうもない場所であった。
ギル様と私が共に移動していたのは、実質2日だ。途中休憩をはさみながら移動した。
その過程では、一緒に食事を取ったり、獣化したギル様に包み込まれるように眠ったりもした。私が寒がった時、ギル様がヒト型化して、同じ寝袋の中で抱き枕になってくれたことも良い思い出だ。
この濃い3日間を経て、ついに目的地に着いたのだと実感する。ギル様は私を下ろすと、可愛いヒト型へと姿を変化させた。
「この洞窟を抜ければ、そなたが知っている場所に辿り着くはずだ。短い時間であったが、そなたと一緒に居られて楽しかったぞ」
「こちらこそ、本当にありがとうございます! 私もギル様と過ごせて本当に楽しかったです」
何だか感動してついつい涙が出そうになる。
「そう言えば、今更だがそなたの名前をきちんと聞いていなかったな」
――はっ……!
私ってば、そう言えばギル様にきちんと名前を伝えていなかったわ!
貴族の端切れとはいえ、情けない……。
自己嫌悪に襲われながらも、ギル様に急いで名前を伝えた。
「私の名前はクリスタ・ウィルキンスです」
「ほう。そのような名前であったか。綺麗な名だ。よし、友としてその名はしかと覚えておくぞ」
そう、私はこの場所に来るまでの間に、ギル様がずっと仲良しという言葉を使うため、友という概念を教えたのだ。ギル様はいたく気に入り、友という言葉を口にするようになった。
しかし、ギル様の中では友どころか、私はきっとベストフレンドの域に達しているのだろうと思う。そのため、私はギル様に告げた。
「ギル様、私たちは友ではなくもう親友ですよ。大親友です!」
「しんゆう……とな?」
「互いに心を許しているくらい、とっても仲良しってことですよ!」
そう言うと、ギル様は嬉しそうにはにかんだ。
「そうだな! われとクリスタは大親友だ……!」
そう言うと、ギル様は私にギュッと抱き着きすぐに離れた。そして、口を開いた。
「時として、クリスタよ。そなたには、本当に楽しませてもらった。それに、われの怪我や病気も治してくれた。……その礼として、これを食べて欲しい」
――礼として何かを受け取るは分かるけど、食べる!?
何を!?
そう思い、ハンカチに手をかざすが魔法を感知することは出来なかった。
「ギル様、これは何の刺繍だと思いますか?」
「ん? われの似顔絵ではないのか?」
「これがドラゴンに見えるんですか!?」
「いや、見えないが……われに会うために、てっきりそなたが刺繍してくれたのだと……」
とんでもない想像を繰り広げていたギル様に驚きながら伝える。
「私はそもそもここにドラゴンが住んでいるだなんて知りませんし、架空の存在だと思っていたドラゴンが実在していたことも、ここに来て初めて知ったんですよ!?」
「なんとっ……! そうだったのか……ではわれではないのか……」
少ししょんぼりとした様子のギル様に、私は畳みかけるように伝える。
「それに、私が刺繍したハンカチではありません! 私が刺繍したハンカチはこちらです!」
そう言い、ポケットの中から自身が刺繍したハンカチを出して、ギル様に見せた。
「全然違いますよね?」
「そうだな。そなたの縫ったハンカチは、綺麗に刺繍されている。それに、名は知らぬが可愛らしい花だな」
そう言うと、ギル様はキラキラした上目遣いでこちらを見て口を開いた。
「そなたの刺繍した、この可愛らしいハンカチをわれにくれないか?」
「え? このハンカチですか?」
「ああ! そうだ!」
キラキラと期待の眼差しを向けられ、刺繍を褒められ嬉しくなってしまう。そして、単純な私はギル様にハンカチをあげることにした。
「このようなものでよろしければ、差し上げます」
「本当か!? ありがとう……! そなたに深く感謝するぞ!」
「そんなに喜んでもらえると、何だか私も嬉しいです。ちなみに、その花はオフィーリアという名前なんですよ」
刺繍した花の名前を教えながら、ギル様にハンカチを渡そうとした。しかし、ギル様はグッと腕をこちらに伸ばしてきた。
――ん?
どうして腕を伸ばしているの?
行動の意図が分からず、どうしたら良いか分からない私に、ギル様ははしゃいだ様子で嬉しそうに話しかけてくる。
「手首に結んでくれ!」
「え? でも、獣化したときに……」
「ドラゴンはありとあらゆる特殊能力が使えるから気にしなくて良い! さあ!」
そう言うと、さらにグイッと腕を出してくる。私は言われるがまま、ギル様の手首にハンカチを結んだ。
すると、嬉しそうに笑いながら、今度は謎の刺繍のハンカチを手に取って、私の手首に再度結びつけた。
少し苦戦しながら、拙い手つきで結んでくれているギル様を見て、可愛いと思う気持ちがますます高まる。
「よし! またしても上手く結べたぞ!」
「ありがとうございます! とても上手に結べましたねっ」
そう言うと、ぱっと花が咲いたような笑顔でギル様が笑った。その可愛らしい笑顔につられて、私の顔からも笑みがこぼれる。
「これで、われらは本当の仲良しだな! そなたが元いた場所に戻ったら外しても良いが、この思い出はわれらだけの一生の思い出として覚えているんだぞ! 忘れるなよ!」
――そうよ……。
私は結婚を認めてもらうためにここに来たの。
ギル様と過ごすのは楽しいけれど、早く戻らないと。
「はい! 一生の思い出です。忘れたりもしません。仲良しの証として、指切りでもしますか?」
「ゆ、指切りだと……! そ、そなた、そっそこまでしなくともっ……!」
本当に指を切ると勘違いしたのだろう。私は急いで怯えてしまったギル様に、指切りの説明をした。
「本当に指を切るわけじゃないですよ! 確かに名前は怖いけど、約束のしるしとして小指と小指を絡めるだけなんです……!」
そう言うと、ホッとした顔になりギル様は小指を突き出した。
「ほ、本当に指を切るのかと勘違いしたではないか……。仲良しの証になるんだろう? ゆ、指切りとやらをしようではないか」
ギル様の反応が可愛く、つい笑顔になる。
「な、何を笑っておる! 早くするぞ! 仲良しの証だろう? 手を出すんだっ」
「はい!」
こうして、私たちは小指を絡め合った。ちなみに、例の唄はギル様を怖がらせると思い、心の中にとどめた。
「これで、われらは互いを一生の思い出として記憶する……絶対だぞ!?」
「はい、絶対です。これで忘れられない記憶になりましたね」
「ああ! その通りだ」
ギル様と会話していると楽くて、あっという間に時間が過ぎる。
――ギル様といるのは楽しいけど、早く戻ってレアード様に無事だって知らせないと!
帰ったら、とうとうレアード様と結婚できるんだもの……!
私は待っている人たちの元へ早く帰らなければない。
楽しい時間ももう終わりだ。
「ギル様、ありがとうございました。美味しい果実も食べられましたし、体力も回復しました。それに何よりギル様と仲良くなれて嬉しかったです。私は、そろそろ行きますね」
すると、ギル様は驚いたような表情になり告げた。
「そなた、帰り方を知っておるのか……?」
「分かりませんが、歩いていれば何とか見つかるかと……」
そう答えると、ギル様は呆れたような表情になった。
「突然どうした。急に一人で帰ろうとするから驚いたぞ。われらは仲良しなんだろう? そういうときは、遠慮せずに頼るのだ! それに、人の子の足ではかなり時間がかかるはずだ」
そう言うと、ギル様はドラゴンの姿になった。
「背中に乗ってくれ。われが出口まで送ってやろう」
「あっありがとうございます!」
私は急いでギル様に駆け寄り、その大きな背中によじ登った。
「安心して乗ると良い。では、行くぞ」
そう言うと、どんどん地面が遠くなり、ギル様は徒歩とは比べものにならない速さで飛び始めた。
こうして、崖から飛び降りたあの日から3日経ち、ようやく目的の地点にたどり着いた。そこは、崖の途中にあり、通常の人の力では辿り着けそうもない場所であった。
ギル様と私が共に移動していたのは、実質2日だ。途中休憩をはさみながら移動した。
その過程では、一緒に食事を取ったり、獣化したギル様に包み込まれるように眠ったりもした。私が寒がった時、ギル様がヒト型化して、同じ寝袋の中で抱き枕になってくれたことも良い思い出だ。
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「この洞窟を抜ければ、そなたが知っている場所に辿り着くはずだ。短い時間であったが、そなたと一緒に居られて楽しかったぞ」
「こちらこそ、本当にありがとうございます! 私もギル様と過ごせて本当に楽しかったです」
何だか感動してついつい涙が出そうになる。
「そう言えば、今更だがそなたの名前をきちんと聞いていなかったな」
――はっ……!
私ってば、そう言えばギル様にきちんと名前を伝えていなかったわ!
貴族の端切れとはいえ、情けない……。
自己嫌悪に襲われながらも、ギル様に急いで名前を伝えた。
「私の名前はクリスタ・ウィルキンスです」
「ほう。そのような名前であったか。綺麗な名だ。よし、友としてその名はしかと覚えておくぞ」
そう、私はこの場所に来るまでの間に、ギル様がずっと仲良しという言葉を使うため、友という概念を教えたのだ。ギル様はいたく気に入り、友という言葉を口にするようになった。
しかし、ギル様の中では友どころか、私はきっとベストフレンドの域に達しているのだろうと思う。そのため、私はギル様に告げた。
「ギル様、私たちは友ではなくもう親友ですよ。大親友です!」
「しんゆう……とな?」
「互いに心を許しているくらい、とっても仲良しってことですよ!」
そう言うと、ギル様は嬉しそうにはにかんだ。
「そうだな! われとクリスタは大親友だ……!」
そう言うと、ギル様は私にギュッと抱き着きすぐに離れた。そして、口を開いた。
「時として、クリスタよ。そなたには、本当に楽しませてもらった。それに、われの怪我や病気も治してくれた。……その礼として、これを食べて欲しい」
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