俺の人生をめちゃくちゃにする人外サイコパス美形の魔性に、執着されています

フルーツ仙人

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番外 十八 俺の使い魔と上位互換テオドール

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 ダリオのニャインに、テオドールの妹のナディア(仮)から、

 ――あなたにとって『えいえん』とはなんですか?

 とスピリチュアルな質問文が飛んできて、講義後携帯フォンを確認したダリオは真顔になった。同じ講義を受講しているクリスが、「ダリオくん、顔凄いけど、どうしたの?」と尋ねてきたくらいである。

 ――400字で答えなさい。

 小論文か。ダリオはつっこんだが、ニャインの返事は無視して、白スーツ支配者おじさん一家団欒のスケジューリングをした。
 なんでいきなり『永遠』について尋ねて来たのかよくわからないダリオだ。そういえば、前回借りを返すので、永遠の命をあげるとかどうとか言っていたが、罰ゲームかよと一蹴した件だろうか。
 ナディアが一瞬、ちょっと変な顔をしていたような気がする。
 テオとのことかな、とはダリオも察していた。
 以前、ヘルムートにも言われたが、テオドールと話し合わないとなとは思っている。しかしダリオはまだ学生なので、ある程度経済的に自立したあたりでかな、と考えていた。
 なんとなく、少し長生きする羽目になるような気はしているが、どのくらいなのかもよくわからない。百年とか二百年? 千年? いやその場合どうやって生活すんだ、と思ってしまう。テオドールに聞けばいいのだが、学生の内は何言ってもなあ、と結局元のところに戻って来てしまうのだった。


 しばらくして、ダリオはいつものヘルムートのマジックショップ臨時アルバイトで馬車馬のようにこき使われ、文句を言いながらも育毛剤納品分を仕上げた。
「いやー、助かったよ、ダリオ君!」
 ヘルムートは人を利用するのに良心の呵責がなく、調子がいいから、ニコニコだ。
「納期ギリギリに溜めなければいいのに……」
「まあまあ! はい、アルバイト代! 高性能なパソコン欲しいって言ってたでしょ!? これで買えるね!」
「ちょっと足りないですね」
 中を確認して、だいぶ足りないと思ったが、ダリオは一応社会性があった。
「ええ、これで足りないってどんだけなの。俺が見たやつこれだけど、この価格じゃないの?」
 ヘルムートがタブレットを見せてくる。液晶画面に、この間ダリオが欲しいと言っていたラップトップが表示されていた。
「箱は同じでも、中次第で価格違ってくるんです。俺、携帯フォンの仮想マシンを走らせたいので、スペック高くないと固まっちゃうんですよね」
「ふーん? ダリオ君て色々やってるんだね」
「はあ、まあ一応……せっかく学べるんですし」
「いいことだと思うよ。あ、俺も育毛剤以外にも教えてあげるって言ってたし、なんか今日教えてあげようかな」
「それはありがたいです」
「いいよいいよ。だから、こないだの壺中の天の件は、テオドール君によく命乞いしといてね! 俺を殺そうとして来たら必ず止めるんだよ⁉」
「テオ、そんな執念深くないですよ」
 ダリオは少し想像してみて、言いなおした。
「多分」
「多分って言うな! 不確実は俺嫌いなんだ! 必ず殺されない保証が欲しい!」
「そんなに怯えるくらいなら最初から俺のこと巻き込まなければよかったのに……」
「あの時はダリオ君が手近で頑丈でちょうどよかったの!」
 相変わらずクズ発言である。
「別にヘルムートさんじゃなくても、誰かが殺されそうになったら俺止めますし。テオもよほどじゃなきゃ殺したりしないと思うんで大丈夫ですよ」
「信じるからね⁉ それはそれとして、ちゃんと止めてよね⁉」
 ヘルムートはまだぐちゃぐちゃ言っていたが、「今日は何を教えてくれるんですか」とダリオが尋ねると、いい加減真面目に考えることにしたらしい。
「うーん、俺ひととおりなんでもできるけど、ダリオ君って、こういう方向のこと学びたい! みたいなのあるの?」
「自衛できるようになりたいですね」
「えー自衛? 必要ある?」
「あるでしょう」
「テオドール君がいるじゃん」
「よく音信不通になるので」
「そういえばそうだね。でも大体テオドール君自身が失踪とか、パパが介入とか、妹が介入とか、支配者関連だからどうしようもなくない?」
「ヘルムートさんが俺も話していない事情を知っていて気持ち悪いです」
 ダリオは半歩距離を開けた。
「生活範囲内に支配者がいたら、情報収集過敏にもなるし! 別にストーカーしているわけじゃないから!」
「はあ……」
 ヘルムートは、もーとかあーとか呻くと、山積みの古い道具に手を突っ込み、ああでもないこうでもないと引っ張り出し始めた。
「そんなに言うならさあ、ほらこれ! これあげるよ! もうすぐ賞味期限切れる妖魔の卵!」
「賞味期限切れ? 食材ですか?」
 ダリオは突き出された卵を両手で受け取り、しげしげと眺めた。鶏の卵くらいの大きさだが、何とも言えないエグイ色をしている。
「食べられるけど、自衛したいんでしょ? 血をあげて、毎日肌身離さず持っていれば、ダリオ君に相応しい使い魔が生まれてくるよ。契約込みだから、どこいても呼び出せるし。って、別にテオドール君でよくないかこれ? 呼べば彼来るだろうし、来たら敵とか言われなくても殲滅するよね? どっか移動したいなら言えば転移してくれるでしょ? 全部テオドール君の方が上位互換じゃない?」
「そうなんですけど、やっぱりテオと連絡取れなくなる時、何も自衛手段や通信手段とかないと困るんで。そういう時に使い魔がいるといいんじゃないかなと。ただ、これ無料でもらってもいいんですか?」
「うん、別に壺中の天の件でおつり来るくらいだし、気にしなくていいよ。だから俺テオドール君に殺されないか毎日心配でさあ」
 夜しか眠れなくてぇ、とかまだヘルムートは言っていたが、ダリオは聞き流して卵を見つめた。
「ヘルムートさん、使い魔のメリットとデメリットとか、注意点とか教えてもらっていいですか?」
「え、それ必要?」
「他に何が必要なのかわからないです」
「ほら、うちの店って、まず使ってもらってじゃん?」
 説明書きくらい載せろ、とダリオが以前から言っていることを、この店主は全然聞く耳をもたないのである。
 ダリオは色々質問してある程度把握したが、興味深いなと思った点がひとつ。使い魔の方は、主の魔力ともいうのか、けはいを遠方にいても把握できるという点だ。
「だからさあ、使い魔君は主に呼ばれたら、契約込みで、主のいるポイントに顕現できるわけでぇ」
 ヘルムートの説明になるほど、とダリオは頷く。その後、契約するかはもう少し考えたいと伝え、お礼を述べて、ダリオは帰宅したのだった。



 まあペットを飼うようなもんだし、共同生活者には相談しないとな、というわけで、ダリオは帰宅後テオドールに報告した。
 そして、テオドールが猫のように目を見開いて、数秒停止してしまったのである。
「ペット飼うの反対か? 面倒は俺が全部みるし……ペットじゃなくて俺の使い魔だし」
「……」
 更に硬直され、ダリオは反応に困った。
「あの……嫌なのか?」
 テオドールはダリオの行動を制限しようとしたことはこれまでになく、本当にどういう反応なんだこれ、と戸惑いが先に立つ。
「ダリオさんが使い魔を持つことに反対なわけでは……」
 テオドールはそう言いさして、口をつぐんだ。どうも嫌であるらしい。ただ、それを口にするのもテオドールなりのルールに抵触するようで葛藤している。
 やがて彼はこう申し出た。
「僕も、ダリオさんの使い魔に立候補しても?」
 何か言いだしたな、とダリオは思って、膝の間で指を組んだまま考えた。
「いや、お前何対抗心燃やしてるんだ。使い魔に立候補ってなんなんだよ」
「文字通り、ダリオさんの使い魔に立候補したいと」
「なんでだよ。お前俺のパートナーだろ。使い魔じゃねーだろ。恋人にペットになりたいって言われて、戸惑ってるぞ俺は」
「恋人もペットも立派に務めてみせます」
「ペットはちげーだろ。なんかおかしくなるから止めろ」
「僕にもチャンスを下さい。僕なら次元移動も、変身も可能ですし、攻撃も守備も並の妖魔には引けを取りません」
「引けをとらねーどころか、大概の妖魔怪異の類に避けてとおられてるだろ……」
「僕の方がすべて上位互換です。何か気になる点がありますか」
 ヘルムートも言っていたが、本人も上位互換だと言い出した。
「ええ……あのな、そもそも俺が使い魔欲しいと思ったのって、お前と音信不通になった時に自衛手段欲しいなと思ったからなんだよ。連絡も使い魔がいればできるかもしれねーだろ。わかんねーけど、俺だけだとまずできることが限られるし……テオが使い魔になっても、今と状況変わんねえし、必要ないと思う」
「……」
 テオドールは真顔でショックを受けているらしい。黙り込んでしまった。別にダリオはテオドールを打ちのめしたかったわけではないので、ええ……となってしまう。
「うーん、でもテオと連絡つかない時って、本当に状況特殊だよな」
 ダリオはつぶやいた。
「そういう状況の時に、俺の使い魔が役に立つのかっていうと、そもそも呼び出せるのか謎な気もするな……テオが呼べないのに、ふつうの使い魔が呼び出せるような状態か? まあ別にそれはそれで備えといてもいいかなとは思うけど、メリットがデメリット上回るかっていうとそうでもない気もするし……」
 そこでふと発想の転換を思いつき、ぽん、と手のひらを打った。
「逆だ。俺がテオの使い魔になれば、テオのけはい、俺もわかるようになるんじゃないか?」
 音信不通でも、困らない。テオドールが呼び出してくれたら、ダリオも彼の下に転移できるのではないだろうか。
「……は?」
 珍しくテオドールが聞き返した。
「テオ、俺のこと使い魔にできるのか?」
「形式的には可能ですが……いや、しかし」
「お試しみたいなのできればいいんだが、それはできる?」
「可能ですが、ダリオさん」
 何故かテオドールが押されて、ダリオがテオドールの使い魔(お試し)になることになった。


 使い魔になったまま、テオドールに可愛がられたら、精神汚染が激し過ぎて、すぐに解除する羽目になった。
 なんというか、ご主人さまに可愛がられて嬉しい♡ 状態になってしまい、多幸感で人格がぶっ飛びそうな感じになってしまったのだ。いつだって、ダリオはテオドールに対しては、好き、好き、となってしまうが、ご主人様に可愛がられて嬉しい幸せというのはちょっと方向性が……だいぶ違うヤバイやつでは……とダリオの中でなしになった。自分の柔らかいところまで全部テオドールを入れてしまって、明け渡して、委ねるという意味では、けっこう近いところにある感情でもあるのだが、その分境界線を完全になくしてしまうと人格喪失度が本当にまずい。
 逆らえなくて、気持ちよくて、全部好き。
 相当近い。トロトロになって、ぐちゃぐちゃになって、飛んだ先の状態に似ている。全部好きで、テオドールに可愛がってもらうのが幸せで、そういう生き物になる。
 それだけになってしまうと、人格が吹き飛ぶ、とダリオは二の腕をさすって、自分が使い魔を持つのもなし、と妖魔の卵を後日ヘルムートに返却した。
 ヘルムートからは、まあそうなると思ってたーと間延びしてコメントをもらい、そもそも支配者は、自分の花を他者とシェアとか地雷でしょなどと言われた。
 ダリオは少し首を傾げ、とりあえず頷いたのだった。
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