俺の人生をめちゃくちゃにする人外サイコパス美形の魔性に、執着されています

フルーツ仙人

文字の大きさ
88 / 150
番外 二十一 友達と彼氏の話してたら彼氏が迎えに来て周りがシーンてなる話

1

しおりを挟む
 金曜日である。
 工学部の友人、ダグラス・ポーカーが、涙目で「お願いします、俺の愚痴聞いてください……バーで奢るから、付き合ってください!」と、両手を合わせて頼んで来た。
 ダリオはその日アルバイトも入っていなかったし、見た目は軟派な金髪長毛ダグラスが、メンタルはけっこう繊細なのは分かっていたので、「いいぞ」と二つ返事したのだった。
 ダンスフロアも備えたバーは、金曜日から日曜日にかけて、大学生たちのパーティーの出入りが多い。
 ひとまずダリオはテーブルについて、大学生たちのいつものやり方、ショットグラスをもらうと、話を聞くことにした。
 ダグラスは、半泣きで訴える。
「俺のアルバイト先で激ヤバ男がいて、そいつとシフトが重なった時に最悪なんだよ、俺のメンタルボロボロのズタボロなんだよ、俺はイチャラブアニメが好きなのであって、現実で女の子妊娠させたとか、中絶の時に、お前は赤ちゃんを殺すのか⁉ 人殺しだなっ、て責めてやったとか、ガチ武勇伝みたいに言ってくるの。止めてよ! 俺ドン引きだよ!? 女の子かわいそうすぎるし、きついよぉおお!」
 ダリオは黙って眉をひそめた。ダグラスもショットを飲み干しては、その激ヤバ男がどれだけ激ヤバなのか説明し、くだを巻く。
「俺、アニメとかでも、かわいそうなのはNGなの! 猟奇やだ! 死にネタ絶対NO! NO! NO! イチャイチャラブラブのライトノベルとアニメが大好き! あいつ嫌いッ、でも時給いいバイト止めたら、来月のラップトップの支払いできねえっ」
「そうか……ダグラスもラビット・ホールで働くか?」
「う、最後の手段にする……あそこ、お客様に女の人多くて、会話も多いんだろ」
「まあな。それか、おじさんにチップ渡されることもある」
「え、それどういう状況? ダリオ大丈夫なの?」
「……大丈夫だ」
「怖いんだけど⁉」
「まあ、会話苦手なら、無理には勧めない」
「うん……」
 ダグラスは、現実の初対面女性の前だと「あっ、あっ、あっ」と挙動不審になる男だ。動けるデブを自称している同じく工学部生のチェン・ワンの方が、よほど女生徒とのコミュニケーションスキルがある。
 ダリオは友達の愚痴を聞くのは苦でない性分なので、ダグラスの気が済むまでつき合った。
 ダグラスは目を擦りながら、「うう、ダリオ、ありがとう……」と礼を言ってくる。
 愚痴を聞いて下さいお願いしますと、聞いてくれてありがとうを言える友人なので、美点だなあと思いながら、頷いておいた。
「ヘーイ、グッドガイズ、話は終わったかあ?」
「我々も混ぜて欲しいのだ」
 見計らっていたらしい、先ほど顔を思い浮かべていた自称動けるデブのチェン・ワンと、文学部のアリス・メイフィールドが寄って来た。
 チェン・ワンは、白い肉まんに黒い毛が生えたような体型で、いつも野球プロチーム・ホーナーズのレッドキャップを被っている。本人の自称通りフットワークが軽い。アリス・メイフィールドは、子どもかと思うほど小柄で、焦げ茶のショートカットに、目に光のない独特な感じの女性だ。昨年手掛けた古語翻訳アプリケーションの翻訳部分においてだいぶ世話になった。
 ちなみに、このメンバーが全員、マジック・アイテム・ショップ・トリックスターで闇のゲームに巻き込まれ、特にダグラスが酷い目にあった経緯がある。
 四人で話していると、最後に、クラブ・ラビット・ホールの同僚、クリスがやって来て、「おや、みんなバーにいるなんて、珍しいね」と言って、自然に加わる。
 五人も個性豊かな面子が集まると、話題はカオスだ。ヘルムートの悪口に始まり(あの人アドレス教えてないのに連絡が来る)、授業や手掛けている研究の話、ヘルムートの悪口(闇のゲームの招待状って何)、気になるアニメ、パソコンのスペック、携帯フォンの最新機種、ヘルムートの悪口(ダグラスは目をつけられてるからもう逃げられないかも→嫌だ!)、多岐に渡る(ヘルムートの悪口が一番多い)。そして、話題は恋愛へと変わった。
 しばらくダリオはうんうん、と聞いていたのだが、何故かその矛先が回って来て、「ん?」となる。
「き、聞いちゃっていいのかな⁉」
 ダグラスの声が上擦って、アリスが「落ち着け」と言う。
「別に構わないが、特になんもないぞ」
 何も面白い話はないぞ、というニュアンスのつもりでダリオは口にしたのだが、ダグラスが両手を左右に開いて、ぶんぶん首を振る。
「いやいやいやいや、俺ずっと聞きたかったし! 特に何もねーことなさ過ぎだし⁉」
「まことに遺憾ながら、ダグラスに同意なのだ」
「まことに遺憾ながら⁉ なんで⁉」
 アリス相手には騒がしいダグラスと、無表情にショットを口に運ぶアリスを他所に、チェンが口を開いた。
「俺も気になってたあ」
 彼は顎を丸っこい白くもちもちした指で触りながら、ニッと目を細めて笑う。
「俺んち、移民系で、元は大陸の占い師の家系でよぉ。すんげーとんでもねーのダリオが連れて歩いてるじゃん。連れてっつーか、一方的にやべえのに憑かれて? って感じだったしな」
「あー、まあ……」
 かなり初期の話かなと思うが、案外最近までかもしれない。人からどう見えているのかまでダリオは関知しなかった。
「大丈夫かよって思ってたら、なんかうまく行った? みたいで、安心してたけどな、ま、よかったら本人の口から聞きてえじゃん」
 ほらよ、とチェンはダリオの空いたグラスにどぼどぼ酒を注ぐ。
「ま、友達が幸せですって報告聞きてえなってことよ」
「うむ、同じくなのだ」
 アリスがこくりと頷いた。アリスにはアリスで何か見えていた風らしく、ダリオにストレートで質問してくる。
「我々から見ると、テオドール氏は大変恐ろしいのだ。ダリオ氏は、あの人のどういうところが好きなのだ?」
 アリスが質問すると、周囲のテーブルからも聞き耳を立てるように会話が中断され、視線が集中したのだが、ダリオはその時あまり気づいていなかった。思うに、もうすでに酔っていたのかもしれない。
「どういうところが好きって……」
 ダリオはショットグラスを手に考え、あまり深く考えずに口にした。
「ぜんぶ……」
「うむ……全部なのだ……」
「おお……全部かあ」
「うんうん」
 生ぬるい視線がダリオに注がれたが、「まあ、全部と言っても特に好きになったり、心を許したきっかけとかあるのだ? 命乞いの参考に知りたいのだ」と何か変な質問をしてきている。
 ダリオは、人にテオドールのどういうところが好きで、どういうきっかけで好きになったのかなど、今まで誰にも話したことがない。
 ちょっとふわふわしながら、自分の中を探って、ああで、こうで、と説明する。テオがいないところで本人の話するのもなと思って、自分がどう思ったか中心の話だ。
 ますます視線が生ぬるくなるが、ダリオはあまり分からなくなっていた。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

人気アイドルが義理の兄になりまして

BL
柚木(ゆずき)雪都(ゆきと)はごくごく普通の高校一年生。ある日、人気アイドル『Shiny Boys』のリーダー・碧(あおい)と義理の兄弟となり……?

【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

バーベキュー合コンに雑用係で呼ばれた平凡が一番人気のイケメンにお持ち帰りされる話

ゆなな
BL
Xに掲載していたものに加筆修正したものになります。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

処理中です...