灯火

松石 愛弓

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 数日後。

 たくさん眠って、栄養補給した私の体は 体力が回復してきていた。
 足のヒビは まだ治らないけど 疲れて重かった体が軽く感じられるのが有難い。

 部屋の窓から庭園を眺めていると 侍女のララさんが、
「庭を見に行かれます? 花が綺麗ですよ。寒いから温室の方がいいでしょうか。車椅子をご用意しますよ」
 と 優しく微笑んでくれる。

「車椅子を押すなんて 重いのに・・」
 私が遠慮すると
「大丈夫ですよ。私、力持ちなんです」
 と 明るく笑ってくれる。

 あなたは天使ですか? 私、無意識に虹の橋を渡ってしまったのでは・・
 と思ってたら あっという間に車椅子を持ってきてくれて 乗せてくれて 温室の花を見せてもらっていた。
 てきぱき仕事が速く丁寧なララさんなのでした。

 ガラス張りの素敵な温室では 鮮やかな色彩の花々が美しさを競い合っていた。
 赤や黄の大輪の花は 呑み込まれるかと思うほど迫力があり、大きな葉や茎を伸び伸びと広げている。
 可憐な小さな花々も可愛らしくいじらしく 心を奪われる。
 南国フルーツのような大きな樹があったり、まるで植物園のよう。
 温室の向こうに 小さな工房のような建物が見えた。

「あの建物は何ですか?」
 赤レンガ作りで可愛い。煙突を付けたら似合いそう。
「火魔法を使える職人さんの工房です」
「火魔法? 凄いですね」
 魔法が使えるなんて 憧れてしまう。
「御覧になりますか?」
 ララさんは 私の思いを察して案内してくれた。
  
 呼び鈴を鳴らすと 静かに木製のドアが開けられた。
 赤くて長い髪、赤紫の瞳をした 職人さんのような雰囲気の青年が 無言でこちらを眺めていた。

「こんにちは モーリスさん。少し中を見せていただいてもいいかしら?」
 ララさんがにこやかに言うと、
「どうぞ」
 と 無表情で部屋に入れてくれた。
「お忙しいところを すみません」
 突然 訪ねてしまったことを 申し訳なく思っていると
「いいですよ。少し休憩したかったし。ララさん、美味しいお茶を淹れていただけませんか?」
 モーリスさんが いたずらっぽく笑うので
「畏まりました。火魔法使いモーリス様♪」
 ララさんも悪戯っぽく笑って 工房の給湯室に入り いそいそとお茶の準備を始めた。

 工房の中には大きな棚があり いろんな粉や液体が入ったガラス瓶が ずらりと並んでいた。
 乾燥した植物がいくつも壁に吊るされ 漢方薬のような独特な香りを放っている。
 でも嫌な感じではなくて なぜか落ち着くような 静かな空間。
 暖炉では 暖かな炎が 柔らかに揺れていた。
 
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