灯火

松石 愛弓

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 美味しく昼食をいただいた後、ララさんが美味しい紅茶を淹れてくれた。
 窓からは柔らかな光が差し込み、まったりするなぁ~。

「そういえば、フィーリアさんの足は どうして治さないのですか?」
  不思議そうに モーリスさんが訊いた。
「? 治癒院へ通わせていただいてますよ?」
「キイ先生ですよね?」
「そうですが・・」
「キイ先生なら 足のヒビくらいなら すぐに完治させられるはずなんですが・・。優秀な治癒師ですから。・・もしかして、ロナルド様がフィーリアさんを手放したくなくて わざとゆっくり治療してもらってるとか・・?」
 良かったね、と モーリスさんが意味ありげに笑う。
「ロマンティックですねぇ! いいなぁ、フィーリアさん。羨ましいです♪」
 ララさんも盛り上がってるし。
「ちょ、そんな訳ないでしょ~! 私なんて男爵令嬢で身分違いだし あんなに綺麗な人と釣り合うわけないし。怪我が治ったら ここで雇っていただけたらと思ってるくらいなのに・・」
 そう。そこまで勘違いしてはいけないのだ!
「そうですか? フィーリアさんの薄紅色の長い髪は綺麗だし、童顔で放っとけない雰囲気がありますよね」
「フィーリアさんは もっとお化粧頑張れば伸びしろありますって!」
「禿増し、じゃなくて、励ましの言葉ありがとう? お化粧したことないから、いつか頑張るわ!」
 ははははは! と よくわからない盛り上がりの後 私たちはまた作業に没頭した。


 夕方。
 カラスが鳴く頃、私とララさんは部屋へ戻った。

 なぜか 私の部屋の前にはロナルドさんが立っていた。

「あっ、私は失礼いたします」
 ララさんが気を利かせて?ウフフと微笑みながら去っていった。
 
「少し話があるんですが、部屋に入ってもいいでしょうか? 他の者には聞かれたくない話なので・・」
 ロナルドさんは 淑女と部屋でふたりきりになることが世間体が良くないことを気にしているようだった。

 私が車椅子でなければ 庭のガゼボに行けばいいのかもしれないけど そうするとロナルドさんに車椅子を押してもらうことになる。それは申し訳なくて。
「ロナルドさんのご迷惑にならないのでしたら どうぞ」
 私は部屋の扉を開けた。

 ロナルドさんは気まずそうに部屋に入ると、
「では 手短に言います。
 サンダー男爵家の執事がサンダー男爵家の財産のほとんどを持ち逃げしたそうです。銀行に預けていたお金も横領されていて、手元に残ったお金は僅かだそうです。領地経営も天候の影響で赤字経営になっていて、給与を払ってもらえないと察した他の使用人たちも屋敷を出たそうです。
 フィーリアさんを治癒院へお連れする許可をいただくためにサンダー男爵家へ行ったあの日、第六感というか、なぜかすごく嫌な予感がして、ここへフィーリアさんを帰したくないと思いました。サンダー男爵夫妻や義妹から、貴女あなたを守りたいと思ったのです。
 貴女あなたの足をわざとゆっくり治療したのも 速く治れば サンダー男爵家に帰ると仰るかもしれないから。
 ずっとここに居てくれたらいいんです。私は騎士団に勤めていて覆面捜査などもしますし 過去に捕まえた犯人やその仲間、縁者から、逆恨みされて命を狙われることも多い。
 フィーリアさんが守ってくれた命なのですから、気を遣わずに安全なここに居てください。
 辛いだけの毎日を送っていたあなたの記憶が見えた時、助けなくてはいけないと思ったのです」
 私の瞳を見て真剣に話してくれた。

「ありがとうございます。地獄から救い出してくださったロナルドさんの親切は一生忘れません。いつかきっと ご恩返しがしたいです」 

「私も 感謝していますよ」

 無意識に零れていた涙を ロナルドさんが指先でそっと拭ってくれる。

 優しい微笑みに 胸が熱くなる。

 今まで出会った中で 一番 思いやりのある優しい人。

 (私、この人が好きだ・・。)

 でも 絶対言ってはいけない。困らせたくない。

 ずっと 心の中で秘めているから 
 あなたを好きな気持ちを 許してください・・。

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