ブレイブ&マジック 〜中学生勇者ともふもふ獅子魔王の騒動記〜

神所いぶき

文字の大きさ
19 / 25
第3章

18.作戦

しおりを挟む
「ふむ。なるほどな」
 魔王がアゴのたてがみに手を当てて、頷く。
「何を一人で納得してるんだよ魔王! 何が起きているのか分かるのなら説明してくれ!」
「うむ。簡単に説明するとだな、今、あの黒い宝石からあふれ出しているのは恐らく本来のヌシの力だ」
「本来のヌシの力だって?」
「これは憶測だが、あの黒い宝石にはゲートのヌシを封じ込める力があるのだろう。そして、ヌシを封じてしまえば宝石の持ち主はヌシの力を自在に引き出すことができる。つまり、モンスターでなくてもゲートのヌシになれる。そういうカラクリなのだろう」
 もしも魔王の考えが当たっているのなら、本来のゲートのヌシはあの宝石の中に閉じ込められていることになる。そして、その状態だとティガは自在にゲートのヌシの力を引き出せるようになるということか。
 つまり、ティガはゲートのヌシそのものではなく、ゲートのヌシの力を操っているだけってことだろうか。
「じゃあ、今、あいつは本来のゲートのヌシの力を引き出して何をしようとしているんだ?」
「本来のゲートのヌシの魔素と、ティガの魔素が混ざり合い、境目が曖昧になっているのを感じる。ゲートのヌシの力を限界まで引き出し、自身にまとわせることでパワーアップしようとしているのではないか」
 魔素が混ざり合い、境目が曖昧になっていると言われてもオレにはよく分からない。でも、背中がチリチリするような嫌な気配を感じる。
「おい、ティガ! モンスターの力に縋《すが》ってでも、オイラたちに勝ちたいンスか!?」
 ゼーゲンさんが悲しげな声で叫ぶ。
 元々、ティガもゼーゲンさんと同じく魔王の執事だったようだから、思うところがあるのだろう。もしかしたら、付き合いも長かったのかもしれない。
「あア。我輩は勝ちたイ。我輩の期待を裏切ったできそこないの魔王と、お前ら二!」
 ティガの身体を覆っていた黒い霧が晴れ、オレたちは驚愕する。何故なら、そこに立っていたティガの背中には巨大なコウモリの羽根が生えていたからだ。
「おい何だよあれ! 羽根が生えてんぞあいつ!」
「これは一体どういうことなの?」
 ヴォルフとナハトが困惑している。勿論、オレもだ。
「これはいかんな。このままティガがゲートのヌシの力を引き出し続ければ、あいつはゲートのヌシそのものになってしまう」
「そうなるとどうなるッスか!?」
「ゲートを消滅させるにはゲートのヌシを倒し、消滅させる必要がある。つまり、このままだとティガを消滅させなければいけなくなる」
「何だって!?」
 ティガを消滅させる。それはつまり、ティガの命を奪うということだ。敵対している相手とはいえ、そんなのは嫌だ。
「風よ荒れ狂エ! ヴィントホーゼ!」
 困惑するオレたちには構わずに、ティガは竜巻を発生させる魔法であるヴィントホーゼを発動させた!
 巨大な竜巻が、意思を持っているかのようにオレたちに向かってくる!
「そう来るなら私も! 風よ荒れ狂え! ヴィントホーゼ!」
 お返しだと言わんばかりに、ナハトも魔法で竜巻を発生させた!
 ティガが発動させた竜巻と、ナハトが発生させた竜巻がぶつかり合い、まるで押し相撲のような状態となる!
「はははッ! その程度、今の我輩の前ではそよ風ダ!」
「きゃあっ!」
 ティガが発生させた竜巻が一際大きくなり、ナハトが発生させた竜巻は飲み込まれてしまった!
「こ、こっちに来ますよ! どうしましょう!?」
「あいつが出した魔法は我が食い止める! その隙に、皆はあいつの胸元にある黒い宝石を破壊するのだ! そうすれば、本来のゲートのヌシが消滅し、ティガは助かるかもしれん!」
「本当ッスか!?」
「確証は無いが、我の勘がこう告げている! 急げばまだ間に合うと! だから今は黒い宝石を破壊することだけに集中するのだ!」
「勘って……」
 ただの魔王の勘に賭けていいものだろうか。だけど、他にできそうなことはない。迷っている暇もなさそうだ。
「万年雪の氷塊よ! 集いて絶対零度の塔を築け! グレッチャートゥルム!」
 竜巻を止めるために魔王が放った魔法は、巨大な氷塊を大量に積もらせ、塔を築くものだった。あっという間に竜巻は氷の塔に閉じ込められた!
「隙ありッス! 貫き爆ぜよ輝石の弾丸! シュタインクーゲル!」
 竜巻が無力化されたのを見計らって、ゼーゲンさんはティガに向けて魔法を放った! 石の弾丸がティガを目掛けて飛んでいく! 
「甘いわァッ!」
 背中に生えた巨大な翼をはためかせてティガは空を飛んだ! ゼーゲンさんが放った石の弾丸はむなしく空を切り、地面に転がってしまった。
「うう。外したッス……」
「畜生! あの黒い宝石をぶっ壊そうにも、これじゃ狙いが定まらねえぞ!」
 恐らく、オレたちの狙いに気が付いているのだろう。ティガは黒い羽根をはためかせ、不規則な飛行を始めた。そのせいで黒い宝石を魔法で狙い撃つのが難しい。
「これで終いダ! 顕現せよ嵐の牢獄! 仇なす者を捕らえ、風の刃で殲滅せヨ! シュトゥルム・ゲフェングニス!」

 ティガは再び魔法で嵐の壁を呼び寄せた!
 こんな大規模な魔法を続けて使えば、反動でフラフラになりかねないはずだ。それなのに、今のティガに疲れた素振りは見えない。これも、ゲートのヌシの力を引き出しているからなのか?
「魔王! もう一度さっきの魔法で上空に……」
「いや、それはダメだ。上を見てみろ勇者よ」
 促され、上を見る。この嵐の壁を唯一突破できる上空には、コウモリの羽根をはためかせるティガの姿があった。
「フリーゲンで飛んだら、その瞬間にティガは別の魔法を発動させ我々を撃ち落とすつもりなのだろう。故に、我が嵐の壁を食い止める」
 そう言って、魔王は手を上空に掲げ、魔法の詠唱を始めた。
「大地よ! 広大なる円蓋を作りて、我らを守りたまえ! ラントゲニウス・スフォルツァンド!」
 まるで大きな地震が起きた時のように、突然地面がグラグラと揺れ始めた。そして、辺りの地面が盛り上がり、嵐の壁を遮るように巨大な土のドームが出現した。余裕で野球ができそうな広さのドームだ。
 昨日、魔法学の授業中に飛ばされたゲートの中で初めてモンスターと遭遇した時に、ナハトが使った魔法が巨大化したような感じだな。
「やっぱ、魔王様はすげえな……。嵐の壁を無効化しやがった」
「感心している場合ではないぞ、ヴォルフ。時間が無い。我がティガの魔法を無効化している間に、黒い宝石を打ち砕くのだ!」
「お、おう。けど、どうすりゃいいんだ」
「打ち砕くといっても、まずはあいつを地面に引きずり下ろして動きを止めないといけないよな」
「何かいい案はある? 勇者くん」
 少し深呼吸して、辺りを見回す。魔王が作り出したドームの中は、薄暗いが辺りは見える。天井部分に小さな穴が無数に開いていて、光が入ってきているからだ。だが、パッと見た感じティガがこのドームから逃れられる程の穴は無い。
 つまり、今、ティガはこのドームの中に閉じ込められていることになる。どこか遠くに飛び立ってしまうという心配はしなくて良さそうだ。
「うーん……」
 次に、地面を見る。ティガが飛行している場所の真下には、沼がある。……もし、ティガをこの沼に落とすことができたら動きを止めることができるかも。
「……よし。作戦を考えた」
「何か思いついたんですか? クオンさん」
「ああ。まず、ナハトとゼーゲンさんに動いてもらう」
「私と……」
「オイラにッスか?」
 ナハトとゼーゲンさんが顔を見合わせて目をパチクリさせている。いきなり動いてもらうといわれても、そりゃ困惑するよな。しっかりと説明しないと。
「ああ。動きを封じるために、二人は魔法を使って何とかティガを沼に落としてほしい」
「そうだね。まずは動きを止めないとどうにもならないよね。分かった。やるだけやってみる」
「オイラも了解したッス。沼にでも落とさないと、分からずやのティガの頭を冷やせそうにないッスからね。頑張るッスよ! ナハトさん!」
「うん! 頑張ろうねゼーゲンさん!」
 二人は気合十分といった感じだ。空を飛ぶティガを沼に落とすのは困難だろうが、魔法の扱いに長けている二人ならきっと大丈夫だろう。
「なあクオン。オレ様はどうすりゃいい?」
「勿論、ヴォルフにも動いてもらう。でもそれは今じゃない。追って指示を出させてもらうよ」
「今、指示を出せばいいじゃねえか」
「オレが今考えてる作戦は、相手の不意をつくものだ。ヴォルフが動くタイミングを、なるべく感づかれないようにしたい」
「そうか。理由があるならいいぜ。オレ様に動いてほしいタイミングで声をかけろ。オレ様は頭を使うのは苦手だから、お前に任せた」
 水属性の魔法の扱いに長けているヴォルフには、あるタイミングで魔法を発動してほしい。だけど、長々と作戦会議をしているとティガに感づかれるかもしれない。ヴォルフに指示を出すのは、来るべきタイミングの直前だ。
「それとユウくん」
「は、はい!」
「ユウくんにも協力してもらいたいことがあるんだ。頼んでもいいかな?」
「勿論です! 僕にもできることがあるなら、嬉しいです!」
「よし、じゃあユウくんにも後で指示を出すよ。とりあえず今はこれを持っててくれ」
「分かりました!」
 さっき、ゼーゲンさんが魔法で放った石の弾丸が地面に転がっている。丁度野球ボールくらいの大きさのそれを一つ拾い上げ、ユウくんに渡した。
「それじゃ、やるぞ! みんな!」
 オレがそう言うと、みんなは元気よく返事をした。

 ――――ああ、きっと大丈夫。上手くいくはずだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

トウシューズにはキャラメルひとつぶ

白妙スイ@1/9新刊発売
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。 小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。 あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。 隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。 莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。 バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

アリアさんの幽閉教室

柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。 「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」 招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。 招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。 『恋の以心伝心ゲーム』 私たちならこんなの楽勝! 夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。 アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。 心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……?? 『呪いの人形』 この人形、何度捨てても戻ってくる 体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。 人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。 陽菜にずっと付き纏う理由とは――。 『恐怖の鬼ごっこ』 アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。 突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。 仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――? 『招かれざる人』 新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。 アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。 強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。 しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。 ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。 最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。

あだ名が245個ある男(実はこれ実話なんですよ25)

tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!! 作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など ・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。 小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね! ・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。 頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください! 特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します! トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気! 人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

処理中です...