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13 婚約とドレスと女の戦い(2)
13ー1 認知症?
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13ー1 認知症?
レイアさんは、わたしにエルフに起きたことを物語ってくれた。
「かつてエルフは、この世界の大半をしめる森を支配する者だった。けれど、今は、もう、すっかり数も少なくなってしまったわ。それは、すべてはあの奇病のせいだったの」
「奇病?」
「そう。その病は、エルフに多い病でね。時々は、人間にも現れることはあったけれどそれは、ごくわずかだった。そのためエルフの病、『賢者の呪い』などと呼ばれているわ」
レイアさんが続ける。
「大抵は、100才を過ぎた頃に発症することが多くて、その病にかかった者は、徐々に記憶を失っていくの。そして、日常の暮らしにも困るようになり、辺りを徘徊したり、それまで穏やかだった者が急に性格が変わってしまって狂暴になったりするわ」
あれ?
これって、もしかして。
わたしは、レイアさんに訊ねた。
「物忘れ以外に何か症状はありますか?」
「いいえ。とにかく、すべてを忘れていくの。家族のことも仲間のことも忘れてしまって。ひどいときは、5分前のことも忘れてしまうのよ」
マジか。
わたしは、ため息を漏らした。
これは、もしかしてあれじゃね?
「100才以下の若い人もその病気にかかることがありますか?」
「いいえ」
レイアさんが首を振った。
「たぶん、かかるものはいなかったと思うわ。これは、ある程度年をとった者たちのかかる病だから」
あ、これ、やっぱり。
わたしは、確信した。
やっぱりこれは、あれだ。
認知症。
まさか、この異世界に来てまできくとは思ってなかったけど、間違いない。
「何か、治療法方は?」
わたしがきくと、レイアさんが答えた。
「それが、特にはなくって。いろいろと試してきたのだけれどその病を治せる薬は、まだ発見されていないのよ」
「そうなんですね」
わたしは、少しだけ考え込んだ。
もしこれが認知症なら、たぶんわたしにもどうすることもできない。
「今は、その病にかかった人たちにはどんな治療をしているんですか?」
「治療、していないのよ」
レイアさんが辛そうに顔をゆがめた。
「この病にかかったら最後。みな一ヶ所に集められて閉じ込めるしかないの」
マジですか?
レイアさんは、涙ぐみながら話した。
「この病のせいでエルフは、いわれのない差別を受けているのよ。人間の里に近寄れなかったり、蔑まれたり。病が移うつるからって問答無用で殺されたエルフだっているのよ」
レイアさんは、わたしにエルフに起きたことを物語ってくれた。
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「奇病?」
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レイアさんが続ける。
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あれ?
これって、もしかして。
わたしは、レイアさんに訊ねた。
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マジか。
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「いいえ」
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あ、これ、やっぱり。
わたしは、確信した。
やっぱりこれは、あれだ。
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「それが、特にはなくって。いろいろと試してきたのだけれどその病を治せる薬は、まだ発見されていないのよ」
「そうなんですね」
わたしは、少しだけ考え込んだ。
もしこれが認知症なら、たぶんわたしにもどうすることもできない。
「今は、その病にかかった人たちにはどんな治療をしているんですか?」
「治療、していないのよ」
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「この病にかかったら最後。みな一ヶ所に集められて閉じ込めるしかないの」
マジですか?
レイアさんは、涙ぐみながら話した。
「この病のせいでエルフは、いわれのない差別を受けているのよ。人間の里に近寄れなかったり、蔑まれたり。病が移うつるからって問答無用で殺されたエルフだっているのよ」
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