魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない！～できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません！～

8 楽しい休暇は、魔境から

8ー4 ポーション

　８ー４　ポーション

　｢これ、は？｣
　夕暮れの光が消える前に、赤く照らされて現れたのは、崩れ落ちた遺跡だった。
　蔦が絡まったその遺跡には、まだ何者も侵入している様子がない。
　それほど朽ち果てた様子をしていた。
　遺跡とは、すなわちダンジョンだ。
　知られていないダンジョンに入ることは危険すぎる。
　今は、特に。
　俺は、ニャーを促してこの場を離れようとした。
　すると、それまで仕掛けてくることもなかった敵がまた礫を放ってきた。
　｢ニャー！｣
　ニャーがぶわっと毛を逆立てて森の奥の敵に向かって気を放つ。
　うん？
　敵は、どうやら俺たちをここに入らせたいのか？
　俺は、迷ったがやむ無く見知らぬダンジョンへと踏み込んだ。
　ダンジョンの中は、真っ暗だった。
　俺は、『魔法』で明かりを灯すと奥へと入っていった。
　後からニャーもついてくる。
　ダンジョンの中は、まるで鉱山の中のような洞穴になっていてそれが奥深く続いていた。
　そこかしこに魔物の気配がするが、どれも小さくて弱い魔物のようだ。
　俺は、とりあえず、入り口から少し入ったところでアンドレア様を下ろして地面に横たわらせる。
　アンドレア様は、弱々しく呼吸をしていた。
　体温が高い。
　もしかしたら感染症かもしれない。
　俺は、肩にかけていた鞄の中からポーションを取り出してアンドレア様に飲ませる。
　だが、アンドレア様は、うまく飲み込んでくれない。
　仕方なく俺は、ポーションを口に含むとアンドレア様に口移しで飲ませる。
　アンドレア様の喉が上下してなんとか飲んでくれた。
　すぐに顔色が少しよくなってくるのがわかった。
　俺は、周囲に魔物避けの障壁を張ると夜営の準備をする。
　ニャーがアンドレア様を守るように横になってその毛並みで包み込む。
　火を燃やして取り出した毛布をアンドレア様にかけようとニャーに近づく。
　眠っているアンドレア様を見て俺は、不意に顔がかぁっと熱くなるのを感じた。
　アンドレア様に、さっき、俺、き、キスした？
　いやっ！
　俺は、頭を振った。
　この状況だ！
　仕方なかったのだ！
　俺は、跪くと眠っているアンドレア様の額にかかった銀色の柔らかな髪を指先でそっと払った。
　もう、傷は、治癒されている。
　少し休めば大丈夫だろう。
　熱もポーションで治まってきているし。
　俺は、なんとかアンドレア様から視線を剥がすと夕食の調理に取りかかった。