魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます

トモモト ヨシユキ

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2 王都を目指して、レッツラゴー!

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    翌朝。
   俺は、目覚めた時、ヴィスコンティの腕の中に抱かれていた。
   ええっ?
   マジか!
   昨夜、俺は、魔族にとっては、強壮剤にすぎないが、人間にとっては、発情促進剤であるドラゴンの血を飲んでしまい、不測の事態に陥ってしまった。
    それを落ち着かせようと手を貸してくれたのが、このヴィスコンティだった。
   俺は、ヴィスコンティの手で、何度もいかされた。そして、最後には、気を失うように眠り込んでしまった。
    掛布をめくると、俺もヴィスコンティも裸だった。
   うわっ!
   俺、マジで、大丈夫?
   まさか、最後の一線を越えてないよね?
   「大丈夫ですよ。最後までは、してませんから」
    はっと気づいて見下ろすと、ヴィスコンティが、にっこり笑って俺を見つめていた。
   なんか、俺は、顔が熱くなってくるのを感じていた。
   「ヴィ、ヴィスコンティ・・あの、昨夜は、その・・」
    俺は、俯いて頭を下げた。
   「すみませんでした。ご迷惑をかけて」
    「はい?」
     ヴィスコンティがきょとんとした表情できいた。
   「迷惑?」
    「その、俺・・」
    「ああ、あなたが発情してしまったことですか?」
   ヴィスコンティがくすっと笑った。
   「あれは、事故です。あなたが人間とは思わず、魔族の飲み物を出してしまった私が悪かったのです」
         その後、ヴィスコンティは、起き出すと風呂の用意をすると、俺を抱き上げて風呂へと連れていった。
    マジで、恥ずかしい。
    俺は、遠慮したかったが、ヴィスコンティが有無を言わさなかった。
    なんだかいい匂いのするお湯につけられて、俺は、ホッと息をついた。
    だが、ヴィスコンティは、その間もかいがいしく俺の世話を焼いていた。
   彼は、俺の体を洗い、お湯から抱き上げると体を拭いて、下着を着せ、白いシャツと黒いズボンに、黒いローブを羽織らせた。
     ヴィスコンティは、俺をソファに座らせると、少し待つように言って、部屋から出ていった。
    俺、どうなっちゃうのかな。
   俺は、俯いて考え込んだ。
   魔王の体に入っちゃってるわけだよな。
   この場合、俺は、どんな扱いになるんだろう。
   まさか、殺されたりしないよな。
   だって、この体は、魔王様のものなんだし。
   ドアがノックされて、青白い顔の茶色い髪をショートボブにしたメイドさんが入ってきた。
    「どうぞ」
     少女は、手にしていたサンドウィッチみたいなものがのっている皿を俺の前に置いて、お茶を入れてくれた。
   俺は、お茶を飲む前にくんくん匂いを嗅いでみた。
   大丈夫。
   たぶん、普通のお茶だ。
   俺の腹がぐぅっと鳴って、俺は、急に空腹を覚えた。
   「い、いただきます」
     俺は、サンドウィッチのようなものにかぶりついた。
   うまい。
   なんの肉かはわからないけど、あっさりとしていて、鶏肉っぽい肉を焼いてパンに挟んであった。
   俺は、あっという間に完食してしまった。
   メイドさんがくすっと笑った。
   「魔王様は、いつもは、食が細い方なのに、あなたは、違うんですね」
     「えっ・・」
     俺は、なんだか申し訳ないような気がした。
    「すみません」
    「いいんですよ。あなたが悪いわけではないし」
    メイドさんが皿を片付け出ていくのと入れ替わりに、昨日の鬼と三つ目の少女とヴィスコンティが入ってきた。
    俺の心臓は、跳ね上がった。
    3人は、俺の座っている前のソファに腰かけると、まじまじと俺を見つめていた。
      「本当に、魔王様じゃなかったとはね」
    三つ目の美少女が言った。
   「どういうことなのかしら、これは」
    「なんでも、東の国の王たちが勇者の召喚を行ったとか。その関係じゃないか?」
    鬼が言った。
   「たぶん、召喚の時に何かが起きて、魔王様の魂とこの中身の小僧の魂が入れ替わってしまったんじゃないか?」
     「では、今、魔王様の魂は、勇者のもとにいるってこと?」
    少女が声を荒げた。
   「まずいんじゃないの?」
    「魔王様のことです。きっとうまくやり過ごしておられることでしょう」
    ヴィスコンティが言った。
   「とにかく魔王様の魂を取り戻すことが先決です」
    「どうするっていうのよ、ヴィス」
     「私に考えがあります」
     ヴィスコンティが言った。
    「ここは、私にお任せください」
    ヴィスコンティは、俺を連れてダンジョンから王都に向けて旅立つことを2人に告げた。
    「何、考えてるのよ、あんた!」
     三つ目の美少女  ビザークは、言った。
    「そんなことをして、魔王様の身にもしものことがあったら、どうする気?」
    「魔王様のことは、私がお守りします」
    ヴィスコンティが答えた。
    「ご安心ください、ビザーク」
     「うん」
     鬼のイオルグが頷いた。
    「俺もそれがいいと思う。まあ、2人で行かせるのは不安だから、俺もついていくけどな」
     「あんたが?」
      「ああ」
      イオルグが答えた。
    「悪いが、ここは、お前に任せる。頼むぞ、ビザーク」
      えっ?
     俺は、鬼とヴィスコンティを交互に見つめた。
    この鬼と一緒に旅なんてできるの?
    俺の考えがわかったのか、鬼がにやりと笑った。
   「この俺を誰だと思っている?オークの王であるこの俺が人化の法も使えないと思っているのか?」
    そういうと鬼の姿が揺らいだかと思うと、次の瞬間には、鬼は、少年の姿に変化していた。
    金髪、碧眼の美少年だ。
   マジか。
   「さあ、魔王様救出の旅に出発するぞ!」
   美少年に変化した鬼のイオルグと、俺と、ヴィスコンティは、ダンジョンを出るとヴィスコンティの用意した魔力で動くという魔導車に乗り込み、王都へと向かって旅立った。
    そのダンジョン『魔王の杜』の周囲は、開けた草原だった。
    ダンジョンとはいえ、冒険者の姿は、一人も見かけられない。
    俺は、魔導車を運転しているヴィスコンティに訊ねた。
   「このダンジョンには、冒険者は来ないの?」
    「ええ・・」
    ヴィスコンティが答えた。
   「ここは、町から離れているし、めったに人は訪れません」
    「もう少し、人が集まってくれたらな」
    助手席に乗ったイオルグが後ろに座っている俺を振り向いて言った。
    「もっと裕福な暮らしができるんだがな。他の魔王たちのダンジョンのように冒険者の集まるダンジョンならな」
    他にも魔王はいるのか?
   俺は、イオルグにきいた。
   「他にも魔王やダンジョンがあるわけ?」
    「ああ、あるよ」
    イオルグが答えた。
   「この世界には、10人の魔王がいて、それぞれ10のダンジョンを治めている。うちの魔王様は、人嫌いで有名でな。わざわざ人の来ない場所を選んでダンジョンを造ってるんだ。おかげで、俺たちは、万年貧乏暮らしでな。この魔導車だって、隣のダンジョンの魔王からヴィスが借りてきてるんだからな」
     マジで?
    そんな貧乏なんだ。
    俺が、少し、表情を曇らせたのに気づいて、ヴィスコンティが言った。
   「大丈夫ですよ、ハジメ。宿に泊まるぐらいの金は、ありますから」
    そうなんだ。
   俺は、ちょっとだけホッとしていた。
   宿代もないような人たちに、こんな迷惑をかけてるのかと心配になってたんだ。
    そうだよね。
   俺は、安心していた。
    いくら貧乏だっていっても、魔王だし。
      だが。
   その俺の考えは、甘かったのだということをじきに俺は、思い知らされた。
    ダンジョンから一日ほど魔導車で走ったところにある町は、モーグという小さな町だった。
   俺たちは、町外れの宿屋に泊まることになった。
    その宿屋は、見事なボロ屋で変な具合に床が軋んでいたり、壁に穴が開いていたりしていた。
    俺たちは、1つしかベッドのない部屋へと通されて、三人並んでベッドに腰かけていた。
    「この部屋って・・」
    「ええ、この宿場町で一番安い宿屋の一番安い部屋です」
    ヴィスコンティが答えた。
   「路銀が心もとないもので」
    マジか。
   俺は、言った。
   「なら、野宿とかでもよかったのに」
   「いえ、魔王様の大切なお体を傷つけるようなことがあってはいけないので」
    そのとき、隣の部屋から喘ぎ声がきこえてきた。
   「んぅっ・・ふっ・・」
    ベッドの軋む音に、俺たちは、耳をそばだてた。
    「ヴィ、ヴィスコンティ・・ここって?」
    「はい」
    ヴィスコンティが平然と答えた。
   「この宿は、娼婦たちの溜まり場ですから。もしかして、ハジメは、遊びたいのですか?残念ですが、我々には、そんな金は、ないので」
     「そ、そんなこと」
    俺が慌てて答えると、イオルグがバカにしたように笑った。
   「ヴィス、童貞をからかうなよな」
    「ど、童貞って」
    俺は、恥ずかしくて顔が熱くなるのを感じていた。イオルグが、にやりと笑った。
   「違うのかよ?」
    「違うというか、その」
    「なんなら今夜、俺が筆下ろしさせてやろうか?」
    イオルグが笑いながら言ったので、俺は、狼狽えた。
   「け、けっこうです」
    その夜。
   ヴィスコンティとイオルグに挟まれた俺は、一睡もすることができなかった。
     
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