魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

文字の大きさ
64 / 167
第八章

『冒険者たち』

しおりを挟む

 冒険者として秘密を守れる傭兵に依頼を頼んだ。
その名の通り、ゴルビーの東を探検してもらう予定だ。ちゃんと初期調査であり、危険よりも安全に情報を持ち帰ることを明記してある。また秘密と言うのも新型のゴーレムを使っているからで、海に関しては特に口止めはしないとも記載している。

とはいえその依頼文を張り出し、受けてくれる者があつまるまでは時間が掛かるのは当然だった。誰でも良いなら簡単だったんだろうけどな。

「自動的に動く船!? 素晴らしい! ですが……どうしてこの事を教えて下さらなかったのですか? もし知って居ればキエフも改良の余地を残しましたのに」
「これは三胴船が前提なんだ。それにバルガス河だとまた秘密が漏れるぞ」
 奇妙な事にキエール伯爵家の者が冒険者を連れて来ていた。
人材の派遣も兼ねて……と言う事らしいが、冒険者ギルドでは依頼文を張る形式なのでおおよその内容は判る。そこで問題が発生すると忠告兼謝罪にやって来たらしい。

何が言いたいかと言うと、キーエル家に提供した旋盤の知見が微妙に漏れる直前だったそうなのだ。もちろん水際で阻止したと主張しているが、そもそもその手前ですら機密だったので、万全であるはずがない。

「それをおっしゃられると返す言葉がありません。しかし、ゴーレムに関する部分の秘密だけでは同じように漏れるでしょう。その事を忠告するために参った次第です」
「まさか旋盤をゴーレム技術無しで再現するとは思わなかったからなあ」
 国鉄参加への保険の無い彼らに、船を建造し易くなる旋盤を提供した。
ゴーレム化した円盤型ノコギリを高速回転させて切る技術だが、ゴーレムであることを伏せて、水車を組み合わせて見たら良いだろうと自力で試したそうなのだ。大工たちも秘密にしようとはしていたが……『身内になら良いだろう』と善意で家族に伝える馬鹿が居たという事である。

幸いにも伝えられた身内の大工もキーエル家に呼ばれていた大工で、『そんな凄い技術を見つけるなんて凄い! だから儂にも教えてくれ!』と大声で宣ったために早い段階で見つかったのだ。実に馬鹿馬鹿しい話である。

「そもそもの話なんだがな……そこにある風車ゴーレムが回ってるのも水車で代用する事を俺はやってるんだ。それなのにあえて出来ると言わなかったのは、隠すためだったからな。その辺りも最初に説明すべきだったか……土産である彼らに免じてここは問題なしにしとこうか」
「そうしていただけると幸いです」
 起きてしまった機密漏洩に関して言及するのは止めよう。
これ以上の漏洩が無ければそれで良いし、もし止められないならばゴルビ-男爵家とキーエル伯爵家の名前で各地に提供すれば良いだろう。そうなったらその時の話だし、今はこれ以上の言及は必要ない。

やるべきことは海洋探査に関してなのだから。

「依頼文を呼んだとは思うが、重要なのは情報を持ち帰る事だ」
「最終目標は幾つかの段階を経て、次の拠点候補地を見つける事になる」
「その為の初期目標は三胴船を操る事に慣れ、近隣の探索になるな」
「浅瀬が無くなる場所を調べ、一定の情報を集めたら戻って相談。陸添いに南下して行きやはり相談、建物を建てて拠点にしたい場所を見つけたら、そこに木材や作業用ゴーレムを運べるかをの検討会をしてひとまずの終了になる」
 土産と言うのはキーエル伯が懇意にしていた傭兵たちだった。
信用が置けることと水に慣れているということを満たしており、呪文を使えるメンバーも居るという。俺はその土産に満足して、セシリアと共に絞り込んだ内容を説明したと言う訳だ。

何度も検討している事や、先に依頼文を張っている事もあり今の所は不満はなさそうに見える。

「質問を尋ねる前にまず懸念事項を片付けておこう。ゴーレムに関しては『尋ねられたら』専門の作業用ゴーレムに任せて自分たちは漕がなかったとだけ伝えれば良い。君らもシガラミがあるだろうからそのレベルなら問題としないし、キーエル伯爵家なら特別なゴーレムだと判るだろう」
「了解しました。そう言っていただけると幸いです」
「漕ぐところからやらないだけ助かりますよ」
「情報のついでとはいえ、命を大事にってのもね」
 ひとまず三人ほど返答があり、黙っている者も居る。
真面目そうなやつは実は騎士だろうか? 他の二人は実直そうなやつとシニカルな奴だった。共にムードメーカーであえて口に出した感がある。強いかは別として、ながらく活動した歴戦の傭兵らしさが見えた。

ひとまず問題ない様なので質問会と行こう。

「では質問があったら言ってくれ。可能な限り答えるから一つ一つ行こう」
「まずは私から行きましょう。魔物や隣国以外の第三者が居た場合は?」
「隣が不明なのが気になるのと出来たら交易がしたい。可能な限り喧嘩は無しだな。この間の魔物の害もそうだが、無関心でいたら突如として攻め込まれたってのが困るんだ。産物が欲しいなら海添いで手に入らない物を出せば済む。逆に誰かの領地だとして、面倒を見切れるほどに余裕は無いよ」
 最初の質問からして懸案事項だった。やはりこいつは騎士だろう。
ともあれ、俺が考えることは他所の人間も考えるという事だろう。依頼文に書いて置けば良かったと思う反面、『領地が欲しいわけではない』というアピールが出来たから良しとしておこう。

俺の言葉に納得したのか、騎士らしき男は頷いて他の仲間に譲った。彼がキーエル家の騎士だとしたら、技術漏洩で起きた借りを返しつつ、親密に慣れれば良いと言う事だろう。

「次は俺だな。ゴーレムで動くって船は何が出来る? どんな差がある?」
「動きを舵輪と舵に対応させてるから、思ったよりも舵が切れる。三つのボタンがあって、一つ目は移動開始、二つ目は帆を上げ下げしろ、三つ目は反対に向けて動き出せで……舵も当然逆回りになるから注意が必要だ。武装は中央船首に大型アーバレストを付けているが、この石弓で狙ったものを自動的に狙ってくれるぞ。弾は補充し易いように石にしているが、銛にしたり船首三つに付けることも可能だ。帆も含めて改造案は追々受け付ける」
 実直そうな奴は船乗り出身らしい。船旅に重要な事を聞いて来た。
これも当然確認する事なので、事前に用意しているメモ書きを見せた。ただし、記憶することを前提に見せるだけだ。流石に証拠になる物を渡しはしない。その様子を見てキーエル家の人間は期待している目をしていたが、船乗りらしき男は鷹揚に頷くだけで特に受け取りもしなかった。

やはり船乗りだけに、実際に船を動かしてみて判断するという事なのだろう。

「最後にオレだな。冒険者ってのは素材を回収したら高く買ってくれるそうだ。どんな物が高いんだ? 魚や海老なんか安いんだろうがよ」
「イル・カナンの出か? 特徴のある皮や甲殻、あとは魔石だな」
「イラ・カナンだ。次から間違えんな。退治したら持ってきてやるよ」
「無事に帰る事が前提で情報が最も効果ってのを忘れるなよ」
 三人目は報酬に対して関心が高い様で、いかにも傭兵らしかった。
魚はともかく海老なんてこの辺りはまずお目に掛かれない。川海老なんかはオロシャでも居る筈だが、あまり見たことはないからだ。その上で出身地にこだわる辺り、自分に嘘は吐けないタイプなのだろう。スパイとして情報を売る可能性もあるが、忠実に言われた事だけをこなせば多額の報酬を払うならば、ちゃんと従うのではないだろうか? そうでなければキーエル家の人間が紹介する筈はないからだ。

この三人が終わったことで質問会も終わりかと思うが、四人目がおずおずと手を挙げる。

「あ、あの。すみません! 僕も良いですか?!」
「ちゃんとした質問なら構わない。ゴーレムに関する研究論は後でな」
「ハハハ! お嬢ちゃん、さっそく言われてやがんぞ!」
「もー! 僕は男です! 魔術師なのは確かですけどね!」
 四人目は同業者というか魔術師だった。
華奢と言うほど細越ではないが、傭兵たちに交じって動くには随分と小さい。もちろん魔術師だから筋肉は要らないので、ガブリールの様な体格の方が珍しいとは言える。おそらくは俺たちの様に研究テーマがマイナーなのか、ポッと出だから芽が出るまで学院に残れなかったとか言うタイプだろう。

ただ来歴に想像は出来ても、この段階で何を聞きたいかまでは予想がつかなかった。

「もし、滅びた国の遺跡とかあったら探しても良いですか?」
「次回の探索と言うなら問題ないぞ。もちろん沿岸にあって拠点にするのに都合が良い様な場所にある……、しかも壊れている建物なら話は別だ。ただ、その場合でも一度戻って、報告だけはしてくれ。隠れ潜んだ特殊な魔物やらギルマンの群れに囲まれて全滅。何時まで経っても音沙汰なしってのが一番困る」
 いかにも研究熱心な魔術師というので苦笑した。
冒険者と言うイメージにありがちな遺跡探索というのは、やはり魔術師もやるからだ。知見というものは技術にしても魔術にしても隠すモノだし、そういうのを期待する気持ちも判る。そもそも遺跡探索ってのは海洋探索と並んでロマンだしな。

だが、それでも物には順序というものがある。優先順位を越えられたら困るのだ。

「ありがとうございます! 頑張って……」
「頑張って探すのは土地の方な。本当に在ったら報告書を先に挙げて、別のプランを立てるんだ。お前さんが主任と言う事にしても良いし、このチームを優先すると断言しても良い。だが、さっきも言ったように『この位置ならついでに出来る』と思って寄り道されるのが一番困るんだ。砦跡くらいならまだ良いが、本格的な遺跡だと何が潜んでるか判らないからな」
 この魔術師に真面目に答える義理はない。
だが、冒険によって遺跡が見つかった場合に、どうするかの話にしまった以上はちゃんと明示すべきだ。杓子定規に『駄目なものはどう言っても駄目!』というのは絶対に通じないし、同時に『じゃあ好きにしたら良いよ』と言ってもいけないのだ。

だからこそ、筋道をはっきりさせておく。

「別に遺跡が見つかるという情報があるわけでも無し、今はそこまで考えないでも良いでしょう。そもそもこの辺りに国があったなんて聞いた事もありませんしね」
「追加報酬を出しても良いから無事に戻って来いってのも本当だけどな」
 こうして冒険者たちを雇い、海洋探索を始めることにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結済】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

処理中です...