魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

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第八章

『航海の準備』

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 別荘地に持ち込んだ材料で三胴船をでっちあげた。
まずはお試しで、筏で得た経験を船の形でフィードバックするための存在だ。中央の船を母艦として水車を取付け、外の二艘はあくまで水車を攻撃や横波から守るための楯艦であり、積載量を増やしても安定させる為の存在とした。これは何かの拍子に外側が壊された時、切り離しても動けるようにするためだ。

その上で、水車を隠すための覆いを前面と上に取り付ける。
これでパッと見には何をやっているかは分からないし、矢で撃たれた程度では壊されないだろう。

「ひとまず完成しましたね。随分と奇妙ですが」
「試験艦トリグラフ。見たまんまだけど検証用だからいずれはもっと改良する。ひとまずはこの船で自在に動けるかどうかを試し、次に帆を張るにはどうするべきかを探る感じだな」
 当たり前だが最初から上手く行くとは思っていない。
筏で大丈夫だったから動くのは動くだろうが、おそらく不具合が見つかって作り直す羽目になるだろう。そこから帆であったり水車の強化であったり、舵などのこの時代には存在しない技術を追求することになるだろう。

なお舵と舵輪はまだ原理が判るが、スクリューはさっぱりだ。

「そこまでやるならオールを漕ぐ専用のゴーレムを作った方が早くありませんか? ゴーレムの力なら凄い速さで進むと思いますけど」
「間違いなく積載量をゴーレムが取るぞ。その点、水車は外付けだからな」
 オールを漕ぐゴーレムは間違いなく手っ取り早い。
人間の構造をそのまま使えるので、実際に水夫がオールを漕ぐ姿を参照すれば割りと速い段階で作れるだろう。そしてセシリアが言うように、とても早く動くに違いあるまい。

ただし、それを成し遂げるには多くの作業用ゴーレムが必要で、それだけでかなりの部分を使ってしまう。間違いなく、甲板にある武装と水兵だけで戦う船になってしまうはずだ。

「確かに戦わないなら積み荷の方が重要ですか。……そういえば師匠って戦争したがりませんよね?」
「あんなのを好きな方が変ってる……ていうか俺の得意分野じゃないよ」
 セシリアが今更のように前提条件を思い出すが、判らないでもない。
ゴーレムの力強さを見たら戦争に使えそうに見えるし、個人戦闘では上がいるにしても、アダマンティンを量産すれば騎士団が幾つあっても何とか出来そうな気がする。実際には強力な攻撃呪文でゴーレムの方が蹴散らさてしまう訳だが、そういうのは判らないしな。

ただ、俺の得た能力はゴーレム創造魔法であり、その時点で率先して戦う選択肢は無かったんだけどな。

「塩田で塩を作って金を稼ぎ、今度は綿花を採取してついでに油を搾って、そのカスは肥料にする。そのための動力にゴーレムを使う。そしてその金で国を良くして、戦う前に勝負をつけるって方が俺は好きなんだ」
「言いたいことは判ります。発想が商人や豪農寄りだと思いますけど」
「なかなかに言うようになったなセシリア」
「仕込んだのは師匠でしょうに」
 そんな他愛のないやり取りをしながら『次』の事を考える。
冒険者ギルドは発足したが、今の所は傭兵団の顔継を行う場所が一か所増えた程度だ。気の利く傭兵を登録して置いて、護衛やら調査依頼などで実績を稼ぐ。そうやって傭兵団の規模を縮小しつつ、戦争を考慮しない新しい傭兵組織くらいのイメージから始めていた。

もちろん当面は彼らも元の傭兵団と二足の草鞋を履いており、むしろ俺の依頼で新形式の傭兵団を試しているくらいなのだろう。

「これの扱い方に慣れたら冒険者を呼ぶかな」
「この村が見えない位置か、下に砂が見えない位置まで移動を目標にする」
「次は陸伝いに一日・二日という行程を繰り返す。これらをまとめた最終目標としては、次の拠点となる家屋を立てられる場所の発見だろう。沖合に関しては直ぐに戻って来られる位置に島がない限りは止めておこう。島に上陸できる場合でも情報を持ち帰る為に帰還することが絶対条件だ」
 口に出して説明しながら木の板に書いてまとめていく。
考えた順番になるのでどうしても近場の目標から書いてしまうが、資料として渡す時は一番上に見出しとして判り易く最終目標を書くべきだろう。別荘地から出発して、次の上陸ポイントを見つけられればそこに新しい拠点を作れる。そうすればそこに家を建てて休むことも出来るし、ルサールカを完成させるために、ガブリールの奴が作っているマジックアイテムを持ち込んで組み立てることができる筈だ。

そうなれば水中から支援することで、深い場所に移動することも出来る。

「そうですね。海の魔物が恐ろしいですし沖合は止めた方が良いかと」
「今の所はゴルビーの直ぐ東がどうなっているか知りたいだけだしな。あとは前に言った水中用ゴーレムの試験が進んでないんで、それを組み立てる場所が欲しい。土地に関しては当面、それほど意欲はない。都合よく肥沃な土地があるとも思えないし、守る者だけが増えて面倒なだけだ」
 結局のところ、俺達は国の外で何が起きているか判らない。
別荘の海の東が断崖があるものの先の方には陸地があるのが見えるし、そこは勢力下にある国では『まだ』無かったはずだ。もちろん彼らが探検して居れば話は別だし、知られて居るよりも昔は広かった場合などもあるので一概には言えない。

他の方面は他の貴族に頑張ってもらうとして、海の向こうがどうなっているくらいは確かめたかったのだ。魔物が居るなら魔物が居るなりに、居ないなら居ないなりに何とでもできるからな。

「その事を踏まえるとこのトリグラフには何を付けるべきかな?」
「まずは中央に一枚の帆だけにして、左右の帆は慣れたらにしようか」
「後は武装にアーバレストくらいかな……こいつもゴーレムにして三つ同時に放たせるか……いや、今はそこまでは要らないし貨物の方が重要だな。食料は出来るだけ積みたいし、次に拠点を建てる時は筏を引っ張って行くにせよ、やはり食い物がないと探索隊も困るだろう」
 正直な話、呪文が使える冒険者が居たらそっちの方が早かったりする。
風邪を操れるなら帆に直接風を当ててもらえば早く移動できるし、武器もアーバレストを沢山付けるよりも呪文の方が威力がある。もちろん銛を撃ち込むような巨大なアーバレストでも作るなら別だが。そこまでやっても海の中に魔物が居る場合、ロクな対応が出来ない可能性がある。

やはり攻撃は『こんな武装があったら探索が楽になる』と判ってからでも良いだろう。現時点では冒険者の数を増やし、そのために食料を増やした方が建設的なのだ。

「筏と言えば今ある筏は連れて行かせないんですか?」
「イザと言う時に迎えに行く移動手段が必要だろう? 巨大な魚は居る様な沖合には行かないとしても、ギルマンの集落が近くにある可能性もある。最悪の場合、援軍を派遣するなり、座礁した船の代わりに救助に向かう必要がある。そのくらいのサポートを用意して初めて、命を懸けて探って来いと言えると思うんだ。陸地ならともかく海の上だからな」
 最初は臆病なくらいで、情報だけを探して来る。
特に重要なのが拠点の場所だが、そういった情報を得る為には派遣する冒険者の命が必須なのだ。そして雑多な傭兵はともかく、精鋭と呼べ気が利いていると言われた者たちはプロだし、おいそれと使い捨てて良い相手じゃない。もちろん俺がそういうことを好まないのもあるが、スタイルとして人間は貴重だから安全に行く……くらいの方が彼らも話に乗ってくれるだろう。

大航海時代じゃないが、ロマンチストとロクデナシの集団で、海賊と対して変わらない連中を派遣する訳にもいかないしな。
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