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第八章
『水際相互協定の発行』
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あれから双方が持ち帰った内容が煮詰まって来た。
陛下からは限定付きでゴーレムの輸出も可能としており、キーエル家経由で水棲種族の情報がイル・カナンから伝わったことも大きい。
また、この話をキッカケにイル・カナンとの話し合いが進んだことも影響して居るかもしれない。
「あの筏が欲しい?」
「沖で魚を採るのに最適ネ。陸生種族の船、我々には使い難いヨ」
意外な事に水棲種族が欲しがったのは検証用のゴーレム筏だ。
自動で航行する機能が付いている以外は大したことが無いと思うのだが、あくまでソレは人間から見ての視点と言う事だろうか? ただ感覚としては漁師が魚を運ぶ魚籠と使い道はあまり変わりない様に見えたが、彼らが良いというならそれで良いのだろう。
陛下から釘を刺されたのは、他国に漏れるとマズイ軍事的な物だしな。
「それで暫くは魚は無償で良いヨ。それ以上は代価次第ネ」
「ではその流れで行こう。こっちも難民が流入して大変だから助かる」
相手の言い分を唯々諾々と通す部分には理由を付けておく。
最近増えた難民と食糧難対策と言う事にして、彼らを集団農業に組み込むまでの時間を稼ぐ。そして水棲種族に必要上の情報をしているのではないと内外にアピールしつつ、引くと事と引かない所を分けておいた。
具体的に言うと、作業用ゴーレムの輸出はしないということだ。
「あの大きいのも欲しいネ。物運ぶ時楽ヨ。穴を掘る、あれも凄かったネ」
「一定期間の貸し出しは問題ないが、他の国が警戒すると困るから勘弁してくれ。同じ国……氏族の者たちならともかく、他の所まで同じように思ってくれるとは思えないからな」
予定通りに中継拠点と港候補地を選定し工事を始めた。
中継拠点はあくまで食料置き場だが、水棲種族が協力してくれるなら特に遠慮する必要はない。一気に南下して明らかに他国の領土では無い場所を選び、そこをゴルビー地方の南限として領有化して置いた。その時に作業用ゴーレムを輸送したのだが、木製ともあって浮かべて移動できる。岩を抱かせれば沈ませることも出来るし、穴を掘った荷物持ちと大活躍だったらしい。
ひとまず穴を掘ったり仲間に見せるために貸し出すという事にしたのは、やはりイル・カナンあたりに水棲種族経由で攻めるなどとは思われたくないからだ。
「そういえば穴掘る。真似してヨロシ?」
「今までやらなかっただけだろ? それを止めることはできんさ。ただ俺達にそそのかされたとか言われても困るし、良し悪しを試す前だから、真似したせいで大変なことになったと言われても困るけどな」
意外な事に、水棲種族は知的財産に敏感だった。
プールを作る程度の事に驚きだが、考えてみれば連中はワールドワイドなのだ。部族どころか氏族単位で共有するだろうし、この後で世界中に広まってもおかしくはない。そういうことを後から文句付けられても困るから念の為に尋ねているのだろう。だからこそ別に代価も提示していないのだろうしな。
それはともかく、今回の本題に入ろうか。
「この周囲の探索に関して、お互いに協力し合うって事で良いかな? 海に関して受け持ってくれるなら、上陸してからはこっちが受け持つよ。そして魔王軍が居た場合はお互いに協力するって事で」
「それで問題ないネ」
俺は早々に探索を打ち切り、最低限の把握に切り替えることにした。
南部に一つ港を作れればそれで十分だし、大型船や水中用ゴーレムであるルサールカを完成させてから改めて探索に乗り出しても良いのだ。余裕がない現状で欲張るべきではないし、余裕があるならば水棲種族から様々な産物を手に入れてから、中間貿易によって利益を確保してからにすべきだろう。
よって今回は近隣の浜周辺で探索し、そこに何があるのか、魔物が居れば討伐と言うのを繰り返すことになる。
「確認するが、そちらの種族を追い詰めている魔物対策で協力は必要か?」
「難しいね。一番困るのは巨大な魚ヨ。鯨より大きくて島ほどアルネ。それが海の中、我々でもどうしようもないアル。他の魔物は苦戦したとしても、そう困らないネ」
今回、我々が出逢った原因である海の魔物対策は面倒そうだった。
ひたすら巨大な魚が移動し続けるとか、どうやって対処したら良いのか判らない。せめて陸なら攻撃魔法を使うとかアーバレストで……そう思った時、俺は三胴船に搭載した銛を矢とするアーバレストを思い出した。あれを流用するか、四つ足ゴーレム用に巨大化させるとして、もう一工夫したらどうだろうか?
例えば紐を括りつけ、巨大な岩に括りつけておくとかだ。
「鯖純視。俺たちの船を見たよな? あれに搭載している石弓をもっと大きくしたらどうだ? 何処かの半島添いにおびき寄せて、重りの大岩と鎖付きで何発かを一斉に放つんだ」
「それなら海の中沈めるネ。銛に海の中を速やかに進む呪文を掛けるヨ」
流石に半島までおびき寄せたら警戒する知能はあるらしい。
あるいは単純に巨大過ぎて半島付近まで移動できないだけかもしれないが、ひとまず作戦案としては一考の余地があるらしい。ならばと俺は試作品のまま完成させてない四つ足ゴーレム用のアーバレストを取り出しに向かった。
サイズの問題でゴーレムではないと抱えられないが、水棲人類は大柄なので二人くらいで持てるだろう。
「こいつを海の中なら引く事が出来るか? なら専用の銛と鎖を作ってみる。ただし、試しに使う程じゃないぞ。命を大事にしてくれ。守りたい場所に設置しておいて、来てしまったら使ってみる感じかな」
「毒を流すよりも有効そう思えるヨ。効いたら幾つか御願いするネ」
どうもこちらと向こうで命の勘定が違うらしい。
鯖巡視は決死隊に持たせて突っ込ませるような雰囲気があった。あるいは故郷を逃げ出すような状況なのに、一人・二人の命を躊躇う様な状況ではないのかもしれない。ただ、どうせ命を懸けるならばもっと大々的にやるべきだとは思うのだが……。
いや、その辺りの作戦案と倫理に関して、こちらが口出す問題では無いだろう。
「しかし毒か……。そいつの生態が判れば毒よりも別の薬の方が有害だったりするんだろうけどな。監視はおいているんだよな?」
「勿論ネ。それでもあまり良く判ってないの事ヨ」
こうして巨大魚に対する協力案を提示しつつ、俺達は探索に対する協定を結んだ。緩やかに始めている交易ともども、一応はこちらの利益にもなってくれるだろう。
あれから双方が持ち帰った内容が煮詰まって来た。
陛下からは限定付きでゴーレムの輸出も可能としており、キーエル家経由で水棲種族の情報がイル・カナンから伝わったことも大きい。
また、この話をキッカケにイル・カナンとの話し合いが進んだことも影響して居るかもしれない。
「あの筏が欲しい?」
「沖で魚を採るのに最適ネ。陸生種族の船、我々には使い難いヨ」
意外な事に水棲種族が欲しがったのは検証用のゴーレム筏だ。
自動で航行する機能が付いている以外は大したことが無いと思うのだが、あくまでソレは人間から見ての視点と言う事だろうか? ただ感覚としては漁師が魚を運ぶ魚籠と使い道はあまり変わりない様に見えたが、彼らが良いというならそれで良いのだろう。
陛下から釘を刺されたのは、他国に漏れるとマズイ軍事的な物だしな。
「それで暫くは魚は無償で良いヨ。それ以上は代価次第ネ」
「ではその流れで行こう。こっちも難民が流入して大変だから助かる」
相手の言い分を唯々諾々と通す部分には理由を付けておく。
最近増えた難民と食糧難対策と言う事にして、彼らを集団農業に組み込むまでの時間を稼ぐ。そして水棲種族に必要上の情報をしているのではないと内外にアピールしつつ、引くと事と引かない所を分けておいた。
具体的に言うと、作業用ゴーレムの輸出はしないということだ。
「あの大きいのも欲しいネ。物運ぶ時楽ヨ。穴を掘る、あれも凄かったネ」
「一定期間の貸し出しは問題ないが、他の国が警戒すると困るから勘弁してくれ。同じ国……氏族の者たちならともかく、他の所まで同じように思ってくれるとは思えないからな」
予定通りに中継拠点と港候補地を選定し工事を始めた。
中継拠点はあくまで食料置き場だが、水棲種族が協力してくれるなら特に遠慮する必要はない。一気に南下して明らかに他国の領土では無い場所を選び、そこをゴルビー地方の南限として領有化して置いた。その時に作業用ゴーレムを輸送したのだが、木製ともあって浮かべて移動できる。岩を抱かせれば沈ませることも出来るし、穴を掘った荷物持ちと大活躍だったらしい。
ひとまず穴を掘ったり仲間に見せるために貸し出すという事にしたのは、やはりイル・カナンあたりに水棲種族経由で攻めるなどとは思われたくないからだ。
「そういえば穴掘る。真似してヨロシ?」
「今までやらなかっただけだろ? それを止めることはできんさ。ただ俺達にそそのかされたとか言われても困るし、良し悪しを試す前だから、真似したせいで大変なことになったと言われても困るけどな」
意外な事に、水棲種族は知的財産に敏感だった。
プールを作る程度の事に驚きだが、考えてみれば連中はワールドワイドなのだ。部族どころか氏族単位で共有するだろうし、この後で世界中に広まってもおかしくはない。そういうことを後から文句付けられても困るから念の為に尋ねているのだろう。だからこそ別に代価も提示していないのだろうしな。
それはともかく、今回の本題に入ろうか。
「この周囲の探索に関して、お互いに協力し合うって事で良いかな? 海に関して受け持ってくれるなら、上陸してからはこっちが受け持つよ。そして魔王軍が居た場合はお互いに協力するって事で」
「それで問題ないネ」
俺は早々に探索を打ち切り、最低限の把握に切り替えることにした。
南部に一つ港を作れればそれで十分だし、大型船や水中用ゴーレムであるルサールカを完成させてから改めて探索に乗り出しても良いのだ。余裕がない現状で欲張るべきではないし、余裕があるならば水棲種族から様々な産物を手に入れてから、中間貿易によって利益を確保してからにすべきだろう。
よって今回は近隣の浜周辺で探索し、そこに何があるのか、魔物が居れば討伐と言うのを繰り返すことになる。
「確認するが、そちらの種族を追い詰めている魔物対策で協力は必要か?」
「難しいね。一番困るのは巨大な魚ヨ。鯨より大きくて島ほどアルネ。それが海の中、我々でもどうしようもないアル。他の魔物は苦戦したとしても、そう困らないネ」
今回、我々が出逢った原因である海の魔物対策は面倒そうだった。
ひたすら巨大な魚が移動し続けるとか、どうやって対処したら良いのか判らない。せめて陸なら攻撃魔法を使うとかアーバレストで……そう思った時、俺は三胴船に搭載した銛を矢とするアーバレストを思い出した。あれを流用するか、四つ足ゴーレム用に巨大化させるとして、もう一工夫したらどうだろうか?
例えば紐を括りつけ、巨大な岩に括りつけておくとかだ。
「鯖純視。俺たちの船を見たよな? あれに搭載している石弓をもっと大きくしたらどうだ? 何処かの半島添いにおびき寄せて、重りの大岩と鎖付きで何発かを一斉に放つんだ」
「それなら海の中沈めるネ。銛に海の中を速やかに進む呪文を掛けるヨ」
流石に半島までおびき寄せたら警戒する知能はあるらしい。
あるいは単純に巨大過ぎて半島付近まで移動できないだけかもしれないが、ひとまず作戦案としては一考の余地があるらしい。ならばと俺は試作品のまま完成させてない四つ足ゴーレム用のアーバレストを取り出しに向かった。
サイズの問題でゴーレムではないと抱えられないが、水棲人類は大柄なので二人くらいで持てるだろう。
「こいつを海の中なら引く事が出来るか? なら専用の銛と鎖を作ってみる。ただし、試しに使う程じゃないぞ。命を大事にしてくれ。守りたい場所に設置しておいて、来てしまったら使ってみる感じかな」
「毒を流すよりも有効そう思えるヨ。効いたら幾つか御願いするネ」
どうもこちらと向こうで命の勘定が違うらしい。
鯖巡視は決死隊に持たせて突っ込ませるような雰囲気があった。あるいは故郷を逃げ出すような状況なのに、一人・二人の命を躊躇う様な状況ではないのかもしれない。ただ、どうせ命を懸けるならばもっと大々的にやるべきだとは思うのだが……。
いや、その辺りの作戦案と倫理に関して、こちらが口出す問題では無いだろう。
「しかし毒か……。そいつの生態が判れば毒よりも別の薬の方が有害だったりするんだろうけどな。監視はおいているんだよな?」
「勿論ネ。それでもあまり良く判ってないの事ヨ」
こうして巨大魚に対する協力案を提示しつつ、俺達は探索に対する協定を結んだ。緩やかに始めている交易ともども、一応はこちらの利益にもなってくれるだろう。
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