魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

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第八章

『外交の合間に』

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 海の方は相変わらずよろしくはない。
水棲種族と組んで近隣の浜や島を探索し、魔物が居れば狩るという流れを作れてはいた。だが、特にこれと言った産物も無い。火山も特にはなく、開拓に良さそうな島があっても遊牧民の領域である北側の土地から見れる場所だった。

ちなみに大型アーバレストも微妙だったらしい。
今までの中で一番通用したが、簡単に鎖を引き千切られたとか。あれで倒すには何百本と刺す必要があり、根本から考え方を変えたが良いだろうとのこと。

「師匠。イル・カナンとはそんなに話が進んだのですか?」
「ああ。まずは彼の国を救援し、国がまともなった所でイラ・カナンを共同で解放する為に向かった方が良いのではないかと言う流れなんだとよ」
 水棲種族の件でキーエル家経由でイル・カナンへ問い合わせをした。
こちらの海辺に現われたのだが、本当に交渉が通じる相手なのか、表面的に装っているだけなのかを尋ねたのだ。伝統的に海へ面した国である向こうは、水棲種族とは付き合いがあるらしく、交渉で決めたことははちゃんと守られると確認できた。

それは良い事なのだが、不思議な事にイル・カナンとの話し合いが大きく進んだのだ。

「この間まで魔物を放流していましたよね。アレを引き起こす原因になっている事を対処しに行くというわけです? 確かにそこで増えているならドンドンやって来るだけですしね」
「そんな感じだな。どうも大嵐や海の魔物の影響あるみたいだ」
「なるほど」
 ここでも水棲種族がらみの話が出て来た。
異常気象で嵐が頻繁に起こる様になり、南部で魔物の移動が起きたらしい。これに伴って海の魔物も移動し、様々な魔物の生息域が変ったのだとか。その結果、今まで討伐していなかったイラ・カナン地方の魔物が北上したり、海から上陸したりと大事になっていたのだとか。

ようするに放流が無警告で行われたのは、そういった魔物の移動が急に起こった時の事なのだろう。

「それで今回はどんなゴーレムや呪文を用意するんですか?」
「ゴーレムに関してはマイナーチェンジだな。水中で銛を穿てるように試すだけだ。後は探知システムを並べるだけになるんじゃないかな」
 セシリアの質問に順序立てて答えていく。
キーエル家から第一報を聞いただけで、まだ王家がどのように対応するかが確定していない。もちろんソレに合わせていたら悠長に開発なんかできないが、そもそもイル・カナンがどのような国なのかが分からないのだ。海辺にある事が判っているので水中で戦える様にゴーレムを調整しつつ、以前に作った探知システムを用意して安全圏を増やしていくだけになるだろう。

なのでゴーレムに関しては、水中に沈めて銛を持たせ、ちょっとした付属パーツで浮力を調整するくらいしかできない。

「確認するが補助呪文の『拡大』の他には何を覚えた?」
「風系が空気作成、水が冷却です。送風の方が便利なのでしょうけど水の中では空気作成の方が助かるとおっしゃっておられたのと、ゴルビーは暑いですしね」
 セシリアは少しずつ成長し、徐々に導師を目指している。
呪文を強化する補助呪文は幾つかあるが、生産系の付与魔術師を目指すセシリアには、やはり範囲の『拡大』が相性が良い。時間の継続はマジックアイテム化で誰かに魔力の消費を任せれば何とかなるし、どのようなアイテムを得意とするかで『持続』と『維持』のどちらが良いかで変わるので難しいのだ。

そして新に風系を覚えるために初歩呪文の空気作成を覚え、元から伸ばしている水系の為に冷却を覚えたらしい。

「なら丁度良い。早速、ガブリールを呼んでマジックアイテムを作るとしようか。その後は水上歩行を覚えると良いぞ、あれはいろんな場所で使える」
「水中呼吸でなくて……あ、そうか。空気は作れるし水棲種族も居ますしね」
 魔術のレベルは難易度の異なる呪文を使ってお覚えて行くものだ。
風系なら初歩は空気作成か送風であり、それでレベル上げたら次の呪文があるように、水の呪文で冷却を覚えたら次は水上歩行か水中呼吸のどちらかである。自分でも戦うなら水中呼吸が便利かもしれないが、日常生活では殆ど使わない。また、水棲種族の水先案内人が覚えている可能性もあるので、水上歩行の方が便利だろう。

何しろ湖や川などで向こう側に渡れない時というのは結構あるからな。『拡大』があれば数人一度に移動できるし、セシリアの妹であるアンナが遊牧民に輿入れするが、ロープか何かのマジックアイテムにして贈ればちょっとした時に助かるだろう。

「そこまで行けばあと一歩だから、どんな呪文で水系を上げるのが良いかを自分で考えてみろ。そうすれば腕だけではなく考え方としても導師に手が届く」
「はい! 時間がある時に考えてみますね」
 セシリアは愛人であると同時に弟子なので色々指導しておく。
弟子と言うのは師が口にしたことを延々と繰り返すだけではなく、その一方で、自分で『どのように成長するか』『何を研究するか』を判断する者なのだ。今は見習い出し、そもそも覚えられる呪文の幅が少ない。『俺の言うことを聞け』という態を取っているが、その方が迷わないから成長し易いからでもある。

それはそれとして呪文の種類が増えると楽しいよな。

「それで冷却の方は、どんなアイテムを作るんですか?」
「冷却が掛かり続ける大きな箱だな。その箱の中身は常に冷やされるから、色々な食材や物によっては料理を冷凍して保存できる。一応は中身だけだが、熱が伝わり易い銅板を使って外にも影響を及ぼせるようにしておくと、カーテンやら扉で遮断することで氷室の様な部屋全体を冷やすことも可能だ」
 セシリアは人々の役に立つアイテムが作りたいので興味があるのだろう。
小型の方はかなり冷える冷蔵庫であり、銅板で熱伝導させると、部屋自体が緩やかに冷える氷室になるだろう。それはどんな場所でも役に立つし、暑いゴルビーでは救いになるだろう。ユーリ姫は華奢なお姫様……ではなかったので不要かもしれないが、暑いのが苦手な人には十分に生活を良くしてくれるはずだ。

そして冷凍できるようになるという事は、他にもできる事が増えるという事だ。

「そうだ。それに合わせて遊牧民から乳の出る羊や山羊を売ってもらうか。水棲種族経由ならアレも手に入るだろうし、砂糖は確かイル・カナンから輸入できる筈だ」
「砂糖? 薬かお菓子でも作る気ですか?」
「そうだ。とびっきりの、な」
 この辺りで知られて居ない果実でも水棲種族なら知ってる可能性がある。
もちろん遠過ぎると腐ってしまうが、その果実は別に腐るタイプではない。正確には乾燥させて色々やるわけだが、要するに加工販売することで、高額になる輸入品に付加価値を付けようと言うものだ。

もちろんパクリの可能性はあるのだが……俺は面倒な作業をゴーレムにやらせるからな。少量ならともかく、一般人に大量生産をパクられはしないだろう。

「後は牛の乳や鶏の卵の購入も増やしておくか」
「冷却を施した箱があれば取り置きする事が出来る」
「生地は小麦として……評価が低い蕎麦も使ってみるか」
「菓子や興奮剤を自然に食べるために使えばガレット(クレープ)の評価も上がるだろうさ」
 今回の件で、現代の生活にかなり近づけられるだろう。
植物の品種改良やら家畜の肥育などはまだまだ遠いだろうが、故郷の快適さを思い出して泣くような事は無い。後はいかに砂漠の緑化計画を早めるかなのだが……そっちは中々進まないのが現状だ。用水路のお陰で過ごし易くなったとか、涼しい時間帯も増えたとか言われて居るけどな。

次は空中庭園の建設の建設段階を、もう少し進めたいものである。
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