魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

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第九章

『飛行試験型ゴーレム』

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 飛行アイテムの作成も終わり、冒険者たちも遺跡の外縁調査から戻って来た。
遺跡調査が終わればいったん海洋探査の方は終わるので、それぞれの冒険者の希望を出来るだけ聞きつつ、彼らには遺跡の本格調査の準備を行ってもらう事にした。その中でも魔術師のホーセンスから将来の志望の話を聞きながら、飛行型ゴーレムの検証を始める事にする。

ただ、ホーセンスの希望は遺跡探索などのフィールドワークと過去の時代の調査が好みなようなので、学院には招聘もされずゴルビーにも所属しないという中途半端な立ち位置に成りそうである。

「ホーセンス。お前さんが今後にどう動くのかは知らんが、研究に関して言えば『その後』が重要だと忠告しておくぞ。成功に終わろうが失敗しようが、その研究成果で『何をするか』で全てが決まるんだ。この際だが、利益も高尚さも関係ない」
「はあ。何をするか……ですか?」
 冒険者のまま何かしたいのか、それとも研究したいのかは分からない。
だが、関わった以上は説明を果たす必要があるので解説はしよう。もちろんまた探索任務を思いつけば雇用するだろうし、飛行アイテムを始めとして風系のマジックアイテムを作る時にも呼びそうなので、表面的には友好関係を保っておきたいのもある。

縁のある人物が鳴かず飛ばずで野垂れ死ぬとか気分が悪いしな。

「今回受けた外部調査で言えば、ダメだった場合は原因は何なのか、どうやったら問題を排除できるかを考えるんだ。特定さえできれば対処するのは難しくない。そしてこれから行う遺跡探索に関しても、失敗しそうでも次に成功するための情報を集められるなら決して失敗じゃない。怪我や病なら薬や治療師を呼べな良いし、魔族を始めとした亜人なら討伐隊が必要だと申請すれば良い。アッサリ終わった場合でも、次の調査へ参考になるデータを残すとかだな」
「ああ、それなら判ります。子供の使いじゃないって事ですね」
 いまいち判ってない気もするが、『レポートとは他人が読む物』なのだ。
研究者に限らず、『このレポートからはどれだけ有益な情報が詰まっているか』を参考にする為に読む物である。仮に『バルガス河沿岸で見かけられた亜人』という冒険者の報告レポートであれば、植生調査や水質調査に赴く者が自分の専門外であろうとも読むだろう。どういう所が危険であるとか、水棲種族の様に話が通じるかどうかは大きな影響を与えるだろう。

翻って今回の遺跡調査ならば、学術的に貴重な物はあったのかとか、他の遺跡に関する凡例になるのかなどが注目されるだろう。もちろん護衛を担当する者ならば、必要な食料やらポーションに、護衛の兵士と調査期間から必要な費用などを逆算するだろう。

「……ええと。今回の飛行型ゴーレムの実験に僕が付き合わされてるのは?」
「そうだ。理解していると思うが、『成果を活かす事』に関する経験の為だな。もちろん、飛行型ゴーレムが暴走して、視界の外に飛んでいった場合は、探しに行く者の人数は多いからでもある。もちろん付き合わせる費用は出すが、断って買い物の為に往復して貰っても構わんぞ」
 前に少しばかり面倒を見てやると言ったこともある。
もしゴルビーに所属するならば、色々と研究職の魔術師に必要な事を叩き込み、学院に呼んでもらえるような段階まで仕上げるつもりだった。もちろん留学予算もだ好きだったのだが……まあ、本人にその気がないなら今回で切りだな。もし勘違いして『俺に才能があるから縁を残しておきたいんだ』と思うならば好きにして欲しい。

飛行呪文に限らず風系は使える時には非常に有効なので、マジックアイテム化の為に縁が残したいのは嘘ではない(本人ではなく呪文というあたりが微妙ではあるが)

「ひとまず、今回の飛行試験型ゴーレムは未完成なのが判ってる」
「呪文をゴーレムに組み込むと、全力稼働状態に固定されるからだ」
「この対処手段は以前に考案して成功しているので、今回は飛行力の確認」
「まずは指示した通りに飛べるのか、それとも全力で飛び立って魔力を使い果たして止まるなり、俺達が『止まれ』と言って停止するまで動くのかを検証する。その次は速度実験に高度実験に精密行動実験を『壊れない程度』に行って、最後に最大稼働時間を試してゴーレムがゴーレムで無くなるまで動かしたら終了だな。戦闘力も有用性も最初から求めていない」
 俺は言いながら、様々な線と数値を書いて行った。
最初に一本の線を描き、その脇に速度・高度・精密性・時間と記載して行く。一本線の下に高速で一本描き、縦側に一本描き、綺麗に一本描き、最後に非常に長い線を描いて行った。例え失敗に終わると判っている暴走ゴーレムでも、上手く扱えばデータが採れるので、その事が重要になる。以前に作った送風のゴーレムとか、それをアレンジした鉄槌とかその成果を活かしてる感じだな。

ただ、線と文字に亜kンしては理解しつつも、最後に付け加えた言葉にホーセンスは首を傾げた。

「戦闘力は期待しないんですか? せっかくのゴーレムなのに」
「制御できない力は信用もできないからな。逆に最大稼働時間と速度が判れば、使い道は幾らでも思いつけるんだ。ちゃんと指示した所まで飛べるなら、山の上に荷物を届ける成り、一緒に行って高台から見下ろすとか出来る。逆に命令を受ける前に吹っ飛んでいくなら、『飛び始めて十秒だったら止まれ』と指示するところから始める必要があるし、作業なんかさせられんよ。逆に言えば、暴走しっぱなしだろうと、適正にデータを入手すれば何とでもなるという事だ。だから、研究は『その後』が重要な訳だ」
 ゴルビー男爵とゴーレムといえば、誰だって勇者軍を思い出す。
だが、勇者軍でも決して主力では無かった。加護がある騎士が技を磨いた方が強いし、剣聖や賢者たちの方がよほど戦力になっていた。そういう意味でゴーレムとは作業用であり、兵士の代わりに死ぬための補助戦力なのだ。だから俺は何時だって『どんな作業が出来るか』を基準に考える。

そういう差もあるのだろうが……話していてホーセンスが全く俺の話に注目していないのが気になった。『偉い人間の話だから仕方なく頷いている』という風が出ていて将来が心配になる。

「だから今回の実験が順調で、遺跡でも同行はさせない。空飛ぶ絨毯は貸し出すから、遺跡を上から抑えた方が良い場合は、遠慮なく使え。もちろんお前さんは個別に呪文で飛ぶんだぞ? そしたら大抵の亜人は高台から一方的に攻撃できる」
「あ!? それもそうですね! ご意見ありがとうございます!」
 こいつ大丈夫かなーと思った瞬間である。
遺跡探索に心うぁせて貪欲に情報を集めている風には見えない。傭兵として金を稼いだ段階で遺跡を見に行くことがあったとか、故郷に遺跡が存在したdからとりあえず……という志望理由にしか見えないのだ。今期あ、空飛ぶ絨毯は飛行呪文をマジックアイテム化したうちの一つだが、それまでの段階で、空を飛んで調査する可能性はあったはずだろう。

それなのに呪文を調査に使うという立ち回りが想像できないのは微妙な気がする。

「まあ、その辺は追々慣れればいいさ。じゃあ、稼働試験をするから、飛行呪文を掛けてくれ。俺も最初に作った方のアイテムを使う。止める時の言葉は、まんま『止まれ』だから、暴走した場合は探しに行って声を掛けること」
「了解しました。直ぐに使いますね」
 と言う訳で、さっそく実験を始めることにした。
飛行試験型ゴーレムを倉庫から連れ出し、邪魔する者がない場所まで移動させる。ここからなら飛んでいったとしても、表向きの塩田の辺りで止まるだろう。いちおうは補助呪文の『持続』も掘り込んでいるのだが、最初に送風呪文で烈風を吹かせ続けた時の経験から問題ないと判断した。高く飛ぶ場合は海に向かわせた方が安全なのだが、海の場合は沖にながされたり沈んだりする可能性があるからな。

ただ……結果的に、俺の心配は杞憂だったりする。

「では、『翔べ!』飛行試験型ゴーレム! って……嘘だろ?」
「ええと……なんだか、モッサリしてますね。ちゃんと飛んでるだけ偉いのかな?」
 なんというか、ノロノロと飛行したという表現が正しいのではないだろうか?
コマンドに従って翼が変形するところまでは上手く行った。だが、浮かんでいるというよりは移動速度を感じられ、だが、高速で飛んでいるという程に素早くも無い速度だ。最初から作業用であったのか? という様な仕上がり具合である。なんというか、あまりの杞憂振りにガックリくるというか、気合を削がれてへたり込みたくなる。

だが、致命的な速度で屋敷や山にぶつかって壊れるよりは良かったのでは無いだろうか?

「何と言うか、これじゃあ戦闘とか無理ですね。作業用で良かった……かも」
「戦闘に関しては使いようがある。さっき言った上空からの射撃とかな。高度実験が重要になりそうだが……。一度、『止まれ』。稼働止めて、魔力を補充させるとして……。『可能な限り早く飛べ』という命令を仕込むか悩むな。だが……そう言えば飛行呪文って、誰が使っても似たような速度と高度だったよなあ」
 次のコマンドを指示するとあっさりと降下して翼を折り畳んだ。
体重100kgの人間が鎧を着ても、対して速度は変わらない。だが、流石に4mもの巨体が飛ぶことを想定してはいない筈だ。ゆえに流石に、体格と重量が飛躍的に拡大されたことで飛行速度が劣化したのかもしれない。あるいは暴走しても速度方面では増えなかったという可能性もあり得る。最初に飛行呪文が作った人の想定で、500kgまでなら時速50kmぐらい数トンなら時速30kmとか段階を作った? だとしたら、この呪文は飛行ではなく、浮遊と空中移動を組み合わせた呪文だった事になる。改良すれば高速飛行の呪文も作れるだろうが……。

そう考えていく中で、俺は捨拾選択をして思考をスマートに切り替えることにした。

「速度実験と精密稼働実験は中止。後は高度を上げる時間がどのくらい掛かるかの実験と、最大稼働実験を調べて終わりにしよう。山の上まで飛ぶまでに掛かる時間が判れば、作業用だろうが戦争の補助だろうが役に立つ。ただし、最大稼働時間が短いならば、山の上に登るまでに止まることになるから、砦の中の作業用に固定されるだろうな」
「そう……ですね。そうか、こういう風にデータを残すんですね」
 あまりにも遅いので、ワイバーンやグリフォンと追いかけっことかは無理だ。
だが、奇襲さえできれば急降下爆撃は出来そうなので、案外、ドラゴンには通用しそうな気がした。もちろん、作業用ゴーレムのパワーでは鱗を貫通出来ないので、使い潰すつもりで高空から落下させるくらいの必要があるだろうけれど。

もし、長時間飛べるならば……空飛ぶゴーレムのロマンを追い掛けるよりは、飛行船とか建造する方が早いかもな。

ともあれ、今回の稼働実験に関しては微妙な方向性ながらも成功裏に終わったのである。
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