魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

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第九章

『中間拠点と海のバザール』

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 冒険者に貸し出して居た三胴船が帰還して来た。
彼らが遺跡に挑むことになったので、しばらくはフリーということだ。そう言う訳で俺は中継地点に置いてあるルサールカの材料の元へ向かった。

冒険用の荷物も満載なため、カーペット型の魔法陣と飛行用のマジックアイテムのみを携え、さっさとゴーレム化しようと向かったのだが……。

「半島部の中心とは聞いていたが、面白い地形だな」
「三日月のこっち側が浅瀬、向こう側が深みですね。砦を作るなら根元なのでしょうが、あくまで中間拠点であり、大型船を停泊させるスペースも必要との事でこうなりました」
 案内してくれたのはリーダー格のフョードルだ。
隠す気も無いのだろうが知識的にも視点的にもやはり騎士にしか見えない。拠点に向かってみると確かに浅瀬が広がっており、時折に、不自然なサイズの大岩が見受けられた。

何がおかしいかと言って、川か何かで運ばれたならばもっと岩が削られて居るだろう。そして、ある程度は近い場所に固まっている筈なのだ。

「……あの岩は水棲種族が持って来たのか?」
「ええ。拠点を作る際と、島魚の魔がこちらに来るという話が出た時にゴーレムを貸しました。その時に浅瀬を守るため、船以上のサイズでは通り難くしたそうです。人間なら杭を立てるのですが、彼らの場合は動かし易い岩を持って来たようですね」
 拠点作成は人数の問題で、巨大な魚の魔に関しては援助として。
確かにゴーレムの貸し出しを許可した覚えはあるが、ガッツリ彼ら水棲種族の使い易いように整備しているとは思っても見なかった。拠点時作成はともかく、巨大な魔に対抗する時は戦力として使っているか、精々プールみたいな避難所を作る為にやっていると思ったのだが。

あるいは、そう言う部分は不眠不休でやってしまい、残った時間でこちらが止める前に色々と整備したという所だろうか?

「問題でしたか?」
「まあ、するなって言ったわけでもないし、要塞化するならお前さんが言ったように杭を打つ。それに近い事をするというなら俺も止めはしないかな。言ったこと以外はするなと言う気はないし、するとしても便利に使いたいなら代価を求めるだろうが、その辺の機微をお前さんたちに求める方がおかしいから、問題はないよ」
 フョードルは騎士だとしても、一部隊を率いる程度だろう。
俺も貴族になる前はただの傭兵みたいなものだったが、それでも勇者軍を運営していた時に地方貴族相手に苦労はしている。そういった経験も無いのに野外行動が得意な程度で派遣されて、異種族相手に交渉まで思いつけと言う方が無理筋だろう。なのでこの件を問題視する気はない。

求めるとしたら水棲種族だし、実行したのは非常時なので咎めるのも妙な話だ。次回に似たようなことがあった時に、代価を求めるくらいだろう。

「俺は数日掛けてここでゴーレムを作る予定だが、この辺に遺跡があるんだったか? 空飛んで報告に戻ってくる途中で気が付いたらしいが」
「はい。正確にはもっと南東に予定している港から、ここまでの直線ですね」
 此処がそこそこ整っているのに、途中までなのはもう一つあるからだ。
この中間拠点は山間から伸びた陸地が少しずつ増え、半島部が突き出している……いわば今までの地形が継続した部分と言える。ゴルビー六本目の指と言う感じの位置であり、別荘地に割りと近い事と、片方が浅瀬とあって港らしい港にはあまり向いていない。水棲種族が逃げ込んで来なければ、拠点化するのももっと遅かったかもしれない。なのでもっと南東に位置する広い陸地であり、周囲は深い場所へ港を建設予定であるらしい。

もっとも、海洋探索はいったん打ち切るので、領土になったことを既成事実化しつつ、遠洋航行が可能な大型船を試験するくらいの港になると思うけどな。

「なら気を付けて行ってくると良い。俺としても領地に組み入れる予定の場所に、得体のしれない物があるのは困るからな。ひとまず外周に亜人の痕跡はなかったそうだが、油断はしない方が良い」
「はい。船は建造予定日までには戻って来る筈ですので、お戻りください」
 報告を信じるならば、この辺りに『誰か』の領地はないそうだ。
いわゆる無主の地であり、遺跡を作った誰かさんの末裔が居たとして、そいつの子孫が遺跡の周囲に関する領有を主張されるかもしれない。だが、遺跡がどのくらいの昔に管理が途絶えたかによって、血筋の政党制込みで、領有は怪しくなるだろう。この世の中に滅びたこおっかや、地方領主の類は山ほど居るのだから。

要するに『領地管理の継承性』に関する痕跡があるかないかの確認をする意味でも、遺跡探索は必要な訳だな(貴族は領民を守る義務はないが、領地を管理する義務があるので、管理が絶えていると基本的に領有を強く主張出来ない)。

(不思議なもんだな。打ち切ると決めたのに現地に来るとイメージが変わる)
(詳細な地形を知ったからってのもあるが、この場所を何にしようかと悩む)
(別荘地からここまでロクな土地がないのに、何かに仕えないかと思うんだ)
(クレーンやゴーレムがあれば何かに使えないかと考え始める訳だが……南東の港がなければなあ。あっちがある以上は、こっちを拡充する必要がない。精々が、遺跡に住人が居て何処かの貴族の血筋だとハッキリ証明出来たら……まあ、ここまでにして港の方は諦めるだろうけどな。ただ、今んとこその様子はないんだよなあ)
 遺跡に原住民が居たとして、話が出来る亜人なら交渉が出来る。
文明レベルが成り立っている人間でも同様だし、そのくらいまでなら普通に南東の港も領有するだろう。唯一、そう言った計画を手放すとしたら『誰かの領地である』場合のみで、しいて言うならば危険な病があれば手を出さないくらいだろう。しかし、繰り返している様にそんな痕跡はない。

そんな事を考えてしまうくらいには、この中間拠点を気に入っていた。探検で手に入れた、秘密基地というのもあるだろうか?

「これでホーセンスが逃げ出した王族の末裔で、遺跡が空でも飛べば面白いんだけどな。その時は快く港の領有権を譲るぞ?」
「ははは。勘弁してください。こんな何も無い場所勘弁です」
「ロマンの溢れる話じゃねえか。こいつが王族ってのはねえけどよ」
 そんな他愛のない話をしながら冒険者チームと分かれて上陸した。
一足先に辿り着いてルサールカを組み上げている大工たちの方に移動しながら中間拠点の周囲を眺めた。何というか第一塩田・第二塩田と大きな差がなく、半島の向こう側に深い場所がある以外は特に何もなかった。波が強い事から塩田に剥くのか向かないのか考えてみるが、自分が頻繁に管理に来れない以上は止めておいた方が良いだろう。いつ住人が出来心で馬鹿な事をしてもおかしくはないからである。

民衆に対して過度な警戒を抱くことも無いが、野放しにしてはいけないということも勇者軍で散々味わった事だ。困っているからと物資を提供したら、横流ししてまるで足りないからもっとくれとか何とも言われたからな。適正に監視してたら全くそんな事は無くなるのが不思議なくらいである。

「設計と少し違うが……これは掴まる為の取っ手かい?」
「おや御領主さま。そうですよ。水棲種族の人がね、逢った方が助かるって言うんでちょいと付け足しました。余計だって言うんなら取り除きますがね」
 建造中のルサールカには少し奇妙な飾りがあった。
藻の様な鬣とかはまだ良いにしても、胴体付近にハンドルを長くしたような物がくっついているのだ。以前にルサールカ一号をこっちに持ってきて壊れたわけだが、その時に少しくらいは使って、移動補助に使うと便利だと思ったのかもしれない。思えば藻の様な鬣状の飾りだって、体に巻き付ければ体を固定するロープになるだろう。

そう思えば、水棲種族たちは勝手に利用としたというよりは、彼らの常識的に『こんな風にした方が便利だぞ』と入れ智慧してくれたのかもしれない。龍学才たちはそこまで入れ込む気はなさそうだったので、こっちの大工が勝手に協力してくれているのと同レベルの現地交流だと思われた。

「これが別の種族にとって宣戦布告の旗印になるなら困るが、そうでなければ構わんよ。それと向こうの艀は何に使うんだ?」
「彼らのバザールは艀の上でやるそうです。色々と持ち込んでくれますよ」
 他愛ない話をしながら倉庫やら休憩用の小屋を見て回った。
すると艀が深みに当る方へ幾つかあり、まるで今から大型船がやって来るかのようだ。もっとも、艀は本来、浅瀬側に作る物だと思うので気になって尋ねたら面白い事を聞いた。人間にとっては浅瀬の向こうにある深い場所まで延ばすための物だが、水棲種族にとっては市場になるらしい。言われてみれば水棲種族だけならともかく、一般人が売買に来たら空気のある水上の方が良い筈だ。

そんな風にこちらとの文化の差を学びつつ、俺は短い休息の中でゴーレム魔法を唱える作業に入るのだった。
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