魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

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第十章

『マジックアイテム生産に関する是正』

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 マジックアイテム化やゴーレムの製造に関して少し見直すことにした。
低位の呪文以外は一度の発動で何とかするのではなく、補助呪文込みで儀式を用いる為、長期のスケジュールを組んで行う必要があるからだ。水系統の呪文なら水棲種族に頼むとか方法はあるが、それだって代価は少なくはない。時間を課金で買っているような感覚で報酬を要求される。

なので第二期の五か年計画に支障が出る前にチェックしておこう。

「しかし、本当に学院に留学しなくて良いのか? 俺としては助かるが」
「現時点で学びたいことは学べてますし、人の役に立てるって意味なら師匠の元で色々作ってた方が面白いですからね。本当に必要な呪文を思いついたら、改めてお願いするかと思います」
 セシリアは結局、魔法学院には留学しないことになった。
付与呪文をガブリールの奴に教えてもらって、自分でマジックアイテムが作れるようになったこともあるだろう。魔力を豊富に持っているという加護の影響もあり、補助呪文を使わない初歩のアイテムなら、自分一人で作れるようになったというのも大きいと思われた。

ともあれこれでスケジュールに余裕が出来たという所か。
巨大魚の素材を使ったマジックアイテムもガブリ-ルは順調な様だし、後は弟子というか補助員を少しずつ育てていく以外に人員に関して出来る事はない。

「ありがとう、助かるよ。ただ無理はしないでくれよ、子供とか生まれたら手が離せないとか言ってで歩けなくなるからな」
「あー……あはは。姫が来てから遠慮の必要が無くなりましたしね」
 第一夫人であるユーリ姫と婚礼を上げたので、夜の生活が変った。
これまでは遠慮して出来るだけ子供を作らないようにしていたのだが、此処からは自然な流れに任せるというところだ。後継者問題をスムーズにするため、子供を作るのを遠慮はしていた……というのがセシリアたちにとって最大限の譲歩になるから遠慮していただけだしな。俺が俘虜に新可能性を考えたら、妾であろうと子供は作っておいた方が良い筈だったのだから、後日に睨まれる余地がなくなるという訳だ。

もちろんユーリ姫の血統にゴルビー本家を任せて、他の子たちはそれぞれの支配領域に村を作るという棲み分け前提があるからでもある。

「ともあれこれから何を作ります? なければアンナに贈る物を作りますが」
「セシリアはそれで良いと思うぞ。補助呪文を使わないなら即日だろ? ようやく自分の加護が自分を助けてくれる直だし、今はその楽しさを充実しとけ。水上歩行とかは向こうが欲しいと言って来たらで良いだろうさ。水の大量浄化とか作りたいなら要相談だな」
 大量の魔力があるとこういうショートカットも出来る。
セシリアはこの加護を微妙に思い、妹が持つ魔力回復を羨ましがっていた。だが付与呪文を覚え、基礎的な仕様だけなら自分で一人で賄えると知ったことで自信をつけたようだ。いまいち判り難いと思うので数字で例を作るとすると、MP30くらい消費するのが付与呪文で、それプラスしてアイテム化する呪文のMPを消費する必要がある。そして一般的な魔術師は40pも魔力を持っていないので、一人で作る為には儀式が必須なのである。

よって、追加魔力が20pくらいある今の彼女は、補助呪文が無くても確実に成功する水作成とか水移動くらいなら自分一人で即日作れてしまうのである。まあ補助呪文で強化しない水作成って、1リットルくらいだけどな(それでも旅する御供には十分だと言えるが)。

「ということは予定はこのまま継続ですか?」
「ああ。セシリアが居る分だけ大元の付与呪文部分の負担を分割できるからな。俺やジブの研究はそこからひねり出す。だからお前さんも自分がしたいことをやっとけ。今のところ、それがゴルビーの為でもある」
 呪文構文を刻印するのは手作業なのでどうしても時間を喰う。
これを何とかするには人数で分担をするか、セシリアの様に初歩の呪文に絞って作るしかない。もちろん初歩の呪文は大した物ではないが、それでも旅から旅をする遊牧民にはありがたいだろう。燃料は家畜のフンを使えるので、水さえあれば最低限の生活が出来るようになるはずだ。

そしてアンナが嫁ぐ遊牧民とは友好関係を築くつもりである。
王国を守る防衛網として警戒する対象ではあるが、武力ではなく友好関係で行けた方が良いのは確かだった(ノーガードはお互いの為にならないので、『信用しているから警備を置かないで!』みたいなことにはならないが)。

「判りました。でも予定通りって事は、王国でも水とか重要なんですね」
「そりゃな。人間は水がなければ生きていけないし、軍隊ってのは人数が居てナンボだからな。遊牧民みたいに最悪、家族が数日過ごす分だけあれば良いなんてことは出来ないからな。大量の水が用意できるなら食料だけ集めとけば半年から一年は篭城だって出来る」
 水供給・冷却システム・防衛システムで要塞を守る計画を立てた。
王国上層部はこの話に乗り気で、特に有力諸侯が反乱を起こしても、要所で防げば援軍到着まで守り切れるという点に注目した。その当時はヨセフ伯を念頭に置いていたが、今では俺も対象かもしれない。ただ、これを言い出したのが俺である分だけヨセフ伯よりは信頼されていると思いたい。

もっとも今は陛下との仲も良好だから意味があるが、次世代がどうなるかが心配ではある。この辺りは少しずつ信頼と実績を勝ち取って行くしかないのだろう。

「師匠はこの後何をされる予定なんです? 空いてましたよね」
「三胴船の三号艦として河川用の設計かな。キーエル家に通常型旋盤を許可する代わりに、コンスタンティン伯の所へ教える事の許可と引き替えにしようと思ってる。もちろんゴーレム型はキーエル家だけのままにするという前提でだ」
 ゴーレムを使った旋盤を職人が勝手に模倣し、水車で代用した事がある。
最近になって注文が多くなって、キーエル家の方も盛況さが増しているそうだ。そこで彼らが求めている通常型旋盤を世に広める条件として、最初の弟子筋をコンスタン・ティン伯のところにすること。そうすることでゴルビー家と両家のつながりを強化する狙いがある。ただ、それだけだと不満に思う可能性があるので、ゴーレム型旋盤は教えないのとついでに三胴艦を設計することにした。

重要なのは船そのものの設計ではなく、ゴーレムの水車を使っていると傍目は判らないようにするブラックボックス化である。

「ひとまず百足列車とかの発注は小康状態だからな。ジブの奴がボーンゴーレムの比較もしたいって話だから、基本的に暫くはすることがないんだ」
「そういえばあのゴーレムは大き過ぎますもんね」
「あのサイズにしては軽いんだが、貴重過ぎて小さく削れないからなあ」
 暇になったというか、そうなる様に調整したというか。
元からゴーレムの注文は多くないので、百足列車を増やす計画が入らないとそうそう建造することはないのだ。なので披露宴とその後の話もあって、特に外からの発注を入れてないし、こちらから建造して何かを作るという予定も組んでなかった。

あえて言うならば建造したボーンゴーレムの検証なのだが、水棲種族用にマジックアイテムを作ったガブリールが専属で色々と調べている。魔物の素材を使ったアイテムの最終検証と言う事で、流石に俺も予定を前後させられなかったとも言うが。

(骨を削って良いならアレは良いゴーレムになりそうなんだがな)
(世界的にも二度と手に入らない代物だし、ダメだろうな)
(となるとルサールカ三号機か四号機あたりで呪文組み込みか)
(呪文を組み込むのもまだまだ検証が必要だし、そもそも全魔力を使い果たした時に、魔物の素材が元の能力を保っているとは限らねえんだよな。それを考えると、殆ど把握してから魔力を使い切る検証はしない路線で行かないといけねえ。やっぱり水中用として水の中で移動する呪文を何回くらい使えるかを検証してからになるな)
 稼働しながらの検証はできないが、考察することはできる。
おそらく巨大過ぎて地上では使えないか、胴体を横倒しにして女王蟻みたいな使い方になるだろう。同じような形状で運用するならば、水中で使った方がより安定感が増すし、魔物の素材が属性を有するならばそちらの方が良いという考えもある。だから現状では『魔物の骨を使ったボーンゴーレムは優秀だった。小型化を目指す』以上の事が言えないのである。

次はオーガの骨を元にゴーレムを作り、それと比較する様に一度砕いて成形したゴーレムと比較検証するという、遥か先の予定をしてボーンゴーレムについては終りにするしかあるまい。

「最後にもう一質問するんですが、呪文を使えるゴーレムがありますよね。師匠は攻撃呪文とかを封じないんです? 使える筈ですよね?」
「良い質問だが、作る意味は今の所ないな。補助呪文で強化せずに等倍で使うだけならマジックアイテムで存在してるし、魔力を注げば誰でも使えるからそっちの方が手っ取り早い。じゃあ暴走先を一つに絞って射程何倍かで使うとして、それなら最初から投石器で良いだろ?」
 攻撃呪文を組み込まない理由は明確である。
限度いっぱいに強化して暴走するのだから、一発撃ったら魔力を使い果たしてしまう。となると現状では効率が悪いので、自爆兵器として手元の直径5mくらいの高威力か、200mくらい届く5mの火球くらいしか使い道がない。自爆するにしたって、そんな労力を払うくらいならば強い騎士でも派遣した方が良いのだ。ヒドラでも出て来て毒の息があるから接近できないなんて状態でも無ければ使えないだろう。範囲だけ強化した個体を数台並べて通常火力でふっ飛ばすなら一軍を全滅させられるかもしれないが、現状ではその建造費用で傭兵でも雇った方が建設的だろう(作業できるという意味では猶更)。

そういう訳で攻撃呪文を組み込んだタイプは当面お預けだった。

「術者が居なくても補助呪文で強化した状態で使えるのがゴーレムの魅力だからな。そういう意味では自己強化系の呪文なり、何らかの生産系の呪文にすべきだろう。毎日昼になると水を吐くライオン像とか、指示するとハシゴを防火する火災対処用のゴーレムとかな」
「参考になりました。ではやはり、使える呪文を覚えるべきなんですね」
「効率だけだと面白くないから限定する事もないけどな」
 そういえばセシリアは霧の壁の呪文を覚えて導師になった。
そこで創造門に属することになり、象徴する付与を覚えて新人のエンチャンターになったわけだ。今はアンナへのプレゼントを作るから良いのだが、その後に何を覚えたら良いのかまだ自分の中で固まっていないらしい。師と弟子とはいえ何から何まで指示する訳ではない。これからが彼女の魔術師としての、本当の始まりなのだから頑張って欲しいものである。

そういう意味で俺も今の所、やるべきことが頭打ちである。何か面白い物を作るか、それとも今までの何かをブラッシュアップするかで悩むべきところなのかもしれない。

(だけどなあ。ゴーレム魔術をちらほら揃ってきてる所だし、今が技術や概念が進歩するところなんだよな。どっちかというと俺は運用や改造の方が得意だし、何を作るか悩むところだ。むしろ探知システムみたいに強くないゴーレムとかでいろいろ試してみるかな?)
 地と火のゴーレム魔術が殆ど完成し、魔石や魔物素材も見えてきている。
ここで何かを作っても、また即座に更新する可能性が待ち受けているだろう。一介の術者ならギリギリまで粘って少しでも良い物を作るのも悪くはないが、俺は領主だから無駄な物を作るのに躊躇われるんだよな。それならちょっとした加工でも機能するナニカを作って、複数ある使い道の一つに当て嵌める方がやり易いと言えた。セシリアに説明した火球使いのゴーレムでプラズマライフルを目指すとかロマンはあるのだが、投石器でも良い威力しか出ないので、もっと別の呪文でやるべきだろう。

そしてアンナへのプレゼントとしてのネタを流用した、特に補助呪文を使わないマーライオン型ゴーレムを作ったことで、暴走する原因が何かを特定することになったのである。
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